LIMS(Laboratory Information Management System)は、データ管理や業務の効率化を実現する強力なツールです。本シリーズでは、品質管理部門や研究室にLIMSを導入するメリットをご紹介しています。
第二回となる今回は、「LIMS導入による効率化と生産性向上」にフォーカスしてご説明します。
LIMSを使うとサンプル管理から実験計画、レポート作成に至るまで、担当者の負担は大幅に減ります。そのメリットを詳しく見ていきましょう。
1.LIMS導入による効率化と生産性向上の具体例
本記事では効率化と生産性向上の具体例として、次の5つをご紹介します。
1.1 サンプル管理の効率化
1.2 試験計画・実行の効率化
1.3 データ収集・解析の効率化
1.4 レポート作成の効率化
1.5 コラボレーションの促進
品質管理や研究室の現場では、いずれも重要な課題ですね。早速、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1.1 サンプル管理の効率化
LIMSを導入することで、サンプル管理が大幅に効率化されます。
これまで分析担当者や研究者は、手書きのノートやExcel™を使ってサンプル情報を管理してきました。
ですが、自動化されたサンプル追跡システムがLIMSの一機能として導入されることで、サンプルの登録、更新、検索が容易になります。
また、バーコードや二次元コードを使用したサンプル追跡が可能になり、誤ったサンプルの使用や紛失を防ぐこともできます。行方不明になったサンプルを探したり、再試験をしたりする手間を省き、作業の効率化に繋がるでしょう。
1.2 試験計画・実行の効率化
LIMSを利用することで、試験計画・分析スケジュールの作成や実行がより簡単かつ効率的になります。
標準化された作業手順をデータベース化することで、作業者は試験方法を簡単に共有・参照できるためです。作業手順と、その手順に従って実施した作業結果を紐づけることも容易になります。
また経験豊富な方から新人まで、試験の手順を迅速かつ正確に実行できるでしょう。近年は人の入れ替わりも激しくなってきています。教育コストが下がり、早期から戦力として起用できるメリットは大きいです。
1.3 データ収集・解析の効率化
LIMSは品質管理部門や研究室で生成されるデータを自動的に収集・整理し、複数のデータソースからの情報を一元管理します。複数のデータソースとは、例えば異なる建屋、異なる装置、異なる担当者など、さまざまです。
さらに保存されるデータの形式が標準化されるため、取り扱いが容易になります。これによって解析や比較を迅速に行えます。統計解析やディープラーニングにも使いやすくなるでしょう。
また、グラフ等のビジュアル化機能を有するLIMSも多いです。例えば弊社製品Thermo Scientific™ SampleManager™ LIMSソフトウエアでは、SQC(Statistical Quality Control、統計的品質管理)の機能を有しています。この機能を使うと日々の測定値から自動的に管理図を作ることができ、製品やサービスの品質を視覚的にチェックしやすくなります。
数値の羅列ではなく、このようにデータを直感的に理解できることで、より効果的な意思決定を期待できます。
1.4 レポート作成の効率化
LIMSを利用することで、試験結果のレポートや報告書の作成が劇的に効率化されます。これはデータ収集・整理が自動化されることで、担当者自身が時間をかけてデータを集める必要がなくなるためです。
またレポートのテンプレート機能を活用することで、標準化された書式で試験結果を簡単にまとめられます。これらによって担当者はレポート作成の負担が大幅に軽減され、研究開発などのより重要な活動に集中できるようになります。
1.5 コラボレーションの促進
LIMSは、チーム内外のコラボレーションを促進します。Webアクセス可能なLIMSを導入することで、関係者はいつでも・どこからでもデータにアクセスし、データを共有できるためです。
研究室はもちろん、品質管理部門も多くの有用なデータを有しています。データへのアクセスが分断されていると、これを上手く活用することができません。LIMSによって情報共有が容易になると、社内・社外を含めてコラボレーションの効率化や知識の蓄積が実現しやすくなります。
2.業務効率化の具体的な効果
ここまで、LIMSの導入による業務効率化を5つの観点から見てきました。ここからは業務を効率化することで得られる効果として、4つの例を紹介しましょう。
2.1 チームの業務フロー改善
2.2 エラー削減と品質向上
2.3 担当者の業務負担軽減
2.4 短期・長期的なコスト削減
それでは詳しく見ていきます。
2.1 チームの業務フロー改善
LIMSの導入により、データ管理、実験計画、実験実施、結果解析、レポート作成などの業務が一元化され、作業プロセス全体が効率化されます。これによってチームの業務フローが大幅に改善されます。
また、データの可視化や分析機能を活用することで、担当者は業務フローにおける新たな知見や改善点を見つけやすくなるでしょう。例えばどのステップが律速になっているか、誰に業務が集中しているか、などです。データを元に業務フローの改善を考えられるようになります。
2.2 エラー削減と品質向上
LIMSを導入することで、チームのデータ管理におけるエラーが大幅に削減されます。
手書きノートやExcelでは、誤記入や複製の際のミスが起こりやすいです。一方LIMSでは、入力されたデータが自動的に検証され、エラーの可能性を最小限に抑えられます。
このように効率的な環境が整っていると、チェックや検証における担当者の負担を減らせます。担当者のポカミスが減り、データの信頼性と成果の質も向上するでしょう。
2.3 担当者の業務負担軽減
LIMS導入により、担当者はデータ管理やレポート作成にかかる時間を大幅に節約できます。そうすれば上述のとおり、データの正確性と信頼性も向上します。
また、担当者はより重要な活動に多くの時間を割くことができます。例えば新しい手法の開発や効率的な業務フロー、論文の執筆などが挙げられるでしょう。さらにはチームメンバーのストレス低減や満足度向上にも繋がります。
2.4 短期・長期的なコスト削減
LIMS導入による効率化は、短期・長期的なコスト削減にもつながります。データ管理や業務プロセスの自動化により、人件費や設備費を節約できるためです。
またエラーの削減により、再実験やデータ修正にかかる時間とコストも低減されます。
これらの効果により、チーム全体の運営コストが短期・長期的に削減されることが期待されます。
まとめ
本記事では、LIMSの導入による品質管理部門・研究室の効率化と生産性向上について解説しました。
LIMSは、チームのデータ管理や業務プロセスを劇的に改善し、担当者がより重要な活動に集中できるよう支援します。
弊社Webサイトでは、他にもLIMSの具体的な活用例をたくさん紹介しております。ぜひこちらも併せてお役立てください。
また、データ管理に関する質問やお悩み、LIMSに関する疑問点などがございましたら、お気軽にお寄せいただければ幸いです。
次回は「メリット2 – データ品質の向上」について詳しく解説していきます。
効率化だけでなく、データ品質にまで影響を与えるLIMS。
その魅力と可能性を引き続きお伝えして参ります!
また、LIMSに関する他の記事はこちらをご覧ください。
LIMS Archives – Learning at the Bench (thermofisher.com)
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