▼もくじ
はじめに
マイクロアレイは数万にも及ぶ遺伝子を同時に解析できることから、基礎研究や臨床分野では欠かすことのできないテクノロジーとして広く利用されるようになってきています。
最近ではさまざまな受託会社がマイクロアレイ解析を行っており、専用の装置を持っていない研究者でも気軽に解析結果を得ることができるようになりました。
今回はマイクロアレイを受託解析に出す前に、あらかじめ知っておくと役に立つポイントをご紹介します
受託解析を利用する際に押さえておきたいポイント
まず確認したいのがアウトプットである解析結果についてです。
そもそもデータ解析は無償なのか、それとも解析結果を出してもらうのにオプション料金が別途必要なのか。
また解析結果と一口に言っても、シンプルな結果だけなのか、それともさまざまな処理を施したものなのか、それぞれ確認が必要です。
解析結果とは別に、生データを手に入れることができるかも知っておきたいポイントです。
手元に専用の解析ソフトがある場合、生データを入手できていれば自分たちの手で解析を行うことができます。しばらく時間が経ってから、新しい条件で解析をやり直したいなどといったときも、生データと解析ソフトがあれば受託会社に問い合わせずに済みます。
解析ソフトはマイクロアレイの種類によって利用できるものが異なってくるため、あらかじめ確認しておきましょう。解析ソフトの料金も、毎年更新料がかかるものから、完全に無料で使えるものまで、さまざまなものがあります。
なお、弊社が提供している発現解析ソフト「Applied Biosystems™ Transcriptome Analysis Console (TAC)」は誰でも無料でダウンロードでき、発現解析アレイの結果を簡単に解析できます。
TACの使い方は非常に簡単で、下記のブログでも使い方をご紹介しています。ぜひあわせてご参照ください。
こんなに簡単!マイクロアレイ解析のフリーソフトをダウンロードする方法 »
フリーのマイクロアレイ解析ソフトを使ってデータを取り込み、遺伝子発現解析をはじめよう!»
フリーのマイクロアレイ解析ソフトを使って解析データに異常がないか確認してみよう!»
フリーのマイクロアレイ解析ソフトを使って発現解析してみよう!»
フリーのマイクロアレイ解析ソフトを使って選択的スプライシングを解析してみよう!»
解析対象遺伝子はどの程度あるのか?
マイクロアレイで遺伝子の発現を解析する場合、どういった遺伝子を対象としているのかも重要なポイントです。
通常、ほとんどの発現アレイは約2万ともいわれているコーディング遺伝子を網羅しており、代表的な遺伝子はほとんど全て含まれていると考えて良いでしょう。
一方で、近年ではタンパク質をコードしていない、いわゆる長鎖ノンコーディングRNA (long non-coding RNA, lncRNA) というものが着目されており、さまざまな疾患との関連性が指摘されています。
今後、新たに網羅的な発現解析をする場合は、このlncRNAを解析に含めるかどうかが一つのポイントとなってくることでしょう。
マイクロアレイの種類によって、lncRNAが含まれているものと含まれていないものがあります。受託解析を利用する場合は、予算と相談しながら、より適切なものを選ぶようにしましょう。
lncRNA解析には、例えば旧アフィメトリクス社のApplied Biosystems™Clariom™ D Assaysなどがお薦めです。コーディング、ノンコーディング合わせて、実に10万種類以上の遺伝子を解析できます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
次世代型超高密度マイクロアレイ Clariom D の圧倒的な解析性能とは?»
どういったサンプルが解析できるのか?
マイクロアレイの受託解析では、サンプルから抽出した核酸を受託会社に提出して解析します。その際、発現解析であればRNAの収量や純度(RIN)などの値が基準を満たしている必要があります。
ところがサンプルによっては十分な収量を得ることが難しい場合があります。特に臨床検体の場合、解析に使用できるサンプル量には限りがあるため、十分なRNA量を回収することができないケースも多いと思います。
そのような場合、マイクロアレイによる発現解析はあきらめなければならないのでしょうか?
実は、通常よりも収量の少ないRNAでもマイクロアレイで解析できる専用試薬があります。例えばApplied biosystems™ GeneChip™ WT Pico Kitを用いれば、わずか100pgのtotal RNAからアッセイが可能です。
またこの試薬はFFPE(ホルマリン固定パラフィン包埋)サンプルにも対応しており、RNAの分解が激しいといわれているFFPEでも、非常にきれいな発現解析データを出すことができます。
RNAの収量や分解が気になる場合は、こうした試薬を用いることができるのか、受託会社に問い合わせてみるのが良いでしょう。
発現解析用マイクロアレイのラインナップ
弊社では発現解析用のマイクロアレイ製品としてさまざまなラインアップをご用意しています。ここでは、代表的な製品について簡単にご紹介したいと思いますので、受託解析を行う際の参考にしてみてください。
Clariom D Arrayは選択的スプライシングやlncRNAの解析に
Clariom D Arrayは、トランスクリプトームレベル、つまり全転写産物の解析ができるよう開発された、次世代型マイクロアレイです。遺伝子発現解析はもちろんのこと、lncRNAや選択的スプライシングの解析にも対応しており、一歩先を目指す研究に最適のアレイです。
Clariom Dシリーズの製品:Clariom D human、Clariom D Mouse、Clariom D Rat
こんな人にオススメ↓
・lncRNAを含めた網羅的な発現解析を行いたい
・選択的スプライシングによる遺伝子バリアント解析にも興味がある
また、無料解析ソフトウェアTACを組み合わせることで、選択的スプライシングの解析が簡潔に行えます。詳しくは、ブログ「フリーのマイクロアレイ解析ソフトを使って選択的スプライシングを解析してみよう!」をご参考ください。
Clariom S Arrayは新たな発現解析アレイのゴールドスタンダード
Clariom Sは遺伝子発現解析に特化することにより、解析コストを抑えることが可能となりました。1アレイあたりのランニングコストは2~2.5万程度と手ごろな価格で解析ができるアレイで、非常に多くの方がこのアレイを使用しており、新たな発現解析のスタンダードになりつつあります。
選択的スプライシングの解析やノンコーディングRNAの発現解析までは必要がない場合、こちらをファーストチョイスとして選んで間違いはありません。
Clariom Sシリーズの製品:Clariom S human、Clariom S Mouse、Clariom S Rat
こんな人にオススメ↓
・とりあえず遺伝子発現だけを見たい
・解析コストを低く抑えたい
もちろん無料ソフトウェアTACでの解析が可能で、Clariom SとTACのタッグは安く・簡単で・わかりやすく・詳細な解析に適した組み合わせです。
また、Clariom Sについて「驚異的低価格のマイクロアレイClariom Sが変える発現解析の常識」で詳しくご紹介していますので、こちらのブログも併せてご覧ください。
圧倒的な実績を誇る「3’IVT Array」
発表以来、10年以上の月日を重ねた現在でもさまざまな文献で用いられている、Applied Biosystems™ GeneChip™ 3′IVT Arrayシリーズです。
DNAプローブが遺伝子の3’末端側にデザインされていることから、この名前が付いています。
3’IVTDシリーズの製品:GeneChip Human Genome U133 Plus 2.0 Array、GeneChip Mouse Genome 430A 2.0 Array、GeneChip Rat Genome 230 2.0 Array
こんな人にオススメ↓
・3VT Arrayが用いられている過去の膨大な研究事例と比較して実験をしたい
・既に3’VT Arrayを用いた実験系が完成されている
まとめ
今回は、マイクロアレイを受託解析に出す前に知っておきたいポイントについて整理してみました。
ここでご紹介した無料の解析ソフトや、各マイクロアレイの特性などをしっかりと把握しておくことで、受託によるマイクロアレイ解析をより充実したものにしてください。
受託解析企業一覧(8社)
●倉敷紡績 株式会社
認定サービスプロバイダーとして15年以上の実績と経験があります。特に遺伝子発現解析用途では、組織からのRNA抽出や微量サンプル解析、解析後のデータマイニングなどの幅広いサポートが可能です。
●株式会社 ジェネティックラボ
ジェネティックラボは、病理診断とコア技術である最先端の分子生物学的解析技術を駆使し、バイオマーカーの探索・評価、診断手法、診断薬・治療薬開発を推進します。
●積水メディカル 株式会社
遺伝子の網羅的発現解析、ターゲット遺伝子発現量の測定およびヒト肝毒性の予測等幅広いニーズに合わせた試験の実施が可能です。
●一般財団法人 化学物質評価研究機構
再現性の高いアレイデータ測定および、ご要望に合わせたデータ解析まで幅広く対応しております。また、アレイを使用した核酸医薬品のin vitroオフターゲット効果の評価も行っております。
●株式会社 セルイノベーター
遺伝子発現解析(マイクロアレイ、NGS)を実験の計画から、サンプル調製、マイクロアレイ、NGS実験、データ解析(データマイニングサポート)までを一貫してサポートする会社です。解析関連のブログはこちらです。
●フィルジェン 株式会社
弊社独自の解析ソフトMicroarray Data Analysis toolを無償提供!豊富な経験と実績、幅広い受託サービスでお客様の次のステップもサポートします。
●株式会社 理研ジェネシス
網羅的探索から特定遺伝子の検証まで、多岐にわたる遺伝子解析サービスを提供します。
また、受託会社に本格的な解析を依頼する前に、どのような結果が出るのか見てみたいお客様向けに、サーモフィッシャーには「お試し有償解析サービス」がございます。この機会に一度、弊社のアレイをお試しください。
研究用にのみ使用できます。診断目的およびその手続き上での使用はできません。