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Thermo Scientific Maxima Reverse Transcriptase (RT) は、最適な性能での cDNA 合成を可能とするために、molecular evolution 技術により開発されました。酵素の熱安定性、堅牢性、およびcDNA鎖伸長能 (processivity) を劇的に改善する複数の有益な変異の導入を可能とする当社独自の技術により、cDNA 合成における性能を向上させています。Maxima RT は、RT-PCR 用および RT-qPCR 用として、スタンドアローン型酵素、最適化されたキットおよび究極的に便利なマスターミックスなど、さまざまなフォーマットを取り揃えています。Maxima RT キットおよびマスターミックスでは、gDNA 除去ステップを組込んだフォーマットの使用も可能で、ワークフローを効率化・簡素化できます。
Maxima H Minus cDNA Synthesis Master Mix のフライヤーをダウンロードする
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新しい Thermo Scientific Maxima H Minus cDNA Synthesis Master Mix は、2ステップ RT-qPCR での一貫して効率性および再現性に優れた逆転写反応を提供します。Maxima H Minus RT は、最高レベルの cDNA 合成を可能とするように改変された RNase H–酵素で、RT-qPCR の一貫性のある最高のコントロールを可能とするシンプルなプロトコールを採用した、便利な1チューブマスターミックスとして調製されています。
Maxima H Minus cDNA Synthesis Master Mix では、広範囲の鋳型濃度にわたり高い転写効率と優れたリニアリティが維持されます(図1)。多量~少量のインプットRNAを使用した際の種々の転写産物の相対量から、優れたリニアリティが強く示されています。
図 1.Maxima H Minus cDNA Synthesis Master Mix は広範なダイナミックレンジに対応検量線から得られた、広範囲のインプットRNA量における高いリニアリティ (R2 = 0.999) は、トータル RNA の量に関わらず、特異的なRNA転写産物が cDNA プール中に保存されていることを示します。10倍段階希釈した HeLa 由来のトータル RNA (1 μg~0.1 pg) を用いて、ヒト 18S RNA 遺伝子の増幅を実施しました。一本鎖 cDNA は、Maxima H Minus cDNA Synthesis Master Mix を使用して作製しました。cDNA は、Thermo Scientific Luminaris Probe qPCR Master Mix, low ROX を使用して、Applied Biosystems ViiA 7 Real-Time PCR System 上で増幅しました。
Maxima H Minus cDNA Synthesis Master Mix は、少量および多量のインプット RNA 量において、他社 RT 製品よりも高い転写効率を提供します (図2)。高い転写効率は、RNA 使用量を低減させ、発現した転写産物をより少量で正確に検出することを可能とします。
Maxima H Minus cDNA Synthesis Master Mix は、RT-qPCR での性能評価において、Maxima First Strand cDNA Synthesis Kit for RT-qPCR を使用して得られた値に対し標準化した際、96 遺伝子ターゲットの多くで、他社の RT マスターミックス製品よりも一貫して高い転写効率を示しました(図3)。
Maxima H Minus cDNA Synthesis Master Mix は、二本鎖特異的な DNase (dsDNase) が添付された製品も利用可能で、従来の DNase I よりも迅速、高効率で、完全な gDNA 除去が可能です。 RNA サンプルを dsDNase 処理しても、サンプル中のRNAの完全性や量が低下することはありません。cDNA 合成の前に dsDNase 処理することにより、従来の DNase I 処理によるサンプルクリーンナップ後にみられるサンプルロスのリスクを最小化できます。
Maxima No-RT コントロールミックスは、Maxima H Minus RT Master Mix にも付属しており、2 ステップ RT-qPCR 用の完全な cDNA 合成のソリューションを提供します。この No-RT コントロールミックスには、Maxima H Minus RT を除く、逆転写マスターミックスの全コンポーネントが含まれており、研究者が残存 gDNA の混入がないことを正確に確認することが可能です。
Thermo Scientific Maxima RT および Maxima H Minus RT は、下記を特長とする、cDNA 合成性能を向上させる複数の有益な変異を従来の M-MuLV RT に導入し、選択することを可能とする in vitromolecular evolution 技術を用いて開発されました。
Maxima Reverse Transcriptase は、幅広い温度範囲で他社の逆転写酵素よりも優れた性能を示します。高温下での逆転写反応に耐性があることは、広範囲の二次構造を有する RN 領域の効率的な転写や、プライマー特異性の向上を可能とし、 高収量の完全長 DNA 合成につながります(図4)。
図 4.幅広い温度範囲にわたり高収量の cDN A合成が可能 オリゴ (dT) 18プライマーの存在下で 1 μg の Invitrogen Millennium RNA マーカー (ポリ (A) テール) を使用した、Maxima H Minus Reverse Transcriptase による、放射性標識を組込んだ cDNA 合成について、他社の逆転写酵素による各製造元推奨のプロトコールに従った cDNA 合成と比較しました。反応産物はアルカリ性アガロースゲルで確認しました。
性能を向上する独自の変異を導入して設計された、Maxima H Minus Reverse Transcriptase は、非常に長い RNA 鋳型からの完全長 cDNA の合成を可能とします(図5)。
図 5.2 ステップ RT-PCR での長鎖ターゲットの増幅 哺乳類細胞由来トータル RNA (1 μg) を使用し、Maxima H Minus Reverse Transcriptase および他社の逆転写酵素による逆転写反応を、各製造元推奨のプロトコールに従って実施しました。得られた cDNA 産物を PCR 用の鋳型として使用し、アガロースゲル上で結果を可視化しました。非常に長い (13.3 kb) 産物が高収量で合成されたのは、Maxima H Minus Reverse Transcriptase のみでした。
Maxima Reverse Transcriptase は、広範囲の鋳型量からの再現性のある cDNA 合成を可能とすることから、RT-qPCR 実験のための理想的な選択肢です (図6)。Thermo Scientific Maxima First Strand cDNA Synthesis Kit に含まれるプレミックス溶液を使用すると、さらに再現性が向上し、反応液調製に要する時間が短縮されます。
図 6.広範囲の出発 RNA 量からの、変動が少なく (<1% SD/Ct)、再現性のある cDNA 合成が可能 一本鎖 cDNA は、Maxima First Strand cDNA Synthesis Kit を使用して、100、10、1、0.1、0.01、および 0.001 ng の哺乳類細胞由来トータル RNA から、各 16 回増幅反応を行い合成しました。合成された cDNA は、Thermo Scientific Maxima SYBR Green/ROX qPCR Master Mix による qPCR における鋳型として使用しました。増幅プロットは、幅広い出発 RNA 量にわたり優れた一貫性が得られることを示しています。
Maxima First Strand cDNA Kit には、ゲノム DNA を除去する二本鎖特異的 DNase (dsDNase) が含まれるため、この後に続く cDNA 合成を、いかなる中間のサンプル精製ステップも経ずに行えます。dsDNase は、RNA の量や質にダメージを与えたり、プライマーやプローブなどの一本鎖 DNA を分解することなく、2 分間でゲノム DNA のコンタミネーションを除去するように設計されています(図7)。dsDNase は、穏やかな熱処理 (55°C) によって容易に不活性化されます。続いて、ゲノム DNA フリーの RNA サンプルをそのまま cDNA 合成反応に使用できることによって、実験ワークフローが大幅に簡素化されます。
図 7.dsDNase の使用により効率的にゲノム DNA を除去逆転写酵素添加 (RT+)、逆転写酵素添加なし (RT-) の設定で、複数の cDNA 合成キットによる PBGD 遺伝子の 2 ステップ RT-qPCR 解析を行いプロットしました。0.2 ng の Jurkat 由来トータル RNA からの cDNA 合成を、Maxima First Strand cDNA Synthesis Kit with dsDNase、または gDNA 除去処理が求められる他社のキットを使用して実施しました。Maxima キットを使用した反応を示すオレンジ色のフラットな RT プロットは、gDNA のコンタミネーションが完全に除去されていることを示しているのに対し、他社キットを使用した RT 反応では残存する gDN A由来の増幅が示されています。
RNase 阻害剤は、通常、高温で変性し、RNase は反応液ミックスに戻されるため、RNA には損傷や分解が生じ得ます。RNase から RNA を保護するために、全ての Maxima First Strand cDNA Synthesis Kit には、遺伝子改変された、熱安定性の Thermo Scientific RiboLock RNase Inhibitor が含まれます。このタンパク質は RNase 上に“ロック”されることにより、最高 55°C まで、RNA を分解から保護します(図8)。RiboLock RNase Inhibitor の高い熱安定性は、より高い反応温度での逆転写を成功させるのに重要です。
図8.RiboLock RNase Inhibitor は効率的に RNA を保護し、最大 2 ng/20 μL まで RNase A を阻害 一定分量 (20 μL) のヒト由来トータル RNA (1 μg) に 37°C で 20 U の RiboLock RNase Inhibitor および RNase A の量を漸次増加させて添加しました。
M:Thermo Scientific RiboRuler High Range RNA Ladder, ready-to-use
C:ヒト由来トータル RNA
1:ヒト由来トータル RNA に RNase A を添加
2~5:ヒト由来トータル RNA に RiboLock RNase Inhibitor と RNase A を添加
RiboLock RNase Inibitor は、高い熱安定性を示します。一定分量 (20 μL) のヒト由来トータル RNA (1 μg) に 20 U の RiboLock RNase Inhibitor と 50 pg の RNase A を添加し、上昇させた温度でインキュベーションしました。
酵素性能を向上するための合理的な設計基準を使用する構想は、ポリメラーゼの微細な構造および機能によって制限されます。この制限は、自然を模倣し、酵素特性を向上させる定向進化を利用することによって克服できます。
当社独自の技術である、区画化リボソームディスプレイ (compartmentalized ribosome display; CRD) は、迅速かつ効率的なRTの in vitro evolution を可能とします[1, 2]。本技術は、野生型 MMuLV RT に複数の有益な変異を導入し選択することを可能とするもので、従来の野生型RTに取って代わる、新しい、高度に熱安定性および DNA 鎖伸長能 (processivity) に優れたRTを提供します。
CRD 技術による molecular evolution には、いくつかのステップが含まれます (図9)。まず、野生型 MMuLV RT 遺伝子からスタートし (1)、ランダム変異に基づいて、mRNA ライブラリを作製します (2)。次に、mRNA ライブラリは、 in vitro でタンパク質に翻訳され、タンパク質はその mRNA 前駆体と会合します (3)。続いて、タンパク質–mRNA 複合体をRT反応液に加え乳化させ、それぞれに 1 つのタンパク質–mRNA 複合体が含まれる区画を得ます。最後に、温度を上げて選択圧をかけることによって、有益な変異体のみが残り、完全長 cDNA の生成を可能とします (4)。最高の性能を示す変異を組み合わせることにより、cDNA 鎖伸長能 (processivity) が非常に高く、高温での完全長 cDNA 合成を可能とする MMuLV RT 変異体が構築されました。
図 9.MMuLV RT の molecular evolution における主要ステップ
野生型 MMuLV RT は、RNA 依存性および DNA 依存性ポリメラーゼ活性の他に、RNase H 活性も有します。RNase H 活性は、RNA–DNA 二本鎖の RNA を分解することで、効率的な dsDNA 合成を可能とします。しかしながら、長い mRNA の鋳型では、完全長の cDNA が転写される前に RNA が分解され、切断型 cDNA が生じ得ます。そのため、cDNA クローニング用の長い転写産物の生成を目的とする場合は、通常、RNase H 活性を最小限に抑えることが有益とされます (図10)。
対照的に、内在性 RNase H 活性を持つ RT は、PCR の最初のサイクル中における RNA–DNA 二本鎖の融解性を向上させるため、多くの場合、qPCR アプリケーションに好都合です。
図 10.機能的な RNase H 活性を持つ/持たない RT による cDNA 合成の比較
新しい Thermo Scientific Maxima H Minus cDNA Synthesis Master Mix は、2ステップ RT-qPCR での一貫して効率性および再現性に優れた逆転写反応を提供します。Maxima H Minus RT は、最高レベルの cDNA 合成を可能とするように改変された RNase H–酵素で、RT-qPCR の一貫性のある最高のコントロールを可能とするシンプルなプロトコールを採用した、便利な1チューブマスターミックスとして調製されています。
Maxima H Minus cDNA Synthesis Master Mix では、広範囲の鋳型濃度にわたり高い転写効率と優れたリニアリティが維持されます(図1)。多量~少量のインプットRNAを使用した際の種々の転写産物の相対量から、優れたリニアリティが強く示されています。
図 1.Maxima H Minus cDNA Synthesis Master Mix は広範なダイナミックレンジに対応検量線から得られた、広範囲のインプットRNA量における高いリニアリティ (R2 = 0.999) は、トータル RNA の量に関わらず、特異的なRNA転写産物が cDNA プール中に保存されていることを示します。10倍段階希釈した HeLa 由来のトータル RNA (1 μg~0.1 pg) を用いて、ヒト 18S RNA 遺伝子の増幅を実施しました。一本鎖 cDNA は、Maxima H Minus cDNA Synthesis Master Mix を使用して作製しました。cDNA は、Thermo Scientific Luminaris Probe qPCR Master Mix, low ROX を使用して、Applied Biosystems ViiA 7 Real-Time PCR System 上で増幅しました。
Maxima H Minus cDNA Synthesis Master Mix は、少量および多量のインプット RNA 量において、他社 RT 製品よりも高い転写効率を提供します (図2)。高い転写効率は、RNA 使用量を低減させ、発現した転写産物をより少量で正確に検出することを可能とします。
Maxima H Minus cDNA Synthesis Master Mix は、RT-qPCR での性能評価において、Maxima First Strand cDNA Synthesis Kit for RT-qPCR を使用して得られた値に対し標準化した際、96 遺伝子ターゲットの多くで、他社の RT マスターミックス製品よりも一貫して高い転写効率を示しました(図3)。
Maxima H Minus cDNA Synthesis Master Mix は、二本鎖特異的な DNase (dsDNase) が添付された製品も利用可能で、従来の DNase I よりも迅速、高効率で、完全な gDNA 除去が可能です。 RNA サンプルを dsDNase 処理しても、サンプル中のRNAの完全性や量が低下することはありません。cDNA 合成の前に dsDNase 処理することにより、従来の DNase I 処理によるサンプルクリーンナップ後にみられるサンプルロスのリスクを最小化できます。
Maxima No-RT コントロールミックスは、Maxima H Minus RT Master Mix にも付属しており、2 ステップ RT-qPCR 用の完全な cDNA 合成のソリューションを提供します。この No-RT コントロールミックスには、Maxima H Minus RT を除く、逆転写マスターミックスの全コンポーネントが含まれており、研究者が残存 gDNA の混入がないことを正確に確認することが可能です。
Thermo Scientific Maxima RT および Maxima H Minus RT は、下記を特長とする、cDNA 合成性能を向上させる複数の有益な変異を従来の M-MuLV RT に導入し、選択することを可能とする in vitromolecular evolution 技術を用いて開発されました。
Maxima Reverse Transcriptase は、幅広い温度範囲で他社の逆転写酵素よりも優れた性能を示します。高温下での逆転写反応に耐性があることは、広範囲の二次構造を有する RN 領域の効率的な転写や、プライマー特異性の向上を可能とし、 高収量の完全長 DNA 合成につながります(図4)。
図 4.幅広い温度範囲にわたり高収量の cDN A合成が可能 オリゴ (dT) 18プライマーの存在下で 1 μg の Invitrogen Millennium RNA マーカー (ポリ (A) テール) を使用した、Maxima H Minus Reverse Transcriptase による、放射性標識を組込んだ cDNA 合成について、他社の逆転写酵素による各製造元推奨のプロトコールに従った cDNA 合成と比較しました。反応産物はアルカリ性アガロースゲルで確認しました。
性能を向上する独自の変異を導入して設計された、Maxima H Minus Reverse Transcriptase は、非常に長い RNA 鋳型からの完全長 cDNA の合成を可能とします(図5)。
図 5.2 ステップ RT-PCR での長鎖ターゲットの増幅 哺乳類細胞由来トータル RNA (1 μg) を使用し、Maxima H Minus Reverse Transcriptase および他社の逆転写酵素による逆転写反応を、各製造元推奨のプロトコールに従って実施しました。得られた cDNA 産物を PCR 用の鋳型として使用し、アガロースゲル上で結果を可視化しました。非常に長い (13.3 kb) 産物が高収量で合成されたのは、Maxima H Minus Reverse Transcriptase のみでした。
Maxima Reverse Transcriptase は、広範囲の鋳型量からの再現性のある cDNA 合成を可能とすることから、RT-qPCR 実験のための理想的な選択肢です (図6)。Thermo Scientific Maxima First Strand cDNA Synthesis Kit に含まれるプレミックス溶液を使用すると、さらに再現性が向上し、反応液調製に要する時間が短縮されます。
図 6.広範囲の出発 RNA 量からの、変動が少なく (<1% SD/Ct)、再現性のある cDNA 合成が可能 一本鎖 cDNA は、Maxima First Strand cDNA Synthesis Kit を使用して、100、10、1、0.1、0.01、および 0.001 ng の哺乳類細胞由来トータル RNA から、各 16 回増幅反応を行い合成しました。合成された cDNA は、Thermo Scientific Maxima SYBR Green/ROX qPCR Master Mix による qPCR における鋳型として使用しました。増幅プロットは、幅広い出発 RNA 量にわたり優れた一貫性が得られることを示しています。
Maxima First Strand cDNA Kit には、ゲノム DNA を除去する二本鎖特異的 DNase (dsDNase) が含まれるため、この後に続く cDNA 合成を、いかなる中間のサンプル精製ステップも経ずに行えます。dsDNase は、RNA の量や質にダメージを与えたり、プライマーやプローブなどの一本鎖 DNA を分解することなく、2 分間でゲノム DNA のコンタミネーションを除去するように設計されています(図7)。dsDNase は、穏やかな熱処理 (55°C) によって容易に不活性化されます。続いて、ゲノム DNA フリーの RNA サンプルをそのまま cDNA 合成反応に使用できることによって、実験ワークフローが大幅に簡素化されます。
図 7.dsDNase の使用により効率的にゲノム DNA を除去逆転写酵素添加 (RT+)、逆転写酵素添加なし (RT-) の設定で、複数の cDNA 合成キットによる PBGD 遺伝子の 2 ステップ RT-qPCR 解析を行いプロットしました。0.2 ng の Jurkat 由来トータル RNA からの cDNA 合成を、Maxima First Strand cDNA Synthesis Kit with dsDNase、または gDNA 除去処理が求められる他社のキットを使用して実施しました。Maxima キットを使用した反応を示すオレンジ色のフラットな RT プロットは、gDNA のコンタミネーションが完全に除去されていることを示しているのに対し、他社キットを使用した RT 反応では残存する gDN A由来の増幅が示されています。
RNase 阻害剤は、通常、高温で変性し、RNase は反応液ミックスに戻されるため、RNA には損傷や分解が生じ得ます。RNase から RNA を保護するために、全ての Maxima First Strand cDNA Synthesis Kit には、遺伝子改変された、熱安定性の Thermo Scientific RiboLock RNase Inhibitor が含まれます。このタンパク質は RNase 上に“ロック”されることにより、最高 55°C まで、RNA を分解から保護します(図8)。RiboLock RNase Inhibitor の高い熱安定性は、より高い反応温度での逆転写を成功させるのに重要です。
図8.RiboLock RNase Inhibitor は効率的に RNA を保護し、最大 2 ng/20 μL まで RNase A を阻害 一定分量 (20 μL) のヒト由来トータル RNA (1 μg) に 37°C で 20 U の RiboLock RNase Inhibitor および RNase A の量を漸次増加させて添加しました。
M:Thermo Scientific RiboRuler High Range RNA Ladder, ready-to-use
C:ヒト由来トータル RNA
1:ヒト由来トータル RNA に RNase A を添加
2~5:ヒト由来トータル RNA に RiboLock RNase Inhibitor と RNase A を添加
RiboLock RNase Inibitor は、高い熱安定性を示します。一定分量 (20 μL) のヒト由来トータル RNA (1 μg) に 20 U の RiboLock RNase Inhibitor と 50 pg の RNase A を添加し、上昇させた温度でインキュベーションしました。
酵素性能を向上するための合理的な設計基準を使用する構想は、ポリメラーゼの微細な構造および機能によって制限されます。この制限は、自然を模倣し、酵素特性を向上させる定向進化を利用することによって克服できます。
当社独自の技術である、区画化リボソームディスプレイ (compartmentalized ribosome display; CRD) は、迅速かつ効率的なRTの in vitro evolution を可能とします[1, 2]。本技術は、野生型 MMuLV RT に複数の有益な変異を導入し選択することを可能とするもので、従来の野生型RTに取って代わる、新しい、高度に熱安定性および DNA 鎖伸長能 (processivity) に優れたRTを提供します。
CRD 技術による molecular evolution には、いくつかのステップが含まれます (図9)。まず、野生型 MMuLV RT 遺伝子からスタートし (1)、ランダム変異に基づいて、mRNA ライブラリを作製します (2)。次に、mRNA ライブラリは、 in vitro でタンパク質に翻訳され、タンパク質はその mRNA 前駆体と会合します (3)。続いて、タンパク質–mRNA 複合体をRT反応液に加え乳化させ、それぞれに 1 つのタンパク質–mRNA 複合体が含まれる区画を得ます。最後に、温度を上げて選択圧をかけることによって、有益な変異体のみが残り、完全長 cDNA の生成を可能とします (4)。最高の性能を示す変異を組み合わせることにより、cDNA 鎖伸長能 (processivity) が非常に高く、高温での完全長 cDNA 合成を可能とする MMuLV RT 変異体が構築されました。
図 9.MMuLV RT の molecular evolution における主要ステップ
野生型 MMuLV RT は、RNA 依存性および DNA 依存性ポリメラーゼ活性の他に、RNase H 活性も有します。RNase H 活性は、RNA–DNA 二本鎖の RNA を分解することで、効率的な dsDNA 合成を可能とします。しかしながら、長い mRNA の鋳型では、完全長の cDNA が転写される前に RNA が分解され、切断型 cDNA が生じ得ます。そのため、cDNA クローニング用の長い転写産物の生成を目的とする場合は、通常、RNase H 活性を最小限に抑えることが有益とされます (図10)。
対照的に、内在性 RNase H 活性を持つ RT は、PCR の最初のサイクル中における RNA–DNA 二本鎖の融解性を向上させるため、多くの場合、qPCR アプリケーションに好都合です。
図 10.機能的な RNase H 活性を持つ/持たない RT による cDNA 合成の比較
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.