抗体のスクリーニング、力価およびアイソタイピングは、あらゆるカスタム抗体生産プロジェクトにおいて、インプロセス型および最終決定型の重要な抗体テスト手順です。これらのテストによって、選定および続行させる免疫動物や細胞株のタイプ、特定アプリケーション用の希釈液や二次試薬、有効な抗体精製法などの決定に必要な情報データが得られます。
  • スクリーニング—抗原結合特異性を有した抗体サンプルを識別します
  • 力価—抗体濃度と機能アッセイ効力を測定します
  • アイソタイピング—モノクローナル抗体のクラスとサブクラスの同一性を測定します

本ページでは、こうした抗体特性評価法をご紹介いたします。


抗体スクリーニング

ハプテン特異的抗体をアッセイするスクリーニング法の開発は、全ての抗体産出手順において重要な要素となります。スクリーニングは、免疫化スケジュールの最初の定期テスト採血(血清)時に実行し、高水準の抗原特異的ポリクローナル抗体を産出する免疫動物を同定します。モノクローナル抗体開発(ハイブリドーマを生成する、収集された脾臓細胞の融合物)用のマウスを選択し、処理した後、得られた数百から数千のモノクローナル細胞株のテストを行い、目的の特異的抗体を産出する細胞株を特定しなければなりません。

血清サンプル(試験採血)を用いたポリクローナル抗体のスクリーニングや、細胞培養上清を用いたモノクローナル抗体のスクリーニングは、最終的に抗体産出するアプリケーションが目的でない場合でも、通常ELISA法により実行します。抗体開発の後期段階(例:モノクローナル抗体を作製する融合体用のマウスを選択する直前)では、スクリーニングで同定された陽性サンプルは、 特定アッセイにおける性能に関してさらに徹底的なテストを行うことができます。

抗体スクリーニング用の標準ELISA法:

  1. pH値9.4の炭酸-重炭酸バッファ中で一晩インキュベートを行うことにより、イムノアッセイ(ポリスチレン)マイクロプレート中の精製抗原にコーティングを施します。(以下の重要論評をご参照ください。)
  2. 適切な試薬を用いて、プレートウェルの洗浄とブロックを行います。
  3. テストウェルへ1種から数種の免疫血清の希釈液を添加し、別のウェルへ正常(免疫前)血清の希釈液を添加します;そして、プレートをカバーし、抗体を結合させるためプレートを1時間インキュベートします。
  4. プレートウェルを洗浄します。適切な酵素共役型の検出二次抗体を添加して、結合を発生させるためプレートを1時間インキュベートします。一般的にはIgGの選択が目的であり、この場合、マウス血清サンプルに適切な二次抗体は抗マウスIgGでしょう。
  5. 最後に、プレートを洗浄して、適切な基質の添加により、HRP結合二次抗体のTMBなどの活性共役酵素を検出します。

抗原(ハプテン)が小ペプチドである場合、受動吸着の標準的コーティング条件を適用しても、抗原がマイクロプレートウェルへ効果的に結合しないことがあります。免疫化のためにキャリアタンパク質へ結合させたペプチド抗原は、通常マイクロプレートに結合します。しかし、免疫動物由来の抗血清には、ハプテンおよびキャリアの両物質に対抗する抗体が含まれています。そのため、ハプテン特異的抗体とキャリア特異的抗体を区別するには、免疫原接合体の調製時と同一の結合化学(例:マレイミド)を介して、無関係のキャリアタンパク質へハプテンを結合させます。例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)やオボアルブミン(OVA)は、一般的に免疫原としてmcKLHの使用時に抗ペプチド抗体力価の評価を行うために、無関係キャリアタンパク質として利用されています。また、アミノ基やスルフヒドリル基を介したペプチドの共有結合固定化には、活性マイクロプレートをご使用ください。

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抗体力価(および抗体定量)
濃度対力価

イムノアッセイにおいて、適正かつかつ再現性高く抗体標識や抗体を活用するには、精製抗体の濃度および機能力価を正確に測定することが研究者に求められます。「抗体濃度」と「抗体価」は、それぞれ異なる意味を持っています:

  • 濃度—機能性に関わらず、溶液中の抗体(タンパク質)総量
  • 力価—所定イムノアッセイにおける機能的濃度または抗体ストック溶液の希釈倍率

サンプルの精製方法に応じて、無傷、活性、抗原結合性の抗体を含有しているのは、測定された総タンパク質濃度または全抗体濃度のわずか数%のみです。抗体濃度は、標準タンパク質アッセイまたは免疫グロブリン特異的な手法のいずれかで推定することができます(以下の微小凝集アッセイをご参照ください)。

抗体価は、濃度に関連しますが、厳密には所定抗体サンプルの有効力価を指しています。一般的に、力価測定とは、ELISAなどの所定アッセイにおける所望検出範囲の達成に要する、抗体サンプルの機能的希釈度を測定することを指します。ELISAによりスクリーニング(上述)を実行すると、必ずいくつかの力価情報が得られます(特に、複数のサンプル希釈液をテストした場合)。しかし、スクリーニングアッセイの特定の構造と形式は、通常、最終的に抗体を作製する目的の用途には対応していません。

濃度および力価に関する知識は、後続アッセイの開発時や新たな産生抗体の使用時に重宝します。

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純粋抗体の濃度

純粋抗体の濃度は、280nmで測定した吸光度から推定できます;生理食塩水またはPBS中の溶液1% (10mg/mL)の吸光度値は、13~14と仮定されます。

また、弊社製品のBCA Protein Assay KitまたはCoomassie Plus Protein Assay Kitなどの市販タンパク質アッセイを用いて、純粋抗体の濃度が推定できます。あらゆるタンパク質アッセイにおいて、通常のウシ血清アルブミン(BSA)に代わり、弊社製品Bovine Gamma Globulin Standard (BGG)などの免疫グロブリン標準サンプルを使用することが推奨されます。これは、BSAはタンパク質混合物に正確な「平均」基準を提供する一方、 全タンパク質アッセイ法において免疫グロブリンから様々な応答を示すことに起因します。

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不純抗体の濃度

通常、抗体は半精製状態で産出、取得、または意図的に保存されます。一般的に抗体溶液は、タンパク質安定化添加剤(例:BSAまたはゼラチン)を含有している場合、あるいは共精製された血清タンパク質(例:トランスフェリン、アルブミン)および免疫グロブリンクラスなどを保持している場合があります。全タンパク質アッセイでは、目的抗体とこうした他のタンパク質の区別を行いません。

弊社のEasy-Titer IgG Assay Kitsは、シンプルな調合済み既製アッセイであり、無傷抗体の特定の種およびクラスの濃度を正確に測定できます。本キットは、特異的な抗IgGまたはIgMポリクローナル抗体でコーティング(感作)された微粒子凝集を用いて、特異的な標的抗体の検出と測定を行います。適切な水性バッファ(キット付属)中において、単分散型の抗体コーティング済み微粒子(直径1µm以上)は、微粒子直径の約半部に相当する波長(340 nm)を有した入射光に対して、最高値の吸光率(最大1リットル)を有しています。サンプル添加時に、複数の微粒子が、コーティングされた特異的ポリクローナル抗体を介して各抗体標的へ結合します。そしてこの凝集の結果、吸光率が比例的に減少(吸光度の低下)します。

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抗体価

上述のように、力価とは、所定アッセイ法において最低限レベルの特異的検出達成に必要となる、抗体サンプルの機能希釈(または作業濃度)として定義されます。正確な最小許容値は、研究者自身により設定されますが、通常は統計的に有意なシグナル対ノイズ比を基準にして定義されます。

抗体価とは、アッセイ固有の測定指標です。例えば、1:10000希釈の抗体価を産出可能な免疫プロトコルもあれば、わずか1:5000希釈の抗体価しか産出できないプロトコルもあります。また、同じアッセイでテストした2種類の抗血清の出血についても、一方の出血が他方より高力価を有していることがあります。希釈係数が高いほど、ポリクローナル免疫応答(抗体の量または特異性)が強力になります。

全ての所定抗体(クローン)において、力価は濃度と強く相関しています。つまり、所定モノクローナル抗体の2種類の産出バッチおよび精製バッチがお互い異なる力価を有することが判明した場合、一方のバッチが他方よりも濃縮度が高いことを意味しています。また、一方のバッチ中の抗体が、他方のバッチ中の抗体よりも不活性化(変性、劣化)が進行している可能性もあります。

力価の差異は、異種の抗体(別のクローン)に関して、濃度差にほとんど相関しないことがあります。ある抗体の有する特異性と抗原親和性は、他の抗体よりも高いことがあります。

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抗体のアイソタイピング
アイソタイプ決定の重要性

アイソタイピングでは、モノクローナル抗体のクラス(例:IgGまたはIgM)およびサブクラス(例:IgG2aまたはIgG1)の決定を行います。それぞれの抗体に適した精製法と修飾法を選定する必要があるため、アイソタイピングは抗体産生において重要なステップとなります。市販の既製抗体アイソタイピングキットを利用すれば、極めて簡単にアイソタイピングを達成できます。標準的アイソタイピングキットには、所定種(例:マウス)の抗体について以下のクラスとサブクラスが用意されています:IgG、IgG2a、IgG2bまたはIgG3、IgA、あるいはIgM。また、カッパ軽鎖またはラムダ軽鎖を有したクラスとサブクラス。

イムノアッセイにおいて抗体の精製法と使用法を決めるには、抗体のクラスとサブクラスの同一性を測定することが非常に重要です。例えば、抗体がIgMと測定された場合、プロテインAまたはGでは有効な精製ができず、おそらく免疫組織化学的手順で使用するためには抗体を断片化させる必要があるでしょう。モノクローナル抗体がカッパ軽鎖(VLカッパ)から成るIgG1と測定された場合、 血清サプリメント由来のウシ免疫グロブリンからのコンタミネーションを受けずに、固定化プロテインLを用いて培養上清から抗体を精製できる可能性が高くなります。

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抗体アイソタイピング用キット

アイソタイピングで使用する特異的抗免疫グロブリン抗体は、抗体産生で遭遇するモノクローナル抗体の種々のクラスおよびサブクラスを検出できる抗体でなくてはなりません。このため、アイソタイピングの実行には市販キットを利用するのが最も手軽です;大スケールで抗体産生を実施するケースを除いて、必要な複数抗体を別箇に取得する方法は全く実用的ではありません。

標準的アイソタイピングキットには、所定種(例:マウス)の抗体について以下のクラスとサブクラスが用意されています:

  • IgG、IgG2a、IgG2bまたはIgG3、IgAあるいはIgM
  • VLκ軽鎖またはVLλ軽鎖のいずれか

アイソタイピング用キットには、次の2種類の基本フォーマットがあります:ELISAキット、またはメンブレンキット(ストリップ方式またはカセット方式)。通常これらのキットは、 テストサンプルからの抗体を直接捕捉し反応する性能を備えた、コーティング済みのプレートまたはメンブレンが付属します。ELISAキットは、対応したコーティング済みのアイソタイプ特異的抗体を含む、特定マイクロプレートウェルへ試験抗体を捕捉します;一般的な抗免疫グロブリン抗体によって、試験抗体が捕捉されたウェルの最終検出が可能になります。カセット方式キットは、斑点状のアイソタイプ特異的な抗体が試験抗体と反応するメンブレン上に、有色性のバンドを生成します。カセット方式キットは、一回のテストで1個のサンプルを検査する場合に迅速な処理が可能です;ELISAキットは、ハイスループットにより複数サンプルの同時テストを行います。

アイソタイピングキットの中でも、本質的な純粋モノクローナル抗体を用いる抗原独立性アッセイは、最も便利かつ迅速な処理が行えます。抗体の複数のクラスまたはサブクラスが測定可能レベルでサンプル中に存在する場合、抗原特異性に関わらず、このアッセイキットによりほぼ均等にこれらの抗体が検出されます。

研究者自身が所要のアイソタイプ特異的抗体を保有している場合、ELISA形式で抗原依存性アイソタイピングを実行できます(ただし、この種のアイソタイピングが必要となるケースは稀です)。まず、抗原をマイクロプレートにコーティングします。そして、抗体試験サンプルを全ウェルへ添加して、抗原特異性結合を発生させます。次に、洗浄を行い、抗原特異性成分以外の全サンプル成分を除去します。最後に、アイソタイプ特異性の検出抗体は、別のウェルへ添加された後、適切な二次抗体により検出されます。この際、使用するアイソタイプ特異性抗体には、試験サンプルとは異なる宿主種に由来した抗体を選ぶことが重要です。

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For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.