抗体は、タンパク質類と同様に、特定アッセイの目的に合わせて様々な方法で共有結合修飾を施すことができます。標識抗体は、様々な免疫学的手法で利用されており、種々の抗体標識化用試薬が作製されてきました。酵素、ビオチン、フルオロフォア、放射性などの各アイソタイプは、シグナル検出を得るために生物学的アッセイで標準的に使用されています。

抗体構造および修飾部位

最良の修飾法を選ぶには、標識化、架橋または共有結合固定化など目的タイプを問わず、抗体に有効な官能基を把握することが大切です。一般的な抗体標識戦略で用いる標的は、以下3種類のいずれかです:

  • 第一級アミン(–NH2):リジン残基上や各ポリペプチド鎖のN末端上で発生します。多量の第一級アミンが、抗体全体に分布しています。
  • スルフヒドリル基(–SH):システイン残基上で発生し、全分子構造を安定化させるジスルフィド結合として存在します。ヒンジ領域のジスルフィドを選択的に還元することによって、標的標識化に遊離スルフヒドリルを使用できるようになります。
  • 炭水化物(糖質):グリコシル化は、主に抗体(IgG)のFc領域で発生します。シス-ジオール含有のこうした多糖類部分中の糖質成分を酸化させることにより、結合のための活性アルデヒド(–CHO)を作製できます。
IgG-Labeling-Sites抗体構造および標識化部位

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抗体標識化部位としての第一級アミン

抗体の標識化や結合を行う主要標的は、リジン残基上に見られる第一級アミンです。第一級アミンは、その反応性や抗体表面上における位置の観点から、存在量が豊富で、広範に分布し、また簡単に修飾を施すことができます。

第一級アミンは、様々なタイプの結合化学を用いて標的にできます。N-ヒドロキシエステル(NHSエステル)反応性基を活用した試薬は、特異性と効率性が最も高くなります。多様なビオチン化製品や蛍光標識化製品が、NHSエステル基による活性化済み形態として、販売されています。

西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリホスファターゼ(AP)といった酵素へ抗体を結合させるには、一般に別のアミン標的戦略(グルタルアルデヒド法、還元的アミノ化架橋法など)が取られます。Thermo Scientific AminoLink Plus Coupling Resinは、第一級アミンを介して共有結合固定化された抗体に対して、還元的アミノ化を応用します。

特定の抗体クローン中において、リジン(第一級アミン)が抗原結合部位内で発生する可能性があります。つまり、この標識化戦略は、抗体の抗原結合活性が大幅に低減し得るという欠点をひとつ抱えています。モノクローナル抗体を扱う場合や、抗体分子当たり高密度に標識を付加した場合は特に、活性の低減が顕著となるでしょう。

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抗体標識部位としてのスルフヒドリル

抗体の共有結合標識用として、上記の第一級アミンに次いで有用な標的は、スルフヒドリルです。スルフヒドリル基は、還元条件下でネイティブタンパク質(抗体を含む)中に存在しますが、一般的にはジスルフィド結合(システイン)として酸化型で天然タンパク質中に見られるケースが多くなります。ジスルフィド結合は、各サブユニットの三次構造に関与し、重鎖および軽鎖へ共有結合し、さらにヒンジ領域で2つの半抗体を結合させる点から、抗体機能において重要な役割を果たします。

硫黄原子における結合には、チオールが遊離スルフヒドリル基として存在することが求められます。そのため、抗体の標識には、少なくとも天然ジスルフィド結合の一部を還元剤で切断する必要があります。ヒンジ領域のジスルフィドは還元に対して最も敏感であるため、これらジスルフィドのみを選択的に切断し、その結果、残存した構造と抗原結合部位を損傷させずに抗体を一価の半分へ分割することができます。

分割が達成できたら、ヒンジ領域のスルフヒドリルで抗体を標識化すると、一貫性の高い標識化が適正に行えます。アミンを標的とした標識法と対照的に、この標識法では、より確実に、抗原結合部位の活性化が維持され、またサンプル中の抗体分子集団に対して一律の密度で標識が施されます。

マレイミド基またはヨードアセチル基で活性化された試薬は、スルフヒドリルへの結合用途に非常に効果的です。ビオチン、蛍光、酵素標識化などの様々な試薬が、マレイミド基による活性化済み形態として取り揃えられています。Thermo Scientific SulfoLink Coupling Resinは、ヨードアセチル化学を応用して、スルフヒドリル基を介して抗体を固定化させます。

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抗体標識化部位としての炭水化物

抗体標識用として、上記の第一級アミンやスルフヒドリルに次ぐ有用な標的は、炭水化物部分です。抗体中のグリコシル化部位は、主に抗体のFc部分に見られるため、通常は抗原結合能力へ大きな影響を与えずに修飾を施すことができます。

反応性アルデヒドを作製するために最初に炭水化物を酸化させる必要があるため、炭水化物の標識化は、アミン標識化よりも工程数が多くなります;ただし、この戦略では、一般に高活性の抗体複合体が得られます。

アルデヒド活性化(酸化)糖類は、(上記の)還元的アミノ化を介して、第一級アミンやヒドラジド基で活性化された試薬へ直接反応させることができます。弊社は、数タイプのヒドラジド活性化ビオチン化試薬を取り揃えています。GlycoLink Coupling Resinは、還元的アミノ化を応用することにより、酸化炭水化物基を介して抗体を固定化させます。この抗体固定化法は、免疫沈降法にも適用できます。

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For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.