膜へ転写またはドットされたタンパク質を検出するのに抗体を使用する際、抗体の非特異結合を防ぐために未結合表面を事前にブロッキングしておく必要があります。このブロッキングをしないと、抗体または検出試薬類が、最初に目的タンパク質固定化を果たした未結合部位へ結合してしまいます。原理上、アッセイの標的またはプローブ成分に対して結合親和性のないタンパク質であれば、全てブロッキングに利用できます。しかし実際タンパク質は、膜や固定化表面へ堅実に結合しやすいことから、もしくは他システム成分を何らかの手段で安定化させることから、タンパク質タイプに応じてパフォーマンスが異なります。つまり、全てのウェスタンブロット実験で最適に機能する、万能型のタンパク質やタンパク質混合物というものは存在しません。そのため、特異的抗体、膜型、基質システムなどの所定組み合わせから最良結果を得るには、実験的テストが求められます。

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ウェスタンブロットメンブレンのブロッキングを動画でご紹介

ブロッキング工程の目的と機能

ウェスタンブロッティング用のメンブレン支持体は、タンパク質に対して高親和性を有しています。したがって、ゲルからタンパク質を転写した後、後続工程で検出抗体が非特異的結合するのを防ぐため、メンブレンの未結合表面をブロッキングすることが重要です。膜上の遊離部位をブロッキングするには、ミルクや正常血清から高精製タンパク質まで、多種多様なブロッキングバッファーが使用されてきました。ブロッキングバッファーには、バックグラウンド干渉を低減させてシグナル対ノイズ比を改善することで、アッセイ感度を向上させる効用があります。ブロッキングバッファーは、非特異的相互作用の全潜在部位へ結合し、抗体結合エピトープを変更または不明瞭化することなくバックグラウンドを完全に排除するタイプが理想的と言えます。

所定ブロット用ブロッカーには、抗原自体や使用する検出標識タイプに応じて適切なものを選択します。例えば、アルカリホスファターゼ複合体が用いられるアプリケーションでは、PBSはアルカリホスファターゼへ干渉するため、TBSブロッキングバッファーを選択することが推奨されます。特定イムノアッセイ用のブロッキング工程を適正に最適化するには、必ず実験的テストを行います。非特異的結合には、所定イムノアッセイ試薬類に特有なタンパク質間相互作用などの様々な要因が影響し得ます。ブロッカーを選択する際には、シグナル対ノイズ比を最も重点的に考慮すべきです。シグナル対ノイズ比は、標的分析物の非含有性サンプルから得るシグナルに対して、標的分析物の含有性サンプルから得るシグナルとして測定されます。ブロッカー使用量が不十分であると、バックグラウンド染色が過剰となり、シグナル対ノイズ比を低減させる要因となります。過剰濃度のブロッカーを使用すると、抗体-抗原相互作用がマスクされたり、マーカー酵素が阻害されることから、こちらもシグナル対ノイズ比を低減させる要因となります。新たなイムノアッセイを開発する際、アッセイで生成されるシグナル対ノイズ比を最大限高めるには、必ず数種類のブロッカーをテストします。抗体-抗原の各ペアはそれぞれ固有の特性を有しているため、いかなる条件にも万能型のブロッキング剤というものは存在しません。

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ブロッキングバッファーの最適化

下図では、ウェスタンブロッティング最適化実験の一環として、各種ブロッキングバッファーのテスト数値を示しています。この実験例(バッファー条件以外は全て共通条件を適用)では、各種ブロッキングバッファーによって、各タンパク質に対するウェスタンブロッティングの感度と特異性がクエンチまたは強化されました。これ以外の場合、ブロッキングバッファーのタイプによっては、斑点や高バックグラウンドが発生する可能性があります。

ブロッキングバッファー最適化の重要性ブロッキングバッファー最適化の重要性3種類のタンパク質に関する化学発光ウェスタンブロッティングの結果(ブロッキング工程以外は、全て同一条件で処理)。各ブロットには、同系列の5倍希釈(1:50、1:10、1:2)に相当する3レーンのタンパク質が含まれています。Fos実験において、2つのフィルムに曝露が見られます。Blocker Caseinは、サイクリンB1タンパク質に対して最も高感度な結果が得られた一方、SuperBlock Blocking Bufferは、p53およびfosにおいて最も高感度な結果が得られました。ニトロセルロースメンブレンを用いてこれらのテストを行うと、4つのブロッカー全てから低バックグラウンドが発生しました。

Western Blotting Handbook and Troubleshooting Guide

The "Thermo Scientific Pierce Western Blotting Handbook and Troubleshooting Guide" (2014) details each step of the Western blotting process with technical information and products for transfer, blocking, washing, antibodies, substrates, film and stripping buffer, including Pierce Fast Western products. You will want to keep this booklet close at hand because it also includes protocols, references and a troubleshooting guide.

WBHndbk1107

対象製品

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販売中ブロッキングバッファー製品の一覧リスト

標準的な固定剤(各バッファーの保存法と使用法をご参照ください)
名称説明†
StartingBlock Blocking Buffers単一精製タンパク質;高速ブロッキング;幅広い用途に対応;ウェスタンブロッティングのストリッピングおよびリプローブが非常に優れています;(T20の有無に関わらず)PBSやTBSで利用可能
SuperBlock Blocking Buffers単一精製糖タンパク質;高速ブロッキング;幅広い用途に対応;乾燥防止のためプレートコーティングされた抗体を安定化;(T20の有無に関わらず)PBSやTBSで利用可能
Blocker BSA Blocking BuffersPBSまたはTBSの精製ウシ血清アルブミン
Blocker Casein Blocking BuffersPBSまたはTBSの精製したカゼイン
Blocker BLOTTO Blocking BufferTBSの脱脂粉乳タンパク質
Pierce Clear Milk Blocking Buffer弊社製溶液に入れられた、清澄化・安定化されたミルクタンパク質
Pierce Fast Blocking Buffer弊社製タンパク質TBS製剤;高速処理に特化したデザイン;高速ウェスタンブロッティングシステムの一環としてウェスタンブロットを5分間ブロッキング
SEA BLOCK Blocking Bufferスチールヘッドサーモン血清
Protein-Free Blocking Buffers弊社製の非タンパク質ブロッキング化合物;(T20の有無に関わらず)PBSやTBSで利用可能
†PBS=リン酸緩衝生理食塩水; TBS=トリス緩衝生理食塩水; T20=Tween* 20 Detergent

For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.