細胞下分画法とタンパク質濃縮法は、飛躍的な発展を遂げているプロテオミクスの分野において、重要なメソッドとして位置づけられます。細胞下分画の単離や低存在量タンパク質の濃縮により、目的タンパク質の識別や研究がより効果的に行えます。例として、内在性膜タンパク質や核タンパク質の単離が挙げられます。

膜タンパク質の抽出

全体の約30%が真核生物プロテオームから構成される膜タンパク質は、創薬研究において重要な標的となります。しかし膜タンパク質は、疎水性で大型である点、またその特有の基本性質が原因で単離が困難です。

特定の界面活性剤を用いて、サイトゾル(親水性)タンパク質から膜(疎水性)タンパク質を選択的に抽出・単離することができます。例えばTriton* X-114溶液は、0℃下で均質状態(透明のミセル溶液を形成)ですが、20°C(曇点)を超えると、ミセル凝集体が形成され溶液が濁るにつれて、水相と界面活性剤相へ分離します。温度が上昇すると、相分離が進行して、2つの清澄相が形成されます。タンパク質は、それぞれの親水性や疎水性の特性に応じて分割されます。膜タンパク質は、疎水性画分に濃縮されます。

Mem-PER Plus Membrane Protein Extraction Kitは、中性界面活性剤ベースのプロトコルで選択的に可溶化することによって、培養哺乳動物の細胞や組織から内在性膜タンパク質と膜結合性タンパク質を濃縮します。選択的な界面活性剤抽出法を活用すれば、疎水性に基づく相分離の手間が省けるため、優れた再現性とハイスループットが実現します。最初に細胞を中性界面活性剤で透過処理すると、可溶性細胞質ゾルタンパク質が放出されます。その後、第二の界面活性剤を用いて膜タンパク質を可溶化します。

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核タンパク質の抽出

様々な遺伝子調節研究を達成する秘訣は、良質な核タンパク質抽出物を調製することです。いくつか理由から、全細胞溶解物でなく核抽出物を使用します。まず、遺伝子調節分野における実験の多くは、全細胞溶解物中に存在する細胞成分から悪影響を受けます。次に、全細胞抽出物中に存在する膨大な細胞質タンパク質が原因で、目的の核タンパク質の濃度が希釈されます。最後に、全細胞溶解物は、ゲノムDNAとゲノムmRNAが存在するため複雑化です。核の分離や核タンパク質抽出物の調製する手法は多岐にわたります。しかしこうした手法の大半は、機械的均質化、凍結解凍サイクル、大規模な遠心分離または透析工程などを要する長いプロセスであり、多数の脆弱性核タンパク質の完全性が損なわれる可能性があります。

NE-PER Nuclear and Cytoplasmic Extraction Reagent Kitを用いれば、細胞を段階的に溶解させることによって、機能的細胞質および核タンパク質画分を共に2時間以内に生成できます。最初に外側細胞膜を破壊して、培養哺乳動物の細胞または組織を処理することによって、細胞質内容物を得た後に核からタンパク質を抽出します。二つの画分間のクロスコンタミネーションが最小限(<10%)に抑えられます。この段階的な分画手順により、濃縮した核抽出物が得られます。また、全細胞溶解物を分析する際によく見られるように、遺伝子調節実験が損なわれることはありません。調製された抽出物は、以下をはじめとした様々な下流アプリケーションに適合します:核抽出物の電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)、サイトゾル抽出物のレポーターアッセイ、ウェスタンブロッティング、酵素アッセイおよびPierce BCA Protein Assay。

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細胞内タンパク質分画

Thermo Scientific Subcellular Protein Fractionation Kitは、哺乳動物の培養細胞や組織から、細胞質、膜、水溶性核、クロマチン結合、細胞骨格タンパク質などを段階的に分離・抽出できます。Subcellular Protein Fractionation Kitを用いて得られる抽出物は、以下をはじめとした様々な下流アプリケーションに適合します:ウェスタンブロッティング、タンパク質アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、レポーター遺伝子および酵素活性アッセイ。

細胞内タンパク質を分画することにより、タンパク質局在性に関する評価や、特異的細胞区画からのタンパク質の濃縮が可能になります。Thermo Scientific Subcellular Protein Fractionation Kitは、機能性細胞質、膜、水溶性核、クロマチン結合、細胞骨格タンパク質画分などへ、3時間以内で段階的に細胞溶解させる試薬配合です。各細胞内区画からの抽出物は、一般に画分間に15%未満の汚染物質を有しています。この純度は、タンパク質の局在化や再分布に関するあらゆる研究実験に適合します。

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核および細胞小器官の濃縮

細胞下分画により複雑なタンパク質混合物が簡素化され、プロテオーム解析が容易になります。無傷の細胞小器官を単離することにより、細胞小器官全体レベルまたはタンパク質分画レベルいずれにおいても解析が可能になります。細胞小器官の単離を達成するには、細胞膜の溶解や密度勾配遠心分離を行い、汚染細胞構造から細胞小器官を分離させます。無傷の核および細胞小器官は、哺乳動物細胞において特有のサイズを有しているため、この手法による分離が可能になります。

弊社開発の3タイプの細胞小器官(リソソーム、ペルオキシソームおよび核)濃縮用キットは、細胞や組織から無傷の細胞小器官を濃縮できます。単離された細胞小器官は、以下をはじめとした様々な下流アプリケーションに使用できます: 2D / MS、電子顕微鏡法、疾患プロファイリング、遺伝子発現、シグナル伝達、相互作用や局在性に関する研究。

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ミトコンドリアの単離とミトコンドリアタンパク質の単離

無傷ミトコンドリアの単離は、ダウンス均質化による単一サンプル処理が必要となり、一般に手間のかかるプロセスとなります。また、密度勾配遠心分離法も効果的ではありますが、通例は大規模用途に実用的です。小規模なミトコンドリア濃縮やミトコンドリアタンパク質抽出を行う目的ならば、試薬ベースの微量遠心機を用いた手法が推奨されます。

Mitochondria Isolation Kitは、非機械的な試薬ベースの手法を用いて、複数(6個)のサンプルを同時に処理できます。弊社独自の製剤を用いて、培養した哺乳動物細胞ペレットを穏やかに溶解します。この製剤では、完全性の損傷が最小限に抑えられ、最大収量のミトコンドリアが得られます。純度や収量要因を最適化させるためのガイドラインが付属します。また付属説明書では、ミトコンドリア回収率が試薬ベース法の2倍に達するダウンス均質化手順を紹介しています。両手法では、卓上微量遠心機を用いた分画遠心法により、ミトコンドリアや細胞質ゾル画分の分離を行い、約40分で処理を完了します(細胞回収後)。単離されたミトコンドリアは、以下のような下流アプリケーションで使用できます:アポトーシスやシグナル伝達や代謝に関する研究、ならびにミトコンドリアのプロテオミクス研究の円滑化を図る目的。

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For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.