Search Thermo Fisher Scientific
Search Thermo Fisher Scientific
脱塩およびバッファー交換において、サンプル中の高分子成分は、サンプルが処理されるゲル濾過マトリックスの再平衡化に用いるバッファー中に回収されます。サンプルから緩衝塩を除去して水(ゲル濾過樹脂の再平衡化に用いる水)と交換することが目的である場合、一般に本手法は脱塩と呼ばれます。バッファー交換という用語は、サンプル中の緩衝塩類を別の緩衝塩類へ交換する処理を指しています。
脱塩のアプリケーション:
タンパク質溶液を最適なバッファーに置換するため、以下の後続アプリケーションへ進む前にバッファー交換が行われます:
ゲル濾過クロマトグラフィーと透析は、互いに類似した分子量カットオフ(MWCO)制限範囲(サイズに応じて分子を排除)に基づいているため、ゲル濾過クロマトグラフィーは透析と同じ様々な用途に活用できます。ゲル濾過は透析よりも短時間で実行できます(透析では数時間かかる処理が、ゲル濾過では数分で完了できる)。こうしたゲル濾過の迅速な処理能力は、特定の実験状況において不可欠な要素です。例えば、ジスルフィドへの再酸化が起きる前に還元剤を除去して後続のスルヒドリル反応を開始するために、還元処理されたペプチド溶液を迅速に脱塩する必要があります。また、ゲル濾過は有機溶媒や、透析膜にダメージを与えるような溶媒に対して適合性があります。そして、ゲル濾過クロマトグラフィーは透析とは対照的に、混入物質が比較的小容量(またカラム上に残された状態)で分離されます。この特性は、毒性物質や放射性物質を扱うケースにおいて重要です。
Thermo Scientific Zeba Resin technology provides consistent performance and peace of mind. The unique, proprietary Zeba Resin enables better protein recovery, even for samples with low protein concentrations.
ゲル濾過では、クロマトグラフィー樹脂の適切な固定相に浸透する相対的能力に基づいて、サイズの異なる分子を分離させます。樹脂はサイズ排除特性を備え、通常は水溶液中の微細な非荷電多孔質粒子から構成されています。樹脂はカラムへ充填してから分離に使用します。樹脂粒子に備わる細孔のサイズに依存して、分離可能な分子サイズが決定づけられます。細孔の有効な平均サイズまたは最大サイズによって、いわゆる樹脂の分画範囲や排除限界などが定義されます。分画範囲より小さな分子は樹脂の細孔へ侵入できますが、分画範囲より大きな分子は細孔へ侵入できません。
ゲル濾過樹脂の充填されたカラムにサンプル溶液を浸透させると、サンプル(緩衝塩、小分子など)中の小分子は、遭遇した樹脂ビーズの細孔へ侵入し、迂回経路を取りながら最終的にビーズから排出されます。対照的に大きな分子は樹脂ビーズの周囲を流動し、カラム中においてやや直接的な経路を取ります。実際小分子は、大分子よりはるかに大容量のカラムを経ます。(樹脂ビーズは極めて多孔質であることに留意してください。樹脂ビーズの総容量は大部分が水分です)。したがって、カラムに充填された樹脂をサンプルが移動するにつれて、小分子と排除分子の流速の差異によって、高流速の高分子が低流速の小分子から分離されます。
適切なゲル濾過樹脂を用いれば、緩衝塩、非結合標識試薬、およびその他分子から様々な高分子を分離させることによって、下流アプリケーション前に迅速に精製を行えます。このために、十分な樹脂の高さと広さを備えたカラム中にサンプルを通過させます。その結果、小分子と高分子のカラム末端からの出現を完全に分離することができます。小分画を採取することによって、後続の分画で出現する小分子から高分子を容易に分離できます。
上記のように、脱塩を達成するには、最初に水でゲル濾過カラムを平衡化させます。しかしバッファー交換を達成するには、最初に標的バッファーでカラム樹脂を平衡化させます。ゲル濾過の脱塩およびバッファー交換の両方式において、使用するバッファーで、樹脂が元々飽和状態(予め平衡化)になっている溶液とを置換します。充填されたサンプルが樹脂に侵入すると、既にカラム中に存在する水またはバッファーがサンプルと同容量分だけ移動します。サンプルがカラムに添加される(通常はカラム頂部で追加バッファーを添加することによる)と、平衡化溶液がカラム末端に押し出されます。高分子は、添加されたバッファーより先にカラムから排出されるため、平衡溶液中のカラムから出現します。
脱塩するサンプル容量に適したカラムサイズを選択することが重要です。サイズの大きすぎるカラムを使用すると、タンパク質サンプルが希釈されます。カラムのサイズが小さすぎると、低分子量の混入物が目的高分子から分離されなくなります。サンプル容量に適したカラムサイズを選択すれば、希釈が最小限に抑えられ、完全かつ効果的な分離が行えます。一般にカラムは、サンプル容量の4~20倍のカラム量を有したものが適切です。標準的な排除容量(大分子の有効カラム容量)は、樹脂容量の約35%に相当します。一方、小分子の有効総容量は、樹脂容量の容量にほぼ相当します。
またゲル濾過樹脂容量のサイズ排除限界も重要な要素です。標準的な脱塩やバッファー交換のアプリケーションでは(他種のサイズ排除クロマトグラフィーとは対照的に)、サイズ排除限界 (MWCO) を2000~7000以内に設定することが一般に推奨されます。実際、小分子はMWCOより数倍小さくない限り除去ができません; MWCOサイズ未満の高分子(例:タンパク質)は分離できません。また、フルサイズタンパク質からペプチドを分離する用途では、比較的大きな排除限界 (例:40K)を有した樹脂が必要になるでしょう。小分子はマトリックスの細孔中をほぼ邪魔されずに(迂回経路を取らず)流動するため、大きな排除限界を有する樹脂はバッファー交換や脱塩に適さない場合もありますのでご注意ください。
一般に市販のゲル濾過樹脂は、耐久性が高く化学耐性かつ不活性の性質を備えており、最小限の非特異的結合特性を有しています。したがってあらゆるバッファー系が、脱塩やバッファー交換で有効に使用できます。水で平衡化されたカラムを用いてタンパク質を脱塩すると、ピークが広がるため、バッファー溶液を用いた場合よりサンプル希釈が増し、分離効率が低下する可能性があります。一般に、何らかのイオンを有したバッファー溶液を使用すれば、得られる結果が向上します。また、高精度な分離が不可欠である場合には、別の方法を取ることができます:揮発性電解質(例:ピリジニウム酢酸塩、重炭酸アンモニウムおよびエチレンジアミンアセテート)を脱塩緩衝液へ添加することによって、イオン強度を高めてテーリング効果を低減させることが可能です。これらの添加剤は凍結乾燥で容易に除去できます。
ゲル濾過は、重力流カラム、遠心分離カラム、クロマトグラフィーカートリッジの3種類の標準形式で実行できます。重力流カラムおよびクロマトグラフィーカートリッジは、追跡バッファーからのヘッド圧を利用して、ゲル濾過マトリックス中でサンプルを加圧します。遠心分離カラムは、遠心力を利用して、マトリックス中でサンプルを移動させます。
重力流カラムにおいては、サンプルを直立カラムの上部に充填すると、サンプルが樹脂内に沈み込みます。次いで追加のバッファーまたは水をカラム上部に添加することによって、カラム中でサンプルを移動させます。このプロセス中に小分画が採取され、タンパク質または目的高分子が含まれるかを各分画についてテストします。場合によっては、複数分画にタンパク質が含有されていることがあります。この場合、収量を向上させるために分画を貯蔵する必要があるでしょう。
クロマトグラフィーカートリッジは重力流カラムとほぼ同様に作用しますが、以下の点が異なります:シリンジプランジャー、ポンプまたはその他機器から発する流体圧力を受けて、閉鎖システムで液体が機器に流し出されます。
遠心分離カラムやスピンカラムは、遠心分離により発生する力が強いため、追加バッファーを一切用いずともサンプルを押し出して樹脂層を通過させる能力がある点において独特なカラムと言えます。遠心力によってゲルマトリックスがある程度崩壊するため、サンプルが圧迫されカラム底部から押し出され、樹脂ビーズの細孔へ侵入する小分子を捕捉することができます。スピン脱塩は、重力流やカートリッジの方式より迅速に処理できるだけでなく、サンプル希釈量も低減されます。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.