蛍光分子は、生物学的研究における様々なアプリケーションに使用されています。さらに蛍光分子は、汎用性が高く、高感度で、定量性に優れていることから、需要が高まり続けています。蛍光プローブは、多くの用途の中でも、特にタンパク質の局在性や活性化の検出、タンパク質複合体の形成および立体構造変化の同定、さらにin vivoにおける生物学的プロセスのモニターといった用途によく使用されています。

000037-IHC-MAP2-DyLight-488-synaptophysin-649-465px蛍光標識抗体を用いた標的タンパク質の検出。マウス皮質ニューロン中のシナプトフィジン(赤)と微小管結合タンパク質2(MAP2;緑)を蛍光標識しました: 標識は、各タンパク質に対して特異的な一次抗体と蛍光標識二次抗体を組み合わせて検出しました。二次抗体には、Thermo Scientific DyLight 650-Conjugated Goat Anti-Rabbit(シナプトフィジン)およびDyLight 488-Conjugated Goat Anti-Mouse Secondary Antibodies(MAP2)をそれぞれ使用しました。両パネルとも核はHoechst色素で標識しました。

蛍光の概要

蛍光のメカニズム

蛍光分子(別称:フルオロフォア、あるいは単に「蛍光」)は、光に対して特徴的な反応を示します。下図のように、励起光の光子が蛍光粒子の電子に吸収されることによって、励起状態まで電子のエネルギーレベルが上昇します。このわずかな励起期間中に、エネルギーの一部は分子衝突により消費されたり、近傍の分子へと移動されます。さらに、電子が基底状態に戻るために、蛍光(光子)として残りのエネルギーを放出します。放出される蛍光のエネルギーレベルは、励起状態より低くなっているため、蛍光波長は励起波長より長波長側にシフトします。この波長の違いにより励起光と蛍光を区別することができます。蛍光分子からの励起および蛍光放出は繰り返しされ、蛍光分子が不可逆的にダメージを受けるまで(下項の「蛍光退色:photobleaching」を参照)、何度も励起させることが可能です。蛍光分子は、この励起と発光のサイクルを通じて多数の蛍光を放出する能力があるため、蛍光分子は幅広い研究用途に利用されています。

Fluorescence-diagram-400px蛍光のヤブロンスキー図。

蛍光スペクトル

励起波長と発光波長の組み合わせは、蛍光色素によって異なります。単原子の蛍光色素の場合、励起と発光の波長は分離されますが、多原子の蛍光色素の場合は、励起および発光のスペクトル自体がブロード(横に広がった)な形状になってしまいます。蛍光分子のスペクトル(単原子と多原子)のXYプロットグラフは、各フルオロフォアに関する励起と発光の最大/最小シグナル強度に相当する波長を示しています(下左図)。次の点に留意してください:発光波長は、発光の直前にエネルギーの一部が放出されるため、励起波長と異なります(上図)。一方、発光強度は励起波長の振幅(amplitude)に比例します。以下右側のグラフに、励起エネルギー(Ex1とEx2)と、それに相当する発光強度(Ex1はEm1、Ex2は EM2にそれぞれ相当)を示しています(2)。


Fluorescence-spectra-group-675px蛍光分子の励起および発光スペクトル、励起振幅と発光強度の相関関係。蛍光分子の励起および発光スペクトルの概略図(左)。放出された光の強度(Em1とEM2)は、蛍光分子を励起させるのに必要なエネルギーに正比例します(右図のEx1とEx2)。

ストークスシフト

励起波長と蛍光波長の差はストークスシフト(Stokes Shift)と呼ばれ(下図)、生物学的なアプリケーションにおいて発光した蛍光を検出するために重要なポイントになります。また、ストークスシフトは、蛍光分子によって異なります。例えば、ストークスシフトが非常に小さい蛍光分子を使用した場合(左図)、励起光と放出された蛍光の検出を区別するのは困難です。これは、励起波長と発光波長は大幅にオーバーラップすることに起因します。逆に、ストークスシフトの大きな蛍光分子(右図)は、励起波長と発光波長間の距離が大きいため容易に区別が行えます。ストークシフトは多重蛍光染色のアプリケーションでは非常に重要な要素となります。発光波長がオーバーラップする蛍光分子を用いた場合、蛍光を励起光の影響を受けずに観察するのは非常に困難です。

Stokes-shift-675pxフルオロフォアの励起および発光スペクトルのストークスシフト。ストークスシフトの大きなフルオロフォア(左図)は、サンプル中の励起と発光間に明確な差異を示します。一方、ストークスシフトの小さなフルオロフォア(右図)は、励起波長と発光波長間の差異が小さいため、バックグラウンドシグナルが高くなります。

発色領域

電磁スペクトルは電磁放射線の全波長に広範に及び、可視光スペクトルは、以下ような一部の波長領域を示します。初期の蛍光ベースの研究アプリケーションでは、可視スペクトル領域外の検出が困難であったため、電磁スペクトルの可視領域内(390~700 nm)で発光される蛍光分子のみが使用されていました。技術革新により、現在では、可視スペクトル領域の境界を越えて、紫外線(UV)や赤外線(IR)の電磁スペクトル領域まで蛍光分子の検出が可能になりました。最新の蛍光分子や検出機器は、卓越した可変性、汎用性、および多重化機能を備えており、新規や開発中のアプリケーションに対応します。

Spectrum-420pxおおよその波長範囲を示す可視光スペクトル。

Fluorophore brightness

蛍光分子の蛍光強度は、モル吸光係数および量子収量(どちらも各蛍光に対して特異的)によって決定づけられます。モル吸光係数(ε) は、蛍光物質に吸収される特定波長の光量と定義され、M-1 cm-1で測定されます。量子収率 (Φ)は、放出された光子数/吸収された光子数で算出します。この計算法によって、蛍光分子の効率性(最大値1)が算出されます。その後、εとΦの積によって蛍光強度(brightness)を算出します。

蛍光色素のタイプ

蛍光化学物質の開発や技術的発見に伴い、多種多様な蛍光分子の開発が盛んに行われてきましたが、蛍光は生物学的研究において過去100年間にわたり使用され続けてきました。現在、さまざまな蛍光分子が利用可能で、さまざまなアプリケーションに合わせて、優れたパフォーマンスの蛍光を選択することが可能です。一般に蛍光分子は以下3種類に分類できます:

  • 有機色素(Organic dyes)
  • 生物学的蛍光分子(Biological fluorophores)
  • 量子ドット(Quant dots)

各蛍光分子は固有の特性を有しているため、所定アプリケーションや実験系に使用する蛍光分子を決定する際には、各蛍光分子の特性を考慮する必要があります。

有機色素

フルオレセインなどの合成有機色素は、生物学的研究史上、最初に使用された蛍光化合物です。合成有機色素の光安定性や溶解性を向上させるために、さまざまなオリジナルのフルオセイン誘導体が開発されています。これらの色素は、生体共役反応(Bioconjugation)にも利用できるように誘導化されています。特にフルオレセインイソチオシアネート(FITC)や、ローダミン(テトラメチルローダミンイソチオシアネート、TRITC)、その他の市販色素で行われています。これらの蛍光色素はサイズが小さいため、生体共役反応の研究においては、生物学的蛍光分子(Biological fluorophores)より適しています。生体機能を阻害せず、抗体やビオチン、アビジンのような巨大分子に架橋することが可能です。市販されるさまざまな色素は、励起/発光スペクトル特性や、最適な量子収率および励起係数を備えており、あらゆる蛍光アプリケーションに利用できます。

生物学的蛍光分子(Biological fluorophores)

生物発光の存在は昔から知られてきましたが、研究用途において初めて生物学的蛍光分子が使用されたのは1990年代のことです。このときは、緑色蛍光タンパク質(GFP)がオワンクラゲからクローニングされて、遺伝子発現レポーターとして使用されました。それ以来、生物発現系用として、オリジナルのGFPに対して、フィコビリンタンパク質(アロフィコシアニン、フィコシアニン、フィコエリトリン、フィコシアニン)および様々なタンパク質から誘導体が設計されてきました。そして、これらは現在でも生物学的研究に使用されています。

上記タイプの蛍光分子の利点として、発現プラスミドを細菌、細胞、器官または生物個体へ導入することによって、研究対象の生物学的プロセスの環境においてフルオロフォア単独の発現、あるいは目的タンパク質に融合させたフルオロフォアの発現を駆動することができます。蛍光タンパク質を使用した場合、処理に時間がかかることがあります。また大量の光生成するタンパク質を発現させると、活性酸素種(reactive oxygen species)が発生し、人為的な応答や毒性が誘発される可能性があります。さらに、蛍光タンパク質のサイズによって、蛍光分子が融合した細胞タンパク質の正常な生物学的機能が変化する可能性があります。また一般に生物学的蛍光色素は、合成蛍光色素で得られるレベルの光安定性および感度が得られません。

量子ドット(Quant dots)

量子ドットは、ユニークな光学特性を持つ蛍光性のナノ結晶です。量子ドットは1980年代に開発が行われ、1990年代以降、生物学的研究の蛍光アプリケーションで使用されるようになってきました。量子ドットはナノスケールサイズ(2~50 nm)の半導体で、粒径に依存した特徴的な発光特性を持ちます。粒径が小さくほど,光吸収波長と蛍光発光波長は,より エネルギーの大きい短波長側にシフトします。つまりナノ結晶のサイズが大きくなるにつれて、発光が青色から赤色に変化します。また量子ドットの粒子サイズにより波長を正確にコントロールできるため、他の蛍光類よりもそれぞれの励起波長や発光波長に対する特異性が高くなります。

また量子ドットは、他の蛍光分子より光安定性が高いことが報告されています。あるレポートでは、in vivoイメージング研究において量子ドットが4ヶ月間蛍光を保持した事例を示しています(1)。さらに、量子ドットをコーティングすれば、タンパク質標識をはじめとした様々な生物学的アプリケーションに使用することができます。生物学的アプリケーションにおいて量子ドットの注目が高まる一方、粒子の破壊に応答した細胞毒性(4)に関する事例や、その使用コストの高さについても数件報告されています。


蛍光の検出および定量化

検出戦略

現在、さまざまな蛍光検出機器が開発されています。各機器はそれぞれ異なる実験法に特化していると同時に、全ての蛍光検出器には以下4つの基本的な特性を備えています:

  • レーザー、フォトダイオード、またはランプ(主にキセノンアークや水銀ランプ)などの励起光源
  • フルオロフォア
  • 、様々な波長の蛍光分子を励起させるためのフィルター
  • 蛍光を検出し、デジタルデータに変換・記録する検出器

標準的な蛍光検出機器には、以下のタイプがあります(ただし、常に新機器が開発されており、下記以外のタイプも存在します):

  • 蛍光顕微鏡 –サンプル中の局在型蛍光を2次元および3次元で検出します
  • マイクロアレイリーダーなどの蛍光スキャナー –サンプル中の局在型蛍光を2次元で検出します
  • 分光蛍光光度計およびマイクロプレートリーダー –サンプル中の平均的な蛍光を記録します
  • フローサイトメーター –サンプル集団内の個々の細胞の蛍光を解析します

定量化

デジタル蛍光顕微鏡の登場によって、蛍光シグナルの定量化は蛍光アプリケーションの標準的手法となりました。蛍光シグナルの定量化によって、以下をはじめとした様々なパラメータの測定が行えます:

  • 細胞の数
  • 細胞または個別の細胞区画にも局在する蛍光分子の量
  • 遺伝子発現およびタンパク質合成の速度
  • 細胞の運動速度または細胞内成分の移動速度
  • サンプル中のDNA、RNAまたはタンパク質の量
  • DNA、RNAまたはタンパク質の配列
  • 酵素活性
  • 生存率

蛍光定量化を実行するには特殊なソフトウェアが必要です。また実験方法に応じて、機器をキャリブレーションするために蛍光スタンダードが必要となる場合があります。

対象製品


蛍光標識

蛍光標識は、タンパク質や核酸などの分子へ蛍光分子を共有結合で標識するプロセスです。一般に蛍光標識を施すためには、標的分子中に存在する官能基に選択的に結合する蛍光分子の反応性誘導体を用います。主に標識対象とされる分子は抗体であり、 この標識された抗体は特異的プローブとして特定標的の検出に使用されます。蛍光標識は、多種多様な検出システムに適用され、高感度かつ定量的な測定が実現します。

蛍光分子コンジュゲーション(Fluorophore conjugation)

分子の標識には、蛍光分子の化学反応性誘導体が必要になります。一般的な反応基には、次のようなアミン反応性イソチオシアネート誘導体が含まれています:FITC;アミン反応性スクシンイミジルエステル(例:NHS-フルオレセインまたはNHS-ローダミン);スルフヒドリル反応性マレイミド活性化蛍光体(例:フルオレセイン-5-マレイミド)。上記いずれかの反応性色素を標的の分子と反応させると、蛍光分子と標識分子間に安定な共有結合が形成されます。リジン側鎖の第一級アミンを介して蛍光分子をタンパク質に標識させる用途において、反応性化学物質として主にイソチオシアネートが使用されてきました。NHSエステルケミストリーは、第一級アミンに対して高特異性を有し、安定性の高い結合を生成することから、現在NHSエステルケミストリーが最も推奨される標識法になっています。リジン残基を保存する必要がある場合、あるいはシステイン残基を特異的標識して標識タンパク質上の蛍光色素を局在化する場合、ごく稀にスルフヒドリル反応性化学物質を用いてタンパク標識が行われます。

蛍光シグナルを検出するために、標的分子は効率よく標識される必要があります。ただし一方で、標識によって、標的分子の生物学的特性(機能、溶解性、結合キャパシティ、活性など)が影響を受けないようにする必要もあります。したがって、蛍光標識の最適化を行う必要があります。

未反応の蛍光分子の除去

蛍光標識反応の後、未反応の蛍光分子を除去する必要があります。一般に蛍光分子、標識タンパク質、核酸等のサイズの違いを利用したサイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography) によって、未反応の蛍光分子の除去を行います。しかし、多くの蛍光分子が分離マトリックスと相互作用するため、回収と分離の効率が低下します。このため、蛍光色素の疎水性の性質を利用した特殊な色素除去カラムを使用することが推奨されます。


蛍光の発光と検出に影響し得る要因

クエンチング(消光:Quenching)

蛍光発光は他の蛍光または非蛍光分子との相互作用によって直接影響を受ける可能性があり、励起された蛍光色素から放出される蛍光が「クエンティング:消光」されることがあります。蛍光のクエンチングは、タンパク質の活性化状態の測定や遺伝子発現の検出などに利用されています(生物学事象に反応してクエンチャーを添加・除去するようにデザインすることがかのうです)。

クエンチングの程度は、クエンチャー分子の性質(フルオロフォアまたは非フルオロフォア)、相互作用の種類、および蛍光により放出されるエネルギーの波長に応じて異なります。蛍光クエンチングの手法として、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、衝突(collision)クエンチング、および接触(contact)クエンチングが挙げられます(下図参照)。

FRET (別称:フェルスター共鳴エネルギー移動)は、近接した2個の蛍光分子の間で励起エネルギーが、電磁波にならず電子の共鳴により直接移動する現象です。エネルギーを受け渡す方をドナー、受け取る方をアクセプターと呼びます。「アクセプター」分子(蛍光分子の場合と蛍光を持たない分子の場合があります)は、「ドナー」の蛍光分子が近接するように配置されています。アクセプターが蛍光を持たない分子の場合、ドナーから放出された蛍光を吸収することによってクエンチング(消光)を行います。また蛍光をクエンチャーとして使用した場合も、放出された蛍光がクエンチングされます。そして、吸収された蛍光がもう一つの蛍光の励起波長範囲内にある場合、アクセプター電子が励起状態となり、アクセプター蛍光の波長で蛍光が放出されます。ドナー蛍光が励起に応答して既知の波長で蛍光を検出するのと同様に、クエンチングされた蛍光はクエンチング蛍光の波長で発光します。そのためドナー蛍光のクエンチチング状態を検出するには、通例、別の蛍光をクエンチャーとして用います。

接触クエンチングは、蛍光分子が励起前にクエンチング分子と複合体を形成している場合に生じます。;蛍光が他の分子と直接接触するため、励起によるエネルギーが即座に接触分子へと移動します。その後、熱によってこのエネルギーは消失します。衝突クエンチング は、励起された蛍光分子が溶液中のクエンチャー分子と反応する場合に発生します。その結果、即座にエネルギーが接触分子へ移動し、励起蛍光が緩和されます。

Types-of-Quenching-400px蛍光クエンチングの各タイプを表した図。

バックグラウンド蛍光

バックグラウンド蛍光が高いと、実験における蛍光分子の検出結果が不明瞭となる場合があります。これは主に、非結合蛍光プローブの除去が不十分であることや、サンプルの自己蛍光が原因です。徹底的な洗浄や蛍光プローブ濃度を落とすことによって、バックグラウンド蛍光を低減させることができます。とはいえ、サンプル中の内因性蛍光である自己蛍光に対処するには、適切なプローブセットや機器を検討する必要があります。生物学的サンプル中における自己蛍光は、短波長の励起光(通常は<500 nm)を用いた場合に高頻度に発生します。したがって、自己蛍光による影響を回避するには、自己蛍光と同じスペクトルで励起しない蛍光を用いるか、あるいはターゲットの蛍光のみを励起されるために励起光の波長幅をしぼることができるフィルターセットを使用います。

低蛍光性

蛍光強度が弱いと、特にバックグラウンド蛍光が高い場合などに、標的蛍光分子の検出が制限されることがあります。蛍光強度を高めるには、標的部位における蛍光分子の数を増加させます。これを達成するためには、実験において高濃度プローブを使用するか、あるいは標的部位への蛍光分子の局在化を増大させる増幅法を取ります。しかし、上記の対処法によって、逆にシグナル検出が悪影響を受ける可能性があります。これは高濃度のプローブによって、プローブ分子が沈殿してしまうためで、細胞のゆがみ(特に細胞内プローブを用いた場合に生じます)や、自己クエンチング(高レベルの分子間相互作用が原因;上記のクエンチングをご参照ください)が生じてしまったり、または細胞死が誘導されます。

励起強度は励起エネルギーに正比例することから、励起光強度を上げることによって、蛍光プローブ濃度を増やすだけでなく、弱い蛍光強度を増強させることで対処することもできます。とはいえ、この手法を取る際にはフルオロフォアの光褪色を防ぐため、下記のような対応が必要です。

光退色(Photobleaching)

光退色は、励起源への長時間の曝露、あるいは高強度の励起光への曝露いずれかによって、蛍光体が不可逆的に破壊された場合に起こります。光退色を最小化または回避するには、わずかな時間内で、蛍光分子を極力低レベルの励起光強度へ励起します。そのためには、高感度CCDカメラ、高開口数の対物レンズ、大きなバンドパス吸収フィルターを用い、検出法を最適化する必要があります。別の手法として、従来の蛍光分子より光安定性の優れた蛍光分子、蛍光を光退色から保護する退色防止試薬を使用することも可能です。光退色を防止するための対処法は、全ての検出法に対応するわけではありません。アプリケーションごとに、最適化を行ってください。例えば退色防止試薬は、肝細胞に対して毒性であるため、固定細胞や固定組織にしか適用できません。また、フローサイトメトリーをはじめとする一部の検出法では、励起光を蛍光分子への照射する時間が非常に短いため、通常は光褪色を回避するための手順を取る必要はありません。


参考文献
  1. Ballou B. et al.(2004) Noninvasive imaging of quantum dots in mice.Bioconjug Chem.15, 79-86.
  2. Cazes J. (2001) Encyclopedia of chromatography.New York: Marcel Dekker. xxx, 927 p.
  3. Chalfie M. et al.(1994) Green fluorescent protein as a marker for gene expression.Science.263, 802-5.
  4. Mahendra S. et al.(2008) Quantum dot weathering results in microbial toxicity.Environ Sci Technol.42, 9424-30.

For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.