タンパク質のDNAとの相互作用は、静電相互作用(塩橋)、双極子相互作用(水素結合)、エントロピー効果(疎水性相互作用)、分散力(塩基スタッキング)などを介して行われます。これらの力は、配列特異的または非配列特異的なタンパク質結合に対して様々なレベルで貢献します。細胞プロセス調節におけるタンパク質-DNA複合体の役割を理解するには、タンパク質とDNAの相互作用プロセスの理解、タンパク質-DNA複合体中に存在するタンパク質の測定、複合体の組み立てに必要な核酸配列(および想定される構造)の同定などを行うことが不可欠です。DNAとタンパク質の複雑な相互作用を研究するために、数多くの実験法が開発されています。各実験法にはそれぞれの開発経緯や、長所および短所があります。

クロマチン免疫沈降(ChIP) アッセイ

ChIP法は、ヒストン修飾(エピジェネティクス)または転写因子-DNA結合相互作用を介した転写調節の監視が行えます。ChIPアッセイ法では、下流の精製や検出のために相互作用を安定化させる目的で、ホルムアルデヒドまたは架橋試薬類を用いた細胞処理によって生細胞中のDNAタンパク質相互作用の分析が行えます。ChIPアッセイの実行には、分析対象の標的タンパク質やDNA配列に関する知識が必要です。要望に応じて、目的タンパク質に対する抗体や、DNA配列のPCRプライマーを研究者自身により提供する必要があります。抗体を用いて、タンパク質-DNA複合体をゲノムDNA断片やタンパク質-DNA複合体から選択的に沈殿させることができます。PCRプライマーによって、標的DNA配列を特異的に増幅・検出できます。定量的PCR(定量PCR法)では、標的DNA配列量の定量化が行えます。ChIPアッセイは、アレイベースのフォーマット(ChIP on chip)または免疫沈降で捕捉されたDNAの直接シーケンシング(ChIP-seq)に適しています。

長所短所
  • 生細胞中で発生する特定のタンパク質-DNA
    相互作用のスナップショットを捕捉する
  • 定量PCR分析と組み合わせることにより定量的となる
  • 種々のタンパク質プロモーターをプロファイルできる
  • ChIPグレード抗体を研究者自身で調達しなければならない
  • 特異的プライマーを設計する必要がある
  • ハイスループットスクリーニングへの適合が困難

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Protein Interactions Technical Handbook

Our 72-page Protein Interactions Technical Handbook provides protocols and technical and product information to help maximize results for protein interaction studies. The handbook provides background, helpful hints and troubleshooting advice for immunoprecipitation and co-immunoprecipitation assays, pull-down assays, far-western blotting and crosslinking. The handbook also features an expanded section on methods to study protein–nucleic acid interactions, including ChIP, EMSA and RNA EMSA. The handbook is an essential resource for any laboratory studying protein interactions.

Contents include: Introduction to protein interactions, Co-immunoprecipitation assays, Pull-down assays, Far-western blotting, Protein interaction mapping, Yeast two-hybrid reporter assays, Electrophoretic mobility shift assays (EMSA), Chromatin immunoprecipitation assays (ChIP), Protein–nucleic acid conjugates, and more.

DNA電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)

EMSAによって、既知DNAオリゴヌクレオチドプローブへのタンパク質結合に関する研究や、相互作用の親和性や特異性レベルについての評価が行えます。このアッセイ法は、非変性ポリアクリルアミドまたはアガロースゲルの電気泳動時に、タンパク質-DNA複合体が遊離DNA分子よりもゆっくり移動することを観察することによって成り立っています。タンパク質結合時にDNAの移動速度がシフトまたは遅延されることから、本アッセイはゲルシフトアッセイまたはゲル遅延度アッセイとも呼ばれます。タンパク質特異的抗体を結合成分に添加すると、電気泳動中の移動速度がよりゆっくりな大型複合体(抗体-タンパク質-DNA)が形成されます。この複合体はスーパーシフトとして知られており、これを用いてタンパク質の同一性についての確認が行えます。EMSAが考案される以前は、放射性標識プローブを用いたニトロセルロースフィルター結合アッセイによって、タンパク質-DNA相互作用の研究が行われていました。

長所短所
  • 溶解物中の低存在量DNA結合タンパク質を検出できる
  • ひとつの溶解物に対して様々なプローブ設定を適用して、結合部位の変異について試験できる
  • DNAプローブの変異解析によって結合親和性を試験できる
  • ビオチン化/蛍光標識DNAプローブを用いて、非放射性EMSAを実行できる
  • In vitroタンパク質-DNA相互作用の分析を行う
  • 定量化が困難
  • スーパーシフトアッセイの実行時には、複合体のタンパク質同一性が明らかな抗体を使用する必要がある

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DNAプルダウンアッセイ

プルダウンアッセイでは、タンパク質-DNA複合体をサンプルから選択的に抽出することができます。通例プルダウンアッセイでは、ビオチンなどの高親和性タグで標識されたDNAプローブを使用します。こうした高親和性タグにより、プローブの回収や固定化が可能になります。ビオチン化DNAプローブは、反応(EMSAで用いる反応に類似)における細胞溶解物中のタンパク質と共に複合体を形成することができます。その後アガロースビーズや磁気ビーズを用いた複合体の精製に、このプローブを使用できます。その後タンパク質をDNAから溶出させて、ウェスタンブロット検出や、質量分析による同定を行います。またタンパク質を親和性タグで標識する手法や、目的タンパク質に対する抗体を用いてDNA-タンパク質複合体を単離させる手法(スーパーシフトアッセイに類似)を取ることも可能です。この場合、サザンブロッティングまたはPCR分析によって、タンパク質の結合した未知DNA配列を検出します。

長所短所
  • 低存在量の標的を濃縮できる
  • 様々な手法で末端標識DNAを生成できる
  • インタクトな複合体の単離が可能
  • 免疫ブロット法および質量分析に適合する
  • DNAプローブが長いため、著しい非特異的結合が示される可能性がある
  • ネイティブタンパク質高特異性の抗体を必要とする
  • ヌクレアーゼ 非含有条件下で実行する必要がある
  • In vitroでアッセイを実行する必要がある

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マイクロプレートによるキャプチャーと検出のアッセイ

マイクロプレート・キャプチャーアッセイ(DNAプルダウンアッセイとELISAの複合型)は、固相化DNAプローブを使用して、特定のタンパク質-DNA相互作用を捕捉してタンパク質同一性や標的特異的抗体の相対量に関する確認を行います。通常ビオチン化DNAプローブは、ストレプトアビジンでコーティングされた96ウェルまたは384ウェルのマイクロプレート表面上に固相化されます。細胞抽出物を結合バッファー中で調製し、十分な時間をかけて添加します。これによって、推定結合タンパク質がオリゴヌクレオチドに結合します。その後抽出物を除去し、各ウェルを数回洗浄して非特異的に結合したタンパク質を除去します。最後に、検出用の標識特異的抗体を用いてタンパク質を検出します。このアッセイ法で酵素標識抗体や化学発光基質を用いれば、感度が非常に高くなり、ウェル当たり0.2 pg未満の標的タンパク質の検出が行えます。マイクロプレートフォーマットは高効率でハイスループットに適合性があるため、統計的な変異アッセイや活性化アッセイを実行できます。またこの手法は、第一級アミン(アミン反応性表面化学でコーティングされたマイクロプレート上に固定可能)などのタグで標識されたオリゴヌクレオチドにも適用できます。

長所短所
  • ELISAベースの技法を利用することにより、処理速度とスループットが向上する
  • 薬剤スクリーニングに対応
  • 高感度な非放射性アッセイに最適化できる
  • DNA結合ネイティブタンパク質に親和性のある抗体(スーパーシフト抗体)を必要とする
  • 転写因子-DNAの親和性や存在量の相対的変化に関するデータしか得られない
  • アッセイキットに対応する標的タイプが限られている

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レポーターアッセイ

レポーターアッセイでは、目的プロモーターのin vivo翻訳活性について、リアルタイムに読み出しが行えます。レポーター遺伝子は、標的プロモーターのDNA配列とレポーター遺伝子のDNA配列の融合物です。プロモーターのDNA配列は、実験者自身によりカスタマイズ可能です。またレポーター遺伝子のDNA配列は、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼまたはアルカリホスファターゼといった、検出可能な特性を有するタンパク質をコードしています。目的プロモーターの活性時のみ、レポーター遺伝子によって酵素が産生されます。次に基質が酵素に触媒されることにより、発光、色変化、あるいは分光計測で検出可能な反応が起こります。同一プロモーターから駆動された内因性タンパク質を翻訳する際、レポーター遺伝子由来のシグナルは間接的な決定因子として利用できます。

長所短所
  • In vivoモニタリング
  • データをリアルタイムに取得できる
  • プロモーターの変異解析用の強力ツール
  • ハイスループットスクリーニングに対応
  • 外因性DNAを使用する
  • 目的プロモーター付近のゲノム配列による
    変異に対応しない
  • 遺伝子量に起因したアーティファクトが発生する可能性がある

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参考文献

Selected References for Studying Protein-DNA Interactions:

  1. Evertts A.G., et al.(2010).Modern approaches for investigating epigenetic signaling pathways.J Appl Physiol. Jan 28. [Epub ahead of print]
  2. Georges, A.B., et al.(2010).Generic binding sites, deneric DNA-binding domains: Where does specific promoter recognition come from?FASEB Journal,24: 346-356.
  3. Griffiths, Anthony J. F., et al., eds (2000)."Genetics and the Organism: Introduction".An Introduction to Genetic Analysis (7th ed.).New York: W. H. Freeman.
  4. Halford, S.E. and Marko, J. (2004).How do site specific DNA-binding proteins find their target?Nuc. Acid Research.32(10): 3040-3052.
  5. Hartl, Daniel L., et al.(1988).Basic Genetics, Boston: Jones and Bartlett Publishers, Inc.
  6. Kress, C., et al.(2010).Epigenetic modifications in 3D: Nuclear organization of the differentiating mammary epithelial cell.J Mammary Gland Biol Neoplasia. Feb 10. [Epub ahead of print]
  7. Lunde, B.M.et al.(2007).RNA-binding proteins: modular design for efficient function.Nat. Rev. Mol. Cell. Biol.8: 479-490.

For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.