タンパク質のRNAとの相互作用はタンパク質-DNA相互作用と同様に、静電相互作用、水素結合、疎水性相互作用、塩基スタッキングなどを介して行われます。またタンパク質-RNA相互作用は、RNA分子の三次構造からの影響を大きく受けます。したがってタンパク質-RNA相互作用を同定するアッセイでは、適正な結合を促進するためRNAおよびタンパク質の折り畳みを正確に行う必要があります。RNAは分解による影響を受けやすい為に、リボヌクレアーゼを反応させないように特に留意が必要です。タンパク質-RNA相互作用は、メッセンジャーRNA分子を真核細胞の細胞質へ輸送し、かつ翻訳機構を形成させることが求められます。タンパク質-RNA相互作用(RNA間相互作用に加えて)によって、RNAの翻訳効率や安定性レベルが左右されます。タンパク質-RNA相互作用の主な研究方法について、以下で解説いたします。

RNA電気泳動移動度シフトアッセイ

In vitroでの研究方法の一つであるRNA-EMSAでは、ゲル電気泳動中の移動速度の変化によってタンパク質-RNA相互作用の検出を行います。最初に標識RNAプローブをタンパク質サンプル(通例は細胞溶解物由来のサンプル)と共にインキュベートして、相互作用複合体の結合と形成を開始させます。その後非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、結合反応を分離させます。タンパク質-RNA複合体は、タンパク質-DNA複合体と同様に、遊離RNAプローブよりもゆっくりとゲルマトリックス中を移動します。このため非結合RNAプローブと移動シフトが起こります。特異性は、標識および非標識の両RNA配列がひとつのタンパク質への結合について競合する場合に、過剰の非標識RNAが結合反応中でインキュベートされる結果シフトしたシグナルが低下する状況下で決定付けられます。また、タンパク質-RNA複合体を架橋させて、反応を変性ゲルで実行させることも可能です。単一のシフトしたバンドを可視化することで、特異性に関する決定づけを行います。従来法ではRNAプローブを放射性標識して検出を行いますが、蛍光標識や化学発光標識を用いた検出法も可能です。非放射性RNAの末端標識法には短所も伴いますが、現在では汎用性の高いビオチンや蛍光による標識法が利用できます。

長所短所
  • 非放射性検出が実行できる
  • RNA変異体を簡単にスクリーニングでき、結合効率を上げられる
  • 実行を経て標識されたRNAに対応可
  • オフ転写反応でありながら、末端標識RNAプローブから卓越した結果が得られる
  • オリジナルの実験を達成するためには、試薬の大幅な最適化が必要
  • native electrophoresis工程が含まれるため、プロトコル手順に手間がかかる
  • RNA結合タンパク質の同一性を特定するための抗体が必要
  • 標識RNAプローブの設計と合成が求められる

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Protein Interactions Technical Handbook

Our 72-page Protein Interactions Technical Handbook provides protocols and technical and product information to help maximize results for protein interaction studies. The handbook provides background, helpful hints and troubleshooting advice for immunoprecipitation and co-immunoprecipitation assays, pull-down assays, far-western blotting and crosslinking. The handbook also features an expanded section on methods to study protein–nucleic acid interactions, including ChIP, EMSA and RNA EMSA. The handbook is an essential resource for any laboratory studying protein interactions.

Contents include: Introduction to protein interactions, Co-immunoprecipitation assays, Pull-down assays, Far-western blotting, Protein interaction mapping, Yeast two-hybrid reporter assays, Electrophoretic mobility shift assays (EMSA), Chromatin immunoprecipitation assays (ChIP), Protein–nucleic acid conjugates, and more.

RNAプルダウンアッセイ

RNAプルダウンアッセイでは、タンパク質-RNA複合体をサンプルから選択的に抽出します。一般にRNAプルダウンアッセイは、ビオチンまたはアジドホスフィン化学などの高親和性タグを利用します。RNAプローブはビオチン化させて、細胞溶解物からのタンパク質と共に複合体化させることができます。その後、アガロースビーズや磁気ビーズを用いて精製できます。また目的タンパク質に対する抗体を使用すれば、タンパク質の標識やRNA-タンパク質複合体の単離を行うことも可能です。その後ノーザンブロットまたはRT-PCR解析によるRNA検出や、ウェスタンブロットまたは質量分析によるタンパク質検出を行います。

長所短所
  • 低存在量の標的を濃縮できる
  • インタクトな複合体の単離が可能
  • 免疫ブロット法および
    質量分析に適合する
  • RNA二次構造は機能的重要性が高いため、
    末端標識が推奨される
  • レジンからの溶出が非効率的
  • ビーズ/樹脂を含むヌクレアーゼフリーのコンディション

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Oligonucleotide-Targeted RNase Hのプロテクションアッセイ

RNase protection assays (RPA)は、細胞抽出物中のRNAやRNA断片の強力な検出法です。ノーザンブロットやRT-PCR解析とは異なり、RPAアッセイはRNA整合性の柔軟性が高く、極めて短いセグメントを用いてもハイブリダイゼーションや検出が可能です。またRPAアッセイによって、タンパク質-RNA相互作用のマッピングも実行できます。RPAを適合させる際、RNase Hを用いて、DNAプローブとハイブリダイズさせた特定部位を切断させます。タンパク質がRNAの標的配列に結合している場合、プローブハイブリダイゼーションがブロックされ、RNase Hによる切断が抑止されることでタンパク質とRNA間の相互作用部位が提示されます。RNase Hは、DNAプローブとのハイブリッド塩基対わずか4塩基を用いて目的のRNA分子を切断することができます。小さなプローブを多数使用すると、RNAの全配列が相互作用部位にマッピングされます。

長所短所
  • In vitroアッセイや細胞粗抽出液に使用できる
  • タンパク質-RNA相互作用の詳細なマッピングが可能
  • 機能性や突然変異の研究に活用できる
  • 詳細マッピングには多数のプローブが必要
  • 希少RNA分子の最適化が困難
  • ハイスループットに対応しない

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蛍光 in situ ハイブリダイゼーション共局在化

蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH/ISH)共局在法は、RNAプローブや抗体を用いてRNA転写物や目的タンパク質の検出を行います。FISH/ISHは、細胞または組織サンプル中のRNAとタンパク質の位置や存在量を検出します。そのデータは可視化させることができ(通常は顕微鏡により画像化)、目的のRNAやタンパク質の共局在シグナルによって、想定される複合体形成が検出されます。RNAの特定配列を検出するためには、標識RNAプローブの生成が必要です。また抗体染色法や蛍光タンパク質構築物を使用してタンパク質を検出することもできます。

長所短所
  • In vivoで発生するRNA-タンパク質相互作用のスナップショットが得られる
  • 様々な基質を多重使用できる
  • 論文発表にそのまま使える高品質画像が得られる
  • 変性・ハイブリダイゼーション・検出などを要するため、手順の実行に手間がかかる
  • 通常、検出時にシグナル増幅を行う必要がある
  • 細胞/組織の保存が求められる
  • 共局在を特定するには、定量的ソフトウェアが必要

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参考文献

Selected References for Studying Protein-RNA Interactions:

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  12. Klausner, R.D., et al.(1993).Regulating the fate of mRNA: the control of cellular iron metabolism.Cell 72: 19-28.
  13. Ying, B., Fourmy, D., and Yoshizawa, S. (2007).Substitution of the use of radioactivity by fluorescence for biochemical studies of RNA.RNA 13: 2042-2050.
  14. Gunzl, Arthur and Bindereif A (1999).Oligonucleotide-targeted RNase H protection analysis of RNA-protein complexes.Methods Mol Biol.118:93-103.

For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.