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タンパク質のDNAやRNAとの相互作用は、静電相互作用(塩橋)、双極子相互作用(水素結合、H結合)、エントロピー効果(疎水性相互作用)と分散力(塩基スタッキング)など同様の物理的力を介して行われます。こうした物理的力の効果により、タンパク質は、配列特異的(タイト)または非配列特異的(ルーズ)に、多様な方法で結合します。例えば、特異的なタンパク質-DNA相互作用は、通常DNA主溝中に入り込むタンパク質中のモチーフαヘリックスにより媒介されます。その結果、H結合と塩橋を介して、特定塩基配列を認識し、その配列と相互作用します。また、タンパク質のオリゴマー化あるいは多タンパク質複合体の形成(例:GCN4、グルココルチコイド受容体、転写開始複合体、mRNAスプライシング複合体、RISCなど)を介して、特異的なタンパク質-核酸相互作用の親和性と特異性を強化できます。核酸配列(特にRNA)に形成される二次構造と三次構造は、タンパク質が特定核酸配列を認識し結合する重要な付加的メカニズムをもたらします。
タンパク質のRNA結合やDNA結合の機能は、三次構造中の各保護ドメインに局在しています。各タンパク質は、共通の核酸結合ドメインの反復を数多く有することがあります。もしくは、タンパク質自身の構造内に数種のドメインを有することがあります。各ドメインの独自性および相対的配置は、タンパク質中における機能的重要性が高くなります。代表的なDNA結合ドメインには、ジンクフィンガー、ヘリックスターンヘリックス、ヘリックスループヘリックス、ウイングヘリックスとロイシンジッパーがあります。RNA結合の特異性と機能は、ジンクフィンガー、KH、S1、PAZ、PUF、PIWIおよびRRM(RNA認識モチーフ)ドメインにより構成されます。単一タンパク質の多数の核酸結合ドメインにより、以下が可能です:特定の標的核酸配列に対するタンパク質の特異性と親和性を向上させる;標的核酸のトポロジー中の変化を媒介する;核酸配列を適切に配置する;結合タンパク質内の酵素ドメインの活性を認識し調節する。
タンパク質は、核酸へ直接的に結合、または他の結合タンパク質を介して間接的に結合することができ、効果的に相互作用の階層を生成します。こうした相互作用の強度に応じて、複雑な会合の研究に最適なアッセイと手法を選択します。これらの相互作用は一過性のケースもあるため、複合体の単離前に化学的架橋で安定化させる必要があります。細胞プロプロセス調節におけるこれらの複合体の役割を理解するには、核酸とタンパク質の相互作用の仕方を理解すること、タンパク質-核酸複合体に存在するタンパク質を測定すること、これらの複合体構築に要する核酸の配列と構造を同定することが不可欠です。
標準的なDNA結合ドメイン、ヘリックスターンヘリックスとジンクフィンガードメインは、細胞内で発現される多数のDNA結合タンパク質中に組み込まれています。核タンパク質複合体に関与する高次相互作用によって、特異性が得られます。これらのDNA結合タンパク質複合体は、特異的DNAドッキング部位が発見されるまでゲノムDNAに沿った「スライド」を行い、標的を獲得します。DNAへのタンパク質結合により、ゲノムDNA(クロマチン)、RNAおよびDNA修復機構の転写構造が制御されます。
タンパク質-DNA相互作用の主要機能によって、各細胞に含まれる長大な遺伝物質を管理します。染色体は、細胞全体へDNAをパッケージ化、保存、および移動させる能力が向上しましたが、転写調節でも重要な役割を果たします。染色体の再構築により、染色体が部位選択的に解明できるため、遺伝子転写にDNAを利用できます。また、堅固にパッケージ化された状態のため、コードされた遺伝子の転写を完全に抑えることができます。
解明が済めばゲノムDNAを転写できますが、タンパク質のDNA配列コードを全て転写できるわけではありません。遺伝子のみが転写され、RNAを産出します。そして、遺伝子間(および遺伝子中)の配列は、結合タンパク質を介して転写調節の働きをします。これらの配列は、転写制御に重要な要素であり、プロモーター、エンハンサー、絶縁体およびスペーサを含んでいます。遺伝子開始部位から多キロベース離れ得る、エンハンサー配列は、タンパク質へ結合して、転写機構を誘引するビーコンとして機能します。遺伝子転写開始部位の間近に位置する特異的DNAプロモーター配列へ、転写因子タンパク質が結合すると、遺伝子転写が開始されます。転写因子のDNA結合ドメインを介して、こうした相互作用が促進されます。タンパク質相互作用を介して、転写因子のトランス活性化ドメインは、メッセンジャーRNA(mRNA)の生産を開始するため、遺伝子プロモーターへのRNAポリメラーゼIIホロ酵素の結合と局在化を促進させます。
スプライシング、保護、翻訳またはメッセージ分解を行うため、タンパク質はRNAと相互作用します。プロモーター配列の補体がmRNAから切断され、キャッピング機構がmRNA 5'末端の「GpppN」キャップを組み込んだ時点で、転写開始後初めて相互作用が起きます。この結果、mRNA転写のリセットを調節する伸長因子がリクルートされます。伸長後の3 '末端の処理とスプライシングの結果、翻訳において細胞質へ輸送される成熟したRNA転写物が生成されます。これら全プロセスは、重要なタンパク質-RNA相互作用が伴い、高度に調節され複雑性が高くなります。このプロセスの調節要素の多くは、3 '末端非コード領域およびmRNAの5'末端非翻訳領域(UTR)に存在しています。しかし、調節性マイクロRNA(miRNAs)は、イントロンだけでなくエクソン、非コード遺伝子および反復要素のコード領域でも発生します。近年、これらの非コードRNA配列は、細胞調節や疾患状態で果たされる役割と共に、その重要性が注目を集めています。しかし、決定的なタンパク質-RNA相互作用の研究用ツールは限られています。
mRNAのUTR領域は、転写後調節およびタンパク質翻訳でRNA結合タンパク質をリクルートする配列要素を含んでいます。また、これらの要素は、転写物の安定化や分解を促進し、RNAの細胞内局在を指令することができます。これらのRNA調節要素は、それぞれ長さが異なりますが、タンパク質結合の一次構造および二次構造に依存しています。例えば、細胞内の鉄分調節は、タンパク質-RNA相互作用が鉄の恒常性維持にとって要となる、堅固な調節プロセスです。鉄貯蔵タンパク質フェリチンまたはトランスフェリン受容体などの標的遺伝子は、それぞれ5' UTR中または3' UTR中に、小さな(〜28ヌクレオチド)共通の鉄応答性エレメント(IRE)を含有しています。鉄応答タンパク質(IRP)は、IRE要素の結合により、細胞の鉄状態へ反応します。鉄欠乏条件下では、IRPはIRE要素への結合状態を維持し、鉄貯蔵タンパク質の翻訳を抑制します。鉄がリッチな条件下では、IRPのIRE結合活性が失われ、 鉄貯蔵タンパク質が翻訳されます。これらのRNA共通要素の多くが、配列と機能に基づいて各ファミリーへ同定および分類されました。また、3 'UTRにはmiRNAの認識要素が含まれており、mRNAコーディングタンパク質の翻訳が抑制される原因となります。
マイクロRNA(miRNA)は、大型のユビキタスクラスの非コードRNAであり、標的mRNAの転写後サイレンシングを調節します。700以上のmiRNAが、ヒトゲノム中に同定されました。マイクロRNAは、ヒトmRNAの57.8%に結合認識部位を有しています。そして、これらのmRNAを含む72%は、多数のmiRNA認識部位を有しています。miRNAは、mRNA結合において5'末端に6~8ヌクレオチドのシード領域を含むRNA(pre-miRNA)の転写された、70〜100ヌクレオチドとして開始します。そしてmiRNAは、核エンドリボヌクレアーゼIIIのDROSHAにより切断されます。その結果pre-miRNAは、二本鎖RNA結合タンパク質と関与し、XPO5およびRan GTPaseに応じて活発に細胞質へ輸送されます。その後pre-miRNAは、アルゴノートタンパク質およびダイサー(エンドリボヌクレアーゼIII)から構成される、miRNAリボ核タンパク質複合体内で処理が進められ、pre-miRNAは成熟した19~22塩基へ切断されます。そして、miRNA-アルゴノート複合体は標的遺伝子へ結合し、標的遺伝子の調節のため、未同定タンパク質をさらにリクルートします。
一般的にmRNA調節は、細胞質mRNA処理体(P-体)におけるmRNA分解、脱アデニル化または貯蔵を介して、翻訳が抑制されますが、mRNA翻訳が上方調節されることもあります。mRNAの抑制および分解には、いくつかの推奨モデルがありますが、一般に認められた最適モデルはまだ存在しません。マイクロRNA研究の急速な発展とともに、細胞の増殖や分化および発癌におけるmiRNAの役割の理解を深めるため、重要なタンパク質-RNA相互作用の研究が進められています。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.