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ウェスタンブロッティング手順の最初の工程では、ゲル電気泳動により巨大分子を分離します。電気泳動後、通常ニトロセルロースまたはポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜の第二マトリックス上へ、分離された分子を転写またはブロッティングします。次に、膜表面への抗体による非特異的結合を防ぐため、膜をブロックします。主に転写されたタンパク質は、プローブとして酵素標識抗体と複合体を形成します。そして、適正な基質を酵素へ添加すると、基質と酵素は非色検出における膜上の発色性沈殿物など、検出可能な生成物を産出します。検出における感度を最も高くするには、酵素と組み合わせると副次的に発色する化学発光基質を用います。化学発光検出仕様のフィルム、CCDカメラ、ホスフォイメージャーなどを用いて、光出力を捕捉できます。もしくは、蛍光標識抗体を利用することも可能です。蛍光イメージングシステムの機能を活用すれば、これらを直接検出することもできます。お使いのシステムのタイプに関わらず、必ずシグナル強度が膜上の抗原存在量に相関していなければなりません。
ウェスタンブロッティング検出の各手順詳細は、非常に多彩です。主要なオプション方法として、直接検出法と間接検出法があります。 直接検出法では、ブロット上の抗原検出用の一次抗体は、酵素または蛍光色素で標識されています。様々な理由から、間接検出法が多くの研究者に好まれており、直接検出法は広く普及していません。 間接検出法では、抗原へ結合させる目的で、最初に一次抗体を添加します。そして、一次抗体に対して標識二次抗体を添加します。標識には、フルオレセインやローダミンなどのビオチンや蛍光プローブ、さらに西洋ワサビペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼなどの酵素複合体があります。間接法には、直接法より多くの利点があります。
The "Thermo Scientific Pierce Western Blotting Handbook and Troubleshooting Guide" (2014) details each step of the Western blotting process with technical information and products for transfer, blocking, washing, antibodies, substrates, film and stripping buffer, including Pierce Fast Western products. You will want to keep this booklet close at hand because it also includes protocols, references and a troubleshooting guide.
利点:
短所:
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ウェスタンブロッティングの直接検出法と間接検出法の比較
ゲル電気泳動法では、タンパク質やDNAなどの荷電分子が、物理的特性に応じて電流によりゲル中へ流入させられながら分離します。通常ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によりタンパク質を分離して、複合サンプル中の各タンパク質の特徴付けや単一サンプル中の複数タンパク質の調査を行います。ウェスタンブロッティングと併用することにより強力な解析ツールとなるPAGEは、タンパク質の質量、荷電、純度または存在量に関する情報を得ることができます。PAGEには数種類の方式があり、それぞれから得られるタンパク質情報が異なります。
電気泳動の後に、タンパク質を電気泳動ゲルから膜へ転写する必要があります。タンパク質転写の処理は、拡散転写、キャピラリートランスファー、熱加速性対流転写、真空ブロッティング転写、電気溶出など様々な手法で行うことができます。電気溶出法や電気泳動転写法は、処理が速く転写効率に優れていることから、主要なタンパク質転写法となっています。この手法では、タンパク質の電気泳動移動性を利用して、タンパク質をゲルから膜へ転写します。タンパク質の電気泳動転写では、 ニトロセルロース片または適切なタンパク質結合支持体に直に接触する形で、タンパク質含有ポリアクリルアミドゲルを配置させ、導電性溶液中に浸された二つの電極間に「サンドイッチ(挟み込み)」させます。電場が印加されると、タンパク質はポリアクリルアミドゲルから膜表面へ移動し、タンパク質は膜表面へ密着します。その結果、もともとポリアクリルアミドゲル中に存在したタンパク質パターンのコピーを有する膜が出来上がります。
タンパク質によるゲル外への移動能力や、特定諸条件下での膜への結合傾向に応じて、転写効率はタンパク質ごとに大きく異なります。転写効率は、次の要因により左右されます:ゲル組成、膜へ完全に接触したゲル、電極位置、転写時間、サイズとタンパク質組成、電場強度、バッファー中の界面活性剤とアルコールの存在。
転写後やウェスタンブロッティング処理前には、膜上の総タンパク質は、一般的にポンソーSまたはアミドブラック10Bなどの色素で染色されており、転写効率の確認が可能です;タンパク質のゲル外移動を確認するには、ゲル染色を行うことがありますが、これにより膜へのタンパク質の結合効率が高められるわけではありません。色素が抗体の結合と検出に干渉する可能性があるため、除去のしやすいタンパク質色素が理想的です。ポンソーSは、膜上タンパク質の可逆的な染色用として広く普及した試薬です。しかし、感度が優れず、撮影しづらいうえに褪色しやすいため、文書化が困難になります。ニトロセルロース膜やPVDF膜上のタンパク質を染色するには、優れた別の方法があります。タンパク質を低ナノグラムレベルで検出可能なうえ、スムーズに撮影することができ、また除去するまで褪色を起こしません。
ウェスタンブロッティング用の膜支持体は、タンパク質に対する親和性が高いです。そのため、ゲルからのタンパク質転写後には、必ず膜の残留表面をブロックして、後続工程での検出抗体による非特異的結合を防ぎます。膜上の遊離部位をブロックするには、ミルクや正常血清から高精製タンパク質まで、様々なブロッキングバッファーバッファーが使用されてきました。ブロッキングバッファーにより、バックグラウンド干渉が低減されるためアッセイ感度が向上し、シグナル対ノイズ比が改善されます。抗体-抗原の各ペアはそれぞれ独自の特性を有しているため、万能型ブロッキング剤というものは存在しません。適性に最適化させるには、必ずブロッキングバッファーをテストします。
イムノアッセイ手順と同様に、ウェスタンブロッティングでは、洗浄工程で分離された各種免疫化学試薬で一連のインキュベーションを実行する必要があります。未結合の試薬を除去してバックグラウンドを低減させるには、必ず洗浄処理を行います。洗浄により、シグナル対ノイズ比が向上します。洗浄が不十分だとバックグラウンドが高くなりますが、逆に洗浄しすぎてもブロットから抗体や抗原が溶出して、感度の低下につながります。ウェスタンブロッティングの他工程と同様に、様々なバッファーが利用可能です。
洗浄バッファー組成は、添加剤を一切含有しないトリス生理食塩水(TBS)またはリン酸バッファー生理食塩水(PBS)などの生理学的バッファーで構成されることがあります。しかし大概は、Tween20(0.05%)*などの界面活性剤をバッファーへ添加して、非特異的に結合した物質を除去させます。アッセイ特異性に応じて、洗浄バッファー中の界面活性剤量は異なります。ただし、Tween20などの界面活性剤の場合、通常濃度は0.05~0.5%です。また、1:10希釈のブロッキング溶液を洗浄バッファーへ添加する手法も一般的です。界面活性剤へブロッキング剤を添加すると、膜からの遮断タンパク質溶出を防ぐことによりアッセイのバックグラウンドが抑制されたり、膜上の固定化タンパク質よりもむしろ溶液中タンパク質に対して非特異的な相互作用が発生します。
タンパク質溶液などの界面活性剤をご使用すると、微生物が増殖する可能性がありますので、ご注意ください。NP-40、CHAPS、Tween20などの界面活性剤の希釈ストックを作成しておくと便利ですが、溶液中での菌の増殖によりバックグラウンドノイズが高くなることがあります。界面活性剤には、過酸化物が多量に含有されることがあるため、西洋ワサビペルオキシダーゼ基質を用いるケースでは、バックグラウンドシグナル発生の原因となります。こうした事態を避けるためにも、高純度の界面活性剤を使用することが不可欠です。
ウェスタンブロッティングは、様々な手法で実行されますが、通常は特定タンパク質やタンパク質基上のエピトープ(例:SH2ドメインまたはリン酸化チロシン)を認識する一時抗体でブロックされた膜のプローブすることによって実行されます。検出される抗原とその抗原に利用可能な抗体の種類に応じて、ウェスタンブロッティング用の一次抗体を選びます。また、ウェスタンブロッティングには適さない一次抗体もありますので、新たな一次抗体の購入前には、なるべく各機能をご確認ください。
通常ウェスタンブロッティングでは、標的タンパク質認識性の一次抗体を直接検出することはできません。このため、標的抗原を検出するには、タグ付けされた二次抗体や検出試薬を用います(間接検出法)。ウェスタンブロッティング検出用の標識二次抗体試薬には、様々な種類があります。 一次抗体の得られた動物種(宿主種)、もしくは抗体上のタグ(ビオチンまたはDIG)に応じて、試薬を選択します。例えば、一次抗体が未修飾マウスモノクローナル抗体である場合、二次抗体はマウス以外の宿主から得られた抗マウスIgG二次抗体でなければなりません。
通常、ウェスタンブロッティング用抗体は、希釈溶液(1/100-1/500,000の希釈液から1 mg/mLのストック溶液まで)として使用されています。特定検出システムでの所定抗体の最適希釈度は、実験により測定しなければなりません。検出システムの感度が高いほど少量の抗体しか必要としないため、大幅に抗体コストを節約でき、限られた量の抗体を活かして、より多くの実験に拡張させることができます。また、抗体を少量にすると親和性の最も高い標的への特異性の向上が見られるため、抗体の使用量を減らすことにより、バックグラウンドが低減するという利点も加わります。
通常抗体希釈液は、洗浄バッファー中で作成されます。抗体希釈液中の界面活性剤の存在と少量のブロッキング剤の効果により、通例はバックグラウンドが最小限に抑えられ、シグナル対ノイズ比が向上します。逆に、抗体希釈液へブロッキング剤や界面活性剤を添加しすぎると、抗体による抗原への結合効率が抑えられるため、バックグラウンドおよびシグナルが低減します。
二次抗体や一次抗体へ結合可能なタグは多種類ありますが、ウェスタンブロッティングアッセイで利用できる検出法は限られています。従来一般的に利用されていた放射性同位元素は、高価で、貯蔵寿命が短く、シグナル対ノイズ比が改善されないうえに、特殊な方法で処理や廃棄を行う必要がありました。放射性同位元素の代わりに、酵素や蛍光体を使用できます。
ウェスタンブロッティングに最もよく利用される酵素標識は、所要工程数が増えるものの、適切な基質で最適化すれば非常に感度が高くなります。アルカリホスファターゼ(AP)および西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)は、タンパク質検出の標識用の二大酵素として最も普及しています。いずれの酵素にも対応した発色性、蛍光性、化学発光性の基質を数多く取り揃えております。アルカリホスファターゼは、反応速度が比例するため、より長時間反応を進行させるだけで感度が向上するという、他の酵素には無い利点があります。とはいえ、反応時間を長くすれば、バックグラウンドシグナルが高くなり、シグナル対ノイズ比が低減してしまいます。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート抗体は、HRP酵素のサイズが小さく結合反応の互換性があるため、酵素や抗体の各特異的活性の観点から、抗体-APコンジュゲートより優れているとみなされています。さらに、HRP酵素は活性率および安定性が高く、安価なうえ、基質の可用性が広いことから、あらゆる用途に最適です。
酵素結合抗体は、様々な基質が利用できるため、ウェスタンブロッティングにおいて柔軟性の非常に高い検出と文書化が行えます。極めてシンプルな検出/文書化システムでは、発色性基質の使用が推奨されます。発色基質は、他の基質より感度は落ちますが、ブロット開発において直接可視化ができます。とはいえ、発色性基質は、ブロットが乾燥するにつれて、あるいは保存時に、褪色する傾向があるため、ブロット自体が文書化手段としての信頼性を失ってしまいます。しかし、ブロットの写真複写や直接スキャンがごく簡単にできるため、発色性ウェスタンブロッティング結果の永久レプリカを作成できます。
化学発光性ブロッティング基質は、シグナルが酵素-基質反応による一過性生成物であり、反応発生時のみ持続するという点から、他の基質とは異なります。基質が使い切られた時点、あるいは酵素活性が失われた時点で、反応が消えてシグナルは消失します。しかし、適切な抗体希釈液と十分量の基質を用いて適正に最適化されたアッセイでは、反応由来の光出力が(基質に応じて1〜24時間)安定するため、一貫性の高い高感度検出が可能となり、X線フィルムやデジタルイメージング機器で文書化が行えます。X線フィルムを用いて半定量データを得られるものの、デジタルイメージングは検出ダイナミックレンジが広く感度がより優れているため、ウェスタンブロッティングから定量データを取得できます。
イムノアッセイでフルオロフォア標識抗体を用いると、アッセイに基質の開発工程がないため、工程数を減らせます。プロトコルが短縮される一方で、この方法では蛍光シグナルを必要とするため、突起抗原の検出と記録を行う特別装置が必要になります。近年のデジタルイメージング技術の進歩とともに、赤外線、近赤外線、量子ドットなどの新たな蛍光体の開発により、蛍光プローブの感度が向上しました。また、蛍光プローブはウェスタンブロッティングや免疫アッセイの用途で需要が高まっています。関連機器や蛍光抗体は非常に高価な場合がありますが、この手法には多重互換性(同一実験で複数の蛍光体を使用できる)という利点があります。また、化学廃棄物量が、他のブロッティング手順よりも大幅に軽減されます。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.