ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片を免疫組織化学(IHC)染色する場合は、パラフィン除去およびマスクされた抗原エピトープの露出を行う、必要があります。これらの工程を実行しないと、抗体が組織へ完全にアクセスできず、適正なエピトープに結合することができません。

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脱パラフィン(パラフィン除去)と再水和

組織サンプルからパラフィンを完全に除去するには、キシレンを使用します。これによって、抗体が組織へアクセス可能となります。パラフィンの除去前に、サンプルを55°Cで10分間加熱してパラフィンを溶融させます。その後サンプルをキシレンで複数回洗浄して、パラフィンを除去します。次にキシレンとエタノールで洗浄してキシレンを除去した後、希釈したエタノールで洗浄しサンプルを再水和します。最終的に純水ですすぎを行って完了です(以下グラフ参照)。抗原や組織の各サンプルごとに、洗浄回数と試薬濃度を最適化する必要があります。非特異的な抗体結合や高バックグラウンド染色を防ぐため、この時点から最終マウントまでスライドが乾燥しないように注意する必要があります。

キシレンは有害性のため、低毒性の代替製品が市販されています。サンプルからパラフィンを除去する代替製品の効果は、最適な標的抗原検出を行うために非常に重要な要素です。ただし、各代替製品の効果はそれぞれ異なる場合があります。

ABwashGraph-440pxパラフィン除去と再水和におけるIHCサンプル中の溶媒置換を表したグラフ。キシレンで洗浄することにより、パラフィンをIHCサンプルから除去します。その後キシレンからエタノールへ段階的に洗浄してキシレンを除去した後、エタノールから水へ段階的に洗浄しサンプルを水和させます。

抗原賦活化

ホルムアルデヒドはタンパク質間にメチレン架橋を形成するため、1次抗体のエピトープ認識が妨害される可能性があります。こうした架橋を除去するには、熱誘導エピトープ回復(HIER)またはタンパク質分解誘発性エピトープ回復(PIER)といった2種類の方法があります。

HIERは最も一般的な抗原賦活化法です。温度・pH・インキュベーション時間などの各因子が重要であり、形態学的損傷を起こさずに抗原を適切に露出させるためには、これらの因子の最適化が求められます。熱源(電子レンジ、圧力鍋または野菜蒸し器)を用いたHIER法では、一般的にクエン酸ナトリウム(pH 6) バッファーやトリス/ EDTA(pH 9)バッファーが使用されます。

PIER法ではプロナーゼ、ペプシン、フィシン、トリプシン、またはプロテイナーゼKなどの酵素を利用してタンパク質を部分的に消化させることによって、抗体エピトープを露出させます。この方法は酵素濃度やインキュベーション時間に応じて、有効性が左右されます。抗原賦活化は、HIER法/PIER法いずれかによって、あるいは両手法を併用して実行が可能です。

一般にホルムアルデヒドによる固定は、メチレン架橋が起こるため、エピトープを露出する上記手順が必要です。一方、アルコール固定切片でも抗原賦活化によって抗原性が向上する場合もあります。

For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.