Search Thermo Fisher Scientific
Search Thermo Fisher Scientific
一般的なタンパク質アッセイは、濃度既知のスタンダード曲線との比較により濃度測定を行います。タンパク質サンプルおよびスタンダードは、いずれも共通の方法でアッセイ試薬と混合させ、分光光度計により吸光度を測定します。 スタンダードの測定値、標準曲線のプロットや計算を行います。その後、未知サンプルの吸光度値を標準曲線のプロットまたは式へ代入し、未知サンプル濃度の測定を行います。
「未知」濃度を測定するための上記の比較法は一般的な方法です。ただし実際のアッセイ手順は、ピペッティング/希釈・n数評価・ブランク修正・その他要因が伴うことによってやや複雑化します。これらの工程より、最終測定値を計算するプロセスが混乱することも少なくありません。
同じ手法で処理されたサンプルについては、各サンプルの数値を直接比較することができます。下記の条件が全て満たされる場合、各最終吸光度値(色強度)の可変要因は、タンパク質の量的差異のみとなります。
各タンパク質アッセイ法の化学的性質の違いから、異なるタンパク質から得られる各吸光度値 (同一濃度であっても) は、当然のごとくそれぞれ異なります。この現象は「タンパク質間変動」または「タンパク質の不均一性」と呼ばれています。詳細については、タンパク質法に関するページをご覧ください。
スタンダードの測定単位は、未知サンプルのと同一の測定単位によって定義されます(未知サンプルの最終結果は、標準サンプルに用いた測定単位で示されます)。例えば、スタンダードの単位がµg/mL場合、未知サンプルの単位ももug/mLで示されます。
一般的な認識とは異なり、アッセイの各ウェルやキュベットに適用するタンパク質の実質量(例:マイクログラム)について把握する必要は一切ありません。Coomassie Plus Protein Assay Kit(製品番号:23236)を用いた、以下2種類のタンパク質サンプルのアッセイを一例として考察します:未知濃度の試験サンプル、および濃度1 mg/mL (= 1000 µg/mL)のスタンダード。 (通常はスタンダード全セットについてスダンダード曲線を作成する必要がありますが、ここではシンプルな例を使用します。)
マイクロプレートプロトコル (図参照) では、1ウェル当たりにサンプル(試験/標準サンプル)10 µL、およびアッセイ試薬300 µLを添加します。スタンダードサンプル10 µLをウェルへ添加するため、ウェル内に存在するタンパク質は、0.010 mL×1,000 µg/mL = 10 µgとなります。アッセイ結果で試験サンプルの吸光値がスタンダードサンプルと同じ値であれば、試験サンプルにはスタンダードサンプルと同量のタンパク質が含有されていると結論づけられます。1ウェル当たりに10 µgの標準サンプルが存在することから、試験サンプルの測定濃度レポートには10 µg/wellと記載できます。しかし通例は、1ウェル当たりのタンパク質量が所望の数値ではなく、元の試験サンプルのタンパク質濃度値を求める必要があります。元のスタンダードサンプル量が1000 µg/mLであるため、アッセイで同等の吸光度値を得るには試験サンプルの量も1000 µg/mLとします。
上記の誤認識1のケースと同様に、アッセイ試薬中に希釈されたタンパク質については、その実濃度を把握する必要は一切ありません。上図の例では、アッセイ試薬300 µLの添加後にスタンダードサンプル10 µgを310µLへと希釈させたため、ウェル内の最終濃度は、10 µg/310 µL = 0.0323 µg/µL = 32.3 µg/mLとなります。したがって、試験サンプルの測定濃度レポートには32.3µg/mLと記載します。しかし通例は、アッセイ試薬による希釈時のタンパク質濃度が所望の数値ではなく、元の試験サンプルのタンパク質濃度値を求める必要があります。元のスタンダードサンプル量が1000 µg/mLであるため、アッセイで同等の吸光度値の試験サンプルの量も1000 µg/mLとします。
元のサンプルがスタンダードサンプルに関連して予め希釈されている場合、希釈係数を十分に考慮する必要があります。また、元のタンパク質サンプルの既知実質量が約5 mg/mLである場合も同様です。この場合濃縮レベルが高すぎるため、Coomassie Plus Protein Assay Kitを用いたアッセイが行えません(本キットのアッセイ範囲は、標準マイクロプレートプロトコルにおいて100~1500 µg/mL)。そこで、このサンプルをバッファで5倍希釈 (サンプル量:バッファ量=1:4) させることにより、試験サンプルとしてタンパク質アッセイで使用できるようになります。試験サンプルが1000 µg/mLのスタンダードサンプルと同じ吸光度を示す場合、試験サンプル(5倍希釈)濃度は1000 µg/mLであるため元のサンプル(未希釈)濃度は5×1000 µg/mL = 5000 µg/mL = 5 mg/mLと結論付けられます。
上記の例とは異なり、一般的なアッセイではタンパク質スタンダードの全セットを使用します。またタンパク質スタンダードの濃度は、有効なアッセイ範囲を全てカバーしている必要があります(例:100~1500 µg/mL)。まれにスタンダードサンプルの1つに完全一致した試験サンプルがあります。そのため、スタンダードサンプル点間を計算/補間する手段が必要となります。
一般にプレートリーダーと分光光度計は、ソフトウェアの使用を介して互換性があります。対応ソフトウェアを使用すると、以下が行えます:プロットを通過する最良適合(線形または曲線)回帰直線の自動プロット;回帰直線上の試験サンプルの補間;計算値のレポートなど。試験サンプル濃度の計算には近似曲線を表す数式が用いられるため、適切な曲線フィッティングアルゴリズムを選択してください。
各曲線フィッティングアルゴリズムがそれぞれ異なれば、(以下のグラフのように)タンパク質アッセイの精度が変動します。タンパク質アッセイによりアッセイ有効範囲全体で完全にリニアな結果が得られるケースは、(稀にありますが)ほとんどありません。適切なカーブフィッティングを適用する限り、アッセイは必ずしも厳密にリニアである必要がありません。カーブフィッティングを手動で実行しなければならない場合、一般に点間近似は、スタンダード全範囲のリニアフィッティングよりも高精度となります(下図参照)。「点間近似」とは、隣り合う2点間のリニアフィッティングを指しています。
いくつかの要素により、タンパク質アッセイの精度と正確性が阻害されます。ランダム誤差を評価するには、各標準/試験サンプルのレプリケートを使用するしかありません。試験サンプルは必然的にスタンダード曲線との比較から評価されるため、N=3のスタンダードサンプルを用いて実行することが非常に重要です。こうして標準偏差(SD)と変動係数(CV)を計算すれば、信頼性高い精度が得られます。レプリケートを使用する場合、カーブフィッティングは平均値で行います(明らかな異常値を減算してください)。
スタンダード曲線のグラフ(本ページ上の図参照)では、通常、原点(0,0)上を通る曲線が表されます。これは視覚的には映えているものの、計算値とは無関係です。標準的なタンパク質アッセイ用試薬は、検出波長の吸光を持ちます(タンパク質が一切存在しない場合でも、正の吸光度を示します;下図参照)。
通常、「ゼロアッセイのスタンダードサンプルの吸光度値」を「他の全サンプルの吸光度値」から減算します。しかし複製のゼロアッセイの標準サンプルを用いて誤差統計値を計算する場合には、ブランク補正のために別の独立値が必要となるでしょう。試験サンプルのバッファに合わさせるために標準サンプルをバッファ中で調製した場合、かつそのバッファ成分によりアッセイが阻害される場合、「水のバックグラウンド」(タンパク質非含有の水サンプル)を使用するのが有益です。水のブランクとゼロ標準サンプルの差異から、バッファの効果が判明します。
スタンダード曲線の傾きは、アッセイの精度と感度に直接関連します。他条件が全て同じであれば、曲線の最も垂直に近い部分が最も信頼性が高くなります。通常のタンパク質アッセイでは、スタンダード曲線はアッセイ範囲の下半分において最も傾きが急斜(最大の正の傾き)となります。実際にアッセイ範囲の上限値は、傾きが水平に近い点で測定されます;曲線の傾きが限りなく水平に近いため、測定吸光度がわずかに異なるだけでも、算出濃度値が大幅に変動します。
しかし、ランダム誤差や阻害物質は、微量タンパク質を含有したサンプルに対して決定的な相対的効果があります。そのためアッセイ範囲の最低部分は、(曲線傾斜が最も高いものの)必ずしも最適であるとは言えませんしたがって明瞭な結果を得るためには、通常予め希釈した試験サンプルを使用します。これによって、アッセイ範囲の下~中のレンジに一致させます。アッセイレンジの下~中部分へサンプル(少なくともの1つ)を確実に「着点」させるため、2、3種類の希釈サンプルについて試験が行なわれます。
各タンパク質アッセイ法に推奨される測定波長を使用してください。これにより、最大傾斜でスタンダード曲線が得られます。通常、この波長は吸光度の最大値に一致します(ただし、一致しない場合もあります)。 (状況次第では、最良の測定波長を決定する際に次のような点にも配慮が必要です:類似波長で吸収するサンプル成分による干渉を回避すること)。
実際大半のタンパク質アッセイでは、(求められる精度に応じて)一定範囲内の測定波長を用いて許容可能な結果が得られています。これについて下図で解説します(詳細はテクニカルヒント#25をご参照ください)。
全てのタンパク質サンプル(タンパク質の溶解したバッファも含む)は一律に処理されることを前提としているため、阻害物質による潜在的影響について本ページでは触れません。こうした状況下では、試験サンプルまたは標準サンプルのいずれを用いた場合も、バッファ成分由来の阻害が同様に発生します。それでも、アッセイを阻害/促進する非タンパク質物質は、全てのタンパク質アッセイシステムにおいて重要な論点となります。このテーマの詳細については、関連記事や関連文献をご参照ください。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.