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変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)の後、まずゲルカセットを分解し、水またはバッファが入ったトレイに薄い(厚さ1mm)のポリアクリルアミドゲルを入れます。電気泳動されたタンパク質は濃縮された「バンド」として、多孔質ポリアクリルアミドゲルマトリックスの各レーン内に存在しています。一般にタンパク質は陰イオン性SDS界面活性剤に結合した状態を維持しており、ゲルマトリックス全体は特定バッファ中で飽和されています。
タンパク質を可視化させるには、タンパク質特異的な色素結合性/発色性の化学反応をゲル内タンパク質に対して行います。マトリックスにタンパク質を保持しつつ必要な化学反応を促進させるため、各染色法に応じた様々な手順が必要になります。処理手順は全て溶液中で行ないます;具体的には、何らかの液体試薬の入ったトレイ中にゲルを入れて行います。
この方式を用いるという制限があるため、大半の染色法では、インキュベーション工程は共通した手順で行われます:
実施する染色法によっては、1工程内で上記の各作用が複数同時に進行します。例えば酸性バッファ中に色素を含む試薬は、1工程の間に効率的に固定および染色を行うことができます。対照的に、染色法によっては複数の工程が必要となることもあります。例えば銀染色法では、染色試薬および展開剤(着色反応生成物を産出)をそれぞれ用いた2工程が必要となります。
This 88-page handbook provides detailed description about all aspects of protein electrophoresis from sample and gel preparation to choice of molecular weight markers. In addition, it contains extensive information about our portfolio of high-quality protein electrophoresis products including gels, stains, molecular weight markers, running buffers, and blotting products for your experiments.
ゲル内タンパク質の検出法としては、Coomassie色素を用いた染色法が最も一般的です。Coomassie染色試薬は数種の染色法が報告されていますが、G-250 (コロイド状)またはR-250いずれかの色素形態が使用されています。コロイド状Coomassie試薬を用いると、1時間以内にタンパク質を効率的に染色することができます。また、水洗浄を行うだけで脱色が可能です(メタノールや酢酸による洗浄は不要)。
酸性バッファ条件下において、Coomassie色素はタンパク質の塩基性/疎水性残基に結合します。この結果、鈍い赤褐色から濃い青色へと変色します(本ページの画像をご参照ください)。あらゆる染色法と同様、試薬の活性化学やタンパク質組成の差異により、Coomassie色素試薬による検出レベルは各タンパク質ごとに異なります。例えばCoomassie色素試薬は、一部のタンパク質についてはバンド1つあたりわずか8~10ナノグラムでも検出できますが、大半のタンパク質についてはバンド1つあたり25ナノグラム以上ないと検出することができません。
Coomassie色素による染色法は、単一の既製試薬が利用できる点や、タンパク質を化学的または非可逆的には修飾しない点から、非常に有用性が高いと言えます。最初のステップで水で洗浄することは、色素結合を妨害する残留SDSを除去するために必要です。次いで染色試薬を添加します(通常は約1時間);最後に、水または単純なメタノール:酢酸による脱色手順で、過剰な非結合色素をゲルマトリックスから除去します。化学修飾はされないため、切除されたタンパク質バンドは完全に脱色することができます。その後、質量分析法や配列決定法で分析を行うために、タンパク質を回収することができます。
銀染色法は、極めて高感度な比色法により総タンパク質を検出法することができます。この染色法では、タンパク質バンドの位置でゲル表面へ金属銀を析出させます。銀イオン(染色試薬中の硝酸銀に由来)が、特定タンパク質の官能基に相互作用および結合します。特にカルボン酸基(アスパラギン酸およびグルタミン酸)、イミダゾール(ヒスチジン)、スルフヒドリル(システイン)、アミン(リシン)などに対して非常に強力な相互作用が発生します。タンパク質への銀イオンの結合特異性や効率をコントロールしたり、結合した銀を金属銀へ有効に変換(可視化)させるには、種々の増感剤/エンハンサー試薬の使用が不可欠です。可視化プロセスは、基本的に写真フィルムの現像プロセスと同様です;銀イオンは金属銀に還元され、黒褐色へと変色します。
銀染色法プロトコルに要する各工程は、試薬品質だけでなくインキュベーション時間やゲル厚による影響も受けます。市販の銀染色キットは、組成やプロトコルが最適化/一貫生産されているため、使用毎の差異が最小限に抑えられるといった利点があります。最適化されたプロトコルを備えたキットでは、使いやすい上に安定したパフォーマンスを誇り、標準ゲル中で0.5ナノグラム未満のタンパク質でも検出できます。
銀染色法では、増強剤としてグルタルアルデヒドまたはホルムアルデヒドのいずれかを使用します。これらの試薬を使用した場合、ゲルマトリックス中のタンパク質が化学的架橋を起こすため、質量分析(MS)のために行う脱色/溶出法にはあまり適合しません。したがって、MS-ワークフローの一環として銀染色を実行する場合、感度とタンパク質回収率の最適化を行ってください。
タンパク質の電荷やその他特性に応じて、銀染色によりタンパク質バンドを黒/青茶色/赤/黄に染色するが可能です。これは、2次元ゲル上の重複部分を識別するうえで極めて有用です。
亜鉛染色法は、通常の染色法と異なります。亜鉛染色法はタンパク質を染色せず、タンパク質の存在しないポリアクリルアミドゲル全領域に対して染色を行います。亜鉛イオンは、イミダゾールと複合体を形成し、ゲルマトリックス中に沈殿します(ただし、SDS飽和タンパク質がある領域は除く)。乳白色の沈殿物が原因でバックグラウンドが不明瞭になりますが、タンパク質バンド自体は透明な状態を維持します。このプロセスはわずか約15分間で完了し、ゲルが濃いバックグラウンド上に出現するためゲルの撮影が可能です。亜鉛染色法は、標準的な銀染色法と同レベルの感度 (1 ng未満のタンパク質を検出可能) を達成し、固定化を行う必要はありません。さらに染色の除去も簡単に行えるため、亜鉛染色法は質量分析やウェスタンブロッティングにも適合します。
近年、蛍光イメージャーや蛍光アプリケーションが改良された結果、蛍光染色法は、従来の核酸のエチジウムブロマイド染色法よりも需要が高まっています。現在、総タンパク質の蛍光染色用試薬として様々なタイプが登場しています。新たな蛍光総タンパク質染色法は蛍光染色の効果が非常に優れており、迅速かつシンプルなワークフロー手順で行うことができます。励起/蛍光波長が、一般的な蛍光イメージャーの標準フィルターセットや標準レーザー設定に対応した、非常に簡便な手法が利用できます。
一般に蛍光染色法は、タンパク質官能基が変化する化学反応ではなく、単純な色素結合機構によります。そのため蛍光染色法の大半は、質量分析法による下流分析のための脱色法/タンパク質回収法に適合します。従って、1次元・2次元の両用途において広く利用されています。
状況次第では、ゲル中全てのタンパク質の検出ではなく、タンパク質のサブセットの検出が推奨されます。糖タンパク質およびリン酸化タンパク質は、特定タイプの官能基(糖タンパク質の場合多糖類基;リン酸化タンパク質の場合リン酸基)に基づいて分類されています。色素結合性/発色性のケミストリーにより上記の官能基いずれかを検出できれば、ゲル染色に活用することができます。
翻訳後グリコシル化修飾されたタンパク質は、炭水化物を反応基へ化学的に活性化させることによって検出が行えます。この手法では、ゲル中のタンパク質を固定化した後に、メタ過ヨウ素酸ナトリウムと糖残基を酸化させます。その結果得られたアルデヒド基を、アミン含有色素と反応させることができます。初期の文献では、この手法は過ヨウ素酸シッフ法(PAS)として記載されています。続いて還元反応を行うと、色素-タンパク質間結合が安定化します。発色性/蛍光性の両方が使用されてきており、市販の糖タンパク質染色キットが利用可能です。
発色性/蛍光性色素による様々なタンパク質ゲル染色法が開発されており、これらの染色法によりリン酸化タンパク質やHisタグ融合タンパク質の検出も行えます。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.