シグナル対ノイズ比(S/ N比)とは、非関連のノイズに対する、ある物質のシグナル量を指しています。ウェスタンブロッティングでは、シグナルはターゲットとなる特定タンパク質バンドの密度を指します;また、ノイズはバックグラウンドの密度を指しています。通例S/ N比の最適化処理は、実験系の感度の向上化よりも高い重要性を持ちます。感度は、シグナルとノイズを識別する能力とは無関係です。ウェスタンブロットの最適化プロセスは、ある程度時間を要するうえ、貴重なサンプルを消耗してしまうことがあります。ウェスタンブロットのリプローブによって、処理時間やサンプル使用量を節約できると同時に、必要に応じて最適化も行えます。またリプロービングにより、同一膜上で複数の標的タンパク質を検出することができます。

動画:リプローブの方法

はじめに

化学発光検出法は、メンブレンから結合物を除去して同一膜で検出できるという利点があります。化学発光に使用される生成物は、着色沈殿物や膜吸着蛍光分子よりも剥がれ易いため、化学発光を使用することにより試薬類を完全に膜から除去できます。数回の膜のストリッピングとリプロービンによって、他のタンパク質の可視化やタンパク質検出の最適化(抗体濃度)が行えます。

関連文献

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ブロットのリプローブにおける利点

ウェスタンブロットのストリッピングやリプロービングの優れた特性
サンプルの節約貴重なサンプルを扱う場合、リプロービングによってサンプルを節約でき、また同一もしくは複数の抗体を用いて膜を分析することができます。
時間の節約ある程度の時間を要するSDSポリアクリルアミドゲルとタンパク質の膜へ転写をリプロービングにより省略できます。同じ膜を使用して複数回の検出が行えるため、時間を節約できます。
コストの削減同じ膜を使用できるため、メンブレン、バッファー、サンプル準備のコストが節約できます。
アッセイの最適化がしやすい高感度な化学発光基質は、精度の高いシグナルデータ達成するため、通例は抗体濃度を最適化する必要があります。膜のストリッピングや種々抗体濃度でのリプロービングによって、容易に最適化が行えます。
結果の再現性を即座に確認免疫ブロットで予測通りの結果が得られなかった場合、リプローブを行えば、同じタンパク質サンプルを使用して確認できます(再度、ゲル電気泳動を実行する必要がありません)。
誤差の補正免疫ブロットには多数の工程が関与するため、誤差の生じる可能性が高くなります。膜をストリッピングすれば、ブロットを再利用することができます。

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ウェスタンブロット膜のストリッピング

膜を適切にストリッピングするためには、(大量の抗原が膜から遊離しないように)抗体を抗原から遊離させる条件で行います。このために、通例界面活性剤・還元剤・加熱処理・低pHなどを組み合わせた、様々なプロトコルが開発されています。ストリッピングでは、ある程度の抗原が膜から剥離されます。穏やかな条件下で抗体をストリッピングすることによって、抗原の損失を最小限に抑えることが重要です。各抗体-抗原ペアにはそれぞれ固有の特性があるため、抗原を保持したまま抗体を完全に除去できるといった手法は存在しません。

RestoreStrip2Blk_350x種々の抗体のリプロービング。SuperSignal West Dura Chemiluminescent Substrate を用いて、HeLa細胞ライセート(希釈範囲83.3 ng~750 ng)をウェスタンブロットで検出しました。最初のブロットでは、希釈率1:2000のポリクローナルウサギ抗JAK-1次抗体(BD PharMingen;San Jose, CA)と、希釈率1:350,000のHRP-二次抗体を使用しました。同じ膜をRestore Western Blot Stripping Buffer中において室温で5分間ストリッピングした後、マウス 抗ヒトBakモノクローナル一次抗体(希釈率1:1000)と、HRP-二次抗体(希釈率1:100,000)でリプローブを行いました。5%のスキムミルクと0.05% Tween 20を用いて、ブロッキングを行いました。

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ストリッピング後の膜の試験とリプロービング

ストリッピングの後、膜を試験して検出試薬が完全に除去されたこと確認する必要があります。膜を数回洗浄し、ブロッキングします。そして二次抗体とインキュベートした後、化学発光基質と再度インキュベートします。ストリッピングで一次抗体が有効に除去されていれば、二次抗体は膜に結合せず、シグナルは一切生成されません。バンドがまだ膜上にみられる場合、ストリッピング条件を強くしてください。反応時間や温度を上昇させるだけで、通常はストリッピングの検討ができます。しかし、ストリッピングバッファ成分を変更する、もしくは手法そのものを完全に変更する必要がある場合もあります。

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For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.