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タンパク溶出のための細胞破砕には、古くから物理的な破砕方法が用いられてきましたが、この方法にはいくつか問題点があります。物理的な破砕方法では機器から発する熱の影響により、しばしばタンパク質の変性および凝集が引き起こされます。この問題を避けるためには、器具を予め冷却し、またサンプルを常に氷上で取り扱う必要があります。またサンプルの取り扱いに関するプロトコルの記載があいまいなため、誰が行なっても均一な結果が得られるとは限りません。破砕条件が均一ではないとサンプル溶液の粘度にも影響があります。時には目的のタンパクを破壊してしまうこともあります。作業以外の問題としては、フレンチプレスや超音波破砕機など、高価な装置が必要になる場合がある点です。
溶解方法 | 装置 | 説明 |
---|---|---|
機械的破砕 | Waring Blender、Polytron | 回転刃が細胞を破砕する |
溶液中でのホモジナイズ | ダウンス型ホモジナイザー、ポッター型ホモジナイザー、フレンチプレス | 狭いスペースを押し出すことで、細胞や組織をせん断する |
超音波処理 | 超音波破砕機 | 超音波で細胞をせん断する |
凍結融解 | 冷凍庫またはドライアイス、冷エタノール | 急速な凍結により細胞内に氷晶形成させてから融解を繰り返すことで、細胞を破砕する |
手動での研磨 | 乳鉢と乳棒 | 液体窒素で凍らせた植物細胞を破砕する |
肝臓や筋肉といった大容量のサンプルには、回転刃を持つ機器での破砕が有効です。代表的な機器としては、Waring blenderとPolytronが挙げられます。標準的な家庭用ブレンダーに似ているWaring blenderと違い、Polytronは回転刃を含む長いシャフトに組織を引き込み破砕します。シャフトは幅広い量に対応できる様々なサイズがあり、1mLといった少ない量のサンプルにも使用できます。
この方法は、少量の組織や培養細胞の破砕に、最もよく用いられます。細胞および組織懸濁液を狭いスペースを通すことで細胞をせん断します。一般的には以下の3種類のホモジナイザーが用いられます。ダウンス型ホモジナイザーは、丸ガラスのペストルをガラス管に手動で押し込みます。ポッター型ホモジナイザーは、丸型や円錐形のペストルを手動または機械で外筒に押し込みます。ダウンス型またはポッター型ホモジナイザーを用いた場合、ストロークの回数とスピードが破砕効率を決定します。またどちらのホモジナイザーにも様々なサイズがあり、幅広い量に対応できます。フレンチプレスは40~250mL量の細胞懸濁液に高圧をかけ、小さな穴を押し出すことで細胞をせん断します。2回程度の処理で、充分にタンパクを溶出させることができます。装置は高価ですが、フレンチプレスは細菌を破壊する方法としてよく選ばれます。
3つ目の物理的な細胞破砕方法は、超音波処理です。この方法はパルス状の超音波を用いて、細胞、細菌、胞子および細かくした組織を撹拌し溶解します。超音波を発するプローブを細胞懸濁液に浸し、超音波を発生させます。プローブからの機械的エネルギーにより、極小の気泡を発生・破裂させ、サンプルに繰り返し激しい衝撃を与え破砕します。処理中は熱が発生しやすいため、サンプルを氷中で冷却しながら短時間の処理を繰り返し行う事で、温度上昇を防ぎます。超音波処理は<100mLの小スケールのサンプルに最適です。
凍結融解法は細菌や哺乳類細胞を溶解するのに通常用いられます。この方法では、ドライアイスや冷エタノール、または冷凍庫にて細胞浮遊を凍結させ、室温あるいは37°Cで解凍します。凍結過程で細胞が膨張し氷晶が形成されます。その氷晶が細胞を破壊することで解凍時に溶解されます。十分に溶解するためには繰り返し行う必要があり、時間がかかります。しかしながら凍結融解により、細菌細胞質に存在する組み換えタンパク質を効率よく溶出出来ることが確認されています。そのため幾つかのプロトコルにおいては、哺乳類細胞の溶解に推奨されています。
これは植物細胞の破壊に用いられる最も一般的な方法です。組織を液体窒素で凍結させた後、乳鉢と乳棒を用いて粉砕します。セルロースや多糖から成る強固な細胞壁を破壊できるため、この方法は植物からタンパク質およびDNAを入手するのに最も迅速で効果的な方法です。
破砕を効果的なものとするために、様々なものが用いられます。一つは低張液に細胞を浸すことです。低張液中では細胞は膨張するため、物理的破砕の効果は高くなります。また酵母および細菌細胞壁の多糖成分を分解するのにために、リゾチーム(200µg/mL)が用いられることがあります。細胞壁の破壊を促進するもう一つの方法として、ガラスビーズでの細胞表面の研磨が挙げられます。この方法は強度の高い酵母の破砕によく用いられます。また細胞を破砕すると溶液中に核酸物質が放出されるため、溶液の粘性は高くなります。この問題を軽減するために、RNase(50µg/mL)とDNase (25-50µg/mL)を添加します。超音波処理は染色体をせん断するため、ヌクレアーゼ処理は必要ありません。最後に、細胞を処理するとタンパク質が分解される可能性があります。これを防ぐために、プロテアーゼ阻害剤を全ての溶解中のサンプルに添加する必要があります。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.