プロテインA、プロテインG、プロテインA/ GおよびプロテインLは、様々な用途に有用な抗体結合タンパク質です。通例これらは、固体支持体上に固定化した状態で使用されます。固定化された抗体結合タンパク質は、抗体精製や標的抗原の免疫沈降法に有効となります。精製対象の特定の生物種や抗体クラスに応じて、最適な固定化タンパク質がそれぞれ異なります(特異的結合に関するテクニカルヒント#34をご参照ください)。これらのタンパク質は、アガロース樹脂に固定化された種々形態で販売されており、各種用途に便利です(表1)。各用途や実験規模に応じて、使用するタンパク質形態を選定してください。

表1アガロース樹脂固定化の抗体結合タンパク質の各種形態

抗体結合タンパク質スピンカラムドリップカラムキット(スピン/ドリップ)FPLCカートリッジバルク樹脂スピンプレート
プロテインAN/A1 mL1 mLドリップN/A5 mL, 25 mLN/A
プロテインA(大容量)0.2 mL, 1 mL, 5 mLN/A0.2 mL, 1 mLスピン1 mL, 5 mL1 mL, 5 mL, 25 mLYes
プロテインG0.2 mL, 1 mL, 5 mLN/A0.2 mL, 1 mLスピン1 mL, 5 mL2 mL, 10 mL, 25 mLYes
プロテインA/G0.2 mL, 1 mL, 5 mLN/A0.2 mL, 1 mLスピン1 mL, 5 mL3 mL, 15 mLN/A
プロテインL0.2 mL, 1 mL, 5 mLN/A0.2 mL, 1 mLスピン1 mL, 5 mL2 mL, 10 mLN/A
†上リストに記載の各タンパク質形態は、Thermo Scientific Pierce Protein Biology関連製品の一部として組み込まれています。また抗体結合タンパク質の一部については、磁気ビーズやその他樹脂タイプに固定化した形態も取り揃えています。上リスト以外の形態については、お手数ですが他社メーカーまでお問合せください。

スピンカラム

Thermo Scientific NAb Spin Columns (図1)は、スモールスケールの実験をすばやく実行する際に有用です。サンプルタイプや使用する各スピンカラムに応じて、精製IgGの量がそれぞれ異なります(表2)。スピンカラム形態を利用すれば、精製抗体調製物を非常に短時間で生成することができます。

A12n06-Fig1
図1. Thermo Scientific NAb Spin Columnsには、3種類のサイズがご利用できます。 (a) 0.8 mL/(b) 2 mL/(c) 10 mLの各遠心カラムに、それぞれ(a) 0.2 mL/(b)1 mL/(c)5 mLの分量でプロテインA、G、A / GまたはLビーズアガロース樹脂が充填されています。 各遠心カラム(a) 0.8 mL/(b) 2 mL/(c) 10 mLは、それぞれ(a) マイクロ遠心チューブ/(b) 15 mLコニカルチューブ/(c) 50 mLコニカルチューブに適合します。 樹脂含有カラム製品名には、樹脂床容量も含めて記載してあります。

表2サンプルサイズに応じて、スピンカラム(樹脂容量)をご選択ください

サンプルサイズ(mL)樹脂(mL)IgG収量(mg)
0.025~0.50.20.1~1
0.5~211~13
2~1055~65

抗体精製キットには、実験に必要なチューブおよびバッファが全て付属しています。キット形式は、バッファおよび樹脂が既製カラムに充填された形態で提供されるため、非常に便利かつ一貫性が高いといった利点があります。通例キットにはスピンカラムが含まれています;ただし、固定化プロテインAについてはドリップ形式でもご提供しております。

クロマトグラフィーカートリッジ

Thermo Scientific Pierce Chromatography Cartridges (図2)は充填済みデバイスであり、主要な自動液体クロマトグラフィーシステムやマニュアルシリンジによる処理法に適合します。本カートリッジは、ÄKTA*/FPLCシステムへ直接接続が可能です。また、その他の接続装置は一切必要ありません。付属のアクセサリパックを利用すれば、カートリッジはLuer-Lok* Syringe Fittingsや1/16 "チューブにも適合が可能です。カートリッジを使用することにより、再現性の高いクロマトグラフィー分離を迅速かつ簡単に実行できます。

A12n06-Fig2
図2. Thermo Scientific Pierce FPLC Cartridgesの構造図。

バルク樹脂

バルク樹脂は、大規模実験に対応するカスタムサイズをはじめ、様々なパッケージサイズが用意されています。バルク樹脂は、アッセイ開発やプロトコルのカスタマイズの用途に有用です。バルク樹脂を使用すれば、様々なサイズや方式のアッセイが実現するうえ、安価にプロトコル最適化が行えます。

96ウェルフィルタープレート

IgGスクリーニング用のThermo Scientific Protein A and Protein G Spin Platesは、ハイスループット対応型であり、抗体の精製/スクリーニングを素早く行い、また免疫沈降法(IP)の適用も可能になります。96ウェルスピンプレートの各ウェルは、血清/細胞培養上清/腹水の各サンプル10~100 mLを処理する能力があります。

結果と考察

各種形態の抗体結合樹脂について評価を行いました。各樹脂形態は、抗体の精製に有効です(図3~5)。各抗体結合タンパク質の親和性はそれぞれ異なるため、IgGのタイプ/供給源に応じて、実験結果の異なる場合があります。

A12n06-Fig3
図3. スピンカラムを使用すれば、抗体を30分未満で手軽に精製できます。 種々のホスト由来の血清(約60 mgのタンパク質)を、NAbプロテインA・プロテインG・プロテインA/ G・プロテインLの各スピンカラム(1 mL)にそれぞれ適用して、ドリップ法またはスピン法により処理しました。 スピン法では、穏やかな転倒混合により、サンプルを室温で10分間樹脂と共にインキュベートしました。 樹脂を6 mLの洗浄バッファで洗浄し、IgGを3 mL (3 x 1 mL)の溶出バッファで溶出させました。 スピン法の総手順時間は、19分間でした。 ドリップ法(重力流)では、サンプルをカラム中にゆっくりと流動させました。 カラムを15 mLの洗浄バッファで洗浄しました。 IgGを溶出バッファ5 mL (5 x 1 mL)で溶出させました。 ドリップ法手順の総所要時間は、120分間でした。 三角形(黒色)および三角形(白色)は、還元SDS-PAGEの結果として、精製IgGの重鎖(50 kDa)および軽鎖(25 kDa) をそれぞれ示しています。 血清(S)レーン中の強烈なバンド(66 kDa)は、アルブミンを表しています。
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図4. クロマトグラフィーカートリッジを用いれば、抗体収量が高まり、高純度のヒトIgGが得られます。 PBS中の正常ヒト血清(60 mg)をThermo Scientific Pierce Protein A Cartridge(1 mL)に適用して、0.1Mグリシン(pH 2.8)を用いて流速1 mL/分で溶出させました。 グラフ中の矢印(黒)は、低pH溶出の開始時点を表しています。 ヒトIgGの収量は、6.85 mgでした。 各画分をSDS-PAGEにより分離させ、Thermo Scientific Imperial Protein Stain (製品番号:24615)を用いてゲルを染色しました。 M = 分子量マーカー、S =血清、F =フロースルー画分、E =溶出画分。
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図5. TプロテインAスピンプレートにより、ヒトIgGが有効に精製されました。 製品説明書の指示に従いPierce Protein A Spin Plateの1ウェルを用いて、ヒト血清(40 µL)を精製しました。 回収したサンプルと対照コントロールを還元サンプルバッファ中で調製し、トリス-グリシンのSDS-PAGEにより分離させ、さらにImperial Protein Stain (製品番号:24615)を用いて染色しました。 M = 分子量マーカー、Ig =精製ヒトIgGコントロール、S =ヒト血清、F =フロースルー画分、E =溶出画分。
結論

抗体結合タンパク質を使用して、あらゆる形式の抗体精製を有効に行うことができます。各用途や実験規模に応じて、使用するタンパク質形態を選定してください。0.25~2 mLあたりの少量の抗体(精製1回あたり1~14 mg)を扱う場合、スピンカラムを用いれば迅速な処理が行えます;予め充填されたドリップカラムにより大容量の処理が可能となり、最大175 mgの抗体を精製できます。ただしドリップカラムを使用した場合、インキュベーション時間が長く、また手動でサンプルを回収する必要があります。予め充填されたFPLCクロマトグラフィーカートリッジを使用しても、ドリップカラムの自動処理法と同等の精製レベルが得られます。ハイスループット形式で少量の抗体(サンプル1個あたり、1 mg未満の抗体)をスクリーニングする場合には、96ウェルスピンプレートが最適です。



    Pierce™ Protein A Plus Agarose

    Thermo Scientific Pierce Protein A Plus Agaroseは、抗体精製用途に汎用性が高くパフォーマンス性の優れた親和性樹脂です。ボトル型アガロースビーズ、充填済みスピンカラム、96ウェルフィルタープレート、IgG精製用の完全キットなどの各種形態が用意されています。

    Pierce Protein A Plus Agaroseに含まれるネイティブプロテインAは、高品質な架橋6%ビーズアガロース(CL-6B)上に、高密度で共有結合的に固定化されています。固定化プロテインA親和性樹脂は多種多様な形態がありますが、中でもPierce Protein A Plus Agaroseはクロマトグラフィーの各機能を非常に柔軟に組み合わせることができます。そのため、哺乳動物血清サンプル由来の全IgGが高収量で得られ、さらに全IgGを高純度に精製できます。アガロースビーズには、様々な親和性精製システムに適した物理的/化学的特性があります。

    Pierce Protein A Plus Agaroseの特性:

    • ネイティブプロテインA – 固定化プロテインAは、ヒト/ウサギ/ブタ/イヌ/ネコの血清由来のポリクローナルIgGを精製する用途に最適です
    • アガロース樹脂 – 支持体が6%ビーズアガロース(CL-6B)で架橋されており、タンパク質の親和性精製法用として最も一般的な樹脂です
    • 不活性かつ安定性 – 高品質な製造法によって、プロテインAを非荷電性/耐浸出性の共有結合で固定化しました。そのため、非特異的結合が低減されるうえ、多重使用の際も収量が低下しません
    • 高容量 – このPierce Protein A Agaroseの”Plus”版は、固定化プロテインAが高密度に充填されているため、樹脂1 mLあたり34 mg超のヒトIgGの結合容量が実現します (樹脂1 mLあたり、約16〜17 mgのマウスIgG)

    Thermo Scientific Pierce Protein A Plus Agaroseの詳細についてはこちら

    For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.