2009年に私達は、免疫原キャリアタンパク質製品とコンジュゲーションキットを改良、整理しました。その過程で、私達は多くの実験を行い、これらの試薬の品質、性質、相違および使用を検証・実証しました。本文は、これらの実験の結果をまとめたものです。

Thermo Scientific Imject Carrier Proteins は、免疫原性タンパク質を調製して様々な種類の抗原(ハプテン)にコンジュゲートし、抗体生産につながる免疫化に使用できる免疫原の調整を容易にします。

Imject製品で現在提供できるものには、以下のタンパク質およびその他が含まれています:

  • Mariculture Keyhole Limpet Hemocyanin (mcKLH)
    • タンパク質およびEDC結合キット
    • マレイミド活性化タンパク質およびキット( KLHのPEG化バージョンを含む)
  • Blue Carrier™ タンパク質
    • タンパク質およびEDC結合キット
    • マレイミド活性化タンパク質
  • Bovine Serum Albumin (BSA)
    • タンパク質およびEDC結合キット
    • マレイミド活性化タンパク質およびキット
    • カチオン化BSA ( cBSA )タンパク質
  • Ovalbumim (OVA)

Imject mcKLHは、天然のkeyhole limpet hemocyanin(KLH)です。「mc 」記号は、Imject KLHの全ての製品が、野生のカサガイからではなく、持続可能な海洋養殖 (maricultures)のカサガイから抽出したKLHであることを意味します。

Blue Carrier™タンパク質はConcholepas concholepas hemocyanin (CCH)の精製品です。大きなタンパク質は、代表的なキャリアタンパク質である、keyhole limpet hemocyanin (KLH)とほとんど同じ免疫特性を示します。

通常、未修飾のキャリアタンパク質は、 EDC (Part No. 22980)のカルボキシルのアミン架橋を介して、ペプチドまたは他のハプテンに結合しています。末端システイン(スルフヒドリル基)を含有するペプチドは、マレイミド架橋化学を用いてキャリアタンパク質に結合され、キャリアタンパク質は事前に活性化されており、マレイミド基を含んでいます。

結果と考察

キャリアタンパク質の溶解度

溶解度は、キャリアタンパク質の使用において考えるべき重要な事項です。KLHは、免疫原性の高い代表的なキャリアタンパク質ですが、溶解性が乏しいことで知られています。これにより架橋反応のための調製が難しく、その後のクリーンアップのステップで結合体を回収することが難しくなります。

私達のデータによると、 様々な種類のImject mcKLHと関連Blue Carrier Protein製品が、免疫原の調製およびその後の免疫化プロトコルの使用に十分な溶解度を有することを示しています(図1)。マレイミド活性化により所定の種類のタンパク質の溶解度は減りますが、 KLHへの効果は、ポリエチレングリコール( PEG )で修飾することによって相殺されます。Blue Carrier Proteinは、特にマレイミド活性化型と比較した場合、mcKLHよりも可溶性があります。

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図1。 Thermo Scientific Imject Carrier Proteinsの溶解性。 異なるタンパク質を超純水に200mg/mL追加し、それが溶解するまで徐々に希釈しました。 報告された値は、キャリアタンパク質が完全に溶解されたとみられる最も高い濃度です。

マレイミド活性化のレベルと品質

キャリアタンパク質のマレイミド活性化により、スルフヒドリル含有ハプテンを結合することができます。いくつかの理由で、これはシステイン末端ペプチドハプテンの結合に、特に効果的で代表的な手法です。マレイミド活性化は、Thermo Scientific Pierce Sulfo-SMCC架橋剤(または類似の試薬)を用いて実行できますが、高いレベルの活性化を獲得し、また常に検証することは難しいです。

Imjectマレイミド活性化キャリアタンパク質は、厳格に、また慎重に最適化された生成手順を用いて調製され、各ロットはテストにより、高いレベルの活性化が行われたことが確認されています。私達はシステイン結合アッセイを使用して、キャリアタンパク質のモル当たりのマレイミドのモル数を決めています。簡単に言えば、マレイミド活性化キャリアタンパク質をL-システインの希釈シリーズで反応させ、その後、Ellman’s Reagent としても知られている DTNB (Part No. 22582)を用いて、システインの非結合量をマイクロプレートアッセイで測定しました。更に詳しい情報については、METHODSセレクションを参照

マレイミド活性化アッセイの結果を可視化する方法はいくつかあります。図2は、システインアッセイの結果例で、キャリアタンパク質の グラム当たりのマレイミドをマイクロモルでグラフ化してます。テストしたキャリアタンパク質の分子量に大きな差があるので、この説明はモル対モルの比較より、実際の使用に関連性があります(つまり、コンジュゲーションプロトコルは、分子量に関係なくキャリアタンパク質の反応に必要な所定のミリグラム量を特定する点で似ています)。

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図2。 Thermo Scientific Imject Carrier Proteinsの高レベルなマレイミド活性化。 Imject Carrier Proteinsの表面第一級アミン(すなわち、リジン側鎖)は過剰なThermo Scientific Pierce Sulfo-SMCC架橋剤との反応によって活性化したマレイミドです。 活性化レベル(キャリアタンパク質のグラム当たりのマレイミドのモル数)は、システインカップリングアッセイで測定されました。 KLHとBlue Carrier Proteinsは非常に大きく(約8000kDa )、タンパク質分子当たり600 〜900のマレイミド基と活性化できます。 BSAおよびオボアルブミンは小さく(それぞれ67kDaおよび45kDa)、タンパク質分子当たり5 〜20のマレイミド基と活性化できます。

有益なキャリアタンパク質の実際の主な機能は、ハプテン、特に様々な種類のペプチドと効率的に結合できる能力です。このように私達は、様々なキャリアタンパク質製品を比較し、非常に異なる化学的性質(疎水性対親水性)を有する二つのペプチドを結合する能力について調べました。

私達は2つの蛍光標識ペプチドをテストしました:

  • CaM Kinase II 基質 281-291、 5-FAM 標識
    (5-FAM-MHRQETVDCLK-NH2、親水性)
    超純水に溶解して使用
  • EMP17、 FITC-LC 標識
    (FITC-LC-TYSCHFGPLTWVCKPQGG-OH、疎水性)
    DMSOに溶解して使用

システインのカップリングでは、0.3~0.4mgのペプチドを1mgのマレイミド活性化キャリアタンパク質と混合し、総反応量300μLになりました。EDCのカップリングでは、0.8mgのペプチドを1mgのキャリアタンパク質およびEDC架橋剤の適切な量と混合し、総反応量300μLになりました。コンジュゲーション反応の後、脱塩して、非結合ペプチドを除去しました。コンジュゲーション効率は、互換性のある蛍光プレートリーダーを用いてコンジュゲートの相対蛍光単位(RFU)を測定して決めました。RFUを非結合ペプチドの標準と比較しました。結果はmcKLHペプチドコンジュゲートに対して標準化しました。

これらの結果(図3)は、 免疫原調製が(マレイミドまたはEDC のそれぞれの方法の条件において)、キャリアタンパク質またはペプチドの親水性にかかわらず、同様の結合効率をもたらすことを示しています。

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図 3。 二つの異なるペプチドを有するキャリアタンパク質の類似の結合効率。 蛍光標識ペプチドは、それぞれImject Conjugation Kitのプロトコルとバッファーを使用して、マレイミド活性化キャリアタンパク質(左パネル)とEDC架橋によりキャリアタンパク質(右パネル)へ結合されました。ました。 キャリア - ハプテン結合体は、キット付属の脱塩カラムを用いて精製しました。 精製サンプルを蛍光プレートリーダーで解析しました。 結合効率はmcKLHと比較した各タンパク質回収の相対的な蛍光単位です。 エラーバーは標準偏差を示し、各条件において2、3個の複製があることを示しています。

ハプテン - キャリアタンパク質結合体の回収

通常、ハプテン - キャリア結合体はフィルタリングしなければなりません。あるいは、以下の「クリーンアップ」架橋反応により、過剰な架橋剤や交換バッファー成分を除去し、その後、免疫化のために調製された免疫原を使用します。 通常、これは、ゲルろ過、すなわち、脱塩カラムによって実行されます。従来、旧バージョンのImject Kitsでは、自然落下式脱塩カラムをこの目的に用いました。最新キットは、より速く、簡単、便利な遠心分離式脱塩カラムを用いています:Thermo Scientific Zeba Spin Desalting Columns、 7K MWCO。

この新しい脱塩方法の利点を説明するために、私達は従来のドリップカラム (Thermo Scientific Pierce Dextran Desalting Columns)と新しいZeba Columnsの両方を用いて処理されたサンプル結果を比較しました(図4)。

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図4。 スピン脱塩カラムは、結合体のクリーンアップに優れています。 キットによる結合体(350μL)を、キット付属のThermo Scientific Zeba Spin Desalting Columns または従来のデキストランベースのドリップ脱塩カラムを用いて脱塩しました。 オリジナルのサンプルに対する全タンパク質回収率が、回収された結合体濃度として報告されます。 どちらの脱塩方法でも、全結合量において同程度の量(約94%)を回収しましたが、 Zeba Columns の回収量はかなり少ない量でした(350μL vs. 1mL)。

免疫原性コンジュゲートおよび抗体生産

最終的に、免疫原調製の目標は、免疫反応を起こして、免疫化宿主動物からハプテン特異的抗体を同時に生産することです。KLHは免疫原性のベンチマークまたは標準として広く知られています:他のキャリアタンパク質やKLHの変異体は、 KLH (またはmcKLH)に似た免疫応答を誘発する場合、非常に良い免疫原であると考えらます。

私達のImject PEGylated Maleimide Activated mcKLHとBlue Carrier Proteinの免疫原性の品質を比較・説明するために、私達はこれらの製品と対応するmcKLHを用いて、並列結合、免疫化および抗体力価の実験を行いました。ウサギ (n=2) は3つの異なる方法(マレイミド、グルタルアルデヒド、 EDC)を用いて、各キャリアタンパク質に結合された合成ペプチド(QVPRRMIGTDAC)で免疫化されました。採取した血清(免疫前および免疫化後35日)はペプチド特異抗体用のELISAでスクリーニングされました(図5および図6)

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図5。 マレイミド活性化Thermo Scientific Imject Carrier Proteinsへのスルフヒドリル結合は同様に、強力な免疫反応を誘発し、高レベルの抗原特異抗体を生成します。 ウサギ (n=2) はマレイミド活性化mcKLH 、PEG化mcKLHまたはBlue Carrier Proteinに結合されていたシステイン末端合成ペプチドで免疫化しました。 血清サンプルは、免疫化の直前と免疫化の35日後に採取しました。 サンプルはELISAを用いて希釈・スクリーニングしました。(HRP結合二次抗体;ABTS基質)
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図6。 Thermo Scientific Imject Carrier Proteinsは同様に、強力な免疫反応を誘発します。 ウサギ (n=2) をグルタルアルデヒド(左パネル)またはEDC (右パネル)を用いてmcKLHまたはBlue Carrier Proteinに結合されていた合成ペプチドで免疫化しました。 血清サンプルは、免疫化の直前と免疫化の35日後に採取しました。 サンプルはELISAを用いて希釈・スクリーニングしました。(HRP結合二次抗体;ABTS基質)
結論

様々な理由から、 KLHは標準的なキャリアタンパク質で、抗体生産において免疫原の調製に使用できます。ペプチド - キャリア結合体はほぼいつも、EDC架橋により、あるいはマレイミド活性化を介して行われます。ここに示されたデータは、様々なKLHと関連するImjectキャリアタンパク質における類似点と相違点を表しています。全ての種類について、溶解性を除くほとんどの点で類似しています。再設計された Imject Conjugation Kitsは、スピン脱塩カラムおよびプロトコル改善を用いて、結合体の回収と信頼性を向上させています。

方法

溶解性テスト

異なるタンパク質を200mg/mL、超純水に添加しました。濃度を下げるため、追加の超純水がキャリアタンパク質溶液に添加され、溶液が透明になり、不溶性タンパク質がなくなるまで50mg/mLずつ添加されました。それぞれの水の添加において、タンパク質を10分間溶解させました。報告された値は、キャリアタンパク質が完全に溶解されたとみられる最高の濃度です。

マレイミド活性化アッセイ

私達は信頼性の高いシステイン結合アッセイを使用して、キャリアタンパク質のマレイミドのモル数を決めます。簡単に言えば、活性化キャリアタンパク質は10mg/mLで水に溶解され、その後、Assay Buffer 内で0.5mg/mLに希釈されます。(0.1Mリン酸ナトリウム、 0.1M EDTA 、 pH7.2)。希釈された活性化キャリアタンパク質は、マイクロプレート(200μL /ウェル)に移されます。L-システインの希釈シリーズをAssay Buffer 内で調整(1mg/mL ~ 0.25mg/mL)し 、各希釈液の10µL をタンパク質溶液を含むウェルに添加します。空白調整のため、Assay Bufferがテストサンプルに添加されます。マレイミド活性化キャリアタンパク質を室温で2時間システインと反応させます。最終的に、非結合システインの量は、Thermo Scientific Ellman’s Reagent(5,5'-Dithio-bis-[2-nitrobenzoic acid]) (Part No. 22582)を用いて決められます。サンプルは Assay Buffer内で調製された20µLの 6.3mM Ellman’s Reagentで15分間インキュベートし、その後、吸光度を405nmで測定します。マレイミド活性化キャリアサンプルの吸光度を、非活性化キャリアタンパク質の吸光度と比較して、結合されたシステインの割合(および絶対モル)を計算します。

ペプチド結合効率

蛍光標識ペプチド(CaM Kinase II基質と EMP17)はAnaSpec社のものを使用しました。

システイン結合において、ペプチドを10mg/mLで溶解し、その後、0.3 ~0.4mg のペプチドを1mgのマレイミド活性化キャリアタンパク質と結合バッファー (Part No. 77164)に混合して、全反応容量300µLとなりました。EMP17ペプチドでは、 DMSO を最終濃度30 %まで添加し、DTTを最終モル濃度1mMまで添加しました。反応物を室温で2時間インキュベートしました。結合体は、非結合ペプチドおよびEDTAを除去するために脱塩しました。

EDCとの結合には、ペプチドを20mg/mLで溶解しました。キャリアタンパク質を、超純水に10mg/mLで溶解しました。EDCを添加直前に、超純水に10mg/mLで溶解しました。その後、0.8mgのペプチドを1mgのキャリアタンパク質と混合し、EDC結合バッファー(Part No. 77162)を用いて、300μLの量に調整しました。EMP17ペプチドでは、 DMSO を最終濃度30 %まで添加しました。最終的に、 EDC溶液25μLを添加し、反応物を室温で2時間インキュベートしました。その後、反応物をImject Purification Buffer (Part No. 77159)で脱塩しました。

脱塩カラムテスト

テストはPierce Dextran Desalting Columns (Part No. 43230) および Zeba Spin Desalting Columns、7K MWCO (Part No. 89889)を用いて行いました。ペプチド結合サンプル(350μL)を、Imject Purification Buffer(0.083Mリン酸ナトリウム、 0.9M塩化ナトリウム、 0.1Mのソルビトール、 pH7.2)において平衡化されたカラムを用いて脱塩しました。Dextran Columnsを、ベッドボリュームの3倍量のバッファーで平衡化しました。Zeba Columnsを、 3 x 1mL のバッファーで遠心分離して平衡化しました。Dextran Columns にロードされたサンプルを、3× 0.5mL等分のバッファーで重力流により脱塩しました;結合体は約1mLの量において回収しました。ペプチド - キャリア結合体をZeba Spin Desalting カラムに適用し、その後、50μLのチェイスバッファーに適用しました。カラムを2分間1000 xgで遠心分離しました。ペプチド - キャリア結合体を、 350μL内で回収しました。

免疫原性コンジュゲート

ウサギ (n=2) は3つの異なる方法(マレイミド、グルタルアルデヒド、 EDC ) によって、各キャリアタンパク質に結合している合成ペプチド(QVPRRMIGTDAC)を用いて免疫化されました。免疫化はThermo Scientific Pierce Custom Antibody Production Service (2 -ウサギ、 70日間のプロトコル)を用いて行われました。採取した血清(免疫前および免疫化後35日)はペプチド特異的抗体用のELISAを用いてスクリーニングしました。サンプルをELISAを用いて希釈、スクリーニングしました。ELISA内は、免疫化ペプチドがマイクロプレート上を直接覆っています。ABTS基質(吸光度405nm)がHRP結合二次抗体の比色検出に使用されました。



    Imject™_mcKLH

    Thermo Scientific Imject Mariculture KLH は精製keyhole limpet hemocyanin(KLH)キャリヤータンパク質で、ペプチド抗原を用いて非常に効果的な免疫原を簡単に調製することができます。

    Imject Mariculture KLHの特徴:

    • 高収量の結合 - 各KLHの分子は何百もの第一級アミンを含んでおり、EDCまたはNHSエステル架橋剤を介してハプテン結合に利用できます。
    • 検証された品質 - 精製され、安定化された海洋養殖のKLHは、従来のキャリアタンパク質ソースと異なり、水溶液において溶解性を維持します
    • 持続可能なソース -KLHは海洋養殖で育てた軟体動物のMegathura crenulata (キーホールリンペット)の選択集団から収穫されており、野生集団から抽出されたものではありません。
    • 高い免疫原性 - KLHは高分子量(4.5× 105~1.3 x 107ダルトン; 350 kDaおよび390 kDaのサブユニットの集合体)を有し、 BSAやオボアルブミンよりも強力な免疫反応を誘発します

    Thermo Scientific Imject Mariculture KLHの詳細

    For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.