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byEric Hommema, M.S.; Penny Jensen, Ph.D.; Krishna Vattem, Ph.D.; Brian Webb, Ph.D. - 10/22/13
In vitro タンパク質発現は、機能的なタンパク質を産生するための迅速な手法です。in vivo タンパク質発現方法と比べて、in vitroタンパク質の発現は、毒性タンパク質の発現、 NMRまたはMS分析のための安定同位体ラベル、非天然アミノ酸の導入が可能、組換えタンパク質発現のための培養および誘導条件が不要等メリットがあります。
どのタンパク質発現系においても最終的な目標は、高機能で純粋なタンパク質の産生です。タンパク質は全て異なるため、一つの精製法やプロトコルが、全てのタンパク質に最適または効果的ではありません。実際、タンパク質精製の成功率はどの発現系においても高くありません。Protein Data Bankが管理している、クローニング済み、精製済みタンパク質の共同データベースには、クローニング・精製された数多くの遺伝子がリストアップされています(表 1)。
ソース http://targetdb.sbkb.org (2012、1月).
クローン化 | 発現 | 精製 | % 精製 | |
---|---|---|---|---|
原核生物 | 147151 | 96750 | 38013 | 39% |
真核生物 | 46588 | 27330 | 8019 | 29% |
古細菌 | 14196 | 8812 | 3903 | 44% |
研究対象のタンパク質の発現、精製に使用できる発現系を可能です。ここでは、Thermo Scientific 1-Step High Yield IVTシステムを用いて発現されたタンパク質の正しい精製法について、幾つかのワークフローとトラブルシューティングを説明、評価、推奨します。
1-Step IVT システムで使用するベクターには幾つか条件がありますが、Thermo Scientific pT7CFE ベクターは全ての条件を満たしています。これらのベクターは、目的の遺伝子の上流にEMCV UTR、1~3のアフィニティー融合タグおよびpoly A 3 'テールを持ちます。使用するタンパク質精製法により、アフィニティータグを選択してください(表 2)。 各アフィニティータグには、それぞれ利点があります。例えば、組換えタンパク質のサイズを小さくしたい場合、 GSTタグ(26kDa)に比べて 、 Hisタグや抗原ベースのタグ(HA 、c-myc およびFLAG)の方が適しています。
Vector | N-term Tag | C-term Tag | Cleavage Site |
---|---|---|---|
pT7CFE1-NHis | 6xHis | ||
pT7CFE1-CHis | 6xHis | ||
pT7CFE1-NHA | HA | ||
pT7CFE1-CHA | HA | ||
pT7CFE1-NMyc | c-Myc | ||
pT7CFE1-CMyc | c-Myc | ||
pT7CFE1-NFtag | FLAG | ||
pT7CFE1-CFtag | FLAG | ||
pT7CFE1-NHA-CHis | HA | 6xHis | |
pT7CFE1-CGST-HA-His | GST HA 6xHis | HRV3C (C-term) | |
pT7CFF1-CGFP-HA-His | GFP HA 6xHis | HRV3C (C-term) | |
pT7CFE1-NHis-GST-CHA | 9xHis GST | HA | HRV3c (N-term) |
pT7CFE1-NHis-GST | 9xHis GST | HRV3c (N-term) | |
Notes:
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この研究の主な目的は、複数のタグを持つベクターと精製方法の組み合わせが、発現レベルおよび精製の容易さと品質において、全体的に良い結果をもたらすかどうかを明らかにするためでした。研究の結果、NまたはC末端GSTタグを持つベクターは、短い抗原アフィニティータグを持つベクターと比較して、多くの場合、高いタンパク質発現量をもたらすことがわかりました。また、GSTおよびHisタグの両方を持つ複数タグのpT7CFEベクターは、精製において柔軟性と高い成功率をもたらすことがわかりました。これら複数タグベクターは二つの異なる精製法が使用可能で、どちらか一方、あるいは組み合わせて使用できます。(図 1).HRV3Cプロテアーゼ切断部位を組み込むことで、融合タグのオンカラムまたは溶出後の除去が可能です。
図 1: 精製オプションのフローチャート。 NまたはC末端GST:His:HRV3c シーケンスを含む複数タグのベクターを使用した場合、4つの精製経路のいずれも使用可能です。 グルタチオンアフィニティーのワークフロー(太字経路)を推奨します。
次のセクションで、精製プロトコルを図1に示します。結果と考察セクションにおいて、グルタチオンアフィニティー精製のワークフローを推奨する実験結果を示します。また、各タンパク質の結果を最適化するためのトラブルシューティングガイドや提案をご提供します。
固定化グルタチオンを用いた精製法は、非変性条件で、最小限のステップ、高い回収率、および高い純度をもたらします。プロトコルは柔軟性があり、10-50mMのグルタチオンを用いて、融合タンパク質の溶出を可能にし、また、GSTタグ付きHRV3Cプロテアーゼを用いて、融合タグを切除した目的タンパク質の溶出を可能にします。記載されているバッファ容量は、100 μLの IVT反応液からの精製に用いる場合の量です。 (Part No. 88891).反応液量が2 mL(Part No. 88892)の場合はバッファー量を適切に変更して下さい。
6X Hisまたは9X Hisアフィニティータグを含む発現タンパク質は、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)により精製することができます。コバルトベースまたはニッケルベースのIMAC樹脂はどちらも、この目的に使用可能ですが、コバルト樹脂の方が、通常より高い純度が得られました(データ非掲載)。このプロトコルは、HRV3C切断シーケンスを含むどのHis融合タグ(NおよびC末端)にも有効です;しかし、最良の結果を得るには、GST:His 複合タグベクターを選択することをお勧めします。
タグサイズとタイプの発現に及ぼす効果を評価するために、C-terminal GST tag (大)またはC-terminal HA tag (小)それぞれ単独のタグを持つベクターにクローニングされた、いくつかのタンパク質発現レベルを比較しました。タンパク質によっては、どちらか一方が発現量が多いという結果になりました(図2a )。しかしGSTタグの方が発現量が多かった場合、その差は顕著でした。これは、新たにタンパク質の発現検討を行う際は、必ずGSTタグ付きまたはタグなしでの検討を行い、高収量の発現の機会を見逃さないようにする必要があることを示唆しています。
N末端GSTタグとC末端GSTタグの発現効果を比較しました。テストしたほぼ全てのタンパク質について、 N末端タグはC末端タグよりも優れたタンパク質発現結果が得られました(図2b)。
IVT発現タンパク質の精製において、グルタチオン(GSTタグ用)またはコバルト(Hisタグ)のアフィニティー樹脂のいずれかを用いることで、満足のいく結果が得られます。GSTおよびHisタグ(ならびにHRV3C切断部位)の両方を含む複数の融合タグベクターの場合、複数の溶出プロトコルの使用が可能です。標準的な低分子の溶出方法(すなわち、固定化グルタチオン溶出には10-50 mMのグルタチオンまたは、コバルト溶出には300 mMのイミダゾール)が使用可能で、HRV 3Cプロテアーゼを用いたオンカラムまたは溶液ベースの切断と組み合わせて使用できます。
グルタチオンアフィニティー精製により、最大の回収率および純度を得ました(図3 )。8種類の異なるタンパク質を、N末端およびC末端両方のマルチタグpT7CFE発現ベクターにクローニングしました。発現後、グルタチオンアガロース樹脂またはコバルトアガロース金属アフィニティークロマトグラフィー (IMAC)樹脂のいずれかを用いて精製しました。タンパク質はそれぞれ、10 mMのグルタチオンまたは300 mMのイミダゾールのいずれかを用いて溶出しました。8つ全てのタンパク質が、N末端GSTタグを用いたグルタチオンアガロースで精製されました。しかしHisタグを用いたコバルトアガロースでは、8つのうち6つのタンパク質のみが精製されました(すなわち、p53およびcFOSは成功しませんでした) 。
図 3。 High Yield IVTを用いたタンパク質発現の、GSTベースとHisベース精製の比較 8つの異なるタンパク質を、N末端( N )またはC末端( C )のいずれかのHis:GST融合タグを用いて発現させ、またグルタチオンアガロース(G)またはコバルトIMACアガロース(H)を用いて精製しました。 タンパク質はGおよびHから、それぞれ10 mMの還元型グルタチオンまたは300 mMのイミダゾールのいずれかを用いて溶出しました。
GST融合タグ(Part No. 88946)を持つHRV 3Cプロテアーゼを用いてオンカラム消化後にタンパク質を溶出することにより、グルタチオン精製における全体的な純度を向上させました。例えば図3に示されるように、 50 kDaの内在性グルタチオン結合タンパク質(伸長因子1 - gamma、 EF-1g)は、目的のGSTタグ融合タンパク質[ 1 ]と共に溶出されます。しかし、 HRV 3Cプロテアーゼを用いた切断によるグルタチオンアガロース樹脂からの溶出では、このタイプの共溶出を防げます。組換えタンパク質のみに HRV 3C切断部位が含まれているからです。 異なる5つのタンパク質について、グルタチオンアガロース精製におけるHRV 3Cプロテアーゼ(プラス)またはグルタチオン(マイナス)による溶出方法を比較しました (図 4)。HRV3Cプロテアーゼは GST融合タグを持つため、目的のタンパク質のみが溶出され、 GST- HRV3Cプロテアーゼおよび切断されたGST融合タグは、カラムに結合したままです。
Ni-NTAとコバルト樹脂の比較実験結果(データ表示なし)に基づき、1-Step Human High Yield IVT系を用いて発現したHisタグタンパク質の精製には、cobalt- overニッケルベースのIMACをお勧めします。コバルトはニッケルよりも非常に高いレベルの精製、回収率を示します。
細菌(タンパク質発現のための通常の方法)に比べ、ヒトプロテオームはより大きく、より複雑です。その結果、ヒト細胞溶解物(1-Step Human IVT系のように)は通常、IMACにおいて細菌溶解物より高度なバックグランド(より多くの非標的タンパク質の共溶出)をもたらします。ニッケル樹脂の代わりにコバルト樹脂を使用した他、洗浄ステップ数および洗浄バッファーのイミダゾール濃度を調整し、コバルトIMACで得られる精製産物の純度を最適化しました(図 5)。回収率は低下したものの、洗浄回数とイミダゾール濃度の増加により、純度が上がりました。研究者は洗浄条件を最適化して、純度と回収率の許容できるバランスを見出すことが可能です。
図 5。 純度および回収率は、イミダゾール洗浄条件バッファーの影響を受けます。 プラスミドDNA(3.6 μgのpT7CFE1-GFP-CHis) を、100 μLの高収量反応混合物に添加し、30°Cで18時間発現させました。 反応混合物を5000 x gで5分間遠心分離し、上清を結合バッファー内で1:5に希釈しました (100 mM トリス、 pH8.0、 500 mM NaCl)。 サンプルをスピンカラム(Part No. 69705) 内で25 μLのコバルト樹脂に添加し、4°Cで撹拌、混合しました。インキュベーション後、カラムを30秒間700 x gで遠心分離し、通過するフローを回収しました。 樹脂を、様々な洗浄ステップ(400 μL)および可変イミダゾール濃度で洗浄しました(結合バッファーに、 8 mM または16 mM のイミダゾールを添加)。 溶出分画の1/3を4〜20%のSDS -PAGEゲルで電気泳動し、Imperial Protein Stain (Part No. 24615)を用いて染色しました。 回収率(%)は、ex/em = 510 nm/485 nmの蛍光測定値(溶出画分/粗画分の比、X100)で評価しました。
全体的なタンパク質精製の成功と純度に基づき、オンカラムのGST- HRV3C溶出を利用した、固定化グルタチオンアフィニティーが、推奨ワークフローと言えます(図 1)。
タンパク質精製の成功は、タンパク質の種類により大きく左右されます。上記のように、グルタチオンおよびIMACシステムにおいて、単純な結合とTBSベースの洗浄バッファーで、満足できる結果が得られます。いくつかの添加剤は、純度または回収率を増加させる可能性があります (表 3)。他のプロトコル変更は、精製困難なタンパク質のトラブルシューティングに役立つことがあります(表 4)。
添加剤 | 機能 | IMAC | グルタチオン樹脂 |
---|---|---|---|
NaCl/KCl | タンパク質の可溶化、非特異的結合の減少 | 150 ~600 mM | 150 ~ 600 mM (結合) 150 ~ 1150 mM (洗浄) |
イミダゾール | IMAC精製における非特異的結合の減少 | 5 ~ 15 mM (Co); 10 ~ 40 mM (Ni) | N/A |
非イオン性洗浄剤 (Triton X-100、 NP-40) | タンパク質の可溶化;非特異的結合の減少;タンパク質分解 | 0 ~ 1.2% | 0 ~ 1.2% |
還元剤 (DTT) | タンパク質凝集を防止 | 1 ~ 5 mM | 1 ~ 10 mM |
グリセロール | タンパク質の可溶化;タンパク質の安定化;疎水性相互作用の減少 | 0 ~ 20% | 0 ~ 20% |
イオン性洗浄剤 (CHAPS) | タンパク質の可溶化;タンパク質分解 | 0 ~ 1% | 0 ~ 1% |
問題: 低いタンパク質発現率 |
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プラスミドの品質が原因となる場合:
不適切な保存や期限切れの試薬の使用が原因となる場合:
クローニングエラーが原因となる場合:
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問題: 精製量が少ない |
タンパク質の精製樹脂への結合効率が低いことが原因となる場合:
タンパク質がカラムから溶出しないことが原因でとなる場合:
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Thermo Scientific pT7CFE1-NHisは、Thermo Scientific 1-Step Human In Vitro Protein Expression System を用いたタグ融合タンパク質のin vitro 翻訳(IVT)を最適化するためのクローニングプラスミドです。 pT7CFE1-NHis Vector は、 N末端6xHisタグを利用可能で、タンパク質の精製および検出を容易にします。
pT7CFE1の特徴:
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.