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byEvelina Čirbaitė, M.S.1; Scott Meier, M.S.; Juozas Šiurkus, Ph.D.1 - 08/29/13
内在性および表在性膜タンパク質(MPs)は、シグナル変換、細胞統合性、分子の細胞内・細胞外の伝達、細胞間コミュニケーションといった多くの細胞機能の維持のために重要です。内在性および表在性MPs と膜リン脂質二重層間の物理的な性質は大きく異なります。内在性MPs は、疎水性残基で構成される1つまたは複数のセグメントを有するリン脂質二重層全体にまたがり、膜リン脂質の脂肪酸アシル基と相互作用します。また、いくつかの内在性MPsは一回膜貫通型蛋白質で、二重層の一つに埋め込まれています。
対照的に表在性MPs は、リン脂質二重層をまたがりません。非内在性MPsは通常、一過性形質膜の細胞質面の表面上に固定されています。それは脂質の極性基および/または表面に広がった非内在性MPsのいずれかを有する相互作用によるものです。また翻訳後の脂質化を介して、膜内に固定可能です。
膜タンパク質と受容体は、新薬の開発につながる可能性がある最大の分野で、製薬業界で研究されています。現在利用可能な治療用分子の約3分の2が、1つ以上のMPsをターゲットとしています。膜タンパク質の結晶構造により、MP-drug分子間相互作用メカニズムの機能と発見を容易に解明できます。しかし、細胞プロテオームにMPsが豊富にある(全細胞タンパク質の20~30%)にもかかわらず、0.1 %のMPsの結晶構造しか現在までに確認されていません。
十分な量のMPを様々な種類の細胞から、他のタンパク質分画のコンタミなく抽出できるプロトコルと試薬が不足しており、MPを特定する方法が限られています。真核性細胞株および組織からMPsを抽出する多くの方法があります。それには、細胞内分画(例えば、スクロースまたはソルビトール密度超遠心分離)、カチオン性コロイダルシリカ吸収、水性ポリマー二相分配、Triton™ X-114 相分離および高塩または高pHバッファーが含まれます。これらの従来のプロトコルのほとんどは、多くの労力と長い時間、高価な超遠心分離装置を必要とします。
Thermo Scientific Mem-PER Plus Membrane Protein Extraction Kit は、シンプルな試薬ベースのプロセスと卓上型の微量遠心機を用いて、培養細胞や組織からの内在性および膜結合タンパク質の小スケールな可溶化および濃縮を可能にします(図1)。トリトンX -114を用いた相分離に基づく今までのMem-PER Kit (Part No. 89826)は、Mem-PER Plus Kit (Part No. 89842) に変更されました。本文において、新しいMem-PER Plus Kitの性能を実証するデータを提示します。
旧製品のMem-PER Kitでの抽出は、MPsを含む界面活性剤をベースとした疎水性分画でした。これはダウンストリームのプロセス(タンパク質濃度決定、SDS -PAGE やウエスタンブロッティングといった)の前に新たなプロセスが必要でした。新たに開発されたMem-PER Plus Kit のプロセスでは、2相分離ステップが不要です;この新製品で抽出されたMPsは、シンプルかつ再現性が高く、ダウンストリームのアプリケーションに適合しています。また、新しいMem-PER Plus Kitは、全ての抽出作業は4 ℃で実行されますので温度感受性MPsの抽出に適しています。
市販の様々な抽出キットを用いて、様々な哺乳類細胞株と数種類のマウス組織からの膜タンパク質抽出効率を評価しました:Thermo Scientific Mem-PER Plus Membrane Protein Extraction Kit、Thermo Scientific Mem-PER Eukaryotic Membrane Protein Extraction Reagent Kit (第一世代キット)、 EMD Millipore ProteoExtract™ Native Membrane Protein Extraction Kit (Merck)および Bio-Rad ReadyPrep™ Protein Extraction Kit Membrane I (Bio-Rad)。これらのキットを使用して、組織サンプルおよび培養細胞の二つの株から膜タンパク質を抽出しました(詳細についてはMETHODSセクションを参照)。細胞質と膜タンパク質分画の抽出効率を比較しました(図2 )。
Thermo Scientific Mem-PER Plus Kit を用いた、細胞質と膜タンパク質分画のタンパク質定量により、最も多くののMPsが得られたことが示されました(図2)。同等の収量がProteoExtract™ Native Membrane Protein Extraction Kitを用いて得られました。
膜と細胞質タンパク質分画における純度(相互汚染が少ない)が収量と同様に重要です。Mem-PER Plus Kitを用いて得られた高収量はまた、膜タンパク質の高品質な抽出でもあったことを検証するために、細胞および組織サンプルから得られた膜および細胞質分画(図3 )のウェスタンブロット分析を行いました。一般的な膜タンパク質マーカーをプローブして、膜タンパク質COX -IVおよびpan-Cadherinが膜分画に高度に濃縮され、また細胞質画分へコンタミネーションが非常に少ないことが示されました。(Jurkat細胞は非付着性であり、カドヘリンを発現せず、従ってカドヘリンは、その膜分画に検出されませんでした。)また、10%未満の細胞質タンパク質Hsp90が、組織や細胞から抽出した膜タンパク質画分において検出されました。
図 3。 組織および細胞株からの膜タンパク質の効率的な濃縮。 Mem-PER Plus Membrane Protein Extraction Kit プロトコルを用いて、30mgの組織(マウスの脳および心臓)または5 ×10 ^ 6の培養細胞(Jurkat、HeLa細胞またはHEK- 293細胞株)から膜タンパク質を分離しました。 膜およびサイトゾル分画(10mg)をSDS- PAGEで分離し、ニトロセルロース膜に転写し、pan-Cadherin、COX -IV およびHsp90用の化学発光ウェスタンブロットによって評価しました。 (バンドの検出はmyECL Imagerを用いて画像化しました;培養細胞ブロットをX線フィルムへ露出して画像化しました。)
複数の膜通過型ドメインを有するMPs の抽出効率もMP-抽出プロトコルにおける重要な問題です。この点についてMem-PER Plus Kit を評価するため、いくつかの細胞株から得られた抽出物をウェスタンブロットし、複数の膜通過型タンパク質について確認しました。(図 4)。キットを用いて、1回貫通内膜ドメイン(Caveolin-1)~10回膜貫通型ドメイン(Na+/K+ ATPase αサブユニット)の範囲の膜タンパク質を効果的に抽出しました。HepG2およびLnCAP 細胞は、内在性カベオリンを発現しません。Gタンパク質共役受容体である、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR - 2)は、 HepG2細胞のみの膜分画で検出されました。これらの結果により、抽出効率は特定のMPの発現レベル、および特定の細胞における膜の微小環境(例えば、 コレステロールが豊富な脂質ラフト)の流動性に依存することが示されました。
Thermo Scientific Mem-PER Plus Membrane Protein Extraction Kit は、培養哺乳類細胞や組織からの、内在性および膜結合タンパク質の濃縮に開発されました。MPs分離は、マイルドな界面活性剤を用いたプロトコルに基づいています。新しいプロトコルは、第一世代のMem-PER Kit プロトコルよりも簡単で、細胞質タンパク質のコンタミネーションを最小限にできます。Mem-PER Plus Kitで抽出した後、分離された膜タンパク質分画は、SDS -PAGE およびウエスタンブロッティングといった多くのダウンストリームのアプリケーションに使用可能です。
膜タンパク質を、以下の製品を用いて、それぞれのプロトコルに従って単離しました:
Thermo Scientific Mem-PER Plus Membrane Protein Extraction Kit (Part No. 89842) プロトコル:
Pierce BCA Protein Assay Kit (Part No. 23225)および Bovine Serum Albumin Standards (Part No. 23208) を用いて、Microplate プロトコルに従い、タンパク質濃度および回収率を決めました。Mem-PER Kit (Part No. 89826)から膜タンパク質分画を除く全てのタンパク質サンプルを、抽出後に直接評価し、またBio-Rad ReadyPrep™ Kit (Product 163-2088, Bio-Rad)を透析バッファー(25mM HEPES、10mM NaCl、0.5% CHAPS)に対して一晩4 ° C で最初に透析しました。
同量(タンパク質アッセイに基づく)の総タンパク質( 10μgまたは30μg)を4〜20%のトリス グリシンSDSポリアクリルアミド変性ゲル上で泳道し、その後ニトロセルロース膜に転写しました。膜を5%BSAを含むTween™ 20を有するトリスbuffer用いて1時間ブロックしました。その後、1000倍希釈した一次抗体で1時間反応後、20,000倍希釈のHRP結合二次抗体 (Part No. 31430) または (Part No. 31460)で反応しました。Thermo Scientific SuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate (Part No. 34080)を用いてバンドを検出しました。Thermo Scientific myECL Imager (Part No. 62236)またはX線フィルムを用いて画像化しました。
以下のThermo Scientific Primary Antibodies を使用:
Cell Signal Technologyからの抗体:
Jurkat 細胞(ヒトT細胞白血病)および LnCAP 細胞 (アンドロゲン感受性ヒト前立腺がん) を、1%の L-グルタミン/ゲンタマイシンを有する10%のウシ胎児血清を含むRPMI - 1640において、5%CO 2インキュベーターで37℃で培養しました。HeLa (ヒト子宮頸部類上皮がん)、 A431 (ヒト表皮がん), A549 (ヒト肺胞基底上皮腺がん)およびHEK293 (ヒト胚腎臓細胞) 細胞を、1%の L-グルタミン/ゲンタマイシンを有する10%のウシ胎児血清を含むDMEMの中で、5%CO 2インキュベーターで37℃で培養しました。Vilnius University Institute of Biochemistry animal facilityの実験マウス(Balb /C 、6〜8週齢、雌)を使用しました。State Food and Veterinary service of Lithuaniaにより承認された実験を実施し、実験動物の使用に関する倫理委員会の Law on the Care, Welfare and Use of Animalsに従い、State Food and Veterinary service of Lithuaniaにおいて行いました。
Thermo Scientific Mem-PER Plus Membrane Protein Extraction Kit は、シンプルな試薬ベースの抽出キットで、小スケールの可溶化および内在性膜タンパク質および膜結合タンパク質の濃縮を可能にします。
Mem-PER Plus Kitの特徴:
Thermo Scientific Mem-PER Plus Membrane Protein Extraction Kitの詳細
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.