アルデヒド‐ヒドラジンの化学特性は、酸化した糖タンパク質を活性化されたアガロース担体にカップリングさせるため30年以上使用されてきました。この化学特性はpHおよび時間に敏感で、48時間インキュベートしても低い収率に終わることがあります。バッファー条件を最適化し触媒を加えて、カップリングを最大化しながら反応時間を短くしました。

Thermo Scientific固定化およびIPキットは、酸化した糖タンパク質をビーズレジンとカップリングさせる効率的で強力な方法を提供します。この方法はメタ過ヨウ素酸ナトリウムを使用して糖タンパク質を穏やかに酸化し、糖のcis-ジオールをアルデヒドに転換します。アルデヒドはビーズレジン上のヒドラジド基と反応して、安定なヒドラゾン結合をします。アニリンが触媒として反応に加わり、タンパク質グリコシル化の量に依存して、4時間以内に90%以上がカップリングします。Fc領域が十分グリコシル化された抗体は、最適な方向性と障害物のない結合ドメインで固定化されます。固定化された糖タンパク質または抗体は、イムノアフィニティー精製に使用したり、様々なタンパク質ータンパク質相互作用の研究に使用できます。

Thermo Scientific GlycoLinkカップリング触媒は、アニリンを含むバッファー溶液で、固定化およびIPキットを含みます。アルコキシアミンービオチンおよびヒドラジドービオチン試薬を用いるカルボニル反応性のラベリング反応用途に単品でも販売しています。

当社は数個の糖タンパク質カップリング効率、またキットに含まれたレジンの非特異的結合をGlycoLink固定化キットで評価しました。また数種の抗原に免疫沈降を行う能力、タンパク質ータンパク質複合体を単離する能力をGlycoLink IPキットで評価しました。最後にアルデヒドーアルコキシアミンカップリング化学特性の改良を、GlycoLinkカップリング触媒で評価しました。

結果と考察

カップリング改良は、最適化されたpH条件と触媒アニリンに基づいています。こうした最適化は幅広い糖タンパク質の固定化を可能にし、低グリコシル化された分子も含みます(表1)。GlycoLink固定化およびIPキットに含まれているThermo Scientific UltraLinkヒドラジドレジンは、ヒドラジドアガロース担体に比較して、1 mL当たりの結合能力が高く非特異的結合が低い活性化ビーズポリアクリルアミド担体です(図1)。

表1ポリクローナル抗体(およびオボアルブミン)グリコシル化特性およびThermo Scientific GlycoLinkレジンへの糖タンパク質カップリング効率。各実験で、タンパク0.4 mgをレジン0.1 mLと反応させました。

タンパク質分子量# グリコシル化部位% 部位の占有率% カップリング済み
モノクローナルラットIgG1150,0002可変72.93
モノクローナルマウスIgG1150,0002可変84.74
ウサギ血清IgG150,000210089.78
ポリクローナルニワトリIgY170,000410090.62
ヒト血清IgG150,000210097.13
ヒト血清IgM970,0001010097.18
オボアルブミン45,000110098.50
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図1 ヒドラジド活性化された担体の比較。 パネルA:GlycoLink固定化IPキットに含まれたUltraLinkヒドラジドレジンは、ヒドラジド活性化されたアガロースレジンに比較して1 mL当たりウサギIgGにより多く結合した。 パネルB:UltraLinkヒドラジドレジンは、ヒドラジド活性化されたアガロースレジンに比較して非特異的結合バックグラウンドが低くなった。 サンプルはSDS-PAGEで分離し、銀染色した。 MW:分子量のマーカー。

UltraLinkヒドラジドレジンに結合する抗体の特異性を決定するため、GlycoLink Micro固定化キットで固定化したマウスIgG1抗HA抗体をHA-GST-GFPを発現している細菌ライセート(50 μg)とインキュベートしました。HA-GST-GFP(55 kDa)の正しい分子量に対応するシングルバンドを最小のバックグラウンドで精製しました(図2、パネルA)。回収物を試験するため、GlycoLink Micro固定化キットで固定化したニワトリIgY抗ウサギ50 μgを、精製ウサギIgG10 μgとインキュベートしました。抗原の回収率は高く、ウサギIgGはフロースルーで検出されませんでした(図2、パネルB)。

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図2 Thermo Scientific UltraLinkヒドラジドレジンは高い特異性と目的抗原の回収を可能にした。 パネルA:固定化したマウスIgG1抗HA抗体を細菌ライセートからのHA-GST-GFPの精製用に使用した。 サンプルはSDS-PAGEで分離し、染色した。 レーン1:細菌ライセート(2 µL、1 mg/mL)、レーン2:フロースルー(15 µL):レーン3~4:洗浄(15 µL)、レーン5:溶離(2 µL)。 パネルB:固定化したニワトリ抗ウサギ抗体を、ウサギIgG単離用に使用した。 サンプルはSDS-PAGEで分離し、銀染色した。 レーン1:ウサギIgG(10 µL、1 mg/mL)、レーン2:フロースルー(10 µL):レーン3:洗浄(10 µL)、レーン4:溶離(10 µL)。 MW:分子量のマーカー。

GlycoLink IPキットを使用して、数個の標的抗原に免疫沈降を行いました。膜結合型成長因子レセプターであるEGFR、そして核内の転写因子であるSTAT1が、A549ライセート0.5 mgとUltraLinkヒドラジドレジン20 µLにカップリングした適切な抗体から沈殿しました(図3、パネルA)。GlycoLink IPキットはまた、Cdk1およびサイクリンB1から単離されたタンパク質ータンパク質複合体を、G2後期に同調されたU2OS細胞ライセート0.75 mgから効率的に単離しました(図3、パネルB)。

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図3 免疫沈降、共免疫沈降されたタンパク質のウェスタンブロット。 パネルA:20 µLのUltraLinkヒドラジドレジン上で抗体20 μgおよび10 μgを用いて固定化した、STAT1およびEGFRの免疫沈降。 パネルB:20 µLのUltraLinkヒドラジドレジン上で抗Cdk1抗体を用いて固定化し、Cdk1-サイクリンB1複合体の共免疫沈降。

GlycoLinkカップリング触媒は、酸化した糖タンパク質とアルコキシアミン-ビオチン間のヒドラゾン結合形成を増加させます。糖タンパク質を細胞表面に含むシアル酸は、1 mMメタ過ヨウ素酸ナトリウムで選択的に酸化されました。アニリンをカップリングバッファーに加えると、シアル酸化された糖タンパク質のアルコキシアミン-ビオチンラベリング効率がほぼ50%まで上昇しました(図4)。アニリンをカップリングバッファーに加えると、UltraLinkヒドラジドレジンへの固定化効率も上昇しました(図5)。

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図4 Thermo Scientific GlycoLinkカップリング触媒はアルデヒドーヒドラジドまたはアルデヒドーアルコキシアミンカップリングを向上させた。 CHO細胞を選択的にシアル酸酸化するため、メタ過ヨウ素酸ナトリウム(品番20504)で処理した。 酸化した細胞はカップリングバッファー中、またはGlycoLinkカップリング触媒(アニリン)中でアルコキシアミン-PEG4-ビオチン(品番26137)とインキュベートする。 ビオチン化されたタンパク質はウェスタンブロット法で検出し、デンシトメトリーで評価を行った。
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図5 アニリンはヒトIgGのヒドラジドレジンへの結合効率を増加させる。 ヒトIgG(10 mg)はGlycoLinkカップリングバッファーのみまたはGlycoLinkカップリング触媒で酸化して5 mg/mLまで希釈し、ヒドラジドで活性化したUltraLinkヒドラジドレジン1 mLとカップリングした。 結果として、4時間のインキュベーションで、条件ごとに平均3個の固定化となった。
結論

GlycoLink固定化キットを用いたビーズ担体への糖タンパク質カップリングは、タンパク質のイムノアフィニティー精製に対し非常に効率的で、どんな抗体アイソタイプとのカップリングでも十分にグリコシル化が可能となります。GlycoLink IPキットで免疫沈降した標的抗原は、ダウンストリームアプリケーションおよび共免疫沈降によるin vivoタンパク質ータンパク質相互作用の単離に使用できます。GlycoLink固定化およびIPキットとGlycoLinkカップリング触媒は、最適なカップリングと酸化した糖タンパク質のラベリングを行い、速く効率的な反応が可能です。

方法

ヒドラジド活性化担体の比較。

ウサギIgG(10 mg)はGlycoLink固定化キット、またはヒドラジドアガロースレジンとカップリングしました。固定化したタンパク質は、「技術ヒント9:固定化タンパク質の定量」を用いて定量化しました。非特異的結合を評価するため、UltraLinkヒドラジドレジンまたはヒドラジンアガロースレジン20 μLを0.4 mgのHeLaライセートと1時間インキュベートし、TBS-Tween-20*(品番28360)で3回洗浄し、IgG溶出バッファー(品番21004)100 μLで溶出させました。溶出分画(10 μL)をSDS-PAGEで分離し、Thermo Scientific Pierce銀染色キット(品番24612)で染色しました。

HA-GST-GFPの精製と精製したウサギIgG

マウスIgG1抗HA抗体(50 μg)をGlycoLink Micro固定化キットで固定化しました。HA-GST-GFP融合タンパク質を含む細菌ライセート(50 μg)をPBS0.45 mLで希釈し、カップリングレジンと室温で15分間インキュベートしました。レジンはTBS-Tween-20で2回洗浄し、結合タンパクを3 Mチオシアン酸ナトリウム100 μLで溶出しました。各分画を非還元SDS-PAGEで分離し、Thermo Scientific Pierce Imperialタンパク質染色キット(品番24615)で染色しました。

ニワトリ抗ウサギIgG(50 μg)をGlycoLink Micro固定化キットで固定化しました。精製ウサギIgG(10 μg)をPBS 100 μLで希釈し、カップリングレジンと室温で30分間インキュベートしました。レジンはTBS-Tween-20で2回洗浄し、結合タンパクを3 Mチオシアン酸ナトリウム100 μLで溶出しました。各分画(10 µL)を非還元SDS-PAGEで分離し、Thermo Scientific Pierce銀染色キット(品番24612)で染色しました。

STAT1とEGFRの免疫沈降法

ポリクローナルウサギIgG抗EGFR(Ab No. PA1-1110)または抗STAT1抗体(EMD Millipore)をUltraLinkヒドラジドレジン20 μLと、GlycoLink IPキットを使用して最終的な量が2 μgおよび10 μgになるようカップリングしました。A549細胞ライセート(0.5mg)を結合レジンと室温で1時間、室温でインキュベートします。フロースルーを遠心分離で収集し、レジンをIP Lysis/Wash Bufferで3回洗浄しました。結合タンパク質を溶出バッファー100 μLで溶出しました。ロードし溶出した分画を(各分画の10%の最終容量)SDS-PAGEで分離し、ニトロセルロースメンブレンにトランスファーしました。メンブレンは適切な抗体1 μg/mLで1時間ブロックとブロットを行い、ヤギ抗ウサギHRP抗体(品番31460)およびThermo Scientific SuperSignal West Dura Substrate(品番34076)で検出しました。ブロットはCCDカメラを用い、露出10秒でイメージングを行いました。

サイクリンB1-Cdk1複合体の共免疫沈降法

ウサギポリクローナル抗Cdk1(10 μg)はGlycoLink IPキットを用いて固定化しました。50%のコンフルエンスでU2OS細胞を48時間血清飢餓状態にし、培地に20%ウシ胎児血清を加えて16時間刺激しました。細胞はIP Lysis/Wash BufferにThermo Scientific Haltプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤カクテル(品番78440)を加えて溶解させました。細胞ライセート(0.75 mg)を未コートのレジン20 μLまたは20 μL抗Cdk1カップリングレジンと低温室で一晩インキュベートしました。抗Cdk1カップリングしたレジン(20 μL)もIP Lysis/Wash Bufferのみでインキュベートしました。一晩インキュベートした後、非結合分画を遠心分離で収集し、レジンをIP Lysis/Wash Bufferで3回洗浄しました。結合タンパク質は50 μLのレーンマーカー非還元サンプルバッファー(品番39001)で溶出しました。分画(10 μL)はSDS-PAGEで分離し、ニトロセルロースメンブレンにトランスファーしてブロックしました。メンブレンはマウスIgG1抗サイクリンB1またはマウスIgG1抗Cdk1をプローブに用い、ヤギ抗マウスHRP(品番31430)およびSuperSignal West Femto Maximum Sensitivity Substrate(品番34095)で検出しました。ブロットはX線フィルムを用い、露出2秒でイメージングを行いました。

シアル酸化された糖タンパク質のラベリングおよび検出

CHO細胞をb2アドレナリン受容体を発現しているベクターでトランスフェクションし、10 cmの組織培養用ディッシュにコンフルエンスを培養しました。細胞を氷冷したGlycoLinkカップリングバッファー2 mLで3回洗浄しました。細胞を氷上でカップリングバッファー中1 mMメタ過ヨウ素酸ナトリウム2 mL(品番20504)を用いて30分暗所で処理し、選択的にシアル酸を酸化しました。細胞をカップリングバッファー2 mLで3回洗浄しました。細胞表面にシアル酸化された糖タンパク質をラベルするために、酸化細胞を100 μMアルコキシアミン-PEG4-ビオチン2 mL(品番26137)とカップリングバッファーまたはGlycoLinkカップリング触媒中で室温にて1時間インキュベートしました。細胞を氷冷PBS2 mLで3回洗浄し、IP/溶解バッファーとHaltプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤0.5 mLで溶解しました。ライセートはThermo Scientific Pierce BCAタンパク質アッセイ(品番23225で定量し、SDS-PAGEで分離し(1 μg)、ニトロセルロースメンブレンにトランスファーしブロックしました。ビオチン化タンパク質を1:250,000に希釈したHigh Sensitivityストレプトアビジン-HRP(品番21130)およびSuperSignal West Dura Substrateを用いて検出しました。ブロットはCCDカメラを用い、露出1秒でイメージングを行いました。

一般的な参考文献

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Byeon, J.Y., et al.(2010).Efficient bioconjugation of protein capture agents to biosensor surfaces using aniline-catalyzed hydrazone ligation.Langmuir 26 (19):15430-5.

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Dirksen, A. and Dawson, P.E.(2008).Rapid oxime and hydrazone ligations with aromatic aldehydes for biomolecular labeling.Bioconjug Chem 19 (12):2543-8.

Domen, P., et al.(1990).Site-directed immobilization of proteins.J Chromatogr 510:293-302.

O’Shannessy, D., et al.(1984).A novel procedure for labeling immunoglobulins by conjugation to oligosaccharide moieties.Immunol Lett 8:273-7.

Zing, Y., et al.(2009).High-efficiency labeling of sialylated glycoproteins on living cells.Nat Methods6 (3):207-9.



    GlycoLink IPキット

    Thermo Scientific GlycoLink IPキットは効率のよい免疫沈降(IPおよびco-IP)コンポーネントを、酸化糖類を通した抗体と他の糖タンパク質のスモールスケール、共有結合、アフィニティレジン固定化に基づいて提供します。

    GlycoLink IPキットの特徴

    • 効率的な固定化—酸化抗体2~10 µgまたは他の糖タンパク質をレジン20 µLに2時間以下でカップリング
    • 安定した固定化—ヒドラゾン結合の共鳴構造は十分安定なため、抗体は溶出の間カップリングを維持
    • 結合機能を保存—Fc領域を通してIgGを固定化するため、両方の抗原結合部位は標的を捕捉することが可能
    • 多用途のアプリケーション—糖を酸化できるどんな分子も固定化でき、タンパク質相互作用結合パートナーの精製用に使用される糖タンパク質も含む

    Thermo Scientific GlycoLink IPキットについて詳しく知る

    For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.