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byHai-Yan Wu, Ph.D.; Kay Opperman, Ph.D.; Barbara Kaboord, Ph.D. - 05/19/14
マウス胚線維芽細胞(MEF)は、マウスやヒトの胚性幹細胞(ESC)、または未分化状態の多能性幹細胞(iPSC)を維持するためのフィーダー細胞として機能し、幹細胞研究において非常に重要な役割を果たしています[1, 2]。フィーダー細胞は、細胞外マトリックスを分泌しESCやiPSCの増殖に直接影響を与えるため、いずれの幹細胞においても培養の成功はフィーダー細胞の質に左右されます。また、MEFは多能性を持つ状態へ変化したり、機能性ニューロンや心筋細胞といった複雑で成熟した様々な細胞に直接分化転換することができます。したがって、発生学的モデリング、神経学的モデリング、心疾患モデリング、創薬および再生医療の研究にMEFを活用することができます[3, 4, 5, 6]。様々な遺伝子組換えを行ったモデルマウスから分離したMEFを、増殖の制御やDNA損傷に対する応答を研究する目的で利用することができます[7, 8, 9]。
本記事では、マウス胚由来組織から線維芽細胞を丁寧に分離します。簡便で信頼のおける実験手順は、収量や細胞死を改善し、病原体フリーマウスや遺伝子組換えによる疾患マウスなど様々なマウス系統に適用することができます。分離したMEF細胞の4回の細胞分裂をモニタリングすると元の細胞に相当する形態や増殖特性を示しました。
最も生細胞が多かった酵素または酵素の組み合わせを決定するため、組織消化酵素の一覧とプロトコルを評価しました。次いで、弊社が製品化したPierceマウス胚由来線維芽細胞分離キット(品番88279)で使用している最適な組成および方法と、文献を参照した従来の自家調製(DIY)のトリプシン法とを比較しました[3, 10]。MEFは、Pierceキット(図1)またはトリプシン法を用いて、病原体フリーCD1マウス(11日齢~13日齢)胚から分離しました。細胞の収量と生存率は総量1.5 mL中に1つの胚を含む細胞懸濁液から測定しました。トリプシンプロトコルと比較して、Pierceキットでは常に2倍の細胞収量を得ました。また、平均細胞生存率は90%を超えました(図2)。
分離したMEFは、培養3日目までに典型的な分散形態を示します(図3)。MEFは培養7日目まで伸張し、仮足は互いに成長し単層を形成しました。MEF細胞は培養期間の1週間にわたり、初代細胞分離に特化したDMEM培地を用いた最適な培養状態下で維持しました。本記事の方法およびDIYトリプシンプロトコルで得られた細胞はいずれも常に生存率とMEF純度が高いことから、高品質な細胞であることが確認されました(図4)。
継代培養期間におけるMEFの形態を評価するため、MEF細胞を分離し、6ウェルプレートに同じ細胞数(中濃度)で培養したものを3ウエル分プレーティングし、5日ごとに継代し合計で4回継代を行いました。また、各継代時の形態を位相差顕微鏡で観察しました。MEF細胞の同定は、MEFマーカータンパク質であるビメンチンの免疫細胞化学染色で検証しました(図5、AとB)。各継代から得た大半の細胞は典型的なMEFの形態を示し、ビメンチン陽性細胞でした。
凍結保存後の回復生存率を評価するため、11日齢のマウス胚からMEF細胞を分離し培養7日目に拡大培養を行った後、約200万細胞ずつ凍結保存し凍結初代細胞ストックとしました。凍結保存から回復させた細胞の平均生存率は97%でした。
MEFの分離および培養を目的とした信頼のおける簡便な方法を開発しました。本方法で得た細胞の収量および生存率は、従来のトリプシンを用いた方法に比べ大幅に高いものでした。検証済み試薬と最適化された手順により、線維芽細胞に特異的なタンパク質マーカーを発現する標準的なMEF培養を確率することができます。分離された線維芽細胞は、形態や特徴について目立った変化を示すことなく少なくとも4回の継代が可能です。また、生存率の低下を最小限にとどめることができるので凍結保存することができます。この方法により分離および培養したMEFは、遺伝子制御や幹細胞研究など様々な研究に細胞培養モデルとしてご利用いただけます。
新たに解剖された病原体フリーCD1マウス(11~13日齢)のマウス胚を細かく刻み、Pierce MEF分離酵素(パパインを含む、品番88290)を加えて25~30分インキュベートした後、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)で2回洗浄しました。自家調製トリプシンベース分離(DIYトリプシン)では、マウス胚組織に0.25%トリプシンを加えて25~30分インキュベートした後、HBSSで2回洗浄しました。残りのステップはどちらの手順も同じです。初代細胞分離用Complete DMEM(品番 88287)中の組織を1000 µLのチップを用いて15~20回ピペッティングしました。これにより組織を破壊し、単一の細胞懸濁液を作成しました。細胞の合計収量はInvitrogen™ Countess™自動セルカウンターを用いて測定し、生存率はトリパンブルー色素で判定しました。
表示培養日数におけるMEFを、4%パラホルムアルデヒドを用いて固定し、0.1% Triton™ X-100添加HBSSで室温にて10分間の透過処理を実施した後、3% BSA添加HBSSで室温にて30分間のブロッキングを行いました。一次抗体反応を4°Cで一晩行った後、二次抗体反応を室温で1時間実施し、HBSSで2回洗浄しました。
Charles River Laboratories社から入手した妊娠CD-1マウスを、ロックフォードのイリノイ大学医学部の実験動物施設で飼育しました。実験はイリノイ州ロックフォードのイリノイ大学医学部動物実験委員会に承認された方法で行い、国立衛生研究所の「実験動物の管理と使用に関する指針」に従って実施しています。
Thermo Scientific Pierceマウス胚由来線維芽細胞分離キットはマウス胚から得られる線維芽細胞において最適な収量と生存率を得るための分離および培養試薬です。
マウス胚由来線維芽細胞分離キットの特長:
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.