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byAaron McBride, M.S.; Ramesh Ganapathy, Ph.D.; Scott Meier, M.S.; Barb Kaboord, Ph.D.; Paul Haney, Ph.D. - 08/02/13
タンパク質機能および構造の研究は、アフィニティータグ融合を精製の補助として使用する組換えタンパク質発現戦略により大きく向上しました。グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグは主に2つの理由から特によく使われています。(1)GSTタグは通常融合されたタンパク質の溶解度を上げ、そして発現および産生を手助けする、(2)グルタチオン(GSH)をリガンドとして使用したGSTタグタンパク質の精製は一般に95%より高い純度のタンパク質を得ることが出来るという2点です。
様々なグルタチオンレジンが市販されており、レジン担体、グルタチオンの固定化戦略など色々な面に違いがあります。こうした違いは各グルタチオンレジンの結合容量、再利用性、流動特性、化学適合性に影響することがあり、最終的に特定のアプリケーションで結果の質(収量、純度、速度)を決定します。が、特定のアプリケーションとスケールに基づいて選択と方法の最適化が必要となるでしょう。
Thermo Scientific Pierce製品には、GSTタグタンパク質精製用にいくつかのグルタチオンベース担体が含まれています。磁気ビーズ、2種のアガロースレジン、様々なサイズとフォーマットがあります。Pierce Glutathione Superflow Agaroseは高度架橋型(Superflow)6%ビーズアガロース上に固定化されたグルタチオンを使用しています。本記事ではPierce Glutathione Superflow Agaroseパフォーマンス特性の詳細について述べます。これは特にFPLCによる組換えGSTタグタンパク質を小規模および大規模精製するのに適しています。
Pierce Glutathione Superflow Agaroseの精製効率を示す為に、ヒトライノウイルス型3Cプロテアーゼ(HRV 3C)、SH2ドメインのチロシンタンパク質キナーゼSyk(Syk)、増殖停止およびDNA損傷誘発性タンパク質(GADD34)等の組換えGSTタグ融合をFPLCで過剰発現して精製しました。精製は85~98%純度レベルの溶出分画という結果で、SDS-PAGEおよびデンシトメトリー分析で測定しました(図1)。またPierce Glutathione Superflow Agaroseおよび他のグルタチオンレジンの間で精製性能を試験、比較しました(図2)。類似した高レベルの純度は早くそして簡単にどちらのレジンでも得られました。
FPLCプロトコルでのタンパク質精製性能を最大化することは重要です。これには様々な流速でのレジンの結合特性を理解することが必要となります。タンパク質サンプルがレジンと長く接触するほど結合容量は高くなり、理論的な担体の最大容量となります(図3)。大きな結合能力は低い流速で得られますが、こうした条件は処理に時間がかかります。よって、レジンの動的結合容量プロファイルは精製プロセスを最適化するのに重要な検討事項となります。
与えられた特定の流速におけるカラム実行の動的結合容量(滞留時間に反比例する値)は一般的に標的タンパク質の10%がフロースルー分画に蓄積する(「ブレークスルー」と呼ばれる)前にレジンに結合するタンパク質の量とされます。動的結合容量を最大化すると、高流速でレジンが少なくて済み、同時に標的タンパク質の損失を最小化し、処理時間を制御することができます。
高度に精製したGSTを数パターンの流速で1 mLレジンベッドに加え、Pierce Glutathione Superflow Agaroseでの動的結合容量のプロファイルを決定しました(図3)。0.5 mL/分の流速で(2分間の滞留時間と同等)、レジンは充填レジン1 mL当たりの結合容量がGST 10 mgに近い値を示しました。0.1 mL/分の流速で(10分間の滞留時間と同等)、レジンは充填レジン1 mL当たりの結合容量がGST24 mgに近い値を示しました。
組換えタンパク質間でタグへのアクセス性が異なり、他のタンパク質や複雑なライセート中の生体分子の存在等もレジンの結合容量全体に影響します。よって、各プロセスの流速(製品ラン速度)および容量(製品収量)間の適切なバランスを決定することは重要です。
ラボ環境により、アフィニティー精製はmL以下から数Lまでのスケールで行われることがあります。小規模精製では新しいカラムを毎回充填して使う方が簡単で清潔ですが、同じ標的タンパク質に対して精製を繰り返し行う大規模処理には実用的ではありません。Pierce Glutathione Superflow Agaroseは幅広いスケールで使用できる強力で高度に架橋したレジンです。Superflowレジンは1260 cm/hrの線形流速においても、圧縮もなく耐えることができます。対照的に、Sepharose™ 6B(アガロース)は一般的におよそ400 cm/hrで圧縮し始めます(data not shown)。
Pierce Glutathione Superflow Agaroseの再使用性を示すため、単一カラムでクロマトグラフィーの繰り返しサイクルプロファイルを評価しました(図4)。レジンを過剰発現GST-Sykを含むE. coliライセートで検証し、6 Mグアニジンと70%エタノールを使用して5回の定置洗浄(CIP)サイクルを行いました。このパターンの1回の検証と5回の CIP処理を繰り返し、実際の精製6回を含む26サイクルを行いました。グラフ化されたプロファイル(UV 280 nm測定、図4A)または染色したバンドプロファイル(図4B)に大きな違いは見られず、収量も純度も低下も見られませんでした。
Pierce Glutathione Superflow Agaroseの非特異的結合は低く、精製後にカラムに残る残渣タンパク質は非常に少量です。ほとんどの場合、洗浄バッファーでカラムを洗浄して余剰のグルタチオンを除去するだけで再使用には十分です。しかし、細胞ライセートまたはサンプルの透明度、溶解度、品質によって、沈殿したタンパク質および他の疎水性物質が経時的にレジンに蓄積することがあります。タンパク質の蓄積はカラムの背圧上昇につながったり、精製中にタンパク質純度や収量が低下に繋がります。このような状況が起きた場合、レジンの性能は定置洗浄(CIP)プロトコルで復旧することができます。
最後に、Pierce Glutathione Superflow Agaroseの適合性を精製、クロマトグラフィー担体のクリーニングや保存に使用した様々な化学物質で測定しました(図5)。レジンを50%のスラリーとして指定の溶液中に長期間保存しました(2時間または1週間)。インキュベーションに続き、結合バッファー中で各レジンサンプルを平衡化し、未処理のレジンサンプルへの静的なバッチ結合容量と比較しました。これらの化学物質で結合容量に大きく影響したものはありませんでした。NaOH(pH > 12)を使用するようなストリンジェントなCIPプロトコルは劇的にレジンの結合容量を低下させる(データ未掲載)ため、避けるべきです。
すべての精製および結合実験は、特に明記しない限り次のバッファー条件で行いました。
すべての洗浄および溶出ステップは5~15カラム容量(CV)で行いました。本記事で概略を述べた結果は一般的なものと考えられます。しかし、タンパク質収量と純度は組換え融合タンパク質の発現レベル、溶解度、融合タグへのアクセス性により大きく影響します。場合によっては、バッファー条件および流速の最適化が必要です。
Thermo Scientific Pierce Glutathione Superflow Agaroseは、架橋型6%ビーズ状アガロースに固定化されたグルタチオンで構成されており、GSTタグタンパク質の高純度、大規模精製用に設計されています。
Pierce Glutathione Superflow Agaroseの特長:
Thermo Scientific Pierce Glutathione Superflow Agaroseについて詳しく知る
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.