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byScott Meier, M.S.; Ramesh Ganapathy, Ph.D.; Aaron McBride, M.S.; Barb Kaboord, Ph.D.; Paul Haney, Ph.D.; Chris Etienne, Ph.D. - 05/02/13
タンパク質機能および構造の研究は、アフィニティータグ融合を精製の補助として導入する組換えタンパク質発現戦略により大きく向上しました。ポリヒスチジン融合タグ(Hisタグ)は特によく知られており、その理由は小ささ(6~12アミノ酸)と、固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC)に簡単で穏やかな精製を提供し、1ステップで90%を超える大量の純度の高いタンパク質が得られることにあります。
様々なIMAC担体が市販されており、ベースの異なる担体レジン、特定のキレート剤分子、キレート剤固定化の方法、キレートされる金属イオン(すなわち、キレートにチャージされる)等があります。こうした違いは各IMACレジンの結合容量、再利用性、流動特性、化学適合性に影響することがあり、最終的に特定のアプリケーションで結果の質(収量、純度、速度)を決定します。例えば、コバルトでチャージされたIMACレジンはニッケルでチャージされたレジンより一般的に純粋な精製を行うことができますが、ニッケルは通常、コバルトより結合容量が高くなります。また、ニトリロ三酢酸(NTA)のような四座キレートはイミノ二酢酸(IDA)のような三座キレート剤と比較して、精製の際に金属イオンの浸出が少なくなります。特定のアプリケーションおよびスケールには、注意深くレジンおよび方法最適化を選択することが重要です。
Thermo Scientific HisPur製品はHisタグタンパク質精製に使用されるIMACベース担体です。製品には磁気ビーズ、コバルトとニッケルの2種のアガロースレジン、ボトルやカラムのサイズと様々なフォーマットがあります。HisPur Cobalt Superflow Agaroseは独自のコバルトがチャージされた四座キレート剤が高度架橋型(Superflow)6%ビーズアガロースに固定化されています。本記事ではHisPur Cobalt Superflow Agarose性能特性について記述しています。これは、FPLCによる組換えポリヒスチジンタグタンパク質を小規模および大規模に精製するのに適しています。
HisPur Cobalt Superflow Agaroseの精製効率を示す為に、数個の組換えHisタグ融合をFPLCで融合させた緑色蛍光タンパク質(GFP)、リポ酸リガーゼ(LplA)、β‐ガラクトシダーゼ(β-Gal)を過剰発現させレジンで精製し使用しました。精製はSDS-PAGEおよびデンシトメトリー分析で測定され、85~98%の純度レベルの溶出分画が得られました(図1)。またHisPur Cobalt Superflow Agaroseおよび他のソースのコバルト、ニッケルベースIMAC精製レジンの間で精製性能を試験、比較しました(図2)。コバルトIMACレジン同士では類似したレベルの純度が得られました。しかし、HisPur Cobalt SuperflowレジンはQiagenのニッケル-NTA IMACレジンを使用した6x-Hisタグタンパク質精製よりかなり純度が高い結果が得られました。
図1. Thermo Scientific Pierce HisPur Cobalt Superflow Agaroseを使用したHisタグ融合タンパク質の精製。 精製した過剰発現E. coliライセート(40mL)をHisPur Cobalt Superflow Agarose10 mLを充填したカラムにロードした。 非結合タンパク質は洗浄バッファーで除去した。 結合タンパク質は溶出バッファーで回収した(「方法」を参照)。 ロードしたライセート(L)、フロースルー(F)、洗液(W)、溶出液(E)サンプルのプールした分画をSDS-PAGEで分離し、Thermo Scientific GelCode Blue Stain(品番24590)で染色した。 収量はThermo Scientific Pierce 660 nmタンパク質アッセイ(品番22662)を使用して決定した。 純度はThermo Scientific myImageAnalysis Software(品番62237)で染色した溶出液レーンをデンシトメトリー解析した。 全体で10 µgのタンパク質が各溶出分画からロードされた。他の分画ではサンプル1 µLがロードされた。
FPLCプロトコルでのタンパク質精製性能を最大化することは重要で、様々な流速でのレジンの結合特性への深い理解が必要です。タンパク質サンプルがレジンと長く接触するほど結合容量は高くなり、最後には理論的な担体の最大容量となります(図3)。大きな結合能力は低い流速で得られますが、こうした条件は処理に時間がかかります。よって、レジンの動的結合容量プロファイルは精製プロセスを最適化するのに重要な検討事項です。
与えられた特定の流速におけるカラム実行の動的結合容量(滞留時間に反比例する値)は一般的に標的タンパク質の10%がフロースルー分画に蓄積する(「ブレークスルー」と呼ばれる)前にレジンに結合するタンパク質の量とされます。動的結合容量を最大化すると、高流速でレジンが少なくて済み、同時に標的タンパク質の損失を最小化し、処理時間を制御することができます。
高度に精製したN末端6xHisタグ緑色蛍光タンパク質(GFP)を複数の流速で1 mLレジンベッドに加え、HisPur Cobalt Superflow Agaroseについて動的結合容量のプロファイルを決定しました(図3)。1 mL/分の速い流速で(1分の滞留時間と同等の短い時間)、レジンは充填レジン1 mL当たりの結合容量がほぼ20 mg 6xHis-GFPを示しました。0.1 mL/分の流速で(10分の滞留時間と同等の長い時間)、レジンは充填レジン1 mL当たりの結合容量がほぼ65 mg 6xHis-GFPを示しました。
組換えタンパク質間でタグへのアクセス性が異なることや、他のタンパク質や複雑なライセート中生体分子の存在もレジンの結合容量全体に影響します。よって、展開された各プロセスの流速(製品ラン速度)および容量(製品収量)間の適切なバランスを決定することは重要です。
ラボ環境により、アフィニティー精製はmL以下から数Lまでのスケールで行われることがあります。小規模精製では新しいカラムを毎回充填して使う方が簡単で清潔ですが、同じ標的タンパク質に対して精製を繰り返し行う大規模処理には実用的ではありません。HisPur Cobalt Superflow Agaroseは幅広いスケールで使用できる強力で高度に架橋したレジンです。レジンは1260 cm/hrもの線形流速においても圧縮もなく耐えることができます。これはSepharose™ 6B Agarose(GE Healthcare)が圧縮し始める線形流速の2倍に近い値となっています(データ未掲載)。
HisPur Cobalt Superflow Agaroseの再使用性を示すため、単一カラムでクロマトグラフィーの繰り返しのプロファイルをグラフ化しました(図4)。ライセートサンプルを5サイクルの精製と25サイクルの洗浄と再利用を行った後でも、結合容量または溶出効率に大きな減少は生じませんでした。HisPur Cobalt Superflow Agaroseは金属のストリッピングを起こさず、または精製と精製の間に担体を再充填せずに複数回再使用できます。これは、コバルトが固定化四座キレートカラムから精製および再使用時には浸出しないからです。
図4. 標準MES緩衝生理食塩水再生手順を用いたHisPur Cobalt Superflow Agaroseの再使用。 単一のHisPur Cobalt Superflow Agaroseの1 mLカラム(カラム直径 = 0.7 cm)をクロマトグラフィーを用い、流速1 mL/min、26サイクルで処理した。 グラフはE.coliライセート(5 mLライセート、5 mL洗浄バッファー、10 mL溶出バッファー)からの過剰発現6xHis-GFP精製5サイクルごとの結果を示した。 25のサイクル全てには、イミダゾールを除去し、洗浄してカラムを平衡化させ、再利用することが含まれています。これは10 mL MES緩衝生理食塩水(20 mM MES pH 5.0、300 mM NaCl)、10 mLの超純水、10 mLの結合バッファーを使用している。 収量は6回の精製サイクルで全く同じであった。
HisPur Cobalt Superflow Agaroseの非特異的結合は低く、精製後にカラムに残る残渣タンパク質はごく少量です。ほとんどの場合、簡単な再利用のプロトコルで十分です。pH 5のMES緩衝生理食塩水で洗浄し、結合したイミダゾールを除去し、結合バッファーで平衡化します。しかし、細胞ライセートまたはサンプルの透明度、溶解度、品質によって沈殿したタンパク質および他の疎水性物質が経時的にレジンに蓄積することがあります。これはカラムの背圧上昇につながったり、精製中にタンパク質純度や収量の低下に繋がることがあります。この状況が起きた場合、レジンの性能は定置洗浄(CIP)プロトコル(6 Mグアニジン-HClと1%非イオン性界面活性剤溶液で洗浄)で戻すことができます。グアニジン/界面活性剤溶液CIPプロトコルを使用すると、複数のランを行った後わずかに収量が上昇します(データ未掲載)。EDTAストリッピングおよびコバルトの再利用時には、レジンのクリーニングには必要ありません。
最後に、HisPur Cobalt Superflow Agaroseの適合性を精製、クロマトグラフィー担体の洗浄や保存に使用した様々な化学物質で測定しました(図5)。レジンを50%のスラリーとして指定の溶液中に長期間保存しました(2時間または1週間)。インキュベーションに続き、結合バッファー中で各レジンサンプルを平衡化し、未処理のレジンサンプルへの静的なバッチ結合容量と比較しました。これらの化学物質で結合容量に大きく影響したものはありませんでした。HCl(pH < 2)またはNaOH(pH > 12)を使用するようなストリンジェントなCIPプロトコルは劇的にレジンの結合容量を低下させる(データ未掲載)ため、避けるべきです。また、EDTAおよびEGTAのような強いキレート剤も金属がレジンからストリッピングするために溶解、結合、洗浄および溶出バッファーでの使用を避けるべきです。
図5. HisPur Cobalt Superflow Agaroseの化学適合性。 HisPur Cobalt Superflow Agaroseの1 mLアリコートを様々な溶液中の50%スラリーとして保存し、精製に使用した。 各溶液のインキュベーションに続き、トリプリケイトのレジンアリコート100 µLサンプルを2 mLスピンカラム(次の700 x gでの遠心分離処理のため)に加え、1 mL洗浄バッファーで3回洗浄、6xHis-GFP 5mgと転倒混和して22℃で30分インキュベートした。遠心分離でタンパク質溶液を除去した後、カラムを1 mL洗浄バッファーで3回洗浄した。最後に、結合タンパク質を溶出バッファー3 x 1 mLアリコートで溶出した。 各サンプルの溶出分画を合わせた収量は、Pierce 660 nmタンパク質アッセイ(品番22662)で決定した。 エラーバーは各条件における3つのサンプルの標準偏差である。
すべての精製および結合実験は、特に明記しない限り次のバッファー条件で行いました。
すべての洗浄および溶出ステップは5~10カラム容量(CV)で行いました(すなわち、レジンベッド体積)。変性条件下では、バッファーに8 M尿素または6 Mグアニジン-HClも添加しました。本記事で概略を述べた結果は一般的なものと考えられます。しかし、タンパク質収量と純度は組換え融合タンパク質の発現レベル、溶解度、融合タグへのアクセス性により大きく影響します。場合によっては、バッファー条件および流速を変えることが必要です。ここに述べた組換えタンパク質はすべて、単一6x-His融合タグを持ち、LB培地で培養されたE.coli BL21(DE)3細胞により発現しており、、IPTGで16時間未満に30℃で誘導されました。細胞を収集し、0.005% NP-40および1x Thermo Scientific Halt Protease Inhibitor Cocktail(品番78438)を含む結合バッファーを用い、Microfluidizerで溶解しました。
Thermo Scientific HisPur Cobalt Superflow Agaroseは、二価コバルトがチャージされた四座キレートSuperflow 6担体で、ポリヒスチジンタグ付タンパク質の高純度、大規模精製向けに設計されています。
HisPur Cobalt Superflow Agaroseの特長:
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.