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byRamesh Ganapathy, Ph.D.; Scott Meier, M.S.; Aaron McBride, M.S.; Barb Kaboord, Ph.D.; Paul Haney, Ph.D.; Chris Etienne, Ph.D. - 07/11/13
タンパク質機能および構造の研究は、アフィニティータグ融合を精製の補助として使用する組換えタンパク質発現戦略により大きく向上しました。ポリヒスチジン融合タグ(Hisタグ)は特に人気で、その理由は小ささ(6~12アミノ酸)および固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC)に簡単で穏やかな精製を提供し、1ステップで90%を超える大量の純度の高いタンパク質が得られることにあります。
様々なIMAC担体が市販されており、ベースの異なる担体レジン、特定のキレート剤分子、キレート剤固定化の方法、キレートされる金属イオン(すなわち、キレートにチャージされる)等があります。こうした違いは各IMACレジンの結合容量、再利用性、流動特性、化学適合性に影響することがあり、最終的に特定のアプリケーションで結果の質(収量、純度、速度)を決定します。例えば、ニッケル(Ni)でチャージされたIMACレジンはコバルト(Co)でチャージされたレジンより一般的に高収量になりますが、コバルトは通常純度が高くなります。ニッケルレジンは高濃度のイミダゾールまたはサンプルまたはバッファー中の他の汚染物質に耐え、精製条件を修正する際に柔軟性があります。また、ニトリロ三酢酸(NTA)のような四座キレートはイミノ二酢酸(IDA)のような三座キレート剤と比較して、精製の純度が高く、金属イオンの浸出が少なくなります。注意深い選択と方法の最適化が、特定のアプリケーションとスケールに基づいて必要となるでしょう。
Thermo Scientific™ HisPur™製品はHisタグタンパク質精製用のIMACベースの担体で、磁気ビーズ、コバルトとニッケルの2種のアガロースレジン、ボトルやカラムの様々なサイズとフォーマットがあります。HisPur™ Nickel Superflow Agaroseは独自のニッケルがチャージされたニトリロ三酢酸キレート剤が高度架橋型(Superflow)6%ビーズアガロースに固定化されています。本記事ではHisPur Nickel Superflow Agarose性能特性について記述しています。これはFPLCによる組換えポリヒスチジンタグタンパク質を小規模および大規模に精製するのに適しています。
HisPur Nickel Superflow Agaroseの精製効率を示す為に、数個の組換えHisタグ融合をFPLCで融合させた緑色蛍光タンパク質(GFP)、リポ酸リガーゼ(LplA)、β‐ガラクトシダーゼ(β-Gal)を過剰発現させレジンで精製し使用しました。精製はSDS-PAGEおよびデンシトメトリー分析で測定され、85~98%の純度レベルの溶出分画が得られました(図1)。またHisPur Cobalt Superflow Agaroseおよび他のソースのニッケルベースIMAC精製レジンの間で精製性能を試験、比較しました(図2)。類似したレベルの純度が両方のニッケルIMACレジンで得られました。
FPLCプロトコルでのタンパク質精製性能を最大化することは重要で、様々な流速でのレジンの結合特性への深い理解が必要です。タンパク質サンプルがレジンと長く接触するほど結合容量は高くなり、最後には理論的な担体の最大容量となります(図3)。大きな結合能力は低い流速で得られますが、こうした条件は処理に時間がかかります。よって、レジンの動的結合容量プロファイルは精製プロセスを最適化するのに重要な検討事項です。
与えられた特定の流速におけるカラム実行の動的結合容量(滞留時間に反比例する値)は一般的に標的タンパク質の10%がフロースルー分画に蓄積する(「ブレークスルー」と呼ばれる)前にレジンに結合するタンパク質の量とされます。動的結合容量を最大化すると、高流速でレジンが少なくて済み、同時に標的タンパク質の損失を最小化し、処理時間を制御することができます。
高度に精製したN末端6xHisタグ緑色蛍光タンパク質(GFP)を複数の流速で1 mLレジンベッドに加え、HisPur Nickel Superflow Agaroseについて動的結合容量のプロファイルを決定しました(図3)。1 mL/分の速い流速で(1分の滞留時間と同等の短い時間)、レジンは充填レジン1 mL当たりの結合容量がほぼ20 mg 6xHis-GFPを示しました。0.1 mL/分の流速で(10分の滞留時間と同等の長い時間)、レジンは充填レジン1 mL当たりの結合容量がほぼ70mg 6xHis-GFPを示しました。
組換えタンパク質間でタグへのアクセス性が異なることや、他のタンパク質や複雑なライセート中生体分子の存在もレジンの結合容量全体に影響します。よって、展開された各プロセスの流速(製品ラン速度)および容量(製品収量)間の適切なバランスを決定することは重要です。
ラボ環境により、アフィニティー精製はmL以下から数Lまでのスケールで行われることがあります。小規模精製では新しいカラムを毎回充填して使う方が簡単で清潔ですが、同じ標的タンパク質に対して精製を繰り返し行う大規模処理には実用的ではありません。HisPur Nickel Superflow Agaroseは幅広いスケールで使用できる強力で高度に架橋したレジンです。レジンは1260 cm/hrもの線形流速においても圧縮もなく耐えることができます。これはSepharose™ 6B Agarose(GE Healthcare)が圧縮し始める線形流速の2倍に近い値となっています(データ未掲載)。
HisPur Nickel Superflow Agaroseの再使用性を示すため、単一カラムでクロマトグラフィーの繰り返しのプロファイルをグラフ化しました(図4)。ライセートサンプルを6サイクルの精製と、25サイクルの洗浄と再利用を行った後でも、結合容量または溶出効率に大きな減少は生じませんでした。HisPur Nickel Superflow Agaroseは金属のストリッピングを起こさず、または精製と精製の間に担体を再充填せずに複数回再利用できます。これはニッケルが固定化ニトリロ三酢酸キレートカラムから精製および再使用時には浸出しないからです。
HisPur Nickel Superflow Agaroseの非特異的結合は低く、精製後にカラムに残る残渣タンパク質はごく少量です。多くの場合、簡単な再利用のプロトコルで十分です。pH 5.0のMES緩衝生理食塩水で洗浄し、結合したイミダゾールを除去し、結合バッファーで平衡化します。しかし、細胞ライセートまたはサンプルの透明度、溶解度、品質によって沈殿したタンパク質および他の疎水性物質が経時的にレジンに蓄積することがあります。これはカラムの背圧上昇につながったり、精製中にタンパク質純度や収量の低下に繋がることがあります。この状況が起きた場合、レジンの性能は図4にある実験の定置洗浄(CIP)プロトコル(0.5 M NaOHで洗浄)で復旧できます。EDTAストリッピングおよびニッケルの再利用時には、レジンのクリーニングには必要ありません。
最後に、HisPur Nickel Superflow Agaroseの適合性を精製、IMAC担体のクリーニングや保存に使用した様々な化学物質で測定しました(図5)。レジンを50%のスラリーとして指定の溶液中、長期間保存しました(2時間または1週間)。インキュベーションに続き、結合バッファー中で各レジンサンプルを平衡化し、未処理のレジンサンプルへの静的なバッチ結合容量と比較しました。ほとんどの化学物質は結合容量に大きく影響しませんでした。HCl(pH < 2)またはNaOH(pH > 12)を使用し、長時間インキュベートするストリンジェントなCIPプロトコルはレジンの結合容量を低下させる(データ未掲載)ため、避けるべきです。また、EDTAおよびEGTAのような強いキレート剤も金属がレジンからストリッピングするために溶解、結合、洗浄および溶出バッファーでの使用を避けるべきです。
すべての精製および結合実験は、特に明記しない限り次のバッファー条件で行いました。
すべての洗浄および溶出ステップは5~10カラム容量(CV)で行いました(レジンベッド体積)。変性条件下では、バッファーに8 M尿素または6 Mグアニジン-HClも添加しました。本記事で概略を述べた結果は一般的なものと考えられます。しかし、タンパク質収量と純度は組換え融合タンパク質の発現レベル、溶解度、融合タグへのアクセス性により大きく影響します。場合によっては、バッファー条件および流速を変えることが必要です。ここに述べた組換えタンパク質はすべて、単一6x-His融合タグを持ち、LB培地で培養されたE.coli BL21(DE)3細胞により発現され、IPTGで16時間未満に30°Cで誘導されました。細胞を収集し、0.005% NP-40および1x Thermo Scientific Halt Protease Inhibitor Cocktail(品番78438)を含む結合バッファーを用い、Microfluidizerで溶解しました。
Thermo Scientific HisPur Ni-NTA Superflow Agaroseは、ポリヒスチジンタグ付タンパク質をFPLC精製するために設計された二価ニッケル(Ni+2)がチャージされたニトリロ三酢酸(NTA)変性Superflow 6担体です。
HisPur Ni-NTA Superflow Agaroseの特長:
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.