Search Thermo Fisher Scientific
Search Thermo Fisher Scientific
byCarol L. Nilsson, Ph.D.1; John C. Rogers, Ph.D.; Waldemar Priebe, Ph.D.2; Roslyn Dillon, Ph.D.1; Bryan Krastins, Ph.D.3; David Sarracino, Ph.D.3; Arugadoss Devakumar, Ph.D.1; Barbara Kaboord, Ph.D.; Michael Major, Ph.D.; Michael M. Rosenblatt, Ph.D.; Mary Lopez, Ph.D.3; Frederick F. Lang, Jr, Ph.D.2; Howard C. Colman, Ph.D.2; Charles A. Conrad, Ph.D.2 - 12/11/12
癌幹細胞(CSCs)は分化した癌細胞の治療のため開発された化学療法剤に耐性を持つ細胞と仮定されています。(参考1)神経膠芽腫幹細胞株(NSC11)は、STAT3リン酸化阻害剤であるWP1193で活性化すると、多能性状態から前駆細胞様状態へ分化します。(参考2)本研究では、新しい定量リン酸化プロテオミクスワークフローを適用し、NSC11の分化に関与する経路を決定しました。シグナルプロセスを知ることで、治療的の新しい標的を発見できると期待できます。
最近、新規のオートクリンループ(IL-6/STAT3/HIF1α)が膵臓癌細胞(参考3)で発見されました(図1)。本研究の目的は、このループのかく乱がどのようにCSCsの他経路に変化を誘導するかを調べることです。IL-6はJAK経路をIL-6レセプターを通じて誘導し、STAT3は下流ターゲットです。(参考4)活性化されたSTAT3は分解を抑制するか遺伝子転写を強化することでHIF1α(低酸素により誘導される)を亢進します。(参考5)複数のデータセット比較で、各因子のCSC分化への影響およびどのように他のシグナル経路制御と関連するかについて知見を明らかにしました。
図1. 示した経路の直接(実線)および間接(破線)相互作用を表すIL-6/STAT3/HIF1αオートクリンループの概略図 (Path Designer Software、Ingenuity* Systems, Inc.から改変)。
処理はNSC11細胞のIL-6、STAT3阻害、低酸素状態に対する反応を様々な組み合わせで決定するよう設計しました(表1)。
表1. 質量プロファイリングの処理条件。IL-6/ STAT3/ HIF1α経路ループに関わる因子を探るFNSC11癌幹細胞処理方法。記載がある場合、NSC11細胞は収集前にSTAT3リン酸化阻害剤WP1193 (5µM)で24時間、IL-6 (10 ng/mL)で20分間処理しました。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
---|---|---|---|---|---|---|
GrowthCondition | Hypoxia | Normoxia | Hypoxia | Normoxia | Hypoxia | Normoxia |
Stimulus | IL-6 | IL-6 | – | – | IL-6 | IL-6 |
Inhibitor | – | – | STAT3i | STAT3i | STAT3i | STAT3i |
こうした処理条件が多くのタンパク質に与える相対発現への影響は、図2に概略を示した方法で同時に調査しました。
図2. リン酸化プロテオミクスの定量ワークフロー。 リン酸化タンパク質濃縮、アイソバリック質量タグ(TMT)標識、リン酸化ペプチド濃縮を組み合わせて質量分析法の前に実施。
次の5つのThermo Scientific製品が本方法に必要な製品ですです。
この初期研究では、200以上のタンパク質を定量化しました。低酸素症条件は、IL-6の刺激による酸素正常状態に比較して最も多い重要なタンパク質の変化を生じました。定量化したリン酸化タンパク質の機能には転写因子(11%)などがあり、低含量タンパク質が十分に濃縮されていることが示されました(図3)。
図3. リン酸化タンパク質またはリン酸化ペプチドの質量分析で同定された主要なタンパク質機能。
タンパク質発現レベルの変化を調べることに加えて、同じタンパク質の特定部位においてリン酸化が様々な処理の結果生じます。アッセイが高感度であるため、転写因子など主要な低含量タンパク質からリン酸化ペプチドの検出と定量が可能です(図4AおよびB)。ペプチドのリン酸化パターンに多数の変化がアッセイで測定されたため、コンピュータを用いた方法で、もしキナーゼが直接測定できなくても細胞内経路で活性化されるキナーゼを推測することが可能になります。
図4. 質量分析ペプチドとタンデム質量タグのプロファイル。 パネルA:リン酸アポトーシスクロマチン凝縮誘導物質1タンパク質(Acin1)。 パネルB:Bcl2関連転写因子(Bclaf1)。 大きなプロファイルはペプチドのシグネチャを示す。 挿入図は、処理した6サンプルそれぞれのペプチドの相対量を示す質量タグプロファイルを表す。
定量化したリン酸化タンパク質の約15%がIL-6経路にリンクしていました(図5)。残りのタンパク質の約70%が、実験処理で制御される他の関連ネットワークに関連していると思われ、処理による影響はネットワークと標準シグナル経路内で観察されました。残りのデータは、新しい因子が存在し、インフォマティックスの研究が必要です。
6個の異なる実験条件に応じたNSC11癌幹細胞における経路変化の定量は、IL6/STAT3/HIF1αループで予想された経路変化を示しましたが、処理に対応して変化したペプチドのリン酸化パターン、および新しい他経路の知見が得られました。現在文献になく「マッチしない」タンパク質応答については、高レベルの統計分析を用いることで、前駆細胞様細胞へ分化するNSC11細胞の挙動に関してさらに深い見識が得られるでしょう。
NSC11細胞をB27、 EGF、およびBFGF添加のDMEM/F12無血清培地中で培養しました。6個の24時間処理したそれぞれの細胞約2 x 107個を調べ、それには溶媒対照群、IL-6 (10 ng/mL)またはWP1193 (5 µM)、WP1193にIL-6の刺激、酸素正常状態または低酸素状態の細胞培養条件の処理がありました。細胞を回収し、RIPAバッファー(50 mM Tris•HCl、pH 7.4、1% NP-40、0.25%デオキシコール酸ナトリウム、150 mM NaCl、1 mM EDTA)にThermo Scientific Haltプロテアーゼ阻害剤およびHaltホスファターゼ阻害剤(品番78440)存在下で溶解しました。細胞溶解後、リン酸化タンパク質をThermo Scientific Pierceリン酸化タンパク質濃縮キット(品番90003)で濃縮し、還元アルキル化後酵素でペプチドへダイジェストしました。ペプチドはアミノ末端とリジン残基をThermo Scientific Isobaric Tandem Mass Tag (TMT6)試薬で標識しました。6個の標識ペプチドサンプルを1つのサンプルにまとめ、リン酸化ペプチドを親水性相互作用(HILIC)クロマトグラフィーおよびTiO2濃縮でThermo Scientific LTQ-Orbitrap質量分析計での解析前に濃縮しました。タンパク質の同定はThermo Scientific Proteome DiscovererソフトウェアおよびIPIタンパク質データベースで行い、同時に相対ペプチド定量をTMTタグ由来のレポーターイオン存在比の比較により行いました。タンパク質ネットワーク分析はIngenuity Pathways Analysis (Ingenuity* Systems, www.ingenuity.com)を用いて実施しました。
当初、これらのデータは、2009年3月にPreviews13(1):2-5に論文発表されました。
本研究のさらに詳しい報告は、以下の文献を参照してください。
Nilsson, C. L., et al. (2010). Quantitative phosphoproteomic analysis of the STAT3/IL-6/HIF1r signaling network: an initial study in GSC11 glioblastoma stem cells. Journal of Proteome Research 9:430–43. http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/pr9007927
Thermo Scientific 1-Step Heavy Protein in vitroタンパク質発現キットは安定同位体標識(すなわち、heavyな)アミノ酸を含む組換えタンパク質の迅速な無細胞発現を可能にします。
1-Step Heavy Protein IVT Kitの特長:
Learn more about Thermo Scientific 1-Step Heavy Protein in vitro Protein Expression Kits
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.