透析は、半透膜を通した 透析は、半透過性メンブレン上の細孔を通した選択的拡散することに基づく、古典的な技術です。透析は、脱塩、バッファー交換、未標識Dyeの除去、薬物結合研究、細胞増殖およびフィーディング、ウイルス精製、血液処理などさまざまなアプリケーションで利用されています一般的に、サンプルとバッファー溶液(透析液)の境界に、目的のサイズの細孔が施された透析膜を配置して透析を行います。サンプル中の細孔よりも大きな分子は、メンブレンを通過できずサンプル側に留まります。一方、小さな分子は、メンブレンを通過し、サンプル中での濃度が低くなります。(図1)。また外部のバッファー溶液(透析液)中の成分は、ゆっくりとサンプルに入り込みます。

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図1. 透析膜の仕組み。 透析膜は半透過性フィルム(通常は再生セルロースのシート)で様々なサイズの細孔が空いている。 細孔よりも大きい分子はメンブレンを通過できないが、小さい分子は自由に通過できる。 このように、透析は、高分子の物質を含むサンプルの精製またはバッファー交換を行うため使用されることがある。

透析膜の細孔のサイズレンジは、サンプルの分子量によって選択できるように、分画分子量(MWCO)で記されます。透析膜のMWCOは、既知の分子量からなる標準物質を用いた試験で決定します。膜を効果的に通過できなくなったサイズレンジの平均値を示しています。一般的に、長時間(一晩)の透析を行っても90%以上保持される下限の分子サイズ(ダルトン表示)を、透析膜のMWCOとしています。例えば、MWCOが10Kの透析膜では、少なくとも10 kDaのタンパク質は保持されることを示しています。

ただし、透析膜のMWCOは、正確に定義された値ではないことに注意してください。MWCOの値に近い分子の拡散は、明らかに小さい分子に比較すると遅くなります。また、再生セルロースからなる透析膜の細孔のサイズは均一ではありません。そのため大きな分子でも、100%保持することは不可能です。夾雑物の除去に必要な透析時間を見積もるために、透析膜の特性や、表面積:サンプル容積の比(SA :V)などの透析に影響を与えるファクターを理解する必要があります。

In this article, we characterize the separation properties of dialysis membranes having nominal MWCO ratings of 2K, 3.5K, 7K, 10K and 20K. We also compare dialysis rates and other specifications among various sizes of Thermo Scientific Slide-A-Lyzer Devices and Thermo Scientific SnakeSkin Dialysis Tubing, which are designed to process samples from 0.1mL to 250mL.

結果と考察

当社の2 K、3.5 K、7 K、10 K、20 K透析膜のMWCOおよび保持特性を確認するため、さまざまな分子量のサンプルを用い、3 mL容量のSlide-A-Lyzer透析カセットで一晩透析した後、保持率の確認を行いました(図2、パネルA~E)。

図2A. 2 K MWCO透析膜を用いた場合の保持率(%):
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図2B. 3.5 K MWCO透析膜を用いた場合の保持率(%):
A13n08-Fig2b-SAL-3p5K-bar
図2C. 7 K MWCO透析膜を用いた場合の保持率(%):
A13n08-Fig2c-SAL-7p0K-bar
図2D. 10 K MWCO透析膜を用いた場合の保持率(%):
A13n08-Fig2d-SAL-10K-bar
図2E. 20 K MWCO透析膜を用いた場合の保持率(%):
A13n08-Fig2e-SAL-20K-bar

図2. 各透析膜のMWCOの特定。 各パネルは、テストしたさまざまなサイズの分子の保持効率(%)をグラスにまとめたものです。テストでは、2Kから20K MWCOの透析膜をセットしたSlide-A-Lyzer Dialysis Cassette( 3mL容量)を使用し、4℃で一晩(17時間)透析処理後の保持効率を確認しました。 サンプルは、PBS (pH 7)または0.2 M炭酸重炭酸緩衝液(pH 9.4)中に0.5~1 mg/mLの濃度になるように調製しました。 保持効率の確認にはThermo Scientific Pierce BCA Protein Assay(品番23225)を使用しました。またビタミンB12は360 nmの吸収度(ビタミンB12の測定)で測定しました。 各パネルのグラフでは、使用した透析膜のMWCOより小さな分子の棒グラフのバーは灰色で示し、MWCOより大きな分子の棒グラフのバーは異なる色で示して、サンプルのサイズによって色分けしています。 棒グラフは製品のカセットの色に対応しています。

各メンブレン(パネル)で、保持レベルはサンプルの分子量(サイズ)が大きくなるほど大きくなり、およそ90%の保持でプラトーに達します。さらにサンプル分子量が大きくなっても、保持はわずかな(またはゼロの)増加しか示しません(パネルAおよびBを参照)。透析膜のMWCOより小さなペプチドおよび生体分子においても、大部分が保持されていました。これは透析がサイズの近い分子を分離するには効果的な方法ではないことを示しています。一方で、透析は、透析膜のMWCOよりずっと小さい(例:2~3桁小さい)緩衝塩、無機化学物質、他の培地成分の交換には非常に適しています(下図3および4を参照)。

しかし、MWCOは、タンパク質のような球状構造の分子をベースに決定されていることにも注意が必要です。DNAやRNAなどの直鎖状分子では、細長い分子構造のため、分子量が透析膜のMWCOより大きい場合でも、比較的安易に膜孔を通過してしまう場合があります(データ未掲載)。DNAやRNAサンプルを透析する場合、一般的にサンプルの分子量の1/3~1/2のサイズのMWCOの透析膜を選択します。

Molecules whose sizes (masses) are near to the same order of magnitude as the MWCO have variously restricted dialysis rates, depending on their shape and solubility characteristics. By contrast, relatively very small molecules (especially highly soluble ones) usually have very similar rates of diffusion because they can pass through a membrane’s pores freely and unconstrained.

To demonstrate the influence of MWCO on the dialysis rate of small molecules, we dialyzed 200mL of 1M NaCl versus water using Thermo Scientific Slide-A-Lyzer Dialysis Flasks possessing 2K, 3.5K, 10K and 20K dialysis membranes (Figure 3). Dialysis rates for the 3.5K, 10K, and 20K membranes were very similar, each resulting in complete salt removal in less than 10 hours. The sodium and chloride ions of salt have molecular weights (23 and 35g/mol, respectively) that are orders of magnitude less than the MWCOs of these membranes, which have similar thicknesses and pore-densities. By contrast, the dialysis rate for the 2K membrane is significantly slower because it has much smaller pores and a much thicker (50µm vs. ~25µm) membrane compared to the others.

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図3. メンブレンのMWCOおよび透析に有する時間。 2 K、3.5 K、10 K、20 K MWCOのThermo Scientific Slide-A-Lyzer Dialysis Flaskを用いたサンプル200 mL中の1 M NaClの除去率(室温処理)。 ▲で示したポイントで、透析バッファー(4 L)を交換し、NaClの除去率を測定しました。なお除去率はサンプルの電気伝導率で決定しました。 95%を超えるNaClは8~18時間の透析処理で除去されました(2 Kの透析膜では41時間有しました)。 2 K、3.5 K、10 K、20 K透析膜の厚さの平均は、それぞれ50、23、30、25 µmでした。

透析膜の細孔のサイズや数、および膜の厚さは、特定のサイズの分子が細孔を通り外部のバッファーに拡散する効率(または確率)の決定のために重要なファクターになります。また、透析効率は、サンプル体積との関係で、透析膜の表面積にも比例します。サンプルが透析膜表面に広く接するようになればなるほど、分子が拡散中に、透析膜を介して高い頻度で相互移動するので、透析は速まります。Slide-A-Lyzer Dialysis Cassette、Slide-A-Lyzer Dialysis Flask、およびSlide-A-Lyzer MINI Deviceのような高性能な透析用製品は、透析膜の表面積/サンプル量(体積)比を最適化することにより、幅広いサンプル量に応じた簡単でスピーディな透析処理を実現しています。

表面積/サンプル量(体積)比の効果を検証するため、3.5 K MWCOの透析膜をベースに4種の異なるサイズの透析装置を用いて、1M-NaClを水で透析しました(表1、図4)。

表1. NaClを用いた透析速度テストに使用した透析装置とパラメーター。表面積/体積比(SA:V)は、サンプル量と各チャンバーの形状に基づいて計算した。 Thermo Scientific Product Device Capacity Tested Volume SA:V Slide-A-Lyzer MINI Device
(Part No. 88403) 2mL 2mL 1.25cm2/mL SnakeSkin Dialysis Tubing
(Part No. 88244) 35mm dia. 70mL 1.32cm2/mL Slide-A-Lyzer G2 Cassette
(Part No. 87726) 70mL 70mL 1.32cm2/mL Slide-A-Lyzer Dialysis Flask
(Part No. 87761) 250mL 200mL 0.65cm2/mL

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図4. 表面積/体積比の透析速度に対する効果。 グラフは、3.5 K MWCO透析膜がセットされたサイズの異なる4種類のThermo Scientific透析装置(表1を参照)を用いたときの、2 mL、70 mL、70 mL、200 mLサンプルの1 M NaClの除去率を示しています。 透析は大量(例:4 L)の水(透析液)に対して室温で行った。 ▲で示したポイントで、透析バッファーを交換し、NaClの除去率を測定しました。除去効率は、サンプルの電気伝導率で決定しました。

SA:V値がほぼ一致していた3サンプルでは(約1.3 cm2/mL)、ほぼ同等の透析速度を示しました(4~6時間で塩を約95%除去)。一方で、大きなSlide-A-Lyzer Dialysis Flaskでは、SA:V値が他の装置の1/2程度で、95%の塩除去を達成するのに2倍の時間(10時間)を有しました。これはその他の条件が同じなら、透析速度は表面積/体積比に比例するということを示しています。また、透析装置の形状に違いによっても、わずかにサンプル拡散効率に影響します。

結論

本稿では、脱塩やバッファー交換の操作に利用される透析処理について、シンプルな検証実験を行い、いくつかの重要な特徴を示しました。検証実験により、分子量カットオフ(MWCO)値を理解する事ができました。MWCOは分子の分離境界を示すものというよりは、名目上の分類に過ぎません。透析は、同等のサイズの分子を分離するには効果的な方法ではありません。

バッファー交換および脱塩については、透析速度は透析膜の表面積/サンプル量(体積)比(SA:V)に比例しました。つまり、サンプルのSA:Vが最大になる透析装置を選択することが有効です。一方で、便利で、かつサンプルの添加や回収時にトラブルが生じにくい装置を選択することも重要です。

It is important to note that every molecule is different; the concentration, interactions, and hydrophobicity of molecules can influence their ability to diffuse through a dialysis membrane. The temperature, volume, agitation rate and frequency of exchange of the external buffer are also important factors. Therefore, some amount of empirical testing is usually necessary to optimize a dialysis protocol for a specific sample and application.



    注目製品

    Slide A Lyzer

    Thermo Scientific Slide-A-Lyzer G2透析カセット(10 K MWCO)はサンプル透析に最高の利便性、柔軟性、高性能を提供します。

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