ルシフェラーゼベースのレポーターアッセイは、超高感度な検出能力と広いダイナミックレンジを有するため、細胞の遺伝子発現をモニタリングするのに強力なツールとなります。これらのアッセイは、ルシフェラーゼ遺伝子の上流に遺伝子調節エレメントを挿入し、その結果得られるレポーターコンストラクトを、トランスフェクション、形質転換または注入を介して動物細胞、植物細胞または細菌の中にトランスフェクションすることが必要となります。次に、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現(発光として)を測定することで、標的エレメントの作用を受ける生物学的経路の調節エレメント(シス作用性)またはタンパク質(トランス作用性)の活性を定量化します(図1)。通常、研究者はデュアルアッセイを実施し、1つのルシフェラーゼレポーターの活性を用いて特異的な実験条件を評価する一方で、第2の「コントロール」ルシフェラーゼ活性を用いてトランスフェクション効率および細胞生存率を測定します。

A13n01-Fig1

図1. ルシフェラーゼレポーターアッセイの概略図

Thermo Scientific Pierceルシフェラーゼデュアルアッセイは、簡潔なワンステップ検出プロトコルにより、高い感度をもたらします。これらのデュアルアッセイキットは、分光測定(様々な波長を発光)するルシフェラーゼ酵素のペアを用いることで、同一サンプルの活性を識別し、測定することを可能にしています(図2)。これにより、1つのルシフェラーゼのシグナルを他のルシフェラーゼのシグナルから識別するのに必要な通常のクエンチのステップが不要となります。Pierceルシフェラーゼデュアルアッセイのファミリーとしては、3つのデュアルアッセイ系などがあり、赤色発光ホタルルシフェラーゼがウミホタルガウシア、緑色発光ウミシイタケルシフェラーゼとペアになっています。

A13n01-Fig2

図2. Thermo Scientific Pierceデュアルアッセイキットに使用されるルシフェラーゼのスペクトル発光プロファイル。 影の付いた領域は、製品開発に使用された次のフィルターセットを示す。ウミホタルルシフェラーゼとガウシアルシフェラーゼ(480 +/- 20 nm bp)、緑色発光ウミシイタケルシフェラーゼ(525 +/- 15 nm bp)と赤色発光ホタルルシフェラーゼ(640 nm lp)。

BMG LABTECH POLARstar Omegaマルチモード式プレートリーダーは、2つのルシフェラーゼから得られる活性を分光測定する方法でモニタリングするのに最適です(図3)。独自のデュアル同時発光検出モードを備え、それにより、2本の光電子増倍管(PMT)が、両ルシフェラーゼレポーターからの発光をフィルターで同時に測定するのを可能にしています。当社はこのPOLARstar Omegaプレートリーダーの特長を活かし、コントロールレポーター(通常、赤色発光ホタルルシフェラーゼ)で補正後、10万倍以上のルシフェラーゼ濃度全域でPierceルシフェラーゼデュアルレポーターアッセイの感度を実際に示しています。

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図3. BMG LABTECH POLARstar Omega。 本機器のデュアル同時発光検出モードは、Pierceルシフェラーゼデュアルレポーターアッセイとの使用に最適。 両ルシフェラーゼレポーターからの発光を同時に測定可能。

結果と考察

2つのルシフェラーゼの活性を分光測定する、POLARstar Omegaプレートリーダーを使用しPierceルシフェラーゼデュアルアッセイキットの有効性を確認しました。適切なフィルター(下図を参照)を用いて、Pierceデュアルアッセイキットに含まれるルシフェラーゼレポーター酵素3ペアのそれぞれ個別の発光シグナルを容易に測定することができました。赤色発光ホタルルシフェラーゼの赤方偏移蛍光(λmax = 613 nm)は、青色発光ウミホタルルシフェラーゼ(λmax = 463 nm)とガウシアルシフェラーゼ(λmax = 470 nm)、および緑色発光ウミシイタケルシフェラーゼ(λmax = 535nm)の分光測定を可能にします。この波長識別およびPierceルシフェラーゼの安定した高い活性は、広いダイナミックレンジにわたる感度検出を可能にしました。Pierceルシフェラーゼデュアルアッセイにおいて、10万倍以上のルシフェラーゼ濃度全域でルシフェラーゼ活性を精密に測定しました(図4、5および6)。

デュアルアッセイにおいて検出限界を規定することは困難です(Michelini等)。最適な2色システムの場合、1つのルシフェラーゼレポーターの発光スペクトルが、他のルシフェラーゼレポーターの発光スペクトルと重複することはないため、フィルターで波長を完全分離することが可能です。ガウシアおよびウミホタルのルシフェラーゼ活性と、赤色発光ホタルのルシフェラーゼ活性のスペクトル重複はごくわずかです(図1)。各ペアのルシフェラーゼに対してそれらの間の干渉を排除または大幅に減少させるフィルターを選択することにより、各レポーターに対して広いダイナミックレンジにわたり精密な測定を可能にする各デュアルカラーアッセイ系の条件を見つけることができます(図4および5)。緑色発光ウミシイタケおよび赤色発光ホタルのルシフェラーゼなどのレポート間でスペクトル重複がみられる場合、干渉を排除することが極めて重要です。別の方法として、補正計算を用いることもあります。ウミシイタケ-ホタルアッセイには、赤方偏移670 +/- 10 nmバンドパスフィルターを使用しました。このフィルターは赤色発光ホタルルシフェラーゼ(λmax = 613 nm)に対して最適化されていませんが、緑色発光ウミシイタケからの干渉を最小限に抑えます。緑色発光ウミシイタケからの発光が、赤色発光ホタルからの発光よりもかなり大きい場合に限り、干渉が認められました(図6)。各ルシフェラーゼの検出限界およびダイナミックレンジは、ルシフェラーゼ濃度に左右されます。

A.

A13n01-Fig4a-Cyn-FF

B.

A13n01-Fig4b-Cyn-FF
図4. ウミホタル-ホタルルシフェラーゼのデュアルスペクトルアッセイ。 Pierceウミホタル-ホタルルシフェラーゼデュアルアッセイキットを用いて、各レポーターの活性をPOLARstar Omegリーダーでアッセイした。 機器のデュアル発光の光学的諸特性を用いて、475 +/- 30 nmバンドパスフィルター(ウミホタルルシフェラーゼ)および610 nmロングパスフィルター(赤色発光ホタルルシフェラーゼ)を透過する光を1000 msの積分時間で同時に捕捉した。  A. ウミホタルルシフェラーゼを発現している安定した細胞株から得られたHEK293細胞ライセートの段階希釈液(1:10)を、96ウェル白色プレートにロード(10 μL/ウェル、n = 6)した。 赤色発光ホタルルシフェラーゼを発現している安定した細胞株から得られたHEK293細胞ライセートも、コントロール群として各ウェルに加えた(10 μL/ウェル)。 B. 赤色発光ホタルルシフェラーゼを発現している安定した細胞株から得られたHEK293細胞ライセートの段階希釈液(1:10)を、96ウェル白色プレートにロード(10 μL/ウェル、n = 6)した。 ウミホタルルシフェラーゼを発現している安定した細胞株から得られたHEK293細胞ライセートも、モック「コントロール」として各ウェルに加えた(10 μL/ウェル)。
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図5. ガウシア-ホタルルシフェラーゼのデュアルスペクトルアッセイ ガウシアルシフェラーゼを発現している安定した細胞株から得られたHEK293細胞ライセートの段階希釈液(1:10)を、96ウェル白色プレート上にロード(10 μL/ウェル、n = 6)した。 赤色発光ホタルルシフェラーゼを発現している安定した細胞株から得られたHEK293細胞ライセートも、コントロール群として各ウェルに加えた(10 μL/ウェル)。 Pierceガウシア-ホタルルシフェラーゼデュアルアッセイキットを用いて、各レポーターの活性をPOLARstar Omegリーダーでアッセイした。 機器のデュアル発光の光学的諸特性を用いて、475 +/- 30 nmバンドパスフィルター(ガウシアルシフェラーゼ)および610 nmロングパスフィルター(赤色発光ホタルルシフェラーゼ)を透過する光を1000 msの積分時間で同時に捕捉した。
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図6. ウミシイタケ-ホタルルシフェラーゼのデュアルスペクトルアッセイ。 緑色発光ウミシイタケルシフェラーゼを発現している安定した細胞株から得られたHEK293細胞ライセートの段階希釈液(1:10)を、96ウェル白色プレートにロード(10 μL/ウェル、n = 6)した。 赤色発光ホタルルシフェラーゼを発現している安定した細胞株から得られたHEK293細胞ライセートも、コントロール群として各ウェルに加えた(10 μL/ウェル)。 Pierceウミシイタケ-ホタルルシフェラーゼデュアルアッセイキットを用いて、ルシフェラーゼ活性を各レポーターの活性をPOLARstar Omegリーダーでアッセイした。 機器のデュアル発光の光学的諸特性を用いて、515 +/- 30 nmバンドパスフィルター(緑色発光ウミシイタケシフェラーゼ)および670 +/- 10 nmバンドパスフィルター(赤色発光ホタルルシフェラーゼ)を透過する光を1000 msの積分時間で同時に捕捉した。 影の付いた領域は、緑色発光ウミシイタケの発光による赤色フィルターへのブリードスルーを示す。 この領域のスペクトルデータを分離するには、補正計算が必要となる。
結論

Thermo Scientific Pierceルシフェラーゼデュアルレポーターアッセイは、適切なフィルターとBMG Labtech POLARstar Omegマルチモードプレートリーダーを用いて測定した場合、各ルシフェラーゼの10万倍以上の希釈範囲にわたり高い感度が得られます。

方法

試薬消耗品:

  • CMVプロモーターの制御下でウミホタルガウシア、緑色発光ウミシイタケおよび赤色発光ホタルルシフェラーゼを発現しているHEK293安定細胞株
  • Pierce Luciferase Cell Lysis Buffer (Part No. 16189)
  • Pierce Cypridina-Firefly Luciferase Dual Assay Kit (Part No. 16184)
  • Pierce Gaussia-Firefly Luciferase Dual Assay Kit (Part No. 16182)
  • Pierce Renilla-Firefly Luciferase Dual Assay Kit (Part No. 16186)
  • White, 96-well f-bottom plates (Thermo Scientific, Cat # 7571)
  • BMG LABTECH POLARstar OMEGA plate reader

HEK293 stable cell lines expressing CypridinaGaussia, green Renilla and red firefly luciferases under the control of CMV promoter were lysed with Pierce Luciferase Cell Lysis Buffer. Cell lysates were serial diluted 1:10 in lysis buffer. Replicates of each serial dilution (10µL/well) were loaded into white, 96-well plates. As a control, a cell lysate containing a different second reporter (10µL/well) was also added to each well. For serial dilutions of cell lysate containingCypridinaGaussia, or green Renilla luciferase, the second control reporter was red firefly. For serial dilutions of cell lysate containing red firefly, the second control reporter was Cypridina luciferase. Plates were loaded into the BMG LABTECH POLARstar Omega plate reader. The appropriate Pierce Luciferase Dual Assay Working Solution was prepared for each assay, and the instrument injector was primed with working solution. Working solution (50µL/well) was injected into each well. Immediately after reagent addition, luminescence was read through appropriate filters using the plate reader’s simultaneous dual emission mode with a 1 second integration time.

参考文献
  1. Michelini, E., et al.(2008).Spectral-resolved gene technology for multiplexed bioluminescence and high-content screening.Anal Chem 80:260-7.


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    ウミホタル-ホタルルシフェラーゼデュアルアッセイキット:

    • Simultaneous—concurrent, filter-based, wavelength-separated detection of two luciferase activities
    • Sensitive—measure bright blue Cypridina and red firefly luciferase activities in the same sample
    • Fast—no quenching step required, unlike in traditional sequential dual assays
    • Multiplex—capable of quantitating two cellular activities in the same sample(s)

    Learn more about the Thermo Scientific Pierce Cypridina-Firefly Luciferase Dual Assay Kit

    For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.