フローサイトメトリーでは、常により明るい方が良いのか?

より明るい色素の方がフローサイトメトリーに適しているか? 

明るい蛍光色素は、オフターゲット細胞のバックグラウンドを増加させることなく、ポジティブな集団とネガティブな集団をより明確に分離する場合、希少抗原を観察しやすくする傾向があります。また、ターゲットが1つのみ(すなわち、レーザーが1つ、検出器が1つ、抗原が1つ)で、ポジティブな集団の平均蛍光強度(MFI)が検出器のダイナミックレンジ内にある(すなわち、オフスケールではない)場合に効果的です。しかし、2つ以上の蛍光色素を1つのパネルで組み合わせる場合、より明るい蛍光色素の利点は少し複雑になります。各色素-抗体コンジュゲートの蛍光特性を考慮して、それが相互にどのように影響するかを理解する必要があります。多くの蛍光色素は複数の検出器で発光し、複数のレーザーにより交差励起されます。 

もっとも明るい蛍光色素を使用する場合の影響とは?

蛍光色素の励起スペクトルと蛍光スペクトルをプロットすることは、それらのスペクトル特性がパネルにどのように影響するかを予測するのに役立ちます。図1の画像は、PE-eFluor 610のスペクトル例を示しています。このタンデム色素は主に黄色レーザーによって励起されますが、青色レーザーによっても大きく交差励起されます。同様に、この色素は一次検出器(YL-2)で良好に検出されますが、YL-1などの他のチャンネルへの漏れ込みも顕著です。したがって、PE-eFluor 610は非常に明るく、薄暗い集団の分離に適していますが、パネルで使用した場合に、その漏れ込みや交差励起によって他の検出器では分解能を低下させる可能性があります。

図1.Fluorescence SpectraViewerから引用したこちらの両画像は、Attune NxT Flow Cytometerの4レーザー(Blue/Red/Violet/Yellow)搭載機のConfigulation(光学構成)に基づいて表示されています。PE-eFluor 610の励起スペクトルは、標準のバイオレット(405 nm)、青色(488 nm)、黄色(561 nm)、赤色(640 nm)のレーザーでオーバーレイされ、矢印は黄色レーザーを一次励起源として、青色レーザーを二次励起源として示しています。一次励起源からのPE-eFluor 610の蛍光スペクトルは、一次検出器YL-2(620/15)のほか、二次検出器YL-1(585/16)(右)もハイライトされています。PE-eFluor 610では、二次検出器YL-1に顕著な漏れ込みがあることに注意してください。

パネル内のすべての抗原に可能な限り明るい蛍光色素分子を使用することは素晴らしいアイデアに思われますが、問題が生じる可能性もあります。図2のサンプルデータは、明るいことが必ずしも優れているとは限らない例を示しています。抗原密度を増加させながら明るい蛍光色素(このの場合はPE)を使用すると、一次検出器(YL-1)の明るさが増加し、二次検出器への拡がり(スプレッド)(赤、ピンク、紫)も増加します。より明るいコンジュゲートのスプレッドが増加すると、共染色集団を同定することが困難になります。しかし、PEコンジュゲートの明るさを下げると、より分離しやすくなります。 

図2.正常なヒト末梢血細胞をFc Receptor Binding Inhibitor Polyclonal Antibody(カタログ番号14-9161-73)により、4℃で15分間処理した後、次の抗体カクテルを使用して染色しました。抗体カクテルにはCellBlox Blocking Bufferが含まれています。結果を向上させるために、CellBlox Plus Blocking Buffer(カタログ番号C001T06F01)を使用することが推奨されます。リンパ球ゲート内の細胞を分析に使用しました。スプレッドの増加を示す目的で、CD8aをもっとも明るい発現細胞(CD8a hi)でゲートしました。データはAttune NxT Flow Cytometerの4レーザー(Blue/Red/Violet/Yellow)搭載機を使用して収集しました。 抗原密度を高めるために、PE(一次検出器YL-1)の単一染色コントロールをBL-2検出器に補いました:未染色(黒色)、CD197 (CCR7) Monoclonal Antibody (3D12), PE(カタログ番号12-1979-42)(紫色)、CD27 Monoclonal Antibody (O323), PE(カタログ番号12-0279-42)(ピンク)、CD8a Monoclonal Antibody (SK1), PE(カタログ番号12-0087-42)(赤色)。YL-2検出器のMFI(輝度)とBL-2検出器のrSD(スプレッド)が各集団の隣に示されています(左)。CD197 (CCR7) PE(紫)、CD27 PE(ピンク)、CD8 PE(赤)の単一染色コントロールを、CD62L (L-Selectin) Monoclonal Antibody (DREG-56), NovaFluor Blue 585(カタログ番号H009T03B04)(黒)(右)を含む一致する共染色サンプルでオーバーレイしました。 


NovaFluor色素はどのように役立つか?

スプレッドによる分解能不足を克服する最良の方法は、検出器に入り込んでいる蛍光スペクトル量の少ない蛍光色素を使用してパネルを構築することです。NovaFluor色素は、交差励起や、オフターゲットチャンネルへの漏れ込みを低減するようデザインされています。図3では、PE-eFluor 610と、検出器に入り込んでいる蛍光スペクトル量の少ない代替色素であるNovaFluor Yellow 610を比較しています。どちらの蛍光色素もAttuneの同じ一次検出器を占有しますが、NovaFluor Yellow 610では、青色レーザーによる正規化された交差励起が65%近く減少し、PE-eFluor 610の影響をもっとも受ける二次検出器BL-2への放出が少なくなります。PE-eFluor 610はより明るい色素であることを考えると、この交差励起の影響はさらに大きくなります。

図3.Fluorescence SpectraViewerから引用したこちらの両画像は、Attune NxT Flow Cytometerの4レーザー(blue/red/violet/yellow)搭載機のconfigulation(光学構成)に基づいて表示されています。左側の図の点線はPE-eFluor 610(黄色)およびNovaFluor Yellow 610(オレンジ色)それぞれの励起スペクトルを表し、Blue(488 nm)レーザーとYellow(561 nm)レーザーがそれぞれの色素を励起する効率の位置を示しています。右側の図は、Blue(488 nm)レーザーによって2つの蛍光色素が励起される蛍光プロファイルを示しています。両スペクトルはBlue(488 nm)レーザーによって励起された蛍光スペクトルがスケーリングされています。黄色のボックスはBL-2検出器(590/40)を示しています(右)。 

明るいPE-eFluor 610を、暗くて検出器に入り込んでいる蛍光スペクトル量の少ないNovaFluor Yellow 610で置き換えると、理論的には漏れ込みが少なくなるはずです。 それを実際に確かめるため、各蛍光色素を同じ種類の抗体にそれぞれ標識し、同じドナーから採取した同じ細胞に標識した各抗体で染色しました。図4を見てみると、NovaFluor Yellow 610はPE-eFluor 610と比較して漏れこみが少なく、補正したことによって生じるポピュレーションのスプレッドが少ないため、暗いにも関わらずNovaFluor Yellow 610の方が陽性集団を容易に識別できます。  

図4.ヒトの正常末梢血細胞を、Fc Receptor Binding Inhibitor Polyclonal Antibody(カタログ番号14-9161-73)により、4℃で15分間処理した後、次の抗体カクテルを使用して染色しました。抗体カクテルにはCellBlox Blocking Bufferが含まれます。結果を向上させるために、CellBlox Plus Blocking Buffer(カタログ番号C001T06F01)を使用することが推奨されます。リンパ球ゲート内の細胞を分析に使用しました。Attune NxT Flow Cytometerの4レーザー(Blue/Red/Violet/Yellow)搭載機を使用してデータを収集しました。 (A)コンペンセーションしていないおよび(B)コンペンセーションしたCD4 Monoclonal Antibody (SK3), PE-eFluor 610 (カタログ番号61-0047-42)(左 – 赤)およびCD4 Monoclonal Antibody (SK3), NovaFluor Yellow 610 (カタログ番号H001T03Y03)(右 – 青)のYL-2(一次)検出器およびBL-2(二次)検出器における単一染色コントロール。陽性集団(長方形のゲート)の割合は、右上隅に示されています。

従来、より明るい蛍光色素は薄暗い集団を検出できると評価されていました。しかし、これらの従来の蛍光色素のいくつかは、オフターゲット蛍光により、大きな漏れ込みとスプレッドが発生します。引き起こされた漏れ込み・スプレッドはパネルの分解能を低下させるため、特に共発現マーカーに関して、希少な抗原または薄暗く発現している抗原を観察することが困難になります。スペクトルがよりクリーンなコンジュゲートを使用すると、漏れ込み・スプレッドが低減し、分解能を犠牲にすることなく大型パネルの構築が可能になります。 


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