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ビタミンHとして知られるビオチンは、全ての生細胞中に微量に存在する小分子(MW244.3)であり、多くの生物学的プロセスにおいて決定的な要素となります。分子類へビオチンを結合させるために用いる種々の反応性基を組み込むため、ビオチン分子の吉草酸側鎖を誘導体化させることができます。IHC環境下において、ビオチンは抗体または標的抗原検出用の酵素レポーターへ結合されます。
アビジンはビオチンに対して極めて高い親和性を有しているため、複合混合物中のビオチン含有分子がアビジンへ特異的結合します。アビジンは、 卵白中や、鳥類、爬虫類および両生類の組織中に見られる糖タンパク質です。アビジンには、4個の同一サブユニット(4個の合計質量は67〜68キロダルトン)が含まれています。各サブユニットは128個のアミノ酸から成り、ビオチンの分子ひとつへ結合するため、全4つのビオチン分子は単一のアビジン分子へ結合することができます。アビジンのグリコシル化の程度は極めて高度です;炭水化物は四量体の全質量の約10%を占めています。アビジンは、塩pH値基性等電点(pI)10〜10.5であり、広範なpH値下および温度下において安定性を維持します。大規模な化学修飾を行ってもアビジン活性へほぼ影響しないため、特にタンパク質精製の用途に有用です。しかし、その炭水化物含有量と塩基性等電点(pI)が原因で、アビジンは比較的高い非特異的結合特性を示します。
アビジン-ビオチン結合は、タンパク質とリガンド間における既知の非共有結合性相互作用の中では最も強力です。ビオチンとアビジン間の結合は、非常に迅速に形成されます。この結合が形成された後には、極限条件のpH値、温度、有機溶媒および変性剤などからの影響を受けなくなります。アビジンのこうした特性によって、様々な生物医学アプリケーションにおいてビオチン標識のタンパク質や分子類の検出または精製が特に有益となります。
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ストレプトアビジンは、ストレプトマイセス アビジニから単離されており、サイズや親和性特性の観点からビオチンに類似しています。しかし、アビジンとは対照的に、ストレプトアビジンはグリコシル化されていないため、IHCアプリケーションにおいてタンパク質の非特異的結合性が低下します。Pierce製品は、組換え形態のストレプトアビジン(質量53kDa、中性付近のpI)を採用しています。
アビジンとストレプトアビジンは、それぞれ組成物が大きく異なりますが、その他の点においてはお互い非常に類似しています。また、ストレプトアビジンは四量体タンパク質であり、その各サブユニットは、アビジンに類似した親和性を有する1個のビオチン分子へ結合します。ストレプトアビジンの水溶性は、アビジンよりも非常に低くなります。pH値1.5下での塩化グアニジニウムにより、アビジンとストレプトアビジンはサブユニットへ解離されるとはいえ、ストレプトアビジンは解離への耐性が比較的高いです。ストレプトアビジンには、細胞表面受容体へ結合するタンパク質中のRGD配列に類似したRYD配列が含まれます。一部のアプリケーションでは、RYD配列によりバックグラウンドが発生する可能性があります。
結腸癌組織中のサイトケラチン18の免疫組織化学的検出。 ビオチン化サイトケラチン18抗体(上画像)またはネガティブコントロールとしてブロッキングバッファのみ(下画像)を用いて、ヒト結腸癌切片をインキュベートしました。 そして、Thermo Scientific Pierce High Sensitivity Streptavidin-HRPを用いてサンプルをインキュベートし、Thermo Scientific Pierce Metal Enhanced DABを用いてシグナルを発生させました。
Thermo Scientific NeutrAvidin Proteinは、質量約60kDaの特殊な脱グリコシル化型アビジンです。炭水化物を除去した結果、レクチン結合は検出不可能レベルまで低減しますが、炭水化物はこの活性に不要であるためビオチン結合親和性が保持されます。ニュートラアビジンタンパク質は、中性付近のpI値(6.3)により非特異的吸着を最小限に抑え、リジン残基が誘導体化や結合に有効な状態を維持するという利点があります。ニュートラアビジンタンパク質は、中性付近のpI値や、炭水化物およびRYD配列の欠如が原因で、既知のビオチン結合性タンパク質の中では非特異的結合度が最も低くなります。
アビジン (ニワトリ) | ストレプトアビジ (組換え型) | ニュートラアビジン (アビジン由来) | |
---|---|---|---|
分子量(kDa) | 67 | 53 | 60 |
ビオチン結合部位 | 4 | 4 | 4 |
等電点(pI) | 10 | 6.8~7.5 | 6.3 |
特異性 | 低 | 高 | 最高 |
ビオチン親和性 (Kd) | 最大10~15M | 最大10~14または15Mまで | 最大10~15M |
非特異的結合 | 高 | 低 | 最低 |
レポーターの輝度は、局在的な酵素活性作用によるものであり、標的抗原へ結合する酵素分子数を増加させると感度を向上させることができます。こうした増幅を達成するには、各四価アビジン分子内の多重ビオチン結合部位が理想的です。標準的な染色手順を以下に解説いたします。また、下図は形成された複合体を表しています。
その結果、抗原部位において酵素濃度が上昇する(アビジン分子1個に対して酵素分子3個)ため、添加基質に対するシグナル強度および感度が向上します。
利点 | 欠点 |
---|---|
標的抗原に局在する酵素レポーターの増加 | 一部の組織については、非特異的標識化を避けるため、内因性ビオチンのブロッキングが必要になることがあります。 |
検出効率の向上 | ABC複合体は、大型であるため、一部のアプリケーションでは組織浸透を妨害します |
一次抗体の所要量が、直接検出法よりも少量で済みます | |
PAP法よりもアッセイ時間が短縮されました |
この手法では、ストレプトアビジン-酵素複合体を用いて、組織切片上の結合性ビオチン化一次抗体を検出します。ABC法においてアビジン-ビオチン-酵素複合体が大型になりすぎて組織を貫通できない場合、この手法を利用できます。この小型複合体は、組織浸透性に優れ、検出感度を8倍向上させることが報告されています。また、この複合体はバックグラウンドを低減させ、感度をより一層向上させることから、アビジンに勝る代替物質として使用できます。標準的な染色手順を以下に解説いたします。また、下図は形成された複合体を表しています。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.