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クロスリンクとは、共有結合によって2つ以上の分子を化学的に連結させるプロセスを指します。クロスリンク試薬(またはクロスリンカー、架橋剤)は、タンパク質上や分子上の特異的官能基(第一級アミン、スルフヒドリルなど)へ化学的に結合する能力のある複数の反応性末端を含む分子です。
クロスリンク試薬は様々な技法で利用されており、パートナーとタンパク質の相互作用、タンパク質の三次元構造ドメイン、および細胞膜内の分子会合の特定に利用できます。またクロスリンク試薬は、以下の用途にも利用されます:アフィニティー精製において、固体支持体上へタンパク質を固定化する;免疫化において、キャリアタンパク質へハプテンを結合させる;検出手順において、抗体-酵素複合体を調製する。本ページでは、クロスリンクアプリケーションをいくつか概説いたします。
クロスリンカーアプリケーションガイド
アプリケーション、著者、タイトル、試薬名、製品番号に基づいて参考文献をご検索ください
クロスリンクカーを利用して、精製済みサンプルまたは複合体サンプル中のタンパク質の構造や組成の研究が行えます。実験においてアミノ・カルボキシル・スルフヒドリル反応性の各試薬を用いると、特定アミノ酸の同定や定量化、あるいはサブユニットの数量・位置・サイズの測定が円滑に行えます。
長さの異なる(あるいは同一の)クロスリンクカーを用いた実験を行うと、タンパク質の二次/三次/四次構造中の特定官能基間の分子距離が明らかになります。例えば、短いアミン-アミンクロスリンクカーでは二量体タンパク質サブユニットが適正に架橋されず、わずかに長いクロスリンクカーでは適正に架橋される場合、天然二量体構造内の関連アミノ酸は、長いクロスリンクカーの長さにほぼ等しい距離に存在すると結論付けられます。
非開裂性のホモバイファンクショナルバイファンクショナルスルフヒドリル反応性リンカー(BMHなど)を用いると、サブユニット間の切断可能なジスルフィド結合を永久クロスリンク(非還元性クロスリンク)へ変換できます。環境によっては、クロスリンクカーの溶解性や、タンパク質分子構造の微小環境へのクロスリンクカーのアクセシビリティーに応じて、クロスリンクのパターンや達成度が異なる場合があります。例えば疎水性クロスリンク試薬は、分子の疎水性領域において反応効率が高くなる傾向があります。
一般に、電気泳動 (1Dまたは2D)、およびその後の染色またはウェスタンブロット検出によりクロスリンクの評価を行います。スペーサーアーム中に還元可能なジスルフィド結合を含むクロスリンクカーを使用する場合、非還元性・還元性の両方式のポリアクリルアミドゲル電気泳動 (PAGE)で解析すると有益な情報が得られます。また、切断可能および非切断性のマッチドペアのクロスリンクカーを使用して、こうした情報を得ることも可能です。
This 45-page guide is of value to the novice as well as those who have previous experience with crosslinking reagents. It begins with a basic discussion on crosslinking and the reagents that are used. The guide also contains a discussion on various applications where crosslinking has been applied, including the powerful label transfer technique for identifying or confirming protein interactions. Crosslinking chemistry is addressed in an easy-to-follow format designed to convey the important information you need without getting lost in details. Each Thermo Scientific Pierce crosslinking reagent is shown along with its structure, molecular weight, spacer arm length and chemical reactivity. The handbook concludes with a list of excellent references on crosslinker use and a glossary of common crosslinking terms.
タンパク質間相互作用はあらゆる細胞経路の基盤となっています。そのため、プロテオミクス研究において、タンパク質相互作用の発見と特性評価に関する重要性が高まりつつあります。タンパク質相互作用の大半は一過性(一般に不安定性)現象であるため、解析に向けて相互作用を捕捉・安定化させる手段としてクロスリンク法は重要です。
上記サブユニット解析のクロスリンク・解析戦略の中には、タンパク質間相互作用の解析にそのまま利用できるものもあります。これらの戦略では、様々な長さのホモバイファンクショナルバイファンクショナルクロスリンクカーの切断可能・非切断性ペアのテスト後、ゲル電気泳動により結果の評価を行います。相互作用タンパク質の少なくとも1成分に対して特異的な抗体またはプローブが利用できる場合であれば、ウェスタンブロットでタンパク質の共有結合複合体を共精製や検出することによって結果の評価が行えます。
タンパク質相互作用の実験は、精製タンパク質を使用して実行されますが、in vivo での相互作用の研究や同定化を図るには、一般に特定処理条件下で増殖させた細胞が使用されます。何らかの刺激処理を行った後、異なるタイムポイントで確認して分子間架橋が起こるタイミングが分かれば、分子間の相互作用、つまりその細胞経路における応答がいつ行われたかを確認することができます。In vivo</129クロスリンクに利用できる試薬も複数あります。細胞表面に作用する親水性タイプと細胞内(細胞膜の内側)で作用する疎水性タイプの試薬があります。
ヘテロバイファンクショナルクロスリンクカーの中でも、特に光活性化された末端を有する非特異反応性のタイプは、タンパク質相互作用解析に極めて有用です。まずこれらのリンカーを精製「ベイト」タンパク質に反応させてから細胞やライセートへ添加すると、ベイトタンパク質が「プレイ」タンパク質と相互作用します。適当なタイミングで、タンパク質と結合していない側のリンカー末端を(紫外光照射により)活性化させると、近傍に存在する化学基へすぐに結合します。タンパク質相互作用複合体において、反応の結果、ベイト・プレイの各タンパク質相互作用物質の間でクロスリンクが起こります。
ヘテロバイファンクショナル・光反応性のクロスリンクカーが、検出可能タグ(例:ビオチン、放射性同位体または質量変異体)および切断可能なスペーサーアームも含む場合であれば、試薬を使用して既知ベイトタンパク質から未知プレイタンパク質への検出可能タグの転移が行えます。これはラベル転移と呼ばれています。タンパク質相互作用の研究における標識転写やクロスリンク法の詳細については、タンパク質相互作用解析の関連ページをご覧ください。
クロスリンクカーを用いて毒性分子を腫瘍特異的抗体に結合させることで、細胞上の標的抗原に対して作用させることができます。この「免疫毒素」は表面抗原によって細胞内へ取り込まれます。そして内部移行後、リボソーム不活性化または他の手段により細胞の殺傷を始めます。このようなクロスリンカーを用いて作成した免疫毒素により、標的細胞特異的に作用して殺傷させることができます。免疫毒素が有効であるためには、複合体がin vivoにおいて安定している必要があります。また、免疫毒素がその標的へ到達した時点で、抗体は毒素から分離可能である必要があります;これで毒素の作用により細胞が死滅します。切断可能なジスルフィド含有複合体は、リシンA免疫毒素の非切断性の複合体よりも腫瘍細胞に対する細胞毒性が強いことが判明しています。細胞は、クロスリンクカー中のジスルフィド結合を切断する能力があり、標的細胞内の毒素を放出させます。
SPDPは可逆性NHSエステルのピリジルジスルフィドクロスリンクカーであり、アミン含有分子をスルフヒドリル基へ結合させる用途に使用します。これは免疫毒素の産生における主要なクロスリンクカーとして、数年間利用されてきました。アミン反応性NHSエステルは、通常一次抗体と最初に反応します。一般に毒素には表面スルフヒドリル基が含まれていないため、ジスルフィド還元によってスルフヒドリル基を毒素中へ導入する必要があります。これは、リシンA鎖やアブリンA鎖の関与する手順、あるいは化学修飾試薬を介した手順において一般的です。このために、SPDP分子を免疫毒素上のアミンと反応させた後、還元してスルフヒドリル基を生じさせます。また、免疫毒素産生用の化学修飾試薬としては、2-イミノチオラン(Traut’s試薬)も一般的です。これは第一級アミンと反応して、スルフヒドリル基を付加します。
Bioconjugate Techniques, 3rd Edition (2013) by Greg T. Hermanson is a major update to a book that is widely recognized as the definitive reference guide in the field of bioconjugation.
Bioconjugate Techniques is a complete textbook and protocols-manual for life scientists wishing to learn and master biomolecular crosslinking, labeling and immobilization techniques that form the basis of many laboratory applications. The book is also an exhaustive and robust reference for researchers looking to develop novel conjugation strategies for entirely new applications. It also contains an extensive introduction to the field of bioconjugation, which covers all the major applications of the technology used in diverse scientific disciplines, as well as tips for designing the optimal bioconjugate for any purpose.
特異的抗体を作製するには、ペプチドまたは他の抗原を動物に注入した後、外来性分子に応答して動物から産出された抗体を回収します。ペプチドや抗原分子類は十分な複雑性を備えていないうえサイズが大きくないため、抗体産生を担う上で必要な免疫応答を惹起できません。したがって有効な免疫原を作製するには、これらの小抗原(ハプテンと呼ばれる)を比較的大きなタンパク質または分子へ付着させる必要があります。
様々なクロスリンクカーを用いてハプテンとキャリアタンパク質を結合させることによって、免疫原を作製できます。ハプテン上に存在する官能基に応じて、またハプテン-キャリア複合体がインジェクション後に免疫原として十分に作用する、最適なクロスリンクカーをご使用ください。タンパク質やペプチドには複数のカルボキシルと第一級アミンが含まれているため、カルボジイミドEDCによってペプチド-キャリアタンパク質複合体を比較的容易に生成できます。
末端システインで合成されたペプチド抗原は、スルフヒドリル/アミン反応性のヘテロバイファンクショナルクロスリンクカー (例:Sulfo-SMCC)を用いて、支持体またはキャリアタンパク質へ付着させることができます。この手法では、二段階で結合反応を行うことにより、抗原提示をブロックしたり、変性させるペプチド抗原への内部クロスリンクすることを防ぐことができます。
特定の薬剤化合物や特殊なハプテンには、特殊なクロスリンク法を適用する必要があります。とはいえ通常のケースでは、活性化済みの免疫原性キャリアタンパク質 (KLH、BSAなど)や、EDCまたはSulfo-SMCCクロスリンクカーを利用したキットを用いて、容易に免疫原の調製が行えます。
クロスリンクカーアプリケーションガイド
アプリケーション、著者、タイトル、試薬名、製品番号によって、参考文献をご検索ください
タンパク質間複合体の産生は、クロスリンクカーの主要アプリケーションのひとつです。実際、ELISA、ウェスタンブロッティングおよびその他の免疫検出法で使用される二次抗体の大半は、タンパク質間複合体のモデルです。抗体-酵素複合体は、精製抗体と酵素タンパク質のクロスリンクにより調製されます。二次抗体プローブの作製するレポーター酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ (HRP)とアルカリホスファターゼ (AP)が最も標準的に用いられ、汎用性が高いです。またこの2酵素は、ストレプトアビジンとビオチン結合タンパク質類による複合体を作製する用途にも一般的に利用されます。
酵素標識二次抗体や酵素標識ストレプトアビジンとしてさまざまなタイプの製品が市販されており、通常、研究者自身の手で特定複合体を調製する必要はほとんどありません。とはいえ、研究対象の一次抗体や特殊タンパク質を商業的運用できない場合もあります。標識二次抗体のメーカーが利用するクロスリンク法は、各研究者による小規模の多種多様なタンパク質-タンパク質結合ニーズにもそのまま適用できます。
グルタルアルデヒドは侵襲性・非判別性のクロスリンク試薬であり、かつては抗体-酵素複合体の調製用として一般的に利用されていました。グルタルアルデヒドを大過剰モル量用いることで、一方のタンパク質 (例:HRP)を活性化させ、もう一方のタンパク質 (例:抗体)へ結合させることができます。この手法では容易に複合体を作製できるものの、通常酵素または抗体を部分的に不活性化させ、イムノアッセイにおいて高バックグラウンドを発生させてしまいます。
ホモバイファンクショナルNHSエステルまたはイミドエステル (アミン反応性) クロスリンクカーをワンステップ手順によって使用して、2つの精製タンパク質を結合させることができますが、ポリマー化や分子内結合が必ず起きます。これは目的の分子間結合と同程度に発生する傾向があります。タンパク質相互作用のアプリケーションとは異なり、抗体中や酵素中で結合された場合の2つのタンパク質は、溶液中で共に会合しない点に留意してください;2つの抗体分子または2つの酵素分子によるお互いの遭遇率は、抗体と酵素分子による遭遇率と同程度になる傾向があります。
片方のタンパク質が糖タンパク質であり、その糖鎖がタンパク質機能に必須ではなければ (例:HRPのケース)、結合の基盤として炭水化物部分を使用できます。メタ過ヨウ素酸ナトリウムで炭水化物基を酸化させると、第一級アミン (リジン残基の側鎖)に対して直接反応性のあるアルデヒド基が、還元的アミノ化を介して産出されます。これらの複合体は、酵素イムノアッセイにおいて低バックグラウンドであり、比較的容易に調製できます;しかし何らかの抗体の分子内結合が起こる可能性があります。
抗体-酵素クロスリンクやタンパク質間クロスリンクなどの用途には、ヘテロバイファンクショナルクロスリンクカーが最適でしょう。ホモバイファンクショナルNHSエステル試薬またはグルタルアルデヒドを使用すると、不要な分子内結合が必ず発生します。SMCCやSulfo-SMCCなどの試薬を使用すれば、こうした自己結合は回避できます。それぞれの反応において、片方のタンパク質を本試薬のアミン特異的末端へ反応させることができます。もう一方のタンパク質については、還元剤またはスルフヒドリル付加試薬を用いて処理することにより、スルフヒドリル基の曝露や作成が行えます。最後に過剰分の未反応試薬を除去した後、二つのタンパク質を混合させると、一方のタンパク質のスルフヒドリル反応性官能基(マレイミド)がもう一方のタンパク質のスルフヒドリル基へ結合します。
タンパク質、ペプチドおよび、その他の分子は、タンパク質のアフィニティー精製やサンプル解析のために固体支持体上へ固定化できます。支持体のタイプには、ニトロセルロース膜またはその他材質の膜、ポリスチレンプレートまたは粒子、ビーズアガロースまたはポリアクリルアミド樹脂、そしてガラススライドなどがあります。一部の支持体は活性化させてリガンドへ直接結合させることができます。
多種多様なアフィニティー樹脂支持体や数種類のポリスチレンプレートとガラススライドを取り揃えています。これらは、化学基で予備活性化または機能化されており、タンパク質やリガンド類を直接固定化またはクロスリンクカーを介して固定化できます。弊社製品のThermo Scientific SulfoLink Coupling Resinは、スルフヒドリル反応性ヨードアセチル基を含むビーズアガロースです;システイン含有ペプチドは固定化がしやすく、アフィニティー精製法に利用できます。また別の製品として、Thermo Scientific CarboxyLink Coupling Resinがあります。このアガロース骨格は、ジアミノジホスフェン (DADPA)で誘導体化されており、多数の第一級アミンを提示します;カルボキシル基含有ペプチドはEDCを用いて容易にアミノ酸へクロスリンクできます。
固定化法の詳細については、タンパク質メソッドライブラリの各ページをご覧ください。一般に、アミン-カルボキシル基間の結合やアミン-スルフヒドリル基間の結合に利用するヘテロバイファンクショナル化学は、成功率と汎用性が最も高くなります。各種のクロスリンクカーや修飾試薬と組み合わせて、特定樹脂や機能化表面物質を使用すれば、あらゆるタイプの特殊な固定化を達成できます。
大半のクロスリンクカーは、タンパク質-DNAクロスリンクよりもタンパク質間クロスリンクに対して優先的に反応するため、DNAやRNAをタンパク質へクロスリンクさせるのは一般的に困難となります。こうしたクロスリンク法を支援するために、通例、特定塩基に結合した第一級アミンやチオールでDNAプローブを合成させます。DNAへ塩基を挿入した後、アミノ/スルフヒドリル反応性クロスリンクカーを用いて、塩基をタンパク質へ結合させることができます。
この他にも、旧手法から最新技法・特殊性の高いニーズまで、クロスリンクカーを使用するアプリケーションは数多く存在します。旧来のペプチド合成法では、DCCやEDCなどのカルボジイミドクロスリンクカーを使用して、各アミノ酸をペプチド結合の支持体へ段階的に付加します。グルタルアルデヒドやジメチルピメリミデートなどのクロスリンクカーは、組織固定化の用途に利用されてきました。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.