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Essential 8™培地に関する以下の情報をお役立てください。
Essential 8™培地とビトロネクチン(VTN-N)で培養された細胞には、他のフィーダーフリーの培養系と比較して主に3つの違いがあります:
1. Essential 8™培地とは?
Essential 8™培地とは、ヒト多能性幹細胞(PSCs)の培養および増殖用に作られたゼノフリー(異種動物由来成分不含)およびフィーダーフリーの培地です。 Essential 8™培地は、James Thomson氏の研究室のChen氏ら[1]によって開発され、Cellular Dynamics International社により認証されています。幅広く実験検証され、多くのPSC株において多能性を維持することが立証されています。
2.Essential 8™培地はいくつのコンポーネントで構成されていますか?
Essential 8™培地は、PSCsの培養に必要な8つの成分のみで構成されています。 本製品は、他社製品Mで見られるロット間差を克服する培地としてChen氏ら[1]によって開発されたものです。 Essential 8™培地は、最小限のコンポーネントであることと、(表1)そこからアルブミン(BSA)を取り除くことで、ロット間差をより低減しています[1]。 Essential 8™培地は、便利な2種類のコンポーネントキットで販売されています: DMEM/F-12 (HAM) 1:1(サイズ:500 mL)およびEssential 8™サプリメント (50X)(サイズ:10 mL)
表1: 他社製品M及びEssential 8™培地の成分比較
成分 | 他社製品M | Essential 8™ Medium |
---|---|---|
DMEM/F-12 | ||
L-アスコルビン酸 | ||
セレン | ||
トランスフェリン | ||
NaHCO3 | ||
Glutathione | ||
L-L-グルタミ | ||
Defined lipids | ||
Thiamine | ||
Trace elements B | ||
Trace Elements C | ||
β-Mercaptoethanol | ||
Albumin (BSA) | ||
インスリン | ||
FGF2 | ||
TGFβ1 | ||
Pipecolic acid |
| |
LiCl | ||
GABA | ||
H2O |
3.Essential 8™培地には、bFGFが含まれていますか?
はい、Essential 8™培地には、100 ng/mLの塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)が含有されています。従って、追加でbFGFを添加する必要はありません。
4.ビトロネクチン(VTN-N)とは何ですか?
ビトロネクチン(VTN-N)とは、大腸菌で発現されたヒトビトロネクチンのアミノ酸断片62-478に対応する組換え型ヒトタンパク質です。 VTN-Nは、封入体から精製し、ヒトPSCsのフィーダーフリー培養用基質として使用できるよう、リフォールディングされたものです(1)。 Essential 8™培地と併用した場合、VTN-Nは、複数のPSC株で多能性および正常な増殖性を維持することが立証されています。
5.他の基底膜抽出物とVTN-Nを比較すると、どのような違いがありますか?
VTN-Nは、組成が明らかな組換え型ヒトタンパク質のため、ヒトプラズマ由来のビトロネクチンや標準的な基底膜抽出物(BME)と比較して、PSC培養での変動性が低減されます。 また、全長ビトロネクチンや組成が明確な他の基質と比べて、VTN-Nは経済的でよりスケーラブルなPSC培養を可能とします。
8.Essential 8™培地およびVTN-Nは、PSCsの長期増殖に対応していますか?
Essential 8™培地およびビトロネクチンは、核型異常の兆候が現れることなく、50継代以上のPSC増殖に対応しており、3つの生殖細胞系統全てに分化能を保持していることが分かっています。 James Thomson研究室のChen氏ら[1]の論分に発表されている通り、ビトロネクチンのVTN-N変異型は、Essential 8™と併用するとヒト多能性幹細胞への接着および生存率が野生株のビトロネクチンより高まります。
9.Essential 8™培地には、ロット間差がありますか?
Essential 8™培地は、既存のフィーダーフリー培地と比べ、ロット間差が少なくなっています。 Essential 8™培地は、20種類以上の変動性の高い成分を含有した他の培地とは異なり、米国cGMPに準拠した生産施設で製造されています。また、最適化されたコンポーネントで成長因子を含有しているため、変動性を最小限に抑え、細胞の健全性・多能性・増殖性の最大化を図ることが可能となります。
10.過去に他の培地や基質で培養されたPSCsを、Essential 8™培地およびVTN-Nで培養することは可能ですか?
Matrigel™基底膜マトリックスを使用した他社製品M、または、Geltrex®マトリックスを使用したStemPro® hESC SFMなどフィーダーフリーの培地系で培養された細胞を、Essential 8™培地およびVTN-Nで培養することに成功しています。 また、KnockOut™ SRのフィーダー上で増殖したPSCsもEssential 8™培地およびVTN-N上で問題なく培養できることも分かっています。 ただ、培地を交換する際には、Essential 8™培地およびVTN-N上で培養する前に、細胞を手作業またはEDTAを使って継代する必要があります。
11.異なる培地条件で凍結保存されたPSCsを融解後、Essential 8™培地およびVTN-Nで培養することは可能ですか?
はい。他社製品MやMatrigel™基底膜マトリックスによる培養で凍結保存されたPSCsは、Essential 8™培地で融解、VTN-N上に播種出来ます。 株によっては、凍結保存の際に増殖していた培地および基質で融解したほうが、より有効な場合があります。 次の継代では、EDTAを使用し、Essential 8™培地およびVTN-Nへと移行してください。
12. Essential 8™培地およびVTN-NのPrototypeとは何ですか?
プロトタイプとは、ライフテクノロジーズ社により製品開発されたが、その開発がまだ完全な新製品導入プロセスを終えていないことを意味します。 プロトタイプの培地は、New York州Grand Islandにある弊社サイトでcGMP準拠の下、製造されており、開発スペックの合否テストが行われています。ただし、まだ保存の延長期限(>12ヶ月)のテストが行われていません。 Essential 8™培地(製品番号:A14666SA)およびビトロネクチン(VTN-N)(製品番号:A14701SA)におけるプロトタイプとは、cGMPに準拠した安定性試験および社内プロセスを現在実施中であることを意味します。 これらの試験が完了後、カタログ製品という扱いになり、プロトタイプではなくなります。
13.Essential 8™培地およびVTN-Nで増殖した細胞の形態はどのようになりますか?
正常な多能性幹細胞の形態が見られるはずです。 PSCsの形態は、特に境界線のはっきりとした密集コロニーで、高い核/細胞質比が見られると予測されます。 下記の画像は、6継代目のPSCsです6。
14.Essential 8™培地は、どのように調整しますか?
Essential 8™を500 mLの完全培地に調整するには、Essential 8™サプリメント(50X)を一晩かけて2~8℃で融解し、下記リストに掲載された成分を無菌状態で混ぜ合わせます。
成分 | Stock concentration | Final concentration | 分量 |
---|---|---|---|
DMEM/F-12 (HAM) 1:1 | — | 1x | 490 mL |
Essential 8™ Supplement | 50倍 | 1x | 10 mL |
25.EDTAを解離剤として使用した場合、どのくらいのインキュベーションが望ましいですか?
EDTAを使用した場合のインキュベーションは、37℃で4~5分が理想的です。 細胞が分離し始め寄せ集まった時点で顕微鏡から覗いてみると、コロニーに穴があるように見えます。この状態は容器から細胞を剥がすタイミングであることを意味します(下記図A)。 下記図Bのように、コロニーがばらばらに分散してしまう状態は好ましくありません。
A | B |
27.推奨される継代比率は?
EDTAには、ディスパーゼやコラゲナーゼとは異なった解離特性があり、コロニー(EDTA含有)のサイズが非常に小さいため、最適な培養条件に対応すべく、継代比率を調整する必要があります。 細胞の密集度が~85%に到達したら、継代する必要があり、通常Day4を指します。 Day3でも継代可能な場合もあります。 EDTAで継代する場合の一般的な比率は、1:6、1:8、もしくは1:10になります。 早すぎる/遅すぎる継代を避けるため、継代比率を調整しなければなりません。
A | B | c. |
28.定期的な継代を行っている間に、細胞をPBSで洗浄することは可能ですか?
EDTAで継代したヒトPSCsは、EDTAを添加する前にカルシウムおよびマグネシウムを除去したダルベッコリン酸バッファー(DPBS)で洗浄する必要があります。
30.Essential 8™培地に含有されるインスリンは、どのような働きがありますか?
インスリンは、細胞の生存性および増殖に重要な成分です。
36.皮膚生検標本で採取された線維芽細胞を、ゼノフリー条件環境を実現するため、Essential 8™培地で培養することは可能ですか?
はい、皮膚生検標本から採取された線維芽細胞は、EGF、トロンビン、ヒドロコルチゾンを添加し、Essential 8™培地で増殖・培養することが可能です。(1)
38. Essential 8™培地とGeltrex®で培養した細胞継代にEDTAを使用することは可能ですか?
はい。ビトロネクチン(VTN-N)の場合と同様に、EDTAを使用して解離してください。
39. 細胞がうまく接着しない?
(1)VTN-Nの濃度を1ug/cm2にする。(2)アダプテーションの時にだけROCKインヒビターを加える(Y-27632の場合は10um添加、Thiazovivinの場合は2um添加)。(3)EzPassageを使用しない。
40. フィーダー細胞を使用したKSR培地からEssential 8™培地およびビトロネクチンに移行する際に細胞が接着しない?
馴化培地(Conditioned Medium)とGeltrex®を、Collagenase typeⅣまたはdyspaseを使用して 1, 2継代します。その後、Essential 8™培地とGeltrex®を、Collagenase typeⅣまたはdyspase を使用酵素として用いて1, 2継代培養する。最後に、Essential 8™培地とVTN-NにEDTAを使用して置き換えてください。
参考文献:
Commercialized in Partnership with Cellular Dynamics International.
本製品は研究用にのみ使用できます。 診断用には使用できません。