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RNAの調整・精製は、次世代シーケンシング、リアルタイムPCRによる逆転写定量PCR(RT-qPCR)、ノーザンブロット分析やcRNA合成など、さまざまな実験に必要となる基本的な技術です。たとえば、サンプルの採集や前処理、保存条件は、回収されるRNAの質や収量に⼤きく影響を与えます。
サンプルの収集、処理、保管中のさまざまな要因が結果に悪影響を及ぼす可能性があり、考慮する必要があります。これらの要因は、概して3つのカテゴリに収まります。
- 処理前のサンプルを安定化
- 操作中のRNA回収
- 保護されていないサンプルのRNaseへの曝露
RNAのサイズは、20ヌクレオチド(nt)から8 Kb(kb)以上になります。ターゲットサンプルから特定または複数のタイプ/サイズのRNAを単離する場合は、それぞれに合わせたRNA単離手順が必要です。したがって、すべてのRNA単離キットが同じではないため、目的のRNAターゲットに最適なRNA単離方法を選択することが重要です。最適な結果を得るために推奨されるさまざまなタイプのRNAおよび関連するRNA単離キットの説明をご覧ください。
各タイプの概要を以下に示します。
自然界にはあらゆる場所にRNaseが存在するため、RNAの実験を始める前にラボ環境をしっかりチェックしましょう。特に精製後のRNAに直接触れる可能性のあるものはすべてRNase-freeにする必要があります。まずは少なくとも以下の点について確認してください:ピペッター、ベンチトップ、ガラス器具およびゲル装置などすべての表面は、RNaseZap RNase Decontamination solutionまたはRNaseZap RNase Decontamination Wipesのような表面除染溶液で除染する必要があります。常にRNaseフリーのチップ、チューブおよび試薬を使用し、実験中に手袋を頻繁に交換することも大切です。
内在性RNaseの不活性化は、組織摘出後または細胞回収後、ただちに⾏う必要があります。これは、RNAが分解されるのを防ぐためです。
これには、3つの方法があります。
市販のRNA精製システムにはさまざまなタイプのものがあります。最も簡単で安全な方法として、中~低スループットのサンプル処理にはPureLink RNA Mini Kit、ハイスループット処理が必要な場合はPureLink Pro 96Kitなどのカラムベースのメソッドがあります。取扱いが容易なため、これらの方法は複数のサンプルを扱うのに最適です。MagMAX mirVana Total RNA Isolation Kitは常磁性粒子アプローチを採用しており、自動化が容易でより高いスループットのサンプルニーズに最適です。
RNase活性が⾮常に⾼いサンプル(膵臓など)や脂肪成分を多く含むサンプル(脳、脂肪組織など)を扱う場合、フェノール抽出をベースとしたTRIzol試薬の使⽤が適しています。
PureLink RNA Mini Kitカラムは、ゲノムDNAの大部分を除去しながら高品質のトータルRNAを分離するのに非常に効率的です。一般的に、動物組織または哺乳類細胞株からのRNAを必要とするほとんどのアプリケーションでは、追加のDNase処理は必要ありません。ただし、qRT-PCRによる遺伝子発現解析などにおいて、大きなイントロンを挟むデザインのプライマーセットを用いない場合や、イントロンが非常に短いまたは全くない微生物のサンプルを扱うアプリケーションでは、残存汚染DNAをより完全に除去する必要があります。PureLink DNase Setは、RNA単離プロトコル中にDNAのオンカラム消化を容易にします。「オンカラム」でのDNase処理はより簡単で、RNAを単離した後のDNase処理よりも高いRNA回収率が得られます。PureLink DNase Setを使用して、以前に精製されたRNAから残存DNAを除去することもできます。PureLink DNase Setでは、「オンカラム」および「精製済RNA処理」ワークフローの両方を選択できます。
組織の中には組織構造や生理学的状態に応じて、RNA含有量が高いものもあれば、RNA含有量が低いものもあります。適切なサンプル調製実験設計により、1)不十分な開始組織量の処理による期待されたよりも低いRNA収量、2)RNAカラムやビーズの過負荷によるRNAの品質や純度の低下、3)単離中に必要以上の量のRNA溶出液が使用された場合のRNA濃度の低下など、いくつものサンプル調製の落とし穴を回避できます。RNA調製を実施する前にどのくらいの組織を処理するかを知ることで、アプリケーションや目的に合わせて、期待される純度で十分な量のRNAを分離できます。
以下の表は、組織のサンプルタイプとそれぞれのRNA収量を迅速に確認するためのものです。
PureLink RNA mini kitおよびMagMAX mirVana Total RNA Isolation Kitには、精製RNAの保存用に最適化されたRNaseフリー溶出溶液が付属しています。また、TRIzol抽出やエタノール沈殿などの他のRNA分離法では、RNAペレットをRNA保存液などの特殊な保存液に再懸濁できます。RNA保存液はRNaseフリーの保証済みバッファーで、RNAの塩基加水分解を最小限に抑えます。
短期保存では、精製RNAを–20℃で保存できます。ただし、複数回の凍結融解によるRNAの損傷や、偶発的なRNase汚染を防ぐために、RNAを複数のチューブに分注して–80℃で保存することを推奨します。
RNA解析アプリケーションは、反応を最適に進めるために、設定された範囲のRNAインプットを使用する必要があります。RNAが多すぎる、または少なすぎると、データが不正確になったり、結果が誤って解釈される可能性があります。
RNAの品質と量の測定方法:
RNA品質の標準的な許容測定値
RNAは、qRT-PCR、マイクロアレイ、トータルRNAシーケンシング、アンプリコンベース/ターゲットシーケンシングなどのさまざまなアプリケーションで解析できます。RNA精製の前にRNAインプット要件を把握することがベストプラクティスであるため、適切なメソッドを選択することで、時間とサンプルを節約できます。
その他の考慮事項:
RNAの調製、分離、定量の複雑さをマスターすることで、分子生物学を理解する能力が向上します。しかし、特定の分析手法では、RNAをすべて単離する必要がなく、よりシンプルで迅速な細胞溶解法を使用できるため、時間と労力の両方を節約できる場合があります。Cells-to-CTはこのような選択肢の1つです。革新的なライセートベースのサンプル調製法により、組織培養プレートで10~100,000個の細胞を直接溶解できます。細胞溶解液は、5分間の溶解ステップと2分間の停止反応ステップの後、ダウンストリームの逆転写酵素(RT)およびqPCR反応に直接使用できます。高いスループット と自動化を実現するこの方法により、RNAカラムや磁気ビーズ、遠心分離、加熱、高価なサンプル調製自動化システムを必要とせずに、10分未満で96サンプルを処理できます。
研究用途にのみご使用ください。ヒトまたは動物の治療もしくは診断用には使用できません。