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リン酸化はもっとも盛んに研究されている重要な翻訳後修飾(Posttranslational modification: PTM)のひとつです。リン酸化は、セリン、スレオニン、チロシン残基に生じます。この PTM は細胞周期の進行、増殖、アポトーシスなど多くの細胞プロセスの制御において、中心的な役割を担います。それだけでなく、数え切れないほどのシグナル伝達経路にも関与します。リン酸化は生物学的プロセスに多大な影響を及ぼすので、ヒトの健康と疾患における役割を理解することに大きな重点が置かれています。
プロテオミクスにおけるリン酸化研究は、リン酸化プロテオミクスと呼ばれています。一般的なリン酸化プロテオミクスのワークフローには、サンプル濃縮と、相補的フラグメンテーション技術(CID、HCD、EThcD、ETD)を用いた質量分析(MS)が含まれます。これらのワークフローを用いることで、リン酸化部位の構造を高感度かつ決定的に解明できます。
リン酸化ペプチドを濃縮することでサンプルの複雑さが軽減されます。またリン酸化ペプチドは存在量が少なくイオン化されづらいため、MS に先立ち濃縮する必要があります。Thermo Scientific High-Select Fe-NTA リン酸化ペプチド濃縮キットおよびHigh-Select TiO2 リン酸化ペプチド濃縮キットを用いることで、MS 用のリン酸化ペプチドを迅速かつ選択的にリン酸化できます。High-Select Fe-NTA リン酸化ペプチド濃縮キットは鉄キレート樹脂スピンカラムを、High-Select TiO2 リン酸化ペプチド濃縮キットは TiO2 スピンチップを、最適化されたバッファーと共に用います。いずれのカラムも、0.5 ~ 3 mgの全タンパク質消化物から150 µg までのリン酸化ペプチドを濃縮します。
逆相液体クロマトグラフィー(RP-LC)を用いることで、単一タンパク質から大規模分析までのリン酸化ペプチドを分離することができます。Thermo Scientific 低流速 RP-LC システムは、リン酸化プロテオミクスワークフローと Orbitrap 質量分析をシームレスに統合します。Thermo Scientific EASY-nLC 1200 System および UltiMate 3000 RSLCnano System は、リン酸化プロテオミクスに最適な LC システムです。EASY-nLC 1200 は操作が簡便で高い性能を誇り、UltiMate 3000 RSLCnano は汎用性と精密性が特長です。
Thermo Scientific Orbitrap Fusion Lumos 質量分析計を含むすべての Thermo Scientific ハイブリッドイオントラップ-質量分析計で Data-dependent decision tree(DDDT)ロジックを利用できます。CID や ETD を用いた分析と比べ、DDDT 法はリン酸化ペプチドの同定を改善し、スループットを向上します。HCD や ETD 単独と比べ、新しく導入された EThcD を用いると、非修飾およびリン酸化ペプチドをより完全にフラグメンテーションできます。その結果、より高い信頼性でリン酸化部位を特定できます。
リン酸化はセリン、スレオニン、チロシン残基で起こりますが、、精確にリン酸化ペプチドのデータ解析を行うには課題があります。高分解能精密質量(HR/AM)質量分析 はその解決策であり、精確なデータを取得できるだけでなく、false discovery rate を低減できます。Thermo Scientific Proteome Discoverer ソフトウェアには、複数のフラグメンテーションスペクトルを含むデータなどの HR/AM MS 生データの混合ファイルのデータマイニングに必要なすべてのツールが搭載されています。新機能である PhosphoRS は、LC-MS/MS データセットを用いたリン酸化プロテオームのカバレッジを、信頼性の高いリン酸化部位観測アルゴリズムです。。