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慎重かつ一貫性のある解析を目指し、コントロールを使用してください。デジタルイメージは容易に操作することが可能です。高精度で信頼性のある結果は、一貫性のある装置設定、反復解析による比較評価とコントロールの使用、およびバックグラウンド補正に依存します。 |
蛍光観察における定量には、注意が必要となる場合があります。画像を解析する最も簡単な方法の一つは、ある関心領域の蛍光強度を他の領域と比較することです。この方法はしばしば、相対的定量法と呼ばれています。信頼性のある結果を入手するためには、以下の点に留意することが必要です。
一般的に、顕微鏡上に画像を取得するために使用するソフトウェアプログラムには、ある程度の解析能力があります。さらに、様々な種類の画像解析を行うために使用することが可能な、ImageJなどのプログラムも存在します。取得した画像において、定量を行うための関心領域の選択はお客様自身が行ってください。
関心領域とは、取得した画像の中で、何らかの形で定量を行いたい領域のことです。一般的には、規定された関心領域に関する蛍光強度が、ソフトウェアプログラムにより提供されます。関心領域の決定は、手動で領域を囲む(すなわち、丸で囲む)または閾値を設定する(一定の値以上のすべての強度がカウントされるようにする)ことにより行われます。いくつかのソフトウェアプログラムでは、領域の選択をマスキングによる定量と呼んでいます。マスクはソフトウェアが認識した関心領域をフラッグします。
図 1. 強度閾値を使用した、関心領域決定の例。 各細胞の核が染色用の各蛍光色素で標識され(赤色、左)、ユーザーにより強度閾値が設定されます。 ソフトウェアが設定された閾値に見合う領域上にマスクを重ね合わせます(赤色上への青色の重ね合わせ、右)。 マスキングにより、定量および解析を開始する前に、設定した閾値が関心のある対象すべてを含んでいるかどうかを目視により確認することができます。
ここに示す例では、左側が生の画像です。核が染色され赤色で示されています。各細胞の核を表す関心領域を設定するために、閾値法を使用しました。すなわち、一定の強度を超えるすべての画素が関心領域に含まれています。ここに示す例で使用されている解析プログラムでは、閾値に見合う画素が青色でハイライトされ、青色でハイライトされた関心領域が赤色の核に重ね合わされ、紫色で示されています(右の画像)。
画像全体においてすべての核に関する強度の平均値を入手すること、または各対象をカウントすることにより、さらに詳細なデータを入手することが可能です。最も簡単なケースでは、対象は一つの細胞に相当します。
図 2. 個々の対象の識別の例。 視野中のすべての核に関する平均強度ではなく、それぞれの核を独立した対象として、当該強度によりカウントしています。 |
画像中の個々の対象を区別することの利点は、各対象に関する蛍光強度情報を入手できることにあります。例えば、1番の細胞の強度がxであり、2番の細胞の強度がyであるなどの同定が行えます。これにより、必要に応じて、個々の強度値を使用して画像中のすべての細胞に関する平均強度を導き出すことが可能となります。
対照と処理試料の間の相対的強度比較を行うための一つの方法では、先ず各画像の関心領域を(同一の領域設定方法を使用して)設定します。次いで、視野中の細胞数をカウントし、各細胞当たりの平均強度を算出します。この値を、対照および処理試料の間で比較します。もちろん、この比較は、細胞数をカウントすることなく、単に関心領域全体(または画像内の関心領域)の平均強度の値を使用して行うことも可能です。
バックグラウンド蛍光 は、実験に特異的ではない蛍光です。実験に特異的な蛍光は、多くの場合「シグナル」と称されます。関心領域内のシグナルからは、バックグラウンドを除去することが必要です。除去されない場合、バックグラウンドが見かけの「シグナル」に含まれ、正しい値が得られません。 実際には、いくつかの実験においては、対照および処理された試料中のバックグラウンドがほぼ同一となっています。このような場合には、バックグラウンド除去のステップは省略することが可能です。このステップの省略は、実際には実験を行う者の判断に委ねられていますが、省略する前には、必ず対照と処理した試料の間でバックグラウンドの蛍光シグナルが同一(またはほぼ同一)であることを確認する(そして、確認したことが証明可能である)ことが必要です。
バックグラウンドを除去するためには、先ず関心領域に近い領域で(前セクションを参照してください)、標的に特異的に結合した蛍光が存在しない領域を選択することによりバックグラウンドの蛍光強度を決定します。細胞の研究の場合には、細胞が存在しない領域がこれに相当します。この近隣領域の蛍光強度を、バックグラウンド強度の値として使用します。最後に、この値を関心領域の強度の値から除算します。
細胞生物学者は、様々な分子間の因果関係を発見するための実験を行うことが多く、細胞内で二つの分子が非常に接近して存在している、共局在という状態が存在することは、それらの分子が互いに相互作用していることの証拠の一つとみなされます。落射蛍光照明による蛍光観察では、主として解像度の制約から、共局在性を同定することは実際には極めて困難です。大部分の顕微鏡では、200 nm 以内の距離にある二つの対象を識別することは不可能です。さらに厄介なことに、この制約は3次元容量全体に及びます(x、yおよびz 平面)。このため、実際に、緑色チャネルで発光する蛍光色素で標識したタンパク質Xと、赤色チャネルで発光する蛍光色素で標識したタンパク質Yがあり、画像において緑色と赤色の画素がお互いに重なっていることが観察された場合、唯一断言できることは、両方のタンパク質が特定の3次元容量内に存在するということのみであり、その容量がどれくらいの大きさであるかは、顕微鏡の解像限界に依存します。真の共局在性の同定には、特別な顕微鏡に加えて、多くの技術的熟練、コントロールおよび計算が必要とされます。
反復は、あらゆる種類の定量解析において重要です。反復により多くのサンプリングが可能となり、実際に何が有意であるかに関する情報が追加されます。反復実験を行うことにより、観察された現象が単なる偶発的な事象ではなく、実際に発現しているということに一定の信頼度が提供されます。さらに重要なこととして、データに意義があることを証明するのに必要な、統計解析を行い、有意性の確率を報告することが、反復により可能となります。
定量解析に反復を追加するための方法をここにいくつかご紹介します。:
大部分の画像取得ソフトウェアは、輝度、コントラスト、および画像の色を取得後に調整すること、または強調したい領域のみを保持するために画像の切り取りを行うことを可能としています。多くの状況では、これらの調整は科学的に完全に許容される範囲にあります。画像の切り取りを行い、視野の中で重要な部分にのみ焦点を合わせること、または輝度やコントラストを調整してバックグラウンドを除去して詳細をより明確にすることは、極めて一般的に行われており、画像をより理解しやすくすることに役立ちます。しかし、オリジナルの「生」画像は必ず常に保存し、操作後の画像は、異なるファイル名を付して保存することが必要です。
画像上に取得後の操作を行う場合には、的確な判断に基づいた操作を行い、科学的完全性に疑問を生じる可能性のある操作は避けてください。注意するべき点をここにいくつかご紹介します。:
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.