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サンプルにとって最良の露光時間を決定します。露光時間とは、カメラがサンプルから光を集める時間の長さであり、特に生細胞の観察では、露光時間、画像の蛍光輝度および光毒性との間に相反関係があります。 |
デジタル画像を撮影する場合、調整可能なパラメータの一つが露光時間です。露光時間とは、サンプルから発せられた光(光子)にカメラが曝露する時間です。露光時間が長いほど、より多くの光子を検出器が受けるため、ピクセル強度が増加して「より明るい」画像になります。理想的には、ご使用のカメラのシグナル強度の全範囲(full dynamic range)が使用される露光時間を設定したいのではないでしょうか。
しかし、ムラのある染色、または刺激を受けて生じる様々な反応に起因して不均一なシグナルを発するサンプルである場合は、最適な露光時間を決定するのにある程度の試行錯誤が伴います。しばらく時間をかけて、サンプルにとって最良の露光時間を決定することは非常に大切です。この決定は、その後変更することができません(ただし、すべての画像を再び撮影する場合を除いて)。
必要な露光時間を決定するために、最初に「自分は何を見たいのか?」と自問する必要があります。いくつかの例を示します。
美しい画像を得ることのみに関心があるなら、きれいな画像にしたい単一のサンプルを基に露光時間を設定します。最も美しい画像をもたらす露光時間では、カメラのシグナル強度の全範囲が使用されます。
理想的には、画像を得る際、ピクセルのいずれも飽和させずに、可能な限り長い露光時間を設定したいのではないでしょうか。このことは、最も明るいピクセルでが、強度が飽和直前であることを意味します。多くのソフトウェアプログラムでは、飽和したピクセルに対して赤いインジケータを使用します。ピクセル強度をヒストグラムで表示するソフトウェアプログラムもあります。ヒストグラムは、集められた画像内の強度の範囲を示します。
図1. イメージングソフトウェアプログラムは、飽和したピクセルに視覚的にフラグを立てる、および/または画像内の各ピクセルに対して強度値のヒストグラムを表示することにより、良好な露光時間を選択しやすくします。 理想的には、ピクセルのいずれも飽和させずに、カメラのシグナル強度の全範囲を使用したいのではないでしょうか。
このサンプルは、3つの異なる露光時間を設定して観察されました。使用したカメラのシグナル強度の範囲は、0~4,095です。(0 =強度なし、4,095 =最も高いピクセル強度値)。40ミリ秒の曝露(左)では、画像が暗く、シグナル強度の全範囲が使用されていません。最も高いピクセル強度は約2,000です。右の画像は非常に明るいですが、飽和したピクセルもあります(赤色で示しています)。ヒストグラムは、オフスケールとなったピクセル強度もあることを示しています。この画像の露光時間は、非常に長い時間です。中央の画像は理想的です。強度値がシグナル強度の全範囲にわたっており、飽和したピクセルはありません。
このためには、シグナルが最も明るいと予想されるサンプルを決めてから、そのサンプルを基に露光時間を設定します。コントロールサンプルが処理したサンプルよりも明るくなる場合(例えば、処理によるシグナル減少)もあれば、処理したサンプルがより明るい蛍光シグナルを発する場合(例えば、処理によるシグナル増加)もあります。コントロールサンプルが、処理したサンプルよりも明るくなるか暗くなるかは、選択したアッセイに左右されます。一旦コントロールを選択したら、ピクセルのいずれも飽和させずに、可能な限り最も長い露光時間を選択し、シグナル強度の全範囲を使用します(図1を参照)。
図 2. 処理によりシグナルが減少した例。 ミトコンドリア色素TMRMで染色した場合、未処理のHeLa細胞(左)は明るい蛍光強度を示します。 CCCP(酸化的リン酸化を脱共役させてミトコンドリア膜電位の減少をきたす、カルボニルシアニド3-クロロフェニルヒドラゾン)で処理した細胞は、暗い蛍光シグナル(右)を示します。 このような場合、未処理のサンプルを用いて露光時間を設定します。
図 3. 処理により蛍光シグナルが増加した例。 NucGreen® Dead試薬で染色した未処理のHeLa細胞は暗く見えます(左)。 細胞死を誘発する薬物スタウロスポリンで処理した細胞は、明るい緑色を示しています(右)。 このような場合、処理したサンプルを用いて露光時間を設定します。
前述した(きれいな画像を撮影する)例のように、シグナルが最も明るいと予想されるサンプルを使用して、露光時間を設定します。特に画像からあらゆる定量的データを集めることを計画している場合、ピクセルのいずれも飽和させずに、必ずカメラのシグナル強度の全範囲を使用してください。コントロールおよび処理したサンプルの両方に、必ず同じ露光時間を設定して画像を撮影します。そうしないと、解析時にサンプル強度を比較することができません。
サンプル中の蛍光色素を励起させるのに使用する光は、細胞を傷めるので、生細胞を観察する場合は、特に露光時間についていくつか考慮すべき点があります。生細胞を観察する際、細胞の健康状態を維持するために、シグナル強度を犠牲にしたい場合も多々あるでしょう。この場合、カメラのシグナル強度の全範囲が使用される露光時間を設定することはないでしょう。見る必要のあるものを見ることができる十分に長い露光時間を設定したいと思うのではないでしょうか。この詳細については、生細胞を用いた蛍光観察に関する節をご覧ください。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.