蛍光生細胞イメージングとは

生細胞の蛍光イメージングの用途としては、細胞の動的プロセスを観察し、細胞の生体分子や構造の経時的追跡に利用することができます。生細胞蛍光イメージングは、細胞としての機能が維持された、自然な状態での細胞の検査を可能にします。これにより、細胞骨格の再構成、アポトーシス細胞移動エンドサイトーシス食作用、オルガネラダイナミクスなど、さまざまな細胞プロセスの研究が行えるようになり、創薬、がん、発生生物学、環境科学、その他の医学研究分野において、より重要な知見がもたらされます。

本ガイドは、生細胞イメージングの実験の構築、試薬の選択、パブリケーション品質のデータの生成にご利用いただけます。

インキュベーターまたは顕微鏡を使用したイメージングプラットフォームにおける生細胞実験の構築

生細胞イメージング用の試薬の選択方法

生細胞イメージング試薬には、ターゲット蛍光タンパク質と、小さな膜透過性蛍光色素の両方が含まれています。多くの試薬は、生細胞イメージング実験に対応するため、数時間から数日にわたるタイムラプス用に設計されていますが、染色直後に細胞のイメージングを行い分析するエンドポイントアッセイにおすすめなものもあります。染色濃度やインキュベーション時間、適切な時間ウィンドウやイメージングの間隔/頻度については、細胞毒性を最小限に抑えて細胞機能を維持できるよう、経験に基づき決定する必要があります。

この生細胞イメージングガイドに記載した試薬は、各種のハイコンテントおよびインキュベーターベースの蛍光イメージングシステムに対応しており、サーモフィッシャーサイエンティフィックのEVOS M7000およびM5000 Cell Imaging SystemsEVOS Onstage IncubatorCellInsight HCSプラットフォーム、PerkinElmerのMuviCyte™ live-cell imaging system*、LeicaのThunder/Mica*、およびSartoriusのIncucyte® Live-Cell Analysis System™*などで利用することができます。

 EVOS DAPI Light CubeEVOS GFP Light Cube
励起:470/22 nm、
蛍光:510/42 nm
EVOS RFP Light Cube励起:531/40 nm、蛍光:593/40 nmEVOS Red Light Cube励起:585/29 nm、蛍光:624/40 nmEVOS Cy5 Light Cube励起:628/40 nm、蛍光:693/40 nm生細胞イメージングのタイムフレーム
Incucyte GreenフィルターIncucyte OrangeフィルターIncucyte RedフィルターIncucyte NIRフィルター
抗体のインターナリゼーション 

pHrodo Green iFL antibody labeling reagents

 

pHrodo Red iFL antibody labeling reagents

 pHrodo Deep Red antibody labeling reagents長時間(数時間から一晩)
アポトーシス CellEvent Caspase-3/7 Green Detection Reagent

 

CellEvent Caspase-3/7 Red Detection Reagent 長時間(一晩から48~72時間)
オートファジー Premo Autophagy Sensors (p62 and LC3B) GFPPremo Autophagy Sensors (p62 and LC3B) RFP  長時間(一晩から48時間)
細胞トラッキングCellTracker dyes短時間から長時間(72時間/約3世代以上)
細胞骨格(アクチン) CellMask Green Actin Tracking StainCellMask Orange Actin Tracking Stain CellMask Deep Red Actin Tracking Stain短時間から長時間(24時間以上)
細胞骨格(チューブリン) Tubulin Tracker Green  Tubulin Tracker Deep Red短時間
エンドソーム/エンドサイトーシス pHrodoおよび Alexa Fluor dextrans短時間から長時間(数分から数時間、一部の用途では一晩以上)
リガンドのインターナリゼーション Alexa Fluor、BODIPY、およびpHrodo LDL conjugates短時間から長時間(数分から一晩以上)
Alexa Fluor、pHrodo EGF、およびtransferrin conjugates
小胞体 ER-Tracker Green

ER-Tracker Red

エンドポイント
低酸素条件 Image-iT Green Hypoxia Reagent   エンドポイント
カルシウム Fluo-4 Calcium Imaging KitRhod-3 Calcium Imaging Kit  短時間(数分から数時間)
リソソームLysoTrackerおよびLysoSensor dyes短時間(数分から数時間)
膜(細胞膜および細胞内膜) Vybrant cell labeling solutions長時間
ミトコンドリア構造 MitoTracker dyes長時間
ミトコンドリア機能  TMRM  短時間(数分から数時間)
TMRE
HCS NuclearMask Blue StainSYTO 9 Green Fluorescent Nucleic Acid Stain HCS NuclearMask Red StainHCS NuclearMask Deep Red Stainエンドポイント
Hoechst 33342   NucRed Live 647 ReadyProbes Reagent
NucBlue Live ReadyProbes Reagent   DRAQ5 Fluorescent Probe Solution
細胞膜 CellMask Green Plasma Membrane StainCellMask Orange Plasma Membrane Stain CellMask Deep Red Plasma Membrane Stain短時間(10~90分、より長時間のイメージングも可能だがインターナリゼーションを伴う)
活性酸素種 CellROX Green ReagentCellROX Orange Reagent CellROX Deep Red Reagent長時間(24時間)
 H2DCFDA dyes   短時間(約2時間)
ThiolTracker VioletMitoSOX Green Superoxide Indicator   エンドポイント
食作用 pHrodo Green BioParticles ConjugatespHrodo Red BioParticles Conjugates pHrodo Deep Red BioParticles Conjugates短時間から長時間(数分から数時間またはそれ以上)
生存率Calcein Blue、AMCalcein, AM, cell-permeant dye   短時間(数分から数時間)
 SYTOX Green Nucleic Acid StainSYTOX Orange Nucleic Acid Stain SYTOX Deep Red Nucleic Acid Stain
 LIVE/DEAD Viability/Cytotoxicity Assay Kit (Green/Deep Red)  LIVE/DEAD Viability/Cytotoxicity Assay Kit (Green/Deep Red)
蛍光タンパク質ベースの細胞構造試薬 CellLight GFP BacMam 2.0CellLight RFP BacMam 2.0  長時間(一晩から数日/2~3世代)

ライブセルイメージング中の環境制御の維持方法

蛍光イメージングプラットフォームとインキュベーターの組み合わせは、制御された安定環境をもたらすことで、自然な状態での細胞の長時間イメージングを可能にします。EVOS Onstage IncubatorはEVOS M7000およびM5000 Cell Imaging Systems用、Invitrogen HCA Onstage IncubatorはCellInsight HCS/HCAプラットフォームでの自動化されたハイコンテントスクリーニングおよび分析用で、いずれも環境チャンバー内での生細胞のタイムラプスおよびカイネティックイメージングと分析を可能にします。インキュベーション環境下で長期のライブセルイメージングを行う場合、試薬は従来の細胞培地またはFluoroBrite DMEM(カタログ番号A1896701)の重炭酸塩バッファーを用いて生理学的pHを5% CO2環境で維持する必要があります。

例:ライブセルイメージング実験におけるアポトーシス

細胞アポトーシスは、過剰な細胞、損傷した細胞、不要な細胞や組織を除去するために用いられる、厳密に制御されたプログラム細胞死のプロセスである。アポトーシスの検出には、カスパーゼの活性化、DNAの断片化、活性ミトコンドリアの破壊、細胞膜の変化が利用できます。CellEvent Caspase 3/7 reagentsは蛍光発生カスパーゼ基質であり、カスパーゼの活性化を検出することにより生細胞のアポトーシスを検出できます。これらの試薬は洗浄ステップを必要とせず、48時間以上を要するアポトーシスのリアルタイムおよびタイムラプス生細胞イメージングに使用できます。

CellEvent Caspase 3/7 workflow

図1.CellEvent Caspase-3/7 Green Detection Reagent(カタログ番号C10432)を使用したアポトーシス生細胞エンドポイントアッセイのワークフロー。細胞を播種し、処理を続行します。希釈したCellEvent Caspase-3/7 Green Detection Reagentを細胞に追加します。CellEvent Caspase 3/7色素は、洗浄不要で完全培地中の細胞を直接イメージングできます。蛍光測定は最短30分から最長72時間まで蛍光を測定できる。

Caspase-3/7のプロトコルをダウンロード

Cells stained with CellEvent Caspase 3/7 Green as indicated with apoptotic cells being bright green and live cells being dark, and imaged with Incucyte® ZOOM Live-Cell Analysis

図2.CellEvent Caspase 3/7 Greenで染色したアポトーシス細胞の生細胞イメージングの例。HuVEC細胞を、CellEvent Caspase 3/7 Green Assay(カタログ番号C10432)で処理し、処理から0、24、48、72時間後にIncucyte® ZOOM Live-Cell Analysis Systemを用いてイメージングしました。(イメージ提供:Sambi M, Samuel V, Qorri B, Haq S, Burov SV, Markvicheva E, Harless W, Szewczuk MR.A Triple Combination of Metformin, Acetylsalicylic Acid, and Oseltamivir Phosphate Impacts Tumour Spheroid Viability and Upends Chemoresistance in Triple-Negative Breast Cancer.Drug Des Devel Ther.2020;14:1995-2019 PMID: 32546966)

例:ライブセルイメージング実験におけるミトコンドリア活性

ライブセルイメージング試薬には、細胞成分を同定するための細胞構造試薬と、細胞機能やプロセスを解析するための細胞機能試薬があります。たとえば、MitoTracker色素は生細胞内の活性ミトコンドリアに蓄積し、ミトコンドリアに共有結合することで、ミトコンドリアの局在と存在量の評価を可能にします。対照的に、TMRMおよびTMREは、動的なミトコンドリア膜電位のインジケータ色素であり、膜電位に基づいてミトコンドリアの内外の変動を示します。

Cells stained with MitoTracker Red as indicated with cells with active mitochondria being bright red, the dead cells are stained in green, the nucleus in blue, and imaged with Incucyte® ZOOM Live-Cell Analysis

図3.生細胞内の活性ミトコンドリアのモニタリング。患者から採取した線維芽細胞株を培養し、MitoTracker Red(カタログ番号M22426)Image-iT DEAD Green dyes(カタログ番号I10291)Hoechst(カタログ番号R37165)を使用して染色した後、Incucyte® ZOOM Live-Cell Analysis Systemでイメージングしました。(イメージ提供:Smith GA, Jansson J, Rocha EM, Osborn T, Hllett PJ, Isacson O. Fibroblast Biomarkers of Sporadic Parkinson's Disease and LRRK2 Kinase Inhibition.Mol Neurobiol.2016 Oct;53(8):5161-77.PMCID: PMC5012155.


最良の生細胞画像を取得するための5ステップ

ステップ1:計画

各ステップに必要なツールおよびリソースを慎重に検討して実験を設計します。

利点

  • 細胞の動的プロセスをリアルタイムで観察可能
  • マルチプレックスアッセイを使用して、複数のプロセスおよび機能を同時に観察しイメージング
  • 細胞構造を本来の環境の中で観察でき、in vivoのシナリオにより近い現実的な結果を取得
  • 細胞の生体分子および構造を経時的にトラッキング
  • 細胞間の相互作用を観察
  • 細胞の酵素および他のサイトゾル生体分子が細胞内に残る

考慮事項

  • 分子、細胞機能、または細胞状態のいずれかにかかわらず、最小限の毒性でターゲットを標識する特異的方法が必要
  • 抗体のような大きな検出分子は、通常は生細胞を透過不可
  • 移動する被写体に焦点を合わせ続けることはより困難
  • 一部の手法は生細胞に悪影響を与える可能性あり
  • 細胞は自然の生理学的状態に保つ必要あり

ステップ2:培養

細胞を最適な条件で維持または培養します。

さまざまな実験操作、検出、およびイメージング中に細胞を生きた状態で健全に保つことは、簡単ではありません。細胞が周囲条件に長期間曝露される経時的イメージングや実験では、培地の選択は特に重要です。生細胞で信頼性の高い結果を得るには、細胞は健全であり、生理学的な温度、ph、酸素濃度、およびその他の条件にできるだけ近い環境で維持されることが不可欠です。

細胞培養の詳細を見る

製品のハイライト

これらの培地および洗浄バッファーは、生細胞のイメージングおよび検出のために特別に製造されています。これらを実験に使用することで、画像の鮮明さの向上、バックグラウンド蛍光の低減、および細胞生存率の最適化を実現できます。

ヒント

生細胞のイメージングおよび検出用に特別に製造された培地および洗浄バッファーを使用することにより、画像の鮮明さの向上、バックグラウンド蛍光の低減、および細胞生存率の最適化を実現できます。製品選択ガイドを見る

ステップ3:標識

選択的な色素および染色液により、目的の細胞構造、細胞機能、およびタンパク質を標識化します。

ターゲットの細胞構造またはプロセスをモニタリングするためには、適切な蛍光色素(ターゲット蛍光タンパク質または小膜透過試薬)を使用する必要があります。複数の細胞構造やプロセスをモニタリングするために蛍光色素を追加することはできますが、スペクトルのオーバーラップを最小限に抑えるために、Fluorescence SpectraViewerを使用して励起および発光スペクトルを確認する必要があります。過剰量の蛍光標識を使用すると以下の事象が生じる可能性があるため、過度な蛍光標識の使用を避けることが重要です。

  • 非特異的染色とバックグラウンドシグナルの増加
  • 生理学的アーチファクトおよび構造的かく乱
  • 細胞毒性
  • スペクトルのオーバーラップ

注目:

  • 生細胞構造試薬—細胞構成要素の特定に役立つ
  • 生細胞機能試薬—細胞機能およびプロセスの特定に役立つ

製品のハイライト

  • Invitrogen CellLight Reagentは、生細胞内の特定の構造の標識にもっとも使いやすい試薬の一つとして実証されています。ターゲットの蛍光タンパク質はInvitrogen BacMam形質導入システムを使用して導入されます。分子生物学的手法は必要ありません。試薬を細胞に添加し、一晩インキュベートするだけで、翌朝にはイメージングの準備が整います。
  • Invitrogen CellTracker Reagentは、哺乳類細胞を標識して形態または局在の変化を観察するために使用される多種類の試薬です。これらの無毒性蛍光色素は、細胞膜を自由に通過して細胞内に入り込み、そこで細胞非透過性反応生成物に転換されるようデザインされています。細胞をCellTracker試薬で30分間インキュベートすると、蛍光シグナルは72時間(一般的に3~6世代)以上持続します。
  • Invitrogen pHrodo Indicatorは、周囲のpHが酸性になるにつれて蛍光度が大幅に増加する蛍光色素です。pHrodo色素をデクストラン、タンパク質、またはその他の粒子にコンジュゲートすると、生細胞中のエンドサイトーシスおよび食細胞的な内在化やリソソームの隔離に対する非常に特異的なセンサーとして使用でき、フルオレセインやテトラメチルローダミンなどの他の蛍光色素コンジュゲートの優れた代替となります。

ヒント

  • 長時間の露光が必要な場合は、より長い波長の蛍光試薬の使用をご検討ください。長波長の蛍光試薬に必要な励起力は低く、これは光毒性の低下とより健全な細胞と関連しています。
  • 特定のアッセイ結果、スペクトルの適合性、およびシグナル/バックグラウンド比に合わせて染色を最適化する必要があります。
  • 標識溶液を除去して新鮮な培地で洗浄することにより、バックグラウンド蛍光を低減できます。

ステップ4:最適化

バックグラウンドを最小化し、蛍光シグナルの光安定性を維持します。

シグナル/バックグラウンド比は、細胞外蛍光を低減し、蛍光色素の光安定性を向上させる試薬を使用することにより最適化できます。生細胞イメージング実験では、バックグラウンド蛍光を低減または除去しながら、細胞の健全性を維持するよう特別にデザインされた培地でイメージングを実施することが重要です(表1を参照)。生細胞に適合したバックグラウンド抑制剤を添加することにより、細胞外バックグラウンド蛍光の低減に役立ち、洗浄ステップを省略できる場合があります。生細胞用の退色防止マウント剤をサンプルに適用すると、蛍光色素の光退色を低減でき、複数または長時間の露光によるシグナル損失を防止します。

表1.イメージング用培地の比較。

試薬細胞ウォッシュ短時間イメージング4時間までのイメージング長時間イメージング
Gibco PBS、pH7.4  
Invitrogen Live Cell Imaging Solution 
Gibco FluoroBrite DMEM

製品のハイライト

Invitrogen BackDrop Background Suppressor imaging results

Tubulin Tracker Green色素およびTubulin Tracker Deep Red色素で標識化したHeLa生細胞。プローブが染色液に残留していると、どちらの標識でも細胞外バックグラウンド値が高くなります(左)。BackDrop Background Suppressorを添加すると、細胞外のバックグラウンド値が大幅に減少する反面、細胞内標識は影響を受けないため(右)、生細胞のチューブリンの高コントラストイメージングを洗浄不要プロトコルで実行できます。

Invitrogen ProLong Live Reagent confocal imaging results

ProLong Live reagentで未処理のサンプルに比べ処理済みのサンプルで、シグナルが全体としてどの程度保護されているかは、EC50値に達するそれぞれのスキャン数に基づいて算出されます。ProLong Live reagentを添加すると、Invitrogen CellLight Mitochondria-RFP reagentによりキャプチャが100%超増加しました。

Invitrogen ProLong Live Reagent fluorescence imaging

ProLong Live reagentで処理したサンプルに、標準的な露光時間のイメージングプロトコルで120回露光を行うと、未処理の細胞よりも20%以上明るくなるため、より長時間データを収集できます。

ヒント

  • さらなる培養を予定していない場合は、ぼけを低減してコントラストを上げることによりシグナルを最適化する目的でバックグラウンド抑制剤を使用できます。
  • 退色防止剤の使用は、さまざまなタイプのサンプルで蛍光色素の光安定性を向上させ、光毒性の影響を低減することが確認されています。

ステップ5:イメージング

生細胞の動的プロセスのイメージングには、経時的な能動観察が必要です。

照射および検出

光毒性を最小限にするため、光源をもっとも柔軟にコントロールできるイメージングシステムを選択してください。低バックグラウンドの良好なシグナルを生成しながら、細胞を照射する際の光の強度、露光時間、波長域、および励起エネルギー量を最小限に抑えるようにしてください。もっとも低いレベルの蛍光色素励起でもっとも高いシグナルを得られる照射を使用してください。場合によっては(長時間にわたりイメージングを行いたい場合は特に)、細胞の健全性を保つために、露光時間を短くしたり倍率を下げたりして解像度を下げることが推奨されます。

長時間の生細胞イメージングは、実験の途中でターゲットが焦点から外れることがあるため、困難な場合があります。多くの顕微鏡はオートフォーカス機能を備えており、より長時間ターゲットへの焦点を保ち、焦点のズレを抑えるのに役立ちます。さらに、細胞を一定の温度で維持したり、容器内の溶液量を一定に保つことで、焦点のズレを抑えることができます。

環境制御

多くの細胞は、その最適な温度、浸透圧、pHおよび湿度から逸脱した環境には耐えられません。実験要件は、どのような実験課題を抱えているかによって変わります。たとえば、細胞の増殖および分裂を詳細に研究する実験では、受容体の活性化やカルシウム蓄積などの実験に比べて、異なる条件セットを用いることがあります。一部の頑強な不死化細胞株は、環境の制御なしで短時間のイメージングや観察に耐えられます。一方、長時間のイメージングや検出実験では、不死化細胞および初代細胞で良好な結果を得るには、通常環境パラメーターを厳しく制御する必要があります。

Catastrophic blebbing of the cell membrane

上部の細胞は過度の露光による細胞膜の致命的なブレブ形成を示しています。ブレブ形成とは、毒性によって生じる細胞膜のかく乱を説明する用語です。対照的に、下部の細胞は比較的健全性を維持しており、異常形態を示していません。

製品のハイライト

Countess II FL Automated Cell Counter

細胞の生存率、アポトーシス、細胞毒性、およびトランスフェクション効率を検出するためにCountess 3 FL Automated Cell Counterをさまざまな蛍光試薬と組み合わせて使用すると、細胞の健全性を迅速にチェックでき、不健全な細胞を使用して次の実験ステップに進むという過ちを避けることができます。再生利用可能なガラススライドを選択できるため、消耗品のコストを削減します。

Invitrogen EVOS M5000 Imaging System with EVOS Onstage Incubator

Invitrogen EVOS Onstage Incubatorは、Invitrogen EVOS Imaging System用に特別にデザインされた環境チャンバーです。生理的および非生理的環境下での生細胞の経時的イメージング用に、温度、湿度、および3種類のガスの正確なコントロールを可能にします。

CellInsight CX7 LZR High-Content Screening Platform with HCA Onstage Incubator

Thermo Scientific CellInsight HCA Platform用のInvitrogen HCA Onstage Incubatorは、温度、湿度、およびCO2濃度の正確なコントロールを実現するため、生物学的活性および変化の経時的な観察と測定が可能です。長時間のイメージング実験で収集されたデータは、特にThermo Scientific HCS Studio Softwareと組み合わせて統計量を高めると、定量解析研究の基礎となります。

ヒント

  • 短時間のイメージング実験には、溶媒の蒸発による浸透圧と酸素量の変化を防ぐため、大量のイメージング用培地を使用してください。
  • サンプルに焦点を合わせる際は、低倍率から始めてください。これによりサンプルの露光時間を最小限にできます。
  • 経時的イメージング中は、オートフォーカスをすべての画像撮影に使用することは避けてください。オートフォーカスは、サンプルに当たる光エネルギー量を最高10倍増加させます。
  • より長時間のイメージング、または繊細な細胞のイメージングには、オンステージインキュベーター(OSI)をイメージング装置に追加して、温度、湿度、およびCO2濃度の正確な制御を実現できます。

ステップ1:計画

各ステップに必要なツールおよびリソースを慎重に検討して実験を設計します。

利点

  • 細胞の動的プロセスをリアルタイムで観察可能
  • マルチプレックスアッセイを使用して、複数のプロセスおよび機能を同時に観察しイメージング
  • 細胞構造を本来の環境の中で観察でき、in vivoのシナリオにより近い現実的な結果を取得
  • 細胞の生体分子および構造を経時的にトラッキング
  • 細胞間の相互作用を観察
  • 細胞の酵素および他のサイトゾル生体分子が細胞内に残る

考慮事項

  • 分子、細胞機能、または細胞状態のいずれかにかかわらず、最小限の毒性でターゲットを標識する特異的方法が必要
  • 抗体のような大きな検出分子は、通常は生細胞を透過不可
  • 移動する被写体に焦点を合わせ続けることはより困難
  • 一部の手法は生細胞に悪影響を与える可能性あり
  • 細胞は自然の生理学的状態に保つ必要あり

ステップ2:培養

細胞を最適な条件で維持または培養します。

さまざまな実験操作、検出、およびイメージング中に細胞を生きた状態で健全に保つことは、簡単ではありません。細胞が周囲条件に長期間曝露される経時的イメージングや実験では、培地の選択は特に重要です。生細胞で信頼性の高い結果を得るには、細胞は健全であり、生理学的な温度、ph、酸素濃度、およびその他の条件にできるだけ近い環境で維持されることが不可欠です。

細胞培養の詳細を見る

製品のハイライト

これらの培地および洗浄バッファーは、生細胞のイメージングおよび検出のために特別に製造されています。これらを実験に使用することで、画像の鮮明さの向上、バックグラウンド蛍光の低減、および細胞生存率の最適化を実現できます。

ヒント

生細胞のイメージングおよび検出用に特別に製造された培地および洗浄バッファーを使用することにより、画像の鮮明さの向上、バックグラウンド蛍光の低減、および細胞生存率の最適化を実現できます。製品選択ガイドを見る

ステップ3:標識

選択的な色素および染色液により、目的の細胞構造、細胞機能、およびタンパク質を標識化します。

ターゲットの細胞構造またはプロセスをモニタリングするためには、適切な蛍光色素(ターゲット蛍光タンパク質または小膜透過試薬)を使用する必要があります。複数の細胞構造やプロセスをモニタリングするために蛍光色素を追加することはできますが、スペクトルのオーバーラップを最小限に抑えるために、Fluorescence SpectraViewerを使用して励起および発光スペクトルを確認する必要があります。過剰量の蛍光標識を使用すると以下の事象が生じる可能性があるため、過度な蛍光標識の使用を避けることが重要です。

  • 非特異的染色とバックグラウンドシグナルの増加
  • 生理学的アーチファクトおよび構造的かく乱
  • 細胞毒性
  • スペクトルのオーバーラップ

注目:

  • 生細胞構造試薬—細胞構成要素の特定に役立つ
  • 生細胞機能試薬—細胞機能およびプロセスの特定に役立つ

製品のハイライト

  • Invitrogen CellLight Reagentは、生細胞内の特定の構造の標識にもっとも使いやすい試薬の一つとして実証されています。ターゲットの蛍光タンパク質はInvitrogen BacMam形質導入システムを使用して導入されます。分子生物学的手法は必要ありません。試薬を細胞に添加し、一晩インキュベートするだけで、翌朝にはイメージングの準備が整います。
  • Invitrogen CellTracker Reagentは、哺乳類細胞を標識して形態または局在の変化を観察するために使用される多種類の試薬です。これらの無毒性蛍光色素は、細胞膜を自由に通過して細胞内に入り込み、そこで細胞非透過性反応生成物に転換されるようデザインされています。細胞をCellTracker試薬で30分間インキュベートすると、蛍光シグナルは72時間(一般的に3~6世代)以上持続します。
  • Invitrogen pHrodo Indicatorは、周囲のpHが酸性になるにつれて蛍光度が大幅に増加する蛍光色素です。pHrodo色素をデクストラン、タンパク質、またはその他の粒子にコンジュゲートすると、生細胞中のエンドサイトーシスおよび食細胞的な内在化やリソソームの隔離に対する非常に特異的なセンサーとして使用でき、フルオレセインやテトラメチルローダミンなどの他の蛍光色素コンジュゲートの優れた代替となります。

ヒント

  • 長時間の露光が必要な場合は、より長い波長の蛍光試薬の使用をご検討ください。長波長の蛍光試薬に必要な励起力は低く、これは光毒性の低下とより健全な細胞と関連しています。
  • 特定のアッセイ結果、スペクトルの適合性、およびシグナル/バックグラウンド比に合わせて染色を最適化する必要があります。
  • 標識溶液を除去して新鮮な培地で洗浄することにより、バックグラウンド蛍光を低減できます。

ステップ4:最適化

バックグラウンドを最小化し、蛍光シグナルの光安定性を維持します。

シグナル/バックグラウンド比は、細胞外蛍光を低減し、蛍光色素の光安定性を向上させる試薬を使用することにより最適化できます。生細胞イメージング実験では、バックグラウンド蛍光を低減または除去しながら、細胞の健全性を維持するよう特別にデザインされた培地でイメージングを実施することが重要です(表1を参照)。生細胞に適合したバックグラウンド抑制剤を添加することにより、細胞外バックグラウンド蛍光の低減に役立ち、洗浄ステップを省略できる場合があります。生細胞用の退色防止マウント剤をサンプルに適用すると、蛍光色素の光退色を低減でき、複数または長時間の露光によるシグナル損失を防止します。

表1.イメージング用培地の比較。

試薬細胞ウォッシュ短時間イメージング4時間までのイメージング長時間イメージング
Gibco PBS、pH7.4  
Invitrogen Live Cell Imaging Solution 
Gibco FluoroBrite DMEM

製品のハイライト

Invitrogen BackDrop Background Suppressor imaging results

Tubulin Tracker Green色素およびTubulin Tracker Deep Red色素で標識化したHeLa生細胞。プローブが染色液に残留していると、どちらの標識でも細胞外バックグラウンド値が高くなります(左)。BackDrop Background Suppressorを添加すると、細胞外のバックグラウンド値が大幅に減少する反面、細胞内標識は影響を受けないため(右)、生細胞のチューブリンの高コントラストイメージングを洗浄不要プロトコルで実行できます。

Invitrogen ProLong Live Reagent confocal imaging results

ProLong Live reagentで未処理のサンプルに比べ処理済みのサンプルで、シグナルが全体としてどの程度保護されているかは、EC50値に達するそれぞれのスキャン数に基づいて算出されます。ProLong Live reagentを添加すると、Invitrogen CellLight Mitochondria-RFP reagentによりキャプチャが100%超増加しました。

Invitrogen ProLong Live Reagent fluorescence imaging

ProLong Live reagentで処理したサンプルに、標準的な露光時間のイメージングプロトコルで120回露光を行うと、未処理の細胞よりも20%以上明るくなるため、より長時間データを収集できます。

ヒント

  • さらなる培養を予定していない場合は、ぼけを低減してコントラストを上げることによりシグナルを最適化する目的でバックグラウンド抑制剤を使用できます。
  • 退色防止剤の使用は、さまざまなタイプのサンプルで蛍光色素の光安定性を向上させ、光毒性の影響を低減することが確認されています。

ステップ5:イメージング

生細胞の動的プロセスのイメージングには、経時的な能動観察が必要です。

照射および検出

光毒性を最小限にするため、光源をもっとも柔軟にコントロールできるイメージングシステムを選択してください。低バックグラウンドの良好なシグナルを生成しながら、細胞を照射する際の光の強度、露光時間、波長域、および励起エネルギー量を最小限に抑えるようにしてください。もっとも低いレベルの蛍光色素励起でもっとも高いシグナルを得られる照射を使用してください。場合によっては(長時間にわたりイメージングを行いたい場合は特に)、細胞の健全性を保つために、露光時間を短くしたり倍率を下げたりして解像度を下げることが推奨されます。

長時間の生細胞イメージングは、実験の途中でターゲットが焦点から外れることがあるため、困難な場合があります。多くの顕微鏡はオートフォーカス機能を備えており、より長時間ターゲットへの焦点を保ち、焦点のズレを抑えるのに役立ちます。さらに、細胞を一定の温度で維持したり、容器内の溶液量を一定に保つことで、焦点のズレを抑えることができます。

環境制御

多くの細胞は、その最適な温度、浸透圧、pHおよび湿度から逸脱した環境には耐えられません。実験要件は、どのような実験課題を抱えているかによって変わります。たとえば、細胞の増殖および分裂を詳細に研究する実験では、受容体の活性化やカルシウム蓄積などの実験に比べて、異なる条件セットを用いることがあります。一部の頑強な不死化細胞株は、環境の制御なしで短時間のイメージングや観察に耐えられます。一方、長時間のイメージングや検出実験では、不死化細胞および初代細胞で良好な結果を得るには、通常環境パラメーターを厳しく制御する必要があります。

Catastrophic blebbing of the cell membrane

上部の細胞は過度の露光による細胞膜の致命的なブレブ形成を示しています。ブレブ形成とは、毒性によって生じる細胞膜のかく乱を説明する用語です。対照的に、下部の細胞は比較的健全性を維持しており、異常形態を示していません。

製品のハイライト

Countess II FL Automated Cell Counter

細胞の生存率、アポトーシス、細胞毒性、およびトランスフェクション効率を検出するためにCountess 3 FL Automated Cell Counterをさまざまな蛍光試薬と組み合わせて使用すると、細胞の健全性を迅速にチェックでき、不健全な細胞を使用して次の実験ステップに進むという過ちを避けることができます。再生利用可能なガラススライドを選択できるため、消耗品のコストを削減します。

Invitrogen EVOS M5000 Imaging System with EVOS Onstage Incubator

Invitrogen EVOS Onstage Incubatorは、Invitrogen EVOS Imaging System用に特別にデザインされた環境チャンバーです。生理的および非生理的環境下での生細胞の経時的イメージング用に、温度、湿度、および3種類のガスの正確なコントロールを可能にします。

CellInsight CX7 LZR High-Content Screening Platform with HCA Onstage Incubator

Thermo Scientific CellInsight HCA Platform用のInvitrogen HCA Onstage Incubatorは、温度、湿度、およびCO2濃度の正確なコントロールを実現するため、生物学的活性および変化の経時的な観察と測定が可能です。長時間のイメージング実験で収集されたデータは、特にThermo Scientific HCS Studio Softwareと組み合わせて統計量を高めると、定量解析研究の基礎となります。

ヒント

  • 短時間のイメージング実験には、溶媒の蒸発による浸透圧と酸素量の変化を防ぐため、大量のイメージング用培地を使用してください。
  • サンプルに焦点を合わせる際は、低倍率から始めてください。これによりサンプルの露光時間を最小限にできます。
  • 経時的イメージング中は、オートフォーカスをすべての画像撮影に使用することは避けてください。オートフォーカスは、サンプルに当たる光エネルギー量を最高10倍増加させます。
  • より長時間のイメージング、または繊細な細胞のイメージングには、オンステージインキュベーター(OSI)をイメージング装置に追加して、温度、湿度、およびCO2濃度の正確な制御を実現できます。

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生細胞の画像と動画の実例

生細胞イメージングのビデオギャラリー

生細胞イメージングの関連リソース

詳細な情報およびデータについては、次のポスターを参照してください。

Poster: New generation sensors for caspase activation and mitochondrial superoxide in live cell microscopy
Poster: New and improved cellular health evaluation of 2D and 3D cellular models using microplate reader assays
Poster: Hypoxia measurements in live and fixed cells using fluorescence microscopy and high-content imaging
Poster: Evaluation of Cellular Senescence through Fluorescence Characterization

*Incucyte® Live-Cell Analysis Systemは、Essen BioScienceの商標または登録商標です。Incucyte、Essen BioScience、およびEssen BioScience製品のすべての名称は、特に明記されていない限り、Essen BioScienceの登録商標および所有物です。Essen BioScienceはSartorius Companyの所属企業です。MuviCyte™生細胞イメージングシステムは、PerkinElmerの商標または登録商標です。THUNDER Imager Live Cell & 3D AssayおよびMICA Microhub Microscopeは、Leica Microsystems CMS GmbHによって販売されています。

 

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