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弊社の免疫沈降製品に関する詳細:
免疫沈降法は、従来のカラムアフィニティークロマトグラフィーの改良法として開発されました。この従来の手法では、標的特異的な抗体が固定された多孔性樹脂(通常、アガロースビーズ)が充填されたカラムへ、サンプル、洗浄液、その他溶液を流し込みます。一方、免疫沈降法では充填カラムを使用せず、少量の樹脂を用いてマイクロチューブ内で処理します。また操作工程は、バッチ方式を採用しています。各ステップで、溶液をビーズに添加して混合させ、スラリーの状態で(溶液中にビーズを懸濁した状態)、インキュベートします。インキュベーション後、遠心分離法によって(またはマグネットを用いて;下記参照)ビーズをチューブ底に沈殿させます。
カラムアフィニティークロマトグラフィーとは異なり、免疫沈降法の目的は、ウェスタンブロッティングや半定量的/定量的アッセイ法で測定をするのに十分な量のタンパク質を回収することです。通常、処理区および未処理区を設定し、目的タンパク質の相対量を評価します。IPの基本プロトコルを下図に示してあります。手順の異なる2種類のプロトコルをまとめています。
左上図のプロトコルでは、特定のタンパク質に対する抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)を不溶性の担体(アガロースまたは磁気ビーズ)表面に予め固定化しておき、標的タンパク質を含む細胞ライセートを添加してインキュベートします。インキュベーション中に、ライセートを穏やかに撹拌すると、ターゲットの抗原が固定化した抗体に結合します。その後、固定化された抗体に抗原が結合した複合体をライセートから回収し、さらに担体から溶出させて、ターゲット抗原の解析を行います。
もう1つの方法では(右図)、まず固定化していないフリーの抗体を用いて、抗原抗体の複合体を形成させます。次に複合体をベースで回収します。IPでは予め抗体を担体に固定する方法が一般的です。しかしながら、ターゲットのタンパク質の濃度が低い場合や、抗原抗体複合体を効率的に形成させるには、フリーの抗体を用いた方が効果的です。
免疫沈降法は、カラムアフィニティークロマトグラフィーの改良法として開発された経緯があるため、開発当初は、少量(10~25μL)のアガロースレジンを用い、マイクロチューブ中で操作されていました。アガロースビーズは、不均一な形状、サイズ(直径50〜150 μm)でスポンジ状の構造をしています。サンプルやバッファー溶液からビーズを分離させるには、遠心分離法を実行します。遠心で半透明のビーズを沈殿させて、上清をピペティングで丁寧に除きます。またマイクロ遠心フィルターカップを利用することも可能です。遠心を行うとカップにビーズのみが保持され、溶液はチューブの底に回収されます。アガロースベースのIPの利点は、スケールダウンまたは自動化ができるという程度です。
現在では、免疫沈降法やマイクロスケールアフィニティー精製用の担体として、アガロースビーズの代わりに、Dynabeads™やPierce™の磁気ビーズなどの磁性粒子が広く使用されるようになっています。磁性粒子は固体の球状であり、抗体は各ビーズの表面に結合します。磁性粒子には結合能力を高める多孔質性が持つ利点がありませんが、磁気ビーズはアガロースビーズより極めて微細(直径1~4 μm)であるため、磁気ビーズを大量にアプライすることによって、トータルの抗体結合に有する表面積が稼げます。
強力な磁力を持つマグネットスタンドに、サンプルの入ったチューブをセットすると、チューブの側面部分に磁性ビーズのみがコンパクトに収集されます。この状態で細胞ライセートをアスピレーターで除去しますが、この操作で抗原抗体複合体をロスするリスクがありません。遠心分離法では、抗原-抗体結合が弱い場合、操作に伴うダメージにより標的タンパク質をロスしてしまいますが、磁気ビーズを用いた分離法では、こうしたリスクを避けることができます。磁気ビーズ法ではマニュアルでのピペット操作が簡単に行えます。また磁気ビーズを用いた操作をすべて自動化で処理できる自動化機器も市販されており、96 well マイクロプレートフォーマットでの処理も可能です。
免疫沈降法において、磁気ビーズはアガロースレジンより優れた性能があります。以下の各性能に関する比較表をご参照ください。この利点については、論文等でも報告されており(データ要約についてはこちら)、IPにおいては、アガロースレジンによる手法から、磁気ビーズを用いた手法への移行が進んでいます。
容量と収量–ビーズ状アガロースは多孔質(スポンジ状)であるため、表面積対容量比が大きくなり、抗体への結合能力が高くなります。磁気ビーズは、滑らかな外表面で、多孔性ではありません。そのため、磁気ビーズはアガロースビーズよりはるかに小さく、理論的に結合能力はアガロースビーズよりも低いです。しかし、スポンジ状の構造を持つアガロース表面に固定化された抗体は、常にサンプル中の標的タンパク質(大きなタンパク質複合体として存在する場合が多い)に到達できるわけではありません。また抗体は、洗浄操作(遠心分離)中に脱落する可能性があります。対照的に、磁気ビーズ表面に結合した抗体は、必ず抗原へ到達できます。また穏やかな洗浄操作(マグネットスタンド上での操作)によって、抗体の脱落を防ぐことができます。したがって、抗体の結合キャパシティーがアガロースより低いにもかかわらず、最終的な抗原の収量はアガロースを用いた場合と同等もしくはそれ以上に達します。
再現性および純度–アガロースビーズを用いた場合、バッファーを完全に除くことは困難です。また操作中に、レジンペレットを崩してしまったり、一部をバッファーを共に吸い上げてしまいます。磁気ビーズとマグネットスタンドを使用した場合、全てのビーズがチューブ側面にしっかりとコンパクトに集積されるため、ビーズペレットに触れることなく、バッファーを完全に除去することができます。また一般にアガロースは、インキュベーションに時間を要します(多孔質内部まで溶液を拡散させるため)。また非特異的なタンパク質の結合を防ぐため、プレクリーニング処理が必要です。磁気ビーズ外側の滑らかな表面上ですべての相互作用が行われ、また磁気ビーズのサイズが均一なため、アガロースビーズよりも再現性と純度が高くなります。磁気ビーズには、プレクリーニング処理が必要ありません。
使いやすさ・迅速な処理・便利な自動化処理–これらをまとめて考慮し、現在、免疫沈降法では磁気ビーズの使用が推奨されています。アガロースビーズは、インキュベーション時間が長く、プレクリーニング処理や遠心分離操作が必要となります。そのため、アガロースビーズを用いたIPはかなりの手作業を必要とし、操作時間は1〜1.5時間に及びます。対照的に、磁気ビーズを用いた各IP実験は、約30分で完了できます。
また磁気ビーズを用いた方法では遠心分離処理がないため、複数サンプルを簡単かつ迅速に処理できます。例えば、DynaMag™-2 Magnet (カタログNo. 12321D) および付属のサンプルラック(カタログNo. 12322D)は、磁気ビーズを用いた場合、同時に16チューブのサンプルを簡単に処理できます。また、96ウェルプレートにも対応したマグネットスタンドも提供しています(例:カタログNo. 12027)。KingFisher™ Flex Magnetic Bead Processor (Cat. No. 5400630)などの小型のベンチトップ機器を用いれば、磁気ビーズを用いたIPプロトコルを自動で行えます。No. 5400630).
免疫沈降には磁気ビーズをご使用ください 例:サンプルサイズ< 2 mLの場合)。磁気ビーズは、小スケールの特異的なタンパク質やタンパク質複合体分離をルーチンで行っている場合、キャパシティ/収量、再現性、純度、コストという面で非常にバランスの良いシステムです。磁気ビーズは、マニュアル、自動化に関わらず、標準的なIP、Co-IP、ChIP、ChIP-Seq、RIP、pull-down反応などに最適であり、迅速なアッセイ解析が行えます。
タンパク質精製にはアガロースレジンをご使用ください (例:サンプルサイズ > 2mLの場合)。最適な抗体を低コストで十分に入手できる状況で、さらに以後のアッセイに大量の標的タンパク質の精製が必要な場合、アガロースを、カラムアフィニティークロマトグラフィーまたは大スケールのスピンカップIP反応と組み合わせて利用することをお勧めします。
最もシンプルな免疫沈降法は、1種類のタンパク質を分離するIPになります。分離したタンパク質は、その同一性(identity)、構造、発現、活性、修飾などの解析に利用されます。一次抗原タンパク質と他のタンパク質や核酸との相互作用を研究する用途には、IPの改変法が利用されます。これらの手法は、一次抗原と結合する相互作用物質や細胞コンポーネントの研究に利用されます。
共免疫沈降は、未知のタンパク質相互作用を同定するために、よく利用されている手法ですCo-IPは基本的にIPと同じ手法ですが、唯一IPと異なる点は、抗体により沈殿された標的の抗原を用いて、さらに結合パートナーまたは標的抗原と結合したタンパク質複合体を共沈殿させます。標的抗原に結合して共沈殿したタンパク質は、細胞レベルで標的抗原の機能に関連するタンパク質であると仮定されます。しかしながら、あくまでも仮定に過ぎないので、さらなる検証が必要です。
クロマチン免疫沈降アッセイは、転写因子やヒストンといったDNA結合タンパク質が関与するゲノム領域を同定する目的で実行されます。ChIPアッセイでは、DNAに結合したタンパク質を一時的にクロスリンクし、細胞溶解前にDNAを断片化します。標的タンパク質はクロスリンクしたヌクレオチド配列と共に免疫沈降されます。その後DNAを回収して、PCRによる同定、シーケンシング、マイクロアレイなど、さまざまな解析に利用されます。RIPは、ChIPに類似していますが、DNA結合タンパク質ではなく、RNA結合タンパク質が免疫沈降されます。免疫沈降したRNAは、RT-PCRやcDNAシークエンスによって同定が行えます。
前述のIP手法では、必ず他の細胞標的との交差反応性を起こさずに、標的タンパク質を特異的認識する抗体が必要です有効な抗体を入手する事が難しいため、多くのタンパク質では、免疫沈降させることができません。
この問題を回避するために、高い親和性を持つ抗体が入手可能なエピトープ配列を付加したタグ融合タンパク質を、実験に使用する細胞中で発現させます。今日では分子生物学研究のあらゆるタイプの免疫沈降法において、この手法は一般的となっています。これらのタグは、以下のような、短いペプチド配列または蛍光タンパク質です:
タグ融合タンパク質を用いる場合の問題点として、本来の内在性のタンパク質ではなく、過剰発現されたタグ融合タンパク質が免疫沈降されるという点が挙げられます。つまりこのアプローチで発見された結果は、実際の生物学的関連性と必ずしも一致しているとは言えないという点です。またタンパク質にタグを付加することによって、タンパク質機能が阻害される可能性があります。
しかしながら、培養細胞中の特異的なタンパク質‐タンパク質相互作用に影響する成長因子と条件については、定量的免疫沈降法(qIP)を用いて正確に測定が可能です。このシステムでは、エピトープタグ付きタンパク質とルシフェラーゼ酵素タグ付きタンパク質を共発現させて測定を行います。
プロテインA、プロテインG、プロテインA/ GおよびプロテインLは、免疫グロブリン(Ig)結合タンパク質です。これらをアフィニティーリガンドとしてビーズ担体に結合させ、IPアプリケーションの抗体結合プラットフォームとしてよく利用されています。下図に示すように、プロテインAおよびプロテインGは、抗体のFc領域のheavy chainに対する特異性を示すため、抗原が結合している位置が外側になるように抗体を固定化します。;またプロテインGはFab断片に対して親和性を示します(1、3)。プロテインLはlight chainに結合しますが、特異的な結合特性があるためプロテインLの用途は非常に限られています。
免疫沈降法によく用いられるプロテインA、プロテインGおよびプロテインA/ Gは、プロテインAの抗体結合部位4つとプロテインGの抗体結合部位2つが組み合わされた組換えタンパク質です。プロテインAおよびプロテインGは、さまざまな動物種由来のサブクラスのIgG抗体に対して高い親和性を示します(動物種とサブクラスIgGの組み合わせによって親和性が異なります)。一方、プロテインA/ Gは、プロテインAとプロテインGがそれぞれが結合するすべてのサブタイプに結合します。
固定化されたプロテインA、GおよびA / G(以下、総称して「プロテインA/ G」)は、免疫沈降アプリケーションでは、ビーズ担体へ抗体を結合させるために利用されます。プロテインA / Gレジンやビーズの製造法の新たな開発に伴い、結合能力の非常に高い担体が市販製品として登場しました。免疫沈降において、ごく少量のビーズ使用で非常に優れた結果が得られます。
プロテインA/G担体は、使用する抗体の由来動物種やサブクラスの組み合わせが結合に適さない場合は利用が難しいです。また非特異的な免疫グロブリンを含む血清を用いた場合も、IP抗体と担体への結合で競合してしまうため、免疫沈降は難しいです。
ビオチン修飾された一次抗体が多くで市販されています。また市販のラベリング試薬やキットでも、簡単に一次抗体のビオチン標識が行えます。IPでビオチン化抗体を使用する場合、キャプチャー(固定化)には必ずストレプトアビジンビーズを使用します。さらにさまざまなタンパク質や核酸もビオチン化できることから、アビジン-ビオチンのアフィニティーシステムは、あらゆるプルダウン反応に対して、汎用性の高い強力な戦略と言えます。
共有結合による固定化では、抗体を化学的にビーズ担体へ結合させるため、プロテインA/ Gを用いた抗体の固定化を行う必要がありません。市販製品として入手できるビーズ担体は、抗体上の第一級アミン(-NH2)に反応して、抗体を担体へ永久結合させます。この手法では、抗体のリジン残基とビーズ表面のNHS基で共有結合させるため、ランダムな配向で抗体が結合します。しかし抗原結合機能やIP抗体のキャパシティーにはほとんど影響しません。直接免疫沈降法は、プロテインA/ Gに依存しないだけではなく、IP抗体による抗原との共溶出 (非還元溶出バッファーを使用した場合)やSDS-PAGE分析への干渉が抑止できます。また抗体は理論的にインタクトな状態を維持し、担体に永久結合しているため、抗体でコーティングされた担体は、何度も再利用が可能です。
また架橋剤を使用して、プロテインA/ Gに結合した担体へ共有結合的に抗体を結合させることも可能です。例えばこうした架橋剤には、DSSやBSなどが挙げられます。これらは、両末端に反応性N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル基を有した短い炭素鎖です。NHSエステルは、第一級アミン(タンパク質中のリジン残基の側鎖)と反応して、共有アミド結合を形成します。抗体をプロテインA / G支持体に結合させた後、架橋剤溶液と混合させると、架橋剤分子が抗体やプロテインA/ Gの隣接アミンに反応して結合することができます。
架橋法では、直接固定化法と同様に抗体の共溶出が発生しないため、抗体支持体を数回再利用できる可能性があります。当然この手法は、プロテインAまたはGに結合できる抗体にのみ利用できます。抗体には、Fc領域以外にもアミン基が複数含まれるため、架橋剤の添加量を最適化することが重要です。架橋剤の添加量が過少または過剰な場合、抗体がプロテインA/ Gアガロースへ結合しないことがあります。また抗体結合部位中の過剰アミノ基が修飾され、抗体が抗原に結合できなくなる可能性もあります。
免疫沈降法は論理的にも操作もシンプルですが、実験の成功を左右する変数は、個々のタンパク質とさまざまな一次抗体間の特定の差異に相当するほど多様かつ特有です。標的のタンパク質を十分な収量と純度で得るためには、実験的な検証を行って、最適なIP条件を検討する必要があります。しかしながら、主要な要因を考慮することによって、個々の実験の中で最も影響を及ぼしているコンポーネントを特定することは可能です。例えば、IPまたはco-IPでコントロール実験を行い、これらのコントロール条件でも、なんらかの産物が得られた場合、非特異的な結合(off-target)が生じていると判断できます。上記の直接固定化戦略は、アッセイ系で非特異的結合相互作用の発生源となり得る成分としてのプロテインA/ Gが、欠如しているという利点がひとつあります。
溶解(Lysis)バッファーの作用によって、ネイティブタンパク質の立体構造の安定性、酵素活性の阻害レベル、抗体結合部位の変性の度合い、および細胞や組織からのタンパク質溶解の効率が左右されます。つまりIPアプリケーションに用いるサンプルの品質は、主に溶解バッファーの適正によって決定付けられます。標的のタンパク質が細胞内のどこに局在するかによって(例:細胞膜、細胞質、核など)、その溶解性が異なります。そのため免疫沈降の標的のタンパク質によって適切な溶解バッファーを選択します。
非変性バッファー v、IP抗原が界面活性剤に可溶性である場合や、抗体が、標的タンパク質がネイティブ構造を取っていても認識できる場合に使用されます。これらのバッファーには、NP-40またはTriton X-100などの非イオン性界面活性剤が採用されています。変性バッファー(例: ラジオ免疫沈降アッセイ(RIPA)バッファーは、イオン性界面活性剤であるSDSやデオキシコール酸ナトリウムが含有しており、非変性バッファーよりも強力なバッファーです。変性バッファーではネイティブタンパク質の立体構造が維持されませんが、非変性バッファーで溶解させることが困難なタンパク質(核タンパク質など)は、この変性バッファーを用いて溶解します。変性および非変性の両バッファーには、NaClおよびTris-HClが含有されており、わずかに塩基性のpH (7.4~8)を有しています。また界面活性剤フリーのバッファー は、物理的破壊(機械的ホモジュナイゼーションや加熱)のみで標的タンパク質を細胞から放出させられる場合に使用できます。一般にこれらのシンプルなバッファーは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が添加されたものが利用されます。下表で各成分を参照して、プロトコルの最適化にお役立てください。
細胞溶解物には標的タンパク質を修飾や分解してしまうプロテアーゼやホスファターゼも含有されるため、一般にIPプロトコルは4℃下で実行されます。通常、PMSF、アプロチニン、ロイペプチンなどの プロテアソーム阻害剤を使用直前に溶解バッファーへ添加します。この際、 ホスファターゼ阻害剤としてオルトバナジウム酸ナトリウムまたはフッ化ナトリウムも同時に添加します。これらの各成分を別々に添加するのもよいですが、高品質で使いやすい市販の阻害剤カクテルを利用すると便利です。
Component | Range |
---|---|
Non-ionic detergents (NP-40, Triton X-100) | 0.1 to 2% |
Ionic detergents (SDS, sodium deoxycholate) | 0.01 to 0.5% |
NaCl (sodium chloride, salt) | 0 to 1M |
Divalent cations | 0 to 10mM |
pH | 6 to 9 |
EDTA | 0 to 5mM |
溶解物はタンパク質、脂質、炭水化物および核酸の複合混合物のため、ある程度の非特異的な結合が、IP抗体やProtein A/G、ビーズ担体に生じることを想定しなければなりません。この非特異的な結合は、免疫沈澱の標的の検出に悪影響を与えます。
サンプルのプレクリーニングは、免疫沈降の工程に進む前に、ライセートサンプル中に存在する非特異的な反応を生じると予想されるコンポーネントを除くために行います。一般に、アガロースビーズを用いる場合にプレクリーニング処理が必要になりますが、磁気ビーズを用いる場合にはほとんど必要ありません(ビデオ参照)。
プレクリーニング処理の方法は、免疫沈降に用いる成分と完全に同一成分でサンプルをインキュベートします。ただし抗体は、IP抗体と同じ動物種由来の非特異的な抗体を使用します。非特異的抗原抗体複合体が形成され、ビーズ担体に固定化されます。またプロテインA/ Gまたはアガロースビーズを使用する場合、この手法でIPコンポーネントへの非特異的結合が生じてしまいますが、同時に、非特異的な抗原抗体複合体がライセートから除去されます。結果、プレクリーニングによりライセート中の非特異的な産物が除去されるため、IP実験で標的抗原と共精製されません。
これらの非特異的な抗原抗体複合体は、IPやco-IP実験においてネガティブコントロールとして使用できます;このコントロール条件で得られた生成物は、非特異的な結合(オフターゲット)由来と判断します。上記の直接固定化戦略は、プロテインA/ Gが成分として欠如しているという利点がひとつあります。そのため、アッセイ系における非特異的結合相互作用の発生源がありません。
免疫沈降時、抗原抗体複合体の形成や複合体の安定性の維持は、結合バッファーを構成するすべてコンポーネントとの適合性に依存します。多くの場合、抗体-抗原相互作用はかなり強く、中性付近pH、標準的イオン強度のバッファー(例:PBS)中において強く結合します。一方、抗原抗体間の相互作用の強さと継続時間のレンジは、”不可逆性で長寿命”から”不安定で一過的”とさまざまで、結合条件やプロトコールの維持的な中断などに影響を受けます。
溶解物をプレクリーニングを行った場合でも、IPコンポーネントの作用により非特異的な細胞成分によってプルダウンされます。そのためサンプルの溶出前に、穏やかな洗浄を行ってIPコンポーネントを除去する必要があります。シンプルな洗浄バッファーを使用(PBS単独あるいは低濃度界面活性剤と共に)するか、もしくは塩濃度へ適度に調整をすることにより複数回の洗浄を行えば、こうした混入物を除去できます。
以後の解析で、還元SDS-PAGEやウェスタンブロット検出を行う場合、従来のIPでは、還元SDS-PAGEサンプルバッファーを用いて、直接溶出を行います。溶出バッファーは電気泳動でタンパク質を変性および還元させる作用があり、IPベースのアフィニティー相互作用が効果的に解離されます。電気泳動以外のアプリケーションでは、このバッファーの使用は適しません。直接法または架橋IP法において、この溶出バッファーを使用した場合、抗体のコンタミネーションなしに抗原を溶出することは難しいです。
タンパク質のアフィニティー精製法用として、最も効果的な非変性溶出バッファーは、0.1 Mグリシン(pH 2.5~3)です。相互作用が架橋されていないと仮定すれば、低pH条件によって大半の抗体-抗原相互作用ならびに抗体-プロテインA/ G相互作用が解離されます。しかし低pHのグリシンは、常にに有効に作用するわけではありません;このバッファーでは解離できない抗体-抗原相互作用もあります。またこのバッファー中で変性または非活性化される抗体や標的抗原もあります。その他の溶出バッファーについては、以下のテクニカルヒントをご参照ください。
以下の動画ではDynabeads磁気ビーズをご紹介します。また上述の免疫沈降法に関する情報をまとめて概説いたします。また免疫沈降法において、 アガロース樹脂の代わりに磁気ビーズを使用した際の主要な利点についてもご紹介いたします。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.