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光活性型(または光化学)の架橋反応の発生には、光エネルギーが必要となります。光反応性基は化学的不活性な化合物であり、紫外線や可視光へ曝露されると活性型となります。架橋用試薬に用いられる光反応性基(実質的には全品種)は、紫外線(UV光)へ暴露されることにより、分子が活性化されます。
光化学反応性基は、生物学的サンプルの架橋/標識用途において、他の架橋試薬に比べて優れた利点があります。なによりも光化学反応性基は、実験初期段階で試薬を添加できるうえ、反応過程の適当なタイミングでUV光へ曝露することにより目的の架橋反応を行うことができます。また光化学反応性基の多くは、活性化されると近傍に存在するタンパク質の様々な官能基に結合する性質を持っています。こうした特性から光化学反応性基は、タンパク質相互作用の捕捉に非常に有用です(下記をご覧ください)。
バイオコンジュゲート法に用いる架橋/標識化合物に組み込まれている光反応性基には、以下のタイプがあります:アリルアジド、アジドメチルクマリン、ベンゾフェノン、アントラキノン、特定のジアゾ化合物、ジアジリン、ソラレン誘導体など。上記のうちアリルアジドとジアジリンは、タンパク質の生物学研究に最もよく利用されています。
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Bioconjugate Techniques is a complete textbook and protocols-manual for life scientists wishing to learn and master biomolecular crosslinking, labeling and immobilization techniques that form the basis of many laboratory applications. The book is also an exhaustive and robust reference for researchers looking to develop novel conjugation strategies for entirely new applications. It also contains an extensive introduction to the field of bioconjugation, which covers all the major applications of the technology used in diverse scientific disciplines, as well as tips for designing the optimal bioconjugate for any purpose.
アリルアジドは紫外光(250~350 nm)への曝露時に、ニトリル基を形成します。このニトリル基は、二重結合の付加反応やC–H/N–H部位への挿入を開始させることができます。さらに環構造を拡大させて求核試薬(例:第一級アミン)と反応させることも可能です。サンプル中に第一級アミンが存在する場合、後半の反応経路が優勢となります。
チオール含有還元剤(例:DTTまたは2-メルカプトエタノール)は、光活性化の前/途中の全工程において、サンプル溶液に添加しないでください。アミド官能基がアミンに還元されて光活性化が抑制される原因となります。様々なアミン非含有バッファ条件下で、反応できます。ヘテロバイファンクショナル架橋剤を用いて実験を行う場合、関与する反応性化学全てに適合したバッファをご使用ください。目的の光架橋反応を行うまで、ホイルで覆われた反応容器を用い、可能な限り遮光した条件で実験してください。一般に光活性化を達成するには、手持ち型の紫外光ランプを反応液に近づけて、数分間直接(ガラスやポリプロピレンを介さずに)光を照射します。
アリルアジドには、フェニルアジド/ヒドロキシアミド/ニトロフェニルアミドの基本的な3タイプがあります:単純なフェニルアジドを効果的に活性化させるには、一般に短波長紫外光(例:254nm;265~275nm)が求められます。一方ニトロフェニルアジドの活性化には、長波長紫外光(例:365nm; 300~460nm)が適しています。短波長紫外光が原因で生体分子が損傷するリスクがあることから、一般にニトロフェニルアジドの方が架橋実験に適しています。
ホモバイファンクショナルアリルアジド架橋剤は代替架橋剤よりも有用性が限られていることから、現在は販売されていません("BASED、bis-[β-(アジドサリチルアミド) エチル] ジスルフィド)"に関する文献をお探しください)。アリルアジド試薬を用いる場合、ヘテロバイファンクショナル試薬としては、一方がアリルアミド基でもう一方がアミン反応性NHSエステルといった別タイプの反応性基になったタイプになります。様々なベイト/プレイ法を用いたアプリケーションでこれらの化合物を使用して、タンパク質間相互作用解析やタンパク質-核酸相互作用解析を行います。
ヘテロバイファンクショナルNHSエステル/アリルアジド架橋剤は、目的タンパク質がどのタイミングでどのようなタンパク質相互作用するかを解析する実験に使用します。
既に保有している精製タンパク質(X)と、相互作用するタンパク質(Y)を解析したい場合、まず、架橋剤を個別にXと反応させます;架橋剤のNHSエステル末端はXの第一級アミン表面に付着し、活性済みアリルアミド基が付加したXを作成できます。Xを脱塩して未反応の架橋剤を除去した後、サンプルY(例:細胞ライセート)へX を添加します。最後に、XとYどうしが結合するのに十分な時間を置いた後、サンプルに紫外光を照射してアリルアジド部分を活性化させると、サンプルは近接のタンパク質官能基へと結合します。
近接のアミノ酸が結合パートナー(Y)のアミノ酸である場合、X-Y間に共有結合架橋が形成されます。この複合体を用いて、様々な方法で複合体解析が行えます。Xの検出用の特異的抗体を保有している場合、電気泳動やウェスタンブロッティングで生成物の分析が行えます。複合体は個々のタンパク質より分子量が大きくなっているので、この差を検出することによって複合体の存在を確認することができます。
架橋剤のスペーサー長を変えることでより効率的に相互作用タンパク質を補足したり、別のタンパク質との相互作用を確認できる場合があります。また切断可能なスペーサーを用いることにより複合体を解離して解析することもできます。ヘテロバイファンクショナルアリルアジド化合物は、他方の官能基がアミン反応性、スルフヒドリル反応性、カルボニル反応性の各タイプから選択できます。
上記のように標識転写は、ヘテロバイファンクショナル架橋を発展させた方法で、タンパク質相互作用の研究に利用されています。この試薬には、二つの架橋末端だけでなく、検出可能なタグ/標識(例:フルオロフォアやビオチン)や切断可能なスペーサーアーム(通常、ジスルフィド結合)が組み込まれています。
相互作用タンパク質のペア (上記の仮想タンパク質X/Y) を架橋させた後、タンパク質ペアに連結したスペーサーアームを切断することが可能です。切断によってタンパク質が分離しますが、Yに付着した標識は分離せずに残ります。そのためビオチン標識は、「ベイト」タンパク質(X)から「プレイ」タンパク質(Y)へと効果的に転写されます。
ジアジリンは新たなクラスの光活性化化学基であり、様々なタイプの架橋/標識試薬に組み込まれています。ジアジリン(アジペンタノエート)部分はフェニルアジド基よりも光安定性に優れており、長波長紫外光(330~370nm)を用いると、活性化がより容易かつ効率的に行えます。
ジアジリンを光活性化させると、反応性カルベン中間体が作製されます。この中間体は、各試薬のスペーサーアーム長に相当する距離でアミノ酸側鎖やペプチド骨格と反応することによって、共有結合を形成することができます。
現在アリルアジド試薬は、様々な文献において広範に引用されています。ただし現在は、ジアジリン試薬の使用が一般化し始め、あらゆる用途においてアリルアジド試薬を凌ぎつつあります。
ジアジリンと当量のヘテロバイファンクショナルアリルアジド試薬を使用すれば、同タイプのタンパク質相互作用実験が全て実行可能です。現在、ジアジリン化合物は数品種が利用可能です。これらの品種は反対側の末端にアミン反応性NHSエステルを有しています。
ジアジリン基は安定性が高く、サイズも小さいことから、代謝を伴う架橋標識実験にも有用です。例えば、側鎖にジアジリン基を含む天然アミノ酸の類似体として、フォト-L-ロイシンやフォトL-メチオニンがあります。上記化合物を天然対応物の代わりに培養液へ添加すると、タンパク質にアミノ酸配列中に取り込まれ、光反応性基をもつタンパク質を得ることができます。これによってタンパク質自体が、in vivo架橋戦略の架橋試薬となります。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.