はじめに

概要

出芽酵母にGFP遺伝子が組み込まれた酵母GFP(緑色蛍光タンパク質)クローンコレクションは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のErin O'Shea博士およびJonathan Weissman博士により作製されました(Huh et al., 2003)。酵母GFPクローンコレクション作製の行程を以下に述べます。
酵母GFPクローンコレクションは、C末端にオワンクラゲGFP(S65T)タグ(Tsien, 1998)を含む完全長ORFを発現する出芽酵母のコレクションです。 GFP遺伝子は相同組換えにより酵母染色体に組込まれ、内在性プロモーターを用いてターゲット遺伝子との融合タンパク質として発現します。 酵母GFPクローンコレクションは、酵母のプロテオームの75%に相当する4,159種のORFにGFPタグを付けたクローンから構成されています。 蛍光顕微鏡による観察の結果、GFP融合タンパク質は22種の細胞内部位に局在していました。

クローン情報

各酵母GFPクローンに関する詳細情報は、ORFの名称、遺伝子名、細胞内局在、および高解像度の画像を含め弊社ウェブサイトwww.invitrogen.com/clonesからご覧いただけます。

アプリケーション

酵母GFPクローンコレクションは以下のアプリケーションにご使用いただけます:

  • 特定の外部刺激または培養条件に対する反応の解析
  • 目的のタンパク質における変異の影響およびその後の細胞内局在の解析
  • タンパク質ターゲティングに対する複雑な調節ネットワークの解明
  • 細胞内小器官プロテオミクスの研究
  • タンパク質―タンパク質相互作用の評価(機能に関して最小限のデータしかないタンパク質に特に適しています)



作製方法

酵母GFPクローンコレクションの作製方法を以下に述べます。

図1


利点

局在性の研究に酵母GFPクローンを用いる利点としては以下があげられます:

  • 偽陽性率が低い
  • 内在性のプロモーターにより野生株と同レベルのタンパク質を発現するため、タンパク質の過剰発現に伴う問題を回避可能
  • 外的な補因子に依存しない非侵襲性のGFP蛍光解析


交換

酵母GFPクローンコレクションの販売代理店として、Invitrogenは遺伝子型、表現型、細胞内局在に関するエラーに対して責任を負わないものとします。 交換の判断はInvitrogenに委ねられます。

参考文献

  • Huh, W., Falvo, J. V., Gerke, L. C., Carroll, A. S., Howson, R. W., Weissman, J. S., and O'Shea, E. K. (2003). Global Analysis of Protein Localization in Budding Yeast. Nature 425, 686-691.
  • Tsien, R. Y. (1998). The Green Fluorescent Protein. Annu. Rev. Biochem. 67, 509-544.

酵母GFPクローンの使用法

はじめに

納品後の酵母GPFプレート取り扱い方法およびグリセロールストックの作製方法は以下をご覧ください。 特殊なアプリケーションで酵母GFPクローンを使用する場合のプロトコールは本マニュアルに含まれていません。

グリセロールストックの作製

納品後2週間以内にクローンのスタブからグリセロールストックを調製してください。

  1. 滅菌した白金耳を使用し、クローンのスタブから5 mLのYPD培地を入れた50 mLチューブへ植菌します。 SD-His培地も使用できます。

  2. 振盪しながら30℃で一晩または培地が濁るまで培養します。

  3. 滅菌した80%グリセロールを0.9 mL加え、よく混ぜます。

  4. 調製したストックを超低温用のバイアルに移し、-80℃で凍結します。

  5. 酵母を起こす時は、少量の凍結ストックをYPD寒天培地に播きます。

 プレートからの植菌

プレートを完全に解凍します。酵母は培養中ウェルの底に溜まりやすいため(凝集)、プレートを複製する前に確実に再懸濁してください。 細胞の生存率が低下するため凍結・融解の繰り返しは避けてください。

クロスコンタミネーションの回避

  • 一度外したフタは、再び96ウェルプレートへかぶせる前にエタノールで洗浄してください。
  • 96ウェルプレートを再シールする時には、まずプレートを凍結し、数枚ずつ取り出してシールしてからフリーザーに戻して下さい。
  • フォイルシールをはがすのはプレートが凍結状態の時のみとし、フードの中で、フタを外した状態で解凍してください。
       

培地の組成

YPD培地

Yeast Extract Peptone Dextrose培地(1 リットル)
1% yeast extract
2% peptone
2%dextrose (D-glucose)

  1. 以下の試薬を1000 mLの水に溶解します。

    • 10 g yeast extract
    • 20 g peptone
    • 20 g dextrose(プレートを作製する場合は下記の注記をご覧ください)

    オプション: プレートを作製する場合は、20 gのアガーを加えてください。

  2. 20分間オートクレーブしてください。

  3. 培地は室温で保管するか、または冷ましてからプレートに分注してください。 保存可能期間は、およそ1~2か月です。


注: プレートを作製する場合はステップ1でdextroseを加えないでください。 アガーとdextroseを混ぜてオートクレーブすると、
dextroseがカラメル化してしまいます。 20%dextroseのストック溶液を別途用意し、オートクレーブまたはフィルター滅菌してください。 YPD溶液(液量900 mL)をオートクレーブした後、100 mLの20% dextroseを培地に加えてください。
25-0730 バージョンB 2008年9月30日改訂