Search Thermo Fisher Scientific
Search Thermo Fisher Scientific
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が初めて導入された時、プロセスは困難で時間がかかるものでした。変性、アニーリング、および伸長は、サンプルを手動で別のウォーターバスに移し、サイクルごとに新しい酵素を追加することにより行われていました。サーマルサイクラー(PCR装置)はPCRプロセスを自動化するために開発され、私たちの実験をより容易かつ迅速にするためにPCRテクノロジーは進化し続けています。今では、小規模ラボ向けのコンパクトサイズから、ハイスループットラボ向けの自動化機能まで、サーマルサイクラーで利用できるオプションが多くあります。ここでは、PCR装置の選択方法に関する考慮すべき6つの役立つヒントを紹介します。
PCRの3つの主なステップ (変性、アニーリング、および伸長)は温度に大きく依存するため、ウェル間の温度が正確かつ均一なサーマルブロックが必要です。そうでなければ、実験の再現性が損なわれる可能性があります。
サーマルサイクラーを選択する際、温度精度に関して品質検査されているか、および定期的な検査に対してどのようなオプションがあるかを確認してください。サーマルサイクラーの正確な温度を実現するために、温度検証キット(図1)を使用した試験や、訓練を受けた専門家による再校正を定期的に行う必要があります。温度検証試験は以下を測定するために実施されます:
サーマルサイクラーはすべてのサンプルウェルで温度均一性を維持しなければならず、それは理想的には設定温度の0.5℃以内です。温度の均一性が高いほど、増幅の均一性の確率が向上します。図1に示すように、温度検証プローブを使用して温度不均一性を試験できます。
ターゲットDNAに合わせてPCRのプライマーアニーリングを最適化するには、アニーリング温度と呼ばれる最適な温度を見つける必要があります。通常最適化では、複数の設定を同時に試験できるように、ブロック全体でさまざまな温度を設定します。サーマルサイクラーを選択する際、使用するブロックのタイプ(グラジエントまたは代替法)や、実験の性質に適合しているかどうかを確認してください。
PCRのアニーリング温度は、増幅するターゲットのDNAフラグメントによって変わります。これは、PCRプライマーがターゲットDNAに結合するのに最適な温度です。
PCRのプライマーアニーリング温度の最適化を効率化するよう設計されたサーマルサイクラーの機能として、ラジェント温度制御機能があります。グラジェント設定の目的は、さまざまな温度を、通常レーンごとに2℃以上の温度勾配でブロック全体に設定することです(図2A)。こうすることで、複数の温度を同時に評価して最適なプライマーアニーリング温度を見つけることができます。
理論的には、正確なグラジエントはブロック全体で線形の温度勾配を示します(図 2B)。しかし、グラジエント機能のあるサーマルサイクラーは通常、1つのサーマルブロックで構成されており、このサーマルブロックの温度は、各末端に1つずつ配置された2つの加熱および冷却素子のみによって制御されます。この設計には以下のような制限があります:
プライマーアニーリングの温度制御の向上に役立つ、「グラジエントよりも優れた」技術を備えた代替のサーマルサイクラーを使用できます 。このような技術のタイプの1つは、サーマルサイクラーを3つ以上の独立した金属ブロックで構成し、各金属ブロックが加熱冷却素子を備えるように設計することです。グラジェントブロックと比較したこのVeriFlexブロック設計の特長は以下のとおりです:
サンプル温度を制御できることは、PCR反応の正確性を実現する上で非常に重要です。ランプ速度、ホールド時間、および予測アルゴリズムは、すべてPCR実験結果に影響を与える重要な要素です。サーマルサイクラーを選択する際、どのようなタイプの精密な温度制御が実験の性質に必要かを判断してください。
PCRのランプ速度は、サーマルサイクラーがあるステップから別のステップに移る際の温度の変更にかかる時間のことで、通常1秒当たりの摂氏(℃/秒)で表されます。「上昇ランプ」と「下降ランプ」はそれぞれサーマルブロックの加熱速度と冷却速度を示します。
ブロックからサンプルに熱エネルギーが移動するのに時間を要するため、サンプルのランプ速度は(ブロックのランプ速度より)緩やかになります。サンプルのランプ速度を使用すると、サーマルサイクラーのPCRの結果や再現性への潜在的な影響をより正確に比較できます(図4)。
サーマルサイクラーのランプ速度は、どれほど速く設定温度に到達するかに影響します。ランプ速度が速いほどPCRランが速くなり、所定の時間でより多くの実験を実施できます(図5A)。
ホールド時間と予測アルゴリズムはPCRの精度に影響を与える2つの重要な要素です。
ホールド時間は、PCRプロトコルの各ステップ間の時間を指します。次のステップに進む前に、サーマルサイクラーが各ステップで適切な温度を維持していることを確認することが重要です。そうでなければ、PCRの結果は正確でなく、実験の再現性に影響を与える可能性があります。
予測アルゴリズムは、サンプル量とPCR用プラスチック製品の厚さに基づいてサンプルの温度と時間を制御するのに役立ちます。この機能により、オーバーシュートやアンダーシュートすることなく、サンプルは可能な限り迅速に設定温度に到達します。これは、エラーを最小限に抑え、信頼性の高い結果を取得するのに役立ちます。
サーマルサイクラーを選択する際、実験の性質上、特定の設計が必要かどうかや、柔軟性が要求されているかを特定してください。スループットを向上させることができるサーマルサイクラーの特徴には、ランプ速度、サーマルブロック構造、および自動化プラットフォームとの統合などがあります。また、1回のPCRランで実行できる反応数を考慮することも重要です。反応数はサーマルサイクラーブロックの設計によって決まる場合があるため、結果や結果を得るまでの時間に大きな影響を与えます。
交換可能なブロック(高いスループットが必要な場合に交換できるもの)や、独立したブロック(別々のPCRの同時ランを可能にする、独立して動作するブロックを装備した装置)などのオプションにより、最適化に要する時間を大幅に短縮し、複数のユーザーが同じ装置を同時に使用することができます。
最大3つの独立した実験を同時に実行するための3 x 32ウェルブロック。
標準的なPCRアプリケーション用の96ウェルブロック。
ハイスループットシーケンシング用のデュアル96ウェルブロック。
ハイスループットシーケンシング用のデュアル384ウェルブロック。
さらに、個別に制御できる複数のモジュールを搭載したたサーマルブロックは、1台のサーマルサイクラーで異なるPCRプロトコルを同時に実行するのに最適です(図6)。
自動化ハイスループットPCRの場合、リキッドハンドリングシステムを制御するソフトウエアでプログラム可能で、かつこれと互換性があるサーマルサイクラーを選択する必要がありますです。自動化システムはほぼ無人で24時間動作できるため、マニュアル操作による実験セットアップに要する時間を最小限に抑え、所定の時間でランできる反応数を増やすことができ、ハイスループットPCRに最適です。その場合、リキッドハンドラーやプレートスタッカーによるハンズフリー操作を行うために、使用するロボットプラットフォームに容易かつ柔軟に統合できることが望ましいです。
特に複数のサーマルサイクラーを使用する場合、サーマルサイクラーのもう1つのオプションとして、クラウドまたはオンプレミスサーバーを介して装置をリモート制御できる機能があります。これは、有線接続より便利で望ましい方法です。
サーマルサイクラーの購入は投資です。そのため、選択するサーマルサイクラーは、ラボの使用レベル、環境ストレス、および輸送条件に耐えられる必要があります(図7)。装置の信頼性と耐久性の試験内容を報告しているサーマルサイクラーメーカーもあります。サーマルサイクラーを選択する際、装置でどのような信頼性、耐久性、および品質試験が行われているかを確認してください。
表1.Applied Biosystemsサーマルサイクラーの耐久性および環境試験の結果。
実行した試験 | 試験方法 | 要件 | 結果 | |
---|---|---|---|---|
コンポーネントの信頼性: | 温度サイクル | 1サイクル = 95℃(15秒)、60℃(60秒) | >350,000サイクル | 合格 |
ヒートカバーの開閉 | リッド作動ロボット:1サイクル = 閉じる、開く、閉じる | >29,000サイクル | 合格 | |
タッチスクリーンタッチ(Applied Biosystems自動サーマルサイクラーでは未実施) | タッチスクリーン作動ロボット:1サイクル = タッチ、放す | >2,900.000サイクル | 合格 | |
ドッキング機構(ProFlex PCRシステムのみ) | ドッキング作動ロボット:1サイクル = ドッキング、放す、ドッキング | >5,000サイクル | 合格 | |
環境試験 | 温度 | 環境チャンバー内でのサーマルサイクラーの性能 | 15~30℃ | 合格 |
湿度 | 環境チャンバー内でのサーマルサイクラーの性能 | 15~80% | 合格 | |
高度 | 環境チャンバー内でのサーマルサイクラーの性能 | 6,000フィート(812 mbar) | 合格 | |
輸送試験 | ISTA*推奨の衝撃および振動試験 | 合格 | 合格 |
*国際安全輸送協会、 www.ista.org
信頼性と耐久性に関して厳しい試験を実施しても、サーマルサイクラーの寿命前に技術的問題が発生するのを回避することはできません。安心して継続使用していただくために、購入の際にメーカーから提供されている保証、サービス、およびサポートをご検討ください。機能しない装置でお困りの場合、これらのサービスによって大きな違いが生じる場合があります。以下の事項についてご確認ください:
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.