Physical Analysis of Semiconductor Wafers

ウェハー製造の管理により工程の歩留まり損失を低減

日常のルーチンウェハーコンプライアンスの課題に応えるための工程ステップおよびウェハー環境の管理には、電子およびイオン顕微鏡を含むさまざまな特性評価技術を用いることが求められます。 ここでは、半導体製造全体の工程管理を通じて最高の歩留まりを達成するために役立つサーモフィッシャーサイエンティフィックの電子顕微鏡とその使用方法について学びます。


半導体ウェハーの物理解析における電子顕微鏡および集束イオンビーム装置の役割

半導体ウェハーの工程段階の管理と物理構造の解析には、さまざまな高分解能光学/電子顕微鏡/集束イオンビーム装置および特定の分光分析装置/回折装置を使用します。 表 1 はこうした技術の一覧です。表 2 には半導体加工での使用法を示しています。

表 1. 半導体ウェハーの物理解析の技術例

光学/電子顕微鏡、集束イオンビーム装置分光分析装置と回折装置
光学顕微鏡法(OM)オージェ電子分光分析法(AES)
走査型電子顕微鏡法(SEM)二次イオン質量分光法(SIMS)
透過電子顕微鏡法(TEM)X 線光電子分光法(XPS)
集束イオンビーム(FIB)X 線蛍光分光法(XRF)
 X 線回折分光法(XRD)
 µ ラマン分光法

表 2: 半導体デバイス製造におけ物理的及び化学的デバイス解析の概要

半導体デバイス解析の種類解析手法解析要求一般的な性能
半導体デバイスの寸法(3D)FIB-SEM空間分解能、コントラスト、ダメージなし< 1 nm @ 1 KeV
(S)TEM空間分解能、コントラスト、ダメージなし< 0.1 nm @ 80 KeV
AFM空間分解能、ダメージなし 
化学組成
ドーパントプロファイル
AES、XPS、ToF-SIMS表面分析、面方向&深さ分解能、分析感度< 20 nm、~ 0.1%の分析感度(AES)
< 100 nm 面方向、 < 1 nm 深さ分解能、ppm/ppt/1e15 at/cm3 の分析感度(ToF-SIMS)
SIMS、SEM-EDX、STEM-EDX、XRFバルク分析、面方向&深さ分解能、分析感度< 2 nm、~ 0.01-0.1%の分析感度(STEM-EDX)
アトムプローブトモグラフィー3D 分析、空間分解能単一原子まで検出、
< 0.1 nm の空間分解能
ケミカルコンタミネーションVPD-TXRF、VPD-ICP-MS分析感度、再現性< 1e10 at/cm2、~ 1E7 at/cm2 検出限界
ToF – SIMS分析感度、空間分解能、再現性< 100 nm 面方向、< 1 nm 深さ分解能、< 1E8 at/cm2 検出限界
歪、
熱機械特性
マイクロラマン分光分析
PED-STEM、CBED-STEM
ナノインデンテーション、ポロシメーター
感度、精度、空間分解能 
電気的故障個所特定SEM ナノプローバー
AFM ナノプローバー
エミッション顕微鏡(EMM)
レーザー(OBIRCH など)
ロックインサーモグラフィー(LIT)
電気的故障個所検出感度および故障個所特定の空間分解能 

現在のウェハー工程では、微細化、新素材、革新的なアーキテクチャに対応しなければならず、重要なデバイス構造はあまりに微細なため既存のツールでは観察することも特性を評価することも困難です。 半導体デバイスの寸法が微細になるにつれ、画像分解能と検出器の感度に求められる性能もさらに厳しくなります。10 nm 以下のデバイスのトランジスターの構造を観察するには、顕微鏡の分解能はオングストローム単位の性能が求められます。また、プロービングされた微小部(< 0.001 um3)から発生する検出可能なシグナルは極めて微弱なため、検出器をリードアウトする電子機器は高感度でノイズフリーであることが求められます。

サーモフィッシャーサイエンティフィックでは、研究、プロセス開発または歩留り立上げと量産などのサイクルの各段階でのウェハー解析に様々な電子/集束イオンビーム装置およびその他の分析装置をご用意しています。

研究とプロセス開発期には、エンジニアとデザイナーが原子レベルで新しい半導体デバイスを開発しながら物理的限界を超えようと努力します。 サーモフィッシャーサイエンティフィックは、この最先端研究開発が 10 nm、7 nm、さらに 7 nm以下の テクノロジーノードで継続できるように最新のツールキットを提供します。

歩留り立上げのフェイズでは、歩留りの改善を加速することが欠かせません。新世代の半導体デバイスがが商業的に成功を収めるには、市場投入までの時間が鍵を握っているためです。 半導体製造装置の多くのプロセスステップにおける歩留まり解析は、かつては光学顕微鏡または SEM ベースのツールセットを用いて行われていましたが、現在では TEM (透過顕微鏡)法が重視されるようになっています。 サーモフィッシャーサイエンティフィックはこの SEM から TEM への移行を可能にする新しい高生産性ツールのワークフローを提供しています。これは高性能でありながら TEM サンプル一つ当たりのコストを最小限に抑えています。

新技術が開発され、歩留まり立上げのフェイズで工程欠陥が排除された後、量産過程で歩留まりを有効的にかつ持続可能なレベルに維持するには、クリティカルで、かつ微細な工程に対する極めて高い精度と効果的な工程管理が必要です。 サーモフィッシャーサイエンティフィックが開発し、ご提案している専用ワークフローソリューションは、歩留まりの問題発生時の高性能な特性評価を最短の時間で、かつてない規模で実現します。

製造工程におけるウェハー解析のためのこれらの解析ソリューションに加え、サーモフィッシャーサイエンティフィックの製品ラインには電気的ウェハーテスト後またはパッケージ済みデバイステスト後に行う配線修正専用製品もあります。 電気的な欠陥のあるデバイスは検査が必要であり、製造工程または電気的設計において欠陥を是正できるようにするために電気的な欠陥の原因を発見する必要があります。 電気的欠陥の解析には 2 つの重要な段階があります。最初の段階はデバイスにおける電気的欠陥回路の物理的位置を検出すること(欠陥分離)であり、第二の段階はその物理的位置をデバイスの物理的または化学的な異常として物理的に解析すること(欠陥識別)です。 欠陥の分離手法は、デバイスを時間変調励起し、デバイスから放出された(やはり時間変調された)シグナルの測定に基づきます。 デバイスの励起は物理的(レーザー、熱)の場合と電気的(電気試験ベクター)の場合があり、装置の反応も物理的な場合と電気的な場合があります。 ロックインサーモグラフィー(LIT)は、熱パルスが任意の周波数で発生するようにデバイスへ信号を入力し、デバイスの局所的温度反応を高感度 IR カメラで撮影する方法です。 OBIRCH(光ビーム加熱抵抗変動法)は、デバイスの異常回路へバイアスを与えた状態で局所的にパルスレーザーで加熱し、この局所的加熱への反応を装置の電気抵抗の変化として測定する方法です。 発光顕微鏡法(EMMI)ではデバイスへテスト用信号を入力する事によって電気的に刺激し、トランジスターのオンとオフが切り替わることにより発光します。 放出された光はピコ秒の分解能を備えた超高感度カメラで検出されます。 最後に、ナノプローバーを使用して、事前に絞り込まれた局所的領域において各トランジスターを電気的に試験することができます。 ナノプローバーは SEM ベースのものと AFM ベースのものがあります。

表 3: ウェハーベースの歩留まり損失分析と工程管理用 Thermo Scientific ソリューション

装置タイプターゲットアプリケーションThermo Scientific 装置研究プロセス開発歩留まり立上げ量産
ハイエンド(S)TEM 顕微鏡自動 STEM 測長および(EDX)分析Metrios    
ハイエンド STEM
HR イメージングおよび高度な分析
Titan Themis    
フルウェハーデュアルビーム FIB-SEM システム自動ウェハーベース FIB-SEM
TEM ラメラ作製
Exsolve
WTP FIB/SEM
    
ウェハーベース FIB-SEM
最高級 TEM ラメラ調製
Helios 1200
FWDB
    
小型チャンバーデュアルビーム FIB-SEM システム高い加工レート
サンプル作製と SEM(EDX/EBSD)
(3D-IC、先端 パッケージ、MEMS など)
Helios Dual Beam PF IB    
高分解能(3D)SEM
最高品質の TEM ラメラ作製
Helios G4 Nanolab FX    
高分解能(3D)SEM
高速自動 TEM ラメラ作製
Helios G4 Nanolab HX    
FIB 回路修正システムFIB-OM ベースの回路修正OptiFIB回路修正    
HR FIB ベースの回路修正V400ACE回路修正    
電気的故障絞り込みシステム発光&レーザースティムレーションベースの故障絞り込みMeridian ツールシリーズ
(EMMI、OBIRCH、LVx)
    
ロックインサーモグラフィーベースの電気的故障故障絞り込みElite(LIT)ツール    
SPM/SEM ナノプローブSEM Flex プローバー
Hyperion SPM プローバー