ペプチド分析のスループットおよび結果の精度を向上

細胞培養中のアミノ酸を用いた安定同位体標識(SILAC)は、複雑なタンパク質サンプル中の相対的な変化を同定、定量するために広く用いられている強力なメソッドです。複雑なバイオマーカーの探索やシステム生物学研究だけでなく、単離されたタンパク質やタンパク質複合体でも使用できます。

SILAC では、同位体的に重いフォームのアミノ酸で天然の軽いフォームのアミノ酸を置換することで、タンパク質サンプルを in vivo でラベリングします。SILAC では、サンプル調製の最初のステップで標識サンプルと非標識サンプルを混合するため、別々のサンプルを並行して扱うプロセスで生じうる定量誤差を最小化できます。さらに、サンプルを混合しているため、免疫沈降法などさまざまな濃縮テクノロジーを使用できます。こうしたテクノロジーを用いることで、微量タンパク質、ならびにリン酸化やグリコシル化などの翻訳後修飾(PTM)の存在量の変化を観測しやすくなります。


SILAC 定量ソリューション
効率的かつ精確なペプチド分離   

Thermo Scientific™ 低流速システムを用いた逆相分離は、Thermo Scientific Orbitrap 質量分析計と組み合わせて、ラベルフリー定量ワークフローとシームレスに統合できます。Thermo Scientific EASY-nLC 1200 System および UltiMate 3000 RSLCnano System は、ラベルフリー定量プロテオミクスに最適な LC システムです。EASY-nLC 1200 は、高性能ながら操作が簡便な設計であることが特長です。一方 UltiMate 3000 RSLCnano は、幅広い分析に対応する拡張性と得られるデータの精密性が特長です。

比類のない分解能と精度を実現

Thermo Scientific Orbitrap Fusion Lumos トライブリッド質量分析計は、プリカーサーイオンベースの SILAC 定量において、高精度の結果をもたらす最高の分解能(m/z 200で最高500,000)での分析が可能です。  さらに、ペプチド同定はフラグメンテーションタイプの制約を受けません。すなわち、1 度の測定で HCD、CID、ETD、EThcD メソッドを個別にあるいは組み合わせて使用できます。生成されるフラグメンテーションデータは多くの場合相補的であるので、複数のフラグメンテーションアプローチを用いることでペプチド同定のレベルが向上します。

卓越した性能および感度を実現

SILAC のようなプリカーサーイオンベースの定量法では、スキャンスピードやスペクトルの質を落とすことなく HR/AM をを提供できる質量分析計が必要です。Thermo Scientific Q Exactive HF 四重極/Orbitrap ハイブリッド質量分析計は、 超高電界 Orbitrap アナライザーによる HRAM と高性能四重極プリカーサーイオン選択能を統合しており、SILAC 実験で求められる感度を損なうことなく比類のない迅速分析を可能にします。システム分解能は最高 240,000 に上り、正確な定量を妨げる可能性のある共溶出アイソバリックイオンの識別が可能です。

定量プロテオミクスの合理化 

SILAC では、プリカーサーイオンの精密質量情報と、 HCD、CID、ETD および/または EThcD フラグメンテーションデータとを組み合わせてタンパク質を同定します。各タンパク質に由来する複数の特異的ペプチドの相対的なピーク強度が平均化され、実験条件下とコントロール条件下における総合的な相対存在量(および fold change)を求めます。ペプチド SILAC 比は Thermo Scientific Proteome Discoverer ソフトウェアに含まれる Precursor Ions Quantifier node および Quantification Method を用いて算出されます。従来のSILAC デュプレックスおよびトリプレックスメソッドを編集して、カスタム定量メソッドを作成することも可能です。


SILAC 定量ワークフロー