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COVID-19 疾患を引き起こす SARS-CoV-2 は新興コロナウイルスで、急性呼吸器症候群を発症させます。SARS-CoV-2 ウイルスは、ヒト細胞表面 ACE2 タンパク質に結合することによりスパイクタンパク質を介して宿主細胞に侵入することが、研究から示されています [1、2]。この結合は受容体による立体構造変化を惹起し、スパイクタンパク質のプロテアーゼ切断部位をセリンプロテアーゼ TMPRSS2 に提示します。その後 TMPRSS2 はスパイクタンパク質を分解して活性化させ、ウイルス感染を引き起こします。
S タンパク質上の受容体結合ドメイン(Receptor Binding Domain;RBD)は宿主細胞膜に結合する際に重要な役割を果たします。ヌクレオカプシドタンパク質は SARS-CoV-2 にもっとも多く存在するタンパク質です。その機能には、ゲノム RNA との複合体を形成することによるウイルス粒子のアセンブリやウイルスの転写の増進が含まれることが研究で示唆されています [3]。SARS-CoV-2 のスパイクタンパク質やヌクレオカプシドタンパク質、およびウイルス感染におけるそれらの役割の研究は、診断やワクチン開発のターゲット選択に役立つ可能性があります。
ウェスタンブロット解析による、SARS-CoV および SARS-CoV-2 のスパイクタンパク質の検出。タンパク質を還元 SDS-PAGE にロードしました。Lane A:SARS-CoV Spike S1、5 ng;Lane B:SARS-CoV-2 Spike S1、30 ng;Lane C:SARS-CoV-2 Spike RBD、30 ng。分離したタンパク質をメンブレンに転写し、1:2,000 で希釈した SARS/SARS-CoV-2 Coronavirus Spike Protein Rabbit Polyclonal Antibody(製品番号 PA5-81795 )でプローブしました。その後メンブレンを、1:10,000 で希釈したヤギ抗ラビット IgG(H+L)HRP コンジュゲート二次抗体でプローブしました。タンパク質を ECL を用いて可視化しました。
ACE の相同体であるアンギオテンシン転換酵素 2(ACE2)は糖タンパク質で、主に心臓、腎臓、血管、および精巣に発現しています。ACE2 タンパク質は高血圧、心機能、および糖尿病で役割を果たすことが示されています。さらに、SARS-CoV および HCoV-NL63 ウイルスの宿主細胞への侵入は、ヒト細胞表面の ACE2 タンパク質への結合により誘導され、それによりヒト呼吸器疾患を引き起こすことが研究により示唆されています [8]。
SARS-CoV-2 は宿主細胞への侵入に SARS-CoV と同じ受容体 ACE2 を利用している可能性があると研究者は報告してますが [1、2]、SARS-CoV-2 は ACE2 への顕著に高い結合親和性を示しています [9]。SARS-CoV-2 は SARS-CoV や HCoV-NL63 のように、スパイク(S)タンパク質内の RBD(Receptor Binding Domain;受容体結合ドメイン) が ACE2 受容体タンパク質に結合することにより宿主細胞に接着します。ヒト ACE2 に対する抗血清を用いた in vitro 研究では、予想通り SARS-CoV と SARS-CoV-2 の両方のベロ細胞への疑似侵入がブロックされました [8]。さらに、研究者たちは組み換えヒト ACE2 タンパク質を工学ヒト組織へ導入することにより、おそらく SARS-CoV-2 がヒト細胞膜の内因性 ACE2 タンパク質へ結合するのを阻止して、 SARS-CoV-2 感染を初期段階で大幅に減少させることを示しました [10]。この暫定的結果は現在および将来的なワクチンの新しい方向性を示唆している可能性があります。
ACE2 抗体を用いた、ヒト腎臓および肺組織中の ACE2 の IHC およびウェスタンブロット解析。(A)ACE2 組み換えウサギモノクローナル抗体(SN0754)(製品番号 MA5-32307)を用いた、パラフィン包埋ヒト腎臓組織の ACE2 免疫組織化学解析。(B)ACE2 モノクローナル抗体(CL4013)(製品番号 MA5-31394)を用いた、パラフィン包埋ヒト腎臓組織の ACE2 免疫組織化学解析。(C)ACE2 モノクローナル抗体(OTI4D2)(製品番号 MA5-26628)による、パラフィン包埋ヒト肺がん組織の ACE2 免疫組織化学解析。
TMPRSS2 はセリンプロテアーゼファミリーに属し、タイプ II 膜貫通ドメイン、受容体クラス A ドメイン、スカンベンジャー受容体システイン高含有ドメイン、およびプロテアーゼドメインを含有します。ヒト TMPRSS2 は前立腺、大腸、胃、および唾液腺に発現しています [4]。2009 年に、TMPRSS2 が血球凝集素を分解することによりインフルエンザウイルスを活性化することが初めて発表されました [5]。それ以降、TMPRSS2 がさまざまなタイプや系統のウイルス、たとえばインフルエンザ A ウイルス、インフルエンザ B ウイルス、MERS コロナウイルス、および SARS コロナウイルスなどの活性化に関与していることを、多くの研究が示しています。TMPRSS2 SARS-CoV のスパイクタンパク質をタンパク分解的に分解および活性化することが示されました [6]。スパイクタンパク質はまず宿主細胞膜の受容体タンパク質 ACE2 に結合し、その結合は受容体誘導性の立体構造変化を惹起します。この立体構造変化はスパイクタンパク質のプロテアーゼ切断部位をセリンプロテアーゼ TMPRSS2 に提示します。その後 TMPRSS2 はスパイクタンパク質を分解して活性化させ、ウイルス感染を引き起こします [7]。最近の COVID-19 の世界的危機発生後、Hoffmann らは、TMPRSS2 がSARS-CoV-2 スパイクタンパク質の刺激において重要な役割を果たすことを確認しました [1]。これは SARS-CoV の以前の研究結果と類似しています。同じ研究で、TMPRSS2 阻害剤が細胞モデルで SARS-CoV-2 感染を大幅に減少させたことが示され、これは TMPRSS2 が SARS-CoV-2 治療の潜在的なターゲットであることを示唆しています。
TMPRSS2 抗体を用いた、前立腺、子宮内膜組織、および 22Rv1 細胞の IHC およびウェスタンブロット解析。(A)TMPRSS2 ポリクローナル抗体(製品番号 PA5-83286)を用いた、ヒト前立腺および子宮内膜組織の TMPRSS2 免疫組織化学解析。同じ組織の、対応する RNA-seq データを示しています。(B)TMPRSS2 ポリクローナル抗体(製品番号 PA5-96019)用いた、22Rv1 細胞抽出物のウェスタンブロット解析。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.