観察のための細胞タイプの選択

細胞は生体内で数多くの機能を果たしており、その形状は機能と大きく関連しています。このため細胞の形状と容量、特定なタンパク質の発現量および代謝活性が非常に多岐にわたることは決して意外なことではありません。

ここでは、取得したい画像に適した細胞タイプの選択に関する指針をいくつかご紹介します。

本レッスンのトピック


天然の細胞機能および操作の容易性を考慮する

蛍光観察の目的が特定の細胞株の使用に影響されない場合には、標的の観察が容易な細胞株を選択することが理にかなっています。例えば、特定のタンパク質の研究を行っている場合には、当該タンパク質が、研究対象としている構造内に高濃度で局在化している細胞が理想的です。特定のタンパク質を既存の細胞バックグラウンドに添加する必要がある場合には、容易にトランスフェクト することが可能で、トランスフェクション後も良好な条件を維持する細胞株を選択することが理にかなっています。代謝経路に関連する物質を標識する必要がある場合には、ロバストな代謝反応を示す細胞モデルを選択することが有用です。


線維芽細胞および上皮細胞株は、細胞構造染色に適しています。

研究対象が、細胞骨格またはその他の細胞質内構造である、ゴルジ複合体ERまたはミトコンドリアなどである場合には、細胞容量の大部分が核によって占められていない細胞株を選択してください。RAW264.7またはMMMsなど、マクロファージ由来の細胞株に見られるように、核と細胞膜 の間の空間が非常に狭い場合には、蛍光顕微鏡によって細胞構造を可視化することは非常に困難です。創傷治癒研究においては皮膚線維芽細胞 の蛍光観察がしばしば行われていますが、これは当該細胞がロバストな線維状アクチン を提示し、蛍光免疫染色および観察が容易なためです。上皮由来の細胞株が細胞構造の観察に多用される理由としては、上皮由来細胞は大きいため細胞内腔の大部分が核により占められることがないこと、多くの上皮由来細胞が単一焦点面において連続的なアクチンフィラメントを示すこと、上皮由来細胞が線維芽細胞由来の細胞株よりも多くの腫瘍に対して生理学的関連性を有すること、さらにHeLa、A549およびMDCKなどの細胞株は特性が極めて明確化されているため立証済みのプロトコールおよび実験結果に関する多くのリファレンスを利用することが可能であることなどが挙げられます。

A549, HeLa, ME180, and U2OS cells all exhibit very different staining patterns for the same set of fluorescent reagents due to differences in their morphology and metabolic pathways.

図 1. A549、HeLa、ME180およびU2OS細胞はすべて、その形態および代謝経路の違いから、同一の蛍光試薬に関して極めて異なる染色パターンを示します。 これら4種類の細胞株はすべて、CellLights®Golgi-RFPおよびMito-GFP試薬による形質導入後、NucBlue Live® 試薬で染色されました。


細胞の選択には妥協が必要な場合が多くあります。

上皮由来の細胞であるBPAECは、細胞体が大きいことおよび平らな形状であることから細胞構造の観察が容易であるという理由からしばしば使用されていますが、過剰発現しているタンパク質の観察が目的である場合には、トランスフェクションの効率が十分ではありません。反対に、HEK293細胞はトランスフェクションには広く利用されていますが、培養表面への接着が強固でないため、観察が常にうまくいくとは限りません(浮遊細胞の観察は困難です!)。一つの重要な項目に関して理想的な細胞株を選択することは断念し(不利な点が多いため)、代わりにいくつかの項目に関して十分な特性を示す細胞株を(いずれのパラメーターに関しても特に極めて優れているとはいえない場合でも)選択せざるを得ない場合が多く存在します。

関連ページ

Share
 

For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.