Q:エキソソーム単離に現在利用されている方法には、どのような方法がありますか?

A: 細胞培養上清や体液サンプルからのエキソソーム抽出に一般的に採用されている方法は、超遠心分離法をベースとした方法が最も広く採用されています。超遠心分離法にショ糖 密度勾配液、またはショ糖 クッション溶液を組み合わせ、比較的 低密度であるエキソソームを、他の小胞体や粒子から分離させる方法です。ただこの超遠心を用いた方法は面倒で困難な操作になります。
超遠心をベースとした方法は、通常、操作に最大30時間も要し、超遠心機が必要で、さらに高度なトレーニングが必要になります。このような難点にも関わらず、超遠心分離法が、標準的なエキソソーム単離法として採用されています。

しかしながら、ここ2~3年の間に、培養細胞上清やさまざまな体液由来のエキソソーム抽出用試薬が、ライフテクノロジーズ社や他社より、市販されています。
ライフテクノロジーズから提供しているTotal Exosome Isolationシリーズでは、確実なプロトコールを提供し、短時間でエキソソームを回収する事を可能にしました。今後さらに標準的な方法になると予想しています。

Q:ライフテクノロジーズ社ではエキソソーム研究用に、どのような製品を提供していますか?

A: エキソソーム研究用として特別に開発した多くの製品を取り揃えています。製品は、www.lifetechnologies.com/exosomesのサイトに掲載しています。製品ポートフォリオは引き続き拡大しています。

さらに、エキソソームカーゴ解析用の多くの試薬、キットおよび装置を提供しています。TaqMan assaysを使用したRT-qPCR、Ion Torrent PGMによる次世代シーケンシング、ProtonおよびSOLIDによるRNAシーケンシング、およびウェスタンブロッティング装置、ならびにタンパク質研究用の試薬をラインナップしています。

Q:Total Exosome Isolation reagent のエキソソーム回収の原理は?また、他のエキソソーム単離手法との違いは何ですか?

A: エキソソーム単離用試薬を開発する段階で、多くの異なる手法の評価をおこないました(例:超遠心分離法、限外濾過法、ゲル濾過カラム、HPLC、およびフィルター法)。こうした確立された方法以外にも、より高度なアプローチ法の評価も行いました(例: さまざまなポリマーを用いた沈殿法、抗体やさまざまなレクチンを利用してbeadやカラムに吸着させる方法)。

こうした検証実験の結果、非常に優れた性能を持ったポリマーを選択し、これをベースとした製品を開発しました。これが Total Exosome Isolationシリーズ (特許申請中)の重要な成分となっています。 この試薬成分は、水分子を結合することで、サンプル中の小胞体の水溶性を低下させることにより、短時間の低速遠心処理でエキソソームを回収することを可能にしました。この手法で回収したエキソソームは、生物学的研究やエンドポイント解析のいずれにも利用が可能です。Total Exosome Isolationシリーズはすべて、同じ主要化合物を採用していますが、サンプルタイプによって綿密な最適化を行っており、各サンプルタイプごとにエキソソームの効率的な単離を可能とします。

 

Q:Total Exosome Isolation reagent は、ヒト以外の生物種由来のサンプルからエキソソームの単離は可能ですか?

A: はい、本試薬はマウスサンプルで有効であることを確認しています。本試薬は原理的には、あらゆる生物種のサンプルからエキソソームの単離が可能と考えられますが、現在のところヒトとマウスでの検証しか行っておりません。

 

 

Q:Total Exosome Isolation (for serum) reagent は、血漿サンプルに使用することができますか?

A: 血漿サンプルは血清サンプルと比較してより難しいサンプルです。血漿中には高いレベルの凝固因子が多く含有するため、この凝固因子がエキソソームの回収を難しくしています。血清用試薬でもエキソソームが回収できることが予想されますが、タンパク質やその他の小胞体のコンタミネーションが多くなってしまうと思われます。そのため血漿サンプルを用いる場合は、専用のTotal Exosome Isolation (from plasma) kitを用い、付属のプロトコールに従って操作してください。

 

 

Q:Total Exosome Isolation reagent により回収したエキソソームの純度はどのようなレベルですか?それは超遠心分離法と同等ですか?

A: 操作で得られたペレット中には、サンプル中のエキソソームがほぼ完全に回収されています。ただし血清やその他の体液サンプルの場合、わずかではありますが、エキソソーム以外の微小胞体や高分子タンパク質分子/複合体が共沈殿されます。
ただしサンプルの純度はほとんどのアプリケーションに使用可能なレベルで、さらに以下のようなメリットもあります。
1) 迅速でシンプルなワークフロー、2) 特別な装置が不要(超遠心機などの)、3) エキソソームの完全な回収が可能、4) 少量のサンプル(例:100 μl)にも対応可能な柔軟性、5) 1回の実験で複数のサンプル処理が可能な性能が挙げられます。

非常に純度の高いエキソソームの回収を希望される場合、Total Exosome Isolation (from cell culture media) reagentでエキソソームを回収後、さらに抗CD63抗体を結合させたDynabeads®による処理を組み合わせることが可能です。
この追加処理により、操作時間が増え、さらにエキソソーム回収量も少なくなってしまいます。
ただし培養上清から超高純度度なCD63陽性エキソソームの回収が必要な場合は、この処理の追加がベストな選択となります。
また私どもでは、Streptavidin結合Dynabeads®も提供しており、目的に合ったビオチン標識抗体を用意頂ければ、特定のエキソソームのサブポピュレーションを分画することも可能です。

これらの製品は、高純度エキソソームサブポピュレーションの単離だけでなく、サイズが小さいために検出が非常に困難なエキソソームのフローサイトメトリーによる検出にも使用できます。現在、これらの製品は、エキソソーム単離用の最適なオプションです。

 

 

Q:Total Exosome Isolation reagentは、System Biosciences社のExoQuick™ reagentと比較するとどのような違いがありますか?

A: Total Exosome Isolationシリーズは、弊社が独自に開発したシステムです(特許申請中)。研究対象となると思われる主要な体液サンプル、および培養上清に対して、エキソソームが効率的に回収できるように十分に最適化が行われています。。
またTotal Exosome Isolationシリーズで回収されるエキソソームの収量および純度は、ExsoQuick Reagentsと比較して、同等かそれ以上であることを確認しています。
Total Exosome Isolationシリーズは、多くの種類の体液に対応した製品ラインナップになっており、さらに回収後の解析からin vivo研究までのワークフローを完全にサポートしています。

 

 

Q:エキソソームを単離する際、スタートサンプルの最少量はどれくらいですか?

A: 各試薬について、付属のマニュアルの中で最少量が掲載されています。
ほとんどの体液について、スタートの最少量は100~200μLです。ただし尿サンプルについては若干多めで800μLが最少量となっています。また培養細胞上清サンプルでは1mLになっています。
規定の最少量以下からのエキソソーム回収は可能かと思われます。特に血清や血漿サンプルの場合は、スタート量が微量でも十分に回収可能と予想されます。ただし以後のアプリケーションに十分量を回収するために、規定の最少量以上からスタートされることをお薦めします。

 

 

Q: 1mL以上のCSFサンプルからエキソソームを単離することは可能ですか?

A: はい。Total Exosome Isolation (from other body fluids)に添付されているマニュアルに記載されている方法を用い、5mlまでのCSFサンプルからエキソソームを単離することができます。

 

 

Q:Total Exosome Isolation試薬を用いて、より多いスタートサンプル量(>5 mL )からエキソソームを回収する場合、遠心時間を延長する必要がありますか?

A: マニュアルで推奨しているスタートサンプル量以上の量を処理する場合、エキソソームの回収効率を上げるために遠心時間を延長することをお薦めします。
具体的な時間については、使用するローター、エキソソームの沈降係数、チューブのサイズ、サンプル量やサンプルタイプ、遠心のスピードなどのファクターに依存してきます。
例えば、5~10mLのサンプル量の場合、10,000xg、1時間の遠心で十分なエキソソームがペレットが回収されます。しかしながらサンプル量が多くなると10,000xgの遠心力で処理することが難しくなります。この場合は遠心時間の延長で対応してください。

 

 

Q:培養上清と血清サンプルから、どれぐらいのエキソソームが回収できますか?

A: エキソソームの回収量は、細胞株によって幾分異なります。また培地として、exosome-depleted FBS添加培地、FBS無添加培地、あるい合成培地を使用したかによっても異なります。
回収量の参考として、T175フラスコに30 mlの培地(exosome-depleted FBS添加)で培養した約2 x 107 個のHeLa細胞由来の培養上清(1mL)をサンプルとした場合、Total Exosome Isolation (from cell culture media) reagentを用いて、約4~8 x 109個のエキソソームの回収されることをNanoSight LM10による測定で確認しています。100 μlの血清からは、Total Exosome Isolation (from serum) reagent を用いて~1.5-3 x 1011個のエキソソームの回収が可能であることを確認しています。

 

 

Q:血漿サンプル用製品では、2つのプロトコールオプションがありますが、どちらを選択すべきですか?

A:血清と異なり、血漿には多くの凝固因子およびいくつかの余剰タンパク質が含まれるため、サンプルの取り扱いが困難となります。その対策として、2つのプロトコールオプションを提供しています。
その1つがProteinase K処理プロトコールで、もう1つは非処理プロトコールです。
Proteinase K処理プロトコールは、以後のアプリケーションが、エキソソームカーゴであるRNAまたはタンパク質解析の場合に最も有用です。
一方、Proteinase K非処理のプロトコールでは、回収されるエキソソームの純度はProteinase K処理の場合と比較すると低くなります。ただしエキソソーム膜の表面タンパク質の解析や電子顕微鏡による識別などのアプリケーションに使用する場合に適しています。

 

 

Q:時間的制約からプロトコールを1日で完了できません。一晩かけてエキソソームを調製することは可能ですか?

A: はい、Total Exosome Isolation (from other body fluids) reagentを用いて、尿、CSF、羊水由サンプルの処理を行う場合は、一晩かけて4℃で調製することが可能です。この場合、エキソソームのクオリティや収量に影響はありません。

 

 

Q:単離後のエキソソームに試薬成分は残存しますか?残存する場合、以後のの生物学的研究に影響する可能性はありますか?

A: 試薬成分はエキソソーム表面には結合しません。そのためエキソソームペレットに少量の試薬が残存すると予想されますが、以後に生物学的研究を行う場合でも、結果に悪影響を与えないと思います。
しかしながらエキソソームペレット回収後、上清を完全に除いてから、PBSやbufferへ再懸濁することは重要です。ただし微量に残った試薬成分を完全に除く場合は、透析処理やExosome Spin Columns (MW 3000)で処理によって除去する事が可能です。

 

Q:単離後、エキソソームペレットを確認できなくても問題ありませんか?念のため上清を残しておくべきでしょうか?

A: 血清や血漿中には非常に大量のエキソソームが含有しているため、100μL程度の微量なサンプルであってもペレットは肉眼で確認できます。
ただし 尿などのその他の体液や、細胞培養上清サンプルでは、エキソソーム濃度が非常に低いため、ペレットが確認できないことがよくあります。
ただし、遠心後のペレットはしっかりとチューブ間壁に貼りついていますので、PBS等に再懸濁する前に完全に上清を除去しても問題ありません。予め遠心でペレットが回収されると思われる位置に印をしておけば、上清を除くときに便利です。
大量の試薬を残した状態で、エキソソームを再懸濁してしまった場合、チューブの底の部分に凝集体を形成した状態のままであることも予想されます。