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アルデヒド(RCHO)およびケトン(RCOR')は、カルボニルと呼ばれる非常に一般的な官能基の反応性種であり、炭素-酸素二重結合(C= O)を有しています。この結合極性(特にアルデヒド環境下において)の影響により、炭素原子が第一級アミンなどの求核試薬に対して求電子性および反応性を示します。
本来アルデヒドは、標準的な生物学サンプル中のタンパク質中や目的の巨大分子中では発生しませんが、被酸化性の糖基(別称:還元糖)が存在する場所であれば作製が可能です。こうした糖は、多糖類の一般的モノマー成分、もしくは様々なタンパク質の翻訳後修飾済み(グリコシル化)炭水化物(糖タンパク質)です。また、RNAのリボースは還元糖です。
溶解した過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)由来の周期酸(HIO4)は、よく知られた穏やかな薬剤です。炭水化物糖中のビシナルジオールを効果的に酸化させ、反応性アルデヒド基を生成します。炭素同士の結合は、隣接ヒドロキシル基間で切断されます。過ヨウ素酸の使用量を変更すると、大小様々なサイズの糖型でアルデヒドを生成できます。例えば、1 mMの過ヨウ素酸で糖タンパク質を処理すると、通常シアル酸残基にのみ影響を及ぼします(多糖鎖の末端で高頻度に発生)。タンパク質中の他の糖基は、ヨウ素酸濃度6~10 mMで干渉を受けます。
多糖類はFc領域内に配置されているため、ポリクローナル抗体の結合において標的部位を作製する用途には、炭水化物修飾が特に有用です。この結果、抗原結合部位から離れた部位が標識・架橋され、抗体機能は結合手順により妨害されなくなります。
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上記のように第一級アミンの求核性種(-NH 2)は、アルデヒド反応性の化合物の主要クラスです。第一級アミンはタンパク質中に豊富に存在するため、 第一級アミンがアルデヒド反応性架橋剤の化学的性質を構成する(本ページに記載)のと全く同様に、アルデヒドはアミン反応性架橋剤の化学的性質に相当することを念頭に置いてください。
しかし、R–C–NH2の形態のタンパク質の天然第一級アミン(ポリペプチドN末端およびリジン側鎖)は、特定条件下もしくは結合安定化のため付加的化合物が添加された場合を除いて、アルデヒドに対して強力かつ恒久的に反応性を示しません。還元的アミノ化と呼ばれる反応については、本ページ最終項で解説いたします(この反応の主要アプリケーションでは、既製の標識試薬や架橋試薬へ組み込める各反応基を使用しないため、ここでは触れません)。
それよりも、合成標識試薬や架橋剤へ組み込むアルデヒド反応性官能基としては、ヒドラジドとアルキルアミンが非常に重要です。これらの化合物中の末端アミノ基は、タンパク質アミンよりも求核性が高く、自発的にアルデヒドと反応して安定結合を形成します。
生体サンプル中の糖の過ヨウ素酸酸化により作製されたアルデヒドは、pH 5~7でヒドラジンと反応してヒドラゾン結合を形成します。このヒドラジド基への結合はシッフ塩基型でありながら、単純アミンで形成されたシッフ塩基よりも極めて安定性が高くなります。ヒドラゾン結合は、あらゆるタンパク質標識アプリケーションで十分に安定性を保ちます。それでもご要望があれば、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いて、高安定性の二級アミン結合へ二重結合を還元できます(本ページ最後の還元的アミノ化の項をご参照ください)。
近年、アニリンはヒドラジン-アルデヒド反応の触媒として作用することが判明しています。芳香族アミンまたはアニリンは、迅速かつ効果的にアルデヒドと共にシッフ塩基を形成し、アルデヒド活性化を効果的に高めます。そのためヒドラジドの代わりに、アニリンを使用することできます。このように、アニリン(別称:グリコール結合触媒)により、ヒドラジドの結合収量や効率性が飛躍的に高まります(少量のヒドラジン試薬を用いて、同等の収量が得られます)。
アニリン触媒作用の詳細情報については、以下の参考文献をご覧ください:
市販のホモ二官能性ヒドラジド化合物(各末端にヒドラジド基を有する)には、カルボヒドラジド(MW 90.1)とアジピン酸ジヒドラジド(ADH、MW 174.2)が含まれます。これらのビス-ヒドラジン化合物を単一反応で使用して、調製(アルデヒド含有)糖類や多糖類を架橋・重合することができます。しかし主にこの化合物は、ホモ二官能性段階またはヘテロ二官能性段階のいずれかで、分子を修飾・結合させる用途に利用されています。
例えば大過剰の過ヨウ素酸酸化デキストラン(多糖類)中でADHを反応させると、各ADH分子の片側のみが結合する結果、デキストランのヒドラジド活性化が起こります。脱塩して過剰分を除去した後、未反応ADHであるアルデヒド含有の小リガンドを添加して、より大きなデキストランへ複数部位で結合させることができます。
各ヒドラジドはアミンでもあるため、バスヒドラジド化合物を様々な方法でヘテロ二機能的に使用して、特殊な結合法を取ることができます。例えばADHは、アルデヒド作製のためリボース基の酸化されたRNAオリゴヌクレオチドと大過剰に反応できます。脱塩して過剰分を除去した後、EDC(カルボジイミド反応化学)を用いて、カルボキシル基含有標識またはキャリア分子をアミン誘導体化核酸へ結合させることができます。
糖タンパク質をタンパク質類や分子へ結合させる用途には、反対端部にスルフヒドリル反応性マレイミド基を含有したヘテロ二ヒドラジド架橋剤が有用です。マレイミド基の詳細については、Sulfhydryl-Reactive Crosslinker Chemistryのページをご覧ください。マレイミド基は、単一試薬中の反対側のヒドラジドとペアリングできる数少ない基のひとつであるため、本項でアルデヒドツースルフヒドリル架橋剤について解説いたします。これは、ヒドラジド基が第一級アミンを含んでおり、NHSエステルなどのアミン反応性基を有する単一分子内とペアリングできないことに起因します。
しかし試薬の選択幅が限られているものの、炭水化物への結合アプリケーションは、天然スルフヒドリル基を有するタンパク質以外にも対応します。端的には、炭水化物へ付着させたい巨大分子タイプに関わらず、最初に修飾を施してスルフヒドリル基を含有させる必要があります。上記のビス-ヒドラジドのシナリオと同様に、分子を修飾してスルフヒドリル基を含有させる試薬が存在します。例えばトラウト試薬(2-イミノチオラン、2-IT)やSATAを用いれば、第一級アミンの部位へスルフヒドリル基が付加されます。
経時的にマレイミド-ヒドラジド架橋を行う場合、通例は最初にスルフヒドリルへ反応させた後、調製アルデヒドを含有する分子へ反応させます。逆シーケンスの実行は可能ですが、マレイミド基の加水分解を防ぐため、初期工程を素早く実行する必要があります。
結合のために各分子標的を調製する最適な架橋法や修飾戦略は、いくつかの要因に応じてそれぞれ異なります。マレイミド-ヒドラジド架橋剤を使用するために条件を適合させることも可能ですが、種々の戦略を用いて多数の類似した結合目標が達成できます。例えば調製された抗体-HRP結合体に関連して、本ページ最後の還元的アミノ化の解説をご参照ください。
ヒドラジド活性化ビオチン化合物は、糖タンパク質やグリコシル化分子(または多糖類)をビオチン化させる様々なアプリケーションに有用です。ストレプトアビジン樹脂(またはプローブ)を用いたプレートベースアッセイやウェスタンブロッティングにおいて、ビオチンを介してビオチン化分子をアフィニティ精製や検出できることから、ビオチンは特異性の高いタグです。
例1(精製糖タンパク質のビオチン化)–ELISAや免疫検出手順において、主にカスタム抗体(IgG)はNHSエステル試薬を用いた第一級アミンを介してビオチン化されます。しかし、抗原結合部位に標識された第一級アミンが含有されている場合、この戦略によって抗体が不活性化される可能性があります。別の手法では、抗体をグリコシル化部位でビオチン化させます;大半の抗体(特にポリクローナル抗体)は、抗原結合ドメインから離れた位置にこの部位を有しています。様々な精製酵素や目的の結合タンパク質が、(1)機能ドメインから離れた部位でグリコシル化され、かつ(2)過ヨウ素酸塩の処理により不活性化されていない限り、これらの抗体はビオチン化可能であり、 この戦略により機能を維持できます。
例2(細胞表面糖タンパク質の標識化)–後続工程でヒドラジド-ビオチン試薬を用いて精製や検出を行うために、多糖類と糖タンパク質のin situ混合物または複合混合物をビオチン標識ができます。過ヨウ素酸によるサンプル処理が研究対象の生物学に適合しない場合、アルデヒド生成の酵素的手法(例:ノイラミニダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ)が活用されてきました(Bayer, EAらによる分析(1988年)をご参照ください。Biochem.170:271-81)。
妨害されない機能的な結合部位を保持するために、炭水化物基を介して抗体(または精製糖タンパク質)をビオチン化させるのと同じ手法で、アフィニティ樹脂や活性化されヒドラジド基を含有する固体支持体へ、抗体を固定化させることができます。
例えば、GlycoLink Coupling Resinは、Thermo Scientific UltraLink Resinにヒドラジド活性化を施した、耐久性に優れたアクリルアミド型多孔性の樹脂であり、タンパク質をアフィニティ精製する用途に使用できます。樹脂とキット手順は、糖調製用の過ヨウ素酸ナトリウムや触媒作用のアニリンを用いた抗体の固定化に最適されています(アニリン触媒作用については上記をご参照ください)。免疫沈降を実行する場合、この技法を活用した小規模固定化用キットや手法も利用できます。
原理的には、ヒドラジド基を含有するよう修飾できる硬性や多孔性の表面物質であれば、一般にこれらを用いて酸化可能な炭水化物またはアルデヒド含有部分を含む分子を固定化できます。
現在ヒドラジド試薬ほど需要が高く一般的ではありませんが、アルコキシアミン化合物は、ヒドラジドとほぼ同じようにカルボニル(アルデヒドおよびケトン)へ結合します。この場合、反応によりオキシム結合が起きます。触媒としてアニリンを使用する点もヒドラジドに類似しています。アルコキシアミンは通常「アミノオキシ」または「アミノキシ」とも呼ばれています。
現行で利用できるアルコキシアミン試薬は非常に限られています。原理的には、上記のヒドラジドベースのアプリケーションは、一般にアルコキシアミン類似体を用いて達成できます。
本ページ冒頭の解説のように、生物学的サンプルに関して言えば、アルデヒド結合は必然的にアミン結合でもあります。つまり本ページでカルボニル化学を重点的に扱うのと同様に、本項ではアミン反応性架橋剤化学に関する解説に焦点を当てます。
還元的アミノ化において、アルデヒドの求電子性炭素原子が第一級アミンの求核性窒素を攻撃して、シッフ塩基と呼ばれる弱い結合が起こります。ヒドラジンまたはアルキルアミンと形成される結合とは異なり(上述)、通常のアミンと形成されたシッフ塩基は水溶液中で急速に加水分解(反転)します。これを安定化させるには、アルキルアミン(二級アミン)結合へ還元する必要があります穏やかな還元剤であるシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH 3を)は、生物学的サンプル中の他の化学基も同時に還元することがなく、効果的にこの機能を果たします。
カルボジイミド架橋化学(カルボキシル-アミン)と同様に、還元的アミノ化(アルデヒド-アミン)はゼロレングス架橋法です。
この二つの反応性アルデヒド化合物は、激しく架橋し、さらに重合の組み合わせ、シッフ塩基形成(アミノ化)およびマンニッヒ反応(活性水素)を介して、アミンと他の基の間で幾分無差別に架橋します。顕微鏡法や染色法、免疫組織化学(IHC)、ハイコンテントスクリーニングの用途において、広範に利用される組織や細胞培養サンプル用の防腐剤や固定剤には、こうした特性が全て基盤として有効活用されています。
大過剰に添加されたグルタルアルデヒド(バスアルデヒド)を用いて、精製タンパク質のアミンをアルデヒド活性化させて、別のタンパク質へ還元的アミノ化することにより結合させることができます。これは、上記のデキストランによるADH(ビスヒドラジド)を用いたヒドラジド活性化戦略の反転処理です
西洋ワサビペルオキシダーゼ酵素(HRP)のアルデヒド活性化や抗体(IgG)結合は、タンパク質架橋の還元的アミノ化の一用途を解説する役目を果たします。HRPは糖タンパク質であり、反応性アルデヒドは機能活性を妨害されずに過ヨウ素酸酸化により作製できます。調整済みHRP(40 kDa)を適切な比率(通常3〜5倍過剰)でIgG (150kDa)へ結合させると、還元的アミノ化により2つのタンパク質が結合します。結合を安定化させるため、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加します。
HRPは通例レポーター酵素が必要となることから、精製抗体へ結合可能な予備活性化(過ヨウ素酸処理済み)された形態で市販されています。
過ヨウ素酸活性化HRPを利用すると、グルタルアルデヒドを用いた従来方式(上記)より効果が高くなります。また、抗体の大半は糖タンパク質であるため、このモデル例では戦略全体が可逆的です。つまり、結合させるべきタンパク質の固有特性に応じて、有効性の高い結合や配向の手法が異なり得ます。最適戦略を見極めるには、通常は実験的テストを行うしかありません。
非常に信頼性の高い標準的な手法(製造および研究において)で、アフィニティ精製法用のビーズアガロース樹脂へ抗体やタンパク質類を共有結合付着させるには、通例、還元的アミノ化を活用します。AminoLink ResinおよびAminoLink Plus Resinは、入念な調整の施されたアルデヒド活性化アガロース樹脂の変種版です。アミン反応性架橋剤化学の項で解説するとおり、あらゆるタンパク質の表面上には有効な第一級アミンが多数存在しており、結合において(この場合は固定化)多数の標的部位が得られます。
シアノ水素化ホウ素ナトリウム(もしくは、後ほど添加)を含む適切なアミン非含有アルカリ性バッファ中で、タンパク質は二級アミンの永久結合によってアガロース樹脂へ結合します。安定的に固定化されたタンパク質は高密度になり得るため、アフィニティ精製を何ラウンド繰り返しても分解や浸出が起きません。また、AminoLink Plus Resinは、免疫沈降用のDirect IP Kitの基盤としても利用されています。
AminoLink Resinの標準手順では、反応を持続させるシアノ水素化ホウ素ナトリウム(アミノリンク還元剤)が含有された、中性付近の結合バッファ(PBS、pH 7.2)を使用します。また、高収量が得られるAminoLink Plus Resinを用いたオプション手順では、最初に高アルカリ性の結合バッファ(クエン酸-炭酸、pH 10)中でタンパク質と樹脂をインキュベートします。このアルカリ性条件では、高効率でシッフ塩基が形成されますが、還元工程におけるシアノ水素化ホウ素ナトリウムの添加前に、バッファを中性付近のPBSへ変更する必要があります高pHの結合条件に対応しないタンパク質は、中性付近の条件で固定化できます。種々の添加剤や成分を添加すると、反応に対するタンパク質の可溶化を高め維持できます。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.