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様々な手法により、粗抽出物や複合混合物からタンパク質と目的の巨大分子を精製することができます。高分子を種類別に分離する手法として最も簡単なものは、選択的沈殿法でしょう。
しかし、標準的な精製法ではクロマトグラフィーを何らかの方式で実行する必要があります。クロマトグラフィーでは、静止物(固相)との相互作用の性質が「化学的」あるいは「物理的」であるかの違いに応じて、溶液中の分子(移動相)が分離されます。サイズによって分子を分離(物理的に排除)するため、ゲルろ過(別名:サイズ排除クロマトグラフィー、またはSEC)では多孔性樹脂材料を利用します。イオン交換クロマトグラフィーでは、固相材料との全体的なイオン相互作用(非特異的な相互作用)の強度に応じて、分子が分離されます。
対照的に、アフィニティークロマトグラフィー(別名:アフィニティー精製)では、分子間の特異的な結合相互作用を活用します。特定リガンドは固体支持体へ化学的に固定化または「結合」しているため、複合混合物がカラム上を通過時に、リガンドへ特異的な結合親和性を有する分子が結合します。結合分子は、他のサンプル成分の除去後に支持体から剥離される結果として、元のサンプルから精製されます。
各特異的親和性システムにはそれぞれ個別の条件セットが必要となるため、所定の研究目的によって各自特有の課題が存在します。特定精製システムに関する要因と条件については、「その他タンパク質メソッド」の記事をご覧ください(本ページ最下部までスクロールして、サイドバー内のリンクをクリックしてください)。とはいえ、関連一般原理はリガンド標的の全結合システムで共通しているため、この原理の概念について本概要ページでご説明いたします。
The revised 80-page handbook provides technical and product information to help maximize results for protein purification procedures. The handbook provides background, helpful hints and troubleshooting advice for covalent coupling of affinity ligands to chromatography supports, avidin:biotin-binding, affinity purification of antibodies, immunoprecipitation and co-immunoprecipitation assays, affinity procedures for contaminant removal, and FPLC purification methods.
通常、アフィニティー精製では次の手順を実行します:
血清や細胞溶解物のサンプルの単一経路がアフィニティーカラム中を通過するため、特定タンパク質が1,000倍以上に希釈され、ゲル電気泳動(例:SDS-PAGE)後に検出されるバンドはひとつのみとなります。
通常、リガンド上の特定官能基(例:一級アミン、スルフヒドリル、カルボン酸、アルデヒド)と、支持体上の反応基(共有結合固定化の関連記事をご参照ください)の間で共有化学結合を形成することによって、リガンドは固定支持体へ、固定化もしくは直接「結合」されます。また一方で、間接結合法をとることも可能です。例えば、まずGSTタグ融合タンパク質は、グルタチオンとGSTのアフィニティー相互作用によってグルタチオン支持体に捕捉された後、二次的架橋され固定化されます。そして、固定化されたGSTタグ融合タンパク質を用いて、融合タンパク質の結合パートナーをアフィニティー精製することができます。
タンパク質の一般的クラスへ結合するリガンド(例:抗体)や一般的な融合タンパク質タグ(例:6xHis)は、アフィニティー精製用に使用準備の整った、固定化された形態で市販されています。また別の方法として、 市販の活性アフィニティー支持体のひとつを用いて、特異的抗体や目的抗原などのより特化したリガンドを固定化させることも可能です(例えば、 ペプチド認識抗体を精製するには、支持体へ固定化させたペプチド抗原を利用できます)。
タンパク質とリガンドの相互作用が関与する標準的なアフィニティー精製手順では、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)など、生理学的pH値とイオン強度の結合バッファを使用します。抗体:抗原間または天然タンパク質同士の相互作用がアフィニティー精製の基盤となる場合は特に、こうしたバッファを使用します。結合相互作用が発生したら、追加バッファで支持体を洗浄して、サンプルの非結合成分を除去します。非特異的(例:単純イオン性)結合相互作用を最小限に抑えるには、低量の界面活性剤を添加する、あるいは結合バッファ中や洗浄バッファ中の塩濃度を適度に調整します。最終的に、溶出バッファを添加して結合相互作用を解離させると、標的分子が放出され精製状態で回収できます。
溶出バッファは、次の条件や方法により結合パートナーを解離します:極低または極高のpH条件下、高塩(イオン強度)下、一方または両方の分子を変性させる界面活性剤やカオトロピック剤を使用する、結合因子を除去する、カウンターリガンドと競合させる。保存用や下流解析用として、溶出バッファから最適バッファへ精製タンパク質を移し変えるには、通常はその後透析または脱塩を行う必要があります。
タンパク質相互作用に基づいたアフィニティー精製用の溶出バッファとして、pH値2.5〜3.0、0.1Mのグリシン•塩酸が代表的に利用されています。本バッファは、タンパク質構造へ永続的に影響を与えることなく、「タンパク質同士」や「抗体と抗原間」の結合相互作用を効果的に解離させます。しかし、低pH値により抗体やタンパク質が損傷を受けることがあるため、pH値8.5、1Mのトリス•塩酸などの容量1/10のアルカリ性バッファを添加して、溶出タンパク質画分を即座に中和させるのが最適です。タンパク質アフィニティー精製用の溶出バッファの他のタイプについては、添付の表をご覧ください。
これらの条件は主に、抗体とそのペプチド抗原間などにおける、タンパク質間の結合相互作用に当てはまります。他種どうしの分子間の結合相互作用に使用する溶出バッファは、全く異なるでしょう。
条件 | バッファー |
---|---|
pH | 100mMのグリシン•塩酸、pH値2.5〜3.0 100mMのクエン酸、pH値3.0 50〜100mMのトリエチルアミンまたはトリエタノールアミン、pH値11.5 150mMの水酸化アンモニウム、pH値10.5 |
イオン強度 および/または カオトロピック効果 | 10mMのトリス(pH値7.0)中の3.5~4.0Mの塩化マグネシウム 10mMのリン酸緩衝液(pH値7.2)中の5Mの塩化リチウム 2.5Mのヨウ化ナトリウム、pH値7.5 0.2~3.0Mのチオシアン酸ナトリウム |
変性 | 2~6Mのグアニジン•塩酸 2~8Mの尿素 1%のデオキシコール酸 1%のSDS |
有機性 | 10%のジオキサン 50%のエチレングリコール、pH値8~11.5(また、カオトロピック) |
特定の競合物質 | >0.1Mのカウンターリガンドまたは類似体 (例:グルタチオンを用いて、固定化グルタチオンアガロース樹脂からGSTタグタンパク質を溶出させる) |
アフィニティー精製では、静止物(固相)に固定化されたリガンドとの結合相互作用の差異に基づいて、溶液中の分子(移動相)を分離させます。アフィニティー精製における支持体やマトリックスは、必ず生体特異的リガンドの共有結合された物質から構成されています。通常、親和性マトリックスとして用いられる物質は、標的分子の見られるシステムでは不溶性となります。例外もあるものの、不溶性マトリックスは、通常固体となります。アガロース、セルロース、デキストラン、ポリアクリルアミド、ラテックスおよび孔制御ガラスなどの何百種もの物質が、これまでにアフィニティーマトリックスとして論文への記述がなされてきたとともに、活用され続けてきました。利便性の高いアフィニティー支持体は、次の特性を備えています:表面積対容積比が高い;リガンドの共有結合のため修飾しやすい化学基を有する;非特異的結合を最小限に抑える性質、優れた流動特性;機械的および化学的な安定性が高い。
原則的には、多孔性支持体(通称:樹脂またはゲル)の有する特性は、タンパク質のアフィニティー精製の用途に最も有利に働きます。このタイプの支持体は、通常、糖またはアクリルアミド系高分子樹脂であり、直径50~150μmのビーズ状に溶液中で生成されます(水和性)。これらの樹脂は、ビーズ型であるため、分注のしやすい湿式スラリーとして、あらゆるサイズの樹脂床のカラムを満たし「充填」することができます。ビーズ型樹脂は多孔性が高く十分なサイズを備えているため、生体分子(タンパク質など)は、ビーズ表面どうしの隙間やビーズ表面の周囲を流動できるのと同程度に、ビーズ中全体を無制限に流動することができます。リガンドは、様々な手法からビーズポリマー(外表面および内表面)へ共有結合されます。そのため、緩いマトリックスが発生し、サンプル分子が固定化リガンドの表面積中を広く無制限に流動できます。
架橋ビーズ状アガロースは、タンパク質アフィニティー精製技法用のマトリックスとして、極めて代表的に利用されています;通常、架橋ビーズ状アガロースは濃度4%~6%で利用可能。(つまり、樹脂床1mLの場合、全容量の90%以上が水分で占められます。)ビーズ状アガロースは、通常用途に有効ですが、破損しやすいため重力流、低速遠心分離、および低圧による処理が推奨されます。ビーズ状アガロース樹脂を更に架橋や化学的硬化させると、耐高圧性は上がりますが、結合能力が低下する可能性もあります。
また、カラムアフィニティークロマトグラフィー用の支持体には、ポリアクリルアミドに基づく樹脂も使用できます。この類の樹脂であるThermo Scientific UltraLink Biosupportには、標準的なビーズ状アガロースに比べ、圧縮されにくい特性があります。UltraLink Biosupportは、ペリスタポンプや液体クロマトグラフィーシステムによる中圧用途に利用できます。アガロース支持体およびUltraLink支持体には、どちらも低非特異的結合の特性がありますが、特定用途においてはそれぞれの作用形態が若干異なります。
通常、4%架橋アガロースビーズはアガロースCL-4B、そして6%架橋アガロースビーズはアガロースCL-6Bと、それぞれ略記されます。使用スケールに応じて支持体をご選択されるには、下表もご参照ください。
4%架橋 ビーズ状アガロース | 6%架橋 ビーズ状アガロース | スーパーフローアガロース(高度に架橋済み) | UltraLink Biosupport (アクリルアミドアズラクトンポリマー) | |
---|---|---|---|---|
ビーズのサイズ 範囲 | 45~165µm | 45~165µm | 45~165µm | 50~80µm |
排除 限界 | 20,000kDa | 4000kDa | 6000kDa | 2000kDa |
圧力 限界 | 0.35MPa | 0.35MPa | 0.65MPa | 0.69MPa |
メソッド | 重力流または低速遠心分離 | 重力流または低速遠心分離 | FPLCシステム、 重力流 | FPLCシステム、HPLC、重力流 |
結合 容量 | 中 | 中 | 中 | 高 |
pH領域 (許容範囲) | 3~11 | 3~11 | 2~12 | 1~13 |
磁性粒子はアフィニティー支持体として、ビーズ状アガロースや多孔性樹脂類とは全く種類が異なります。磁性粒子は、はるかに微細(通常、直径1~4μm)であり、固体(非多孔性)となります。サイズが小さいため、表面積対容積比を十分に確保でき、リガンドの固定化やアフィニティー精製が効果的に行えます。磁気ビーズは、シラン誘導体で共有結合コーティングされた超常磁性酸化鉄粒子として産出されます。コーティングの施されたビーズは、不活性の特性(非特異的結合を抑制)を有し、目的リガンド結合に必要な特異的化学基としてご利用できます。
磁性粒子のアフィニティー精製をカラム中で行うことはありません。磁性粒子のアフィニティー精製をカラム中で行うことはありません。混合中にビーズは、サンプル溶液中へ懸濁状態のままであるため、固定化リガンドとアフィニティー相互作用を起こします。十分な時間をかけて結合させた後、強力磁石でビーズを回収し、サンプルから分離させます。通常、マイクロ遠心チューブ中で簡易なベンチトップ処理を行い、さらにピペッティングまたはデカンテーションを用いてサンプル(または洗浄溶液など)を除去します。一方、 適切な磁石を用いれば、チューブの底部や側面に磁気ビーズが保持されます。
以下の点で、磁性粒子は多孔性樹脂よりも優れています:
免疫沈降法(IP)やプルダウンなどのアッセイスケールの精製技法では、一般的にアガロース樹脂に代わり、磁気ビーズが支持体として推奨されるようになりました。さらに、サンプル処理装置は、洗練性や効力性が飛躍的に向上しており、磁気分離によるアッセイや精製処理を実行することができます。
使用するアフィニティー支持体のタイプを決めるには、精製や下流用途の目的スケールを第一に考慮する必要があるでしょう。圧力限界(上表をご参照ください)、最大流量、およびコストなどの要因(例:大量に磁性粒子を使用すれば、非常に高価となることがあります)による格差を考慮した上で、所定クロマトグラフィーシステム用の支持体を適切に決定します
スクリーニングまたはアッセイ スケール | バッチ スケール | パイロット スケール | プロセス スケール | |
---|---|---|---|---|
産出量 | マイクログラム(µg) | ミリグラム(mg) | ミリグラム~グラム | グラム~キログラム |
テクニック | 自動粒子プロセッサ; 96ウェルスピンプレート | 重力流; スピンカラム | 低~中の流速のFPLC | 高流速のFPLC |
アプリケーション | ハイスループットスクリーニング、 相互作用の研究、 変異解析、 ウェスタンブロッティング | 機能アッセイ、構造解析 | 構造解析、産出スケール | 大量産出 |
適切な支持体 |
アフィニティー標的の各種クラスおよび各精製目的に応じて、優先順位(高純度性または高収量性など)、技術的制限、および効果的な手順を展開するバッファ条件に関して、それぞれ別個に考慮しなければなりません。次項では、主要なアフィニティー精製システムをいくつかご説明いたします。特異的精製法の詳細記事については、サイドバー内のリンクをクリックしてください。
抗体精製法では、アフィニティー精製技術が必須となることがあります。通常の研究室規模で抗体を産出する場合、血清、腹水または培養上清の各必要量は比較的わずかで済みます。種々のアッセイ法や検出法での抗体の使用法によっては、抗体を部分的もしくは完全に精製する必要があります。精製特異性には、以下3段階の手法があります:
特異的抗体は、アッセイの目的抗原を検出する用途に非常によく利用されていますが、抗原を精製する用途にも使用できます。特異的抗体の産出や購入にかかる費用は高額なため、大スケールの抗原精製ではこの手法はめったにとられません。それよりも、この手法は通常、特に免疫沈降アッセイなどの非常に小スケールな用途に限って利用されています(次項をご参照ください)。
しかし、精製抗体が利用できる場合、何らかの有効な結合化学により、ビーズ状アガロースやアフィニティー支持体へ精製抗体を共有結合固定化させることができます。AminoLink Plus Coupling Kitsを用いて、第一級アミンを介した共有結合固定化を行えば、非常に簡素かつ効率的に抗体アフィニティーカラムを調製できます。
免疫沈降(IP)とは、特異的抗体を用いた、小規模な抗原アフィニティー精製を指します。従来の免疫沈降法では、固定化プロテインAまたはGのアガロース樹脂(プロテインAまたはGは抗体へ結合することにより、その抗原へ結合します)により抗体-抗原複合体を捕捉します。そして、ゲル電気泳動のサンプルローディングバッファ中の精製抗原を回収します。
共免疫沈降法(Co-IP)では、直接抗原だけでなく、抗原に相互作用(結合)する細胞溶解物の環境下にあるタンパク質についても、捕捉と検出を試みます。プロテインAまたはプロテインGによる従来形式では、この精製スキームで3段階ものアフィニティー相互作用が発生します。
IPやCo-IPに要する小スケール形態へ抗体固定化法を適合化・最適化させながら、様々な技術革新が展開されてきました。これらの技術革新によって、従来のIP技術に付随する多くの制限やトラブルを打開することができます。
プルダウンアッセイは、共免疫沈降法と同様に、アフィニティー法としてタンパク質間相互作用の研究において一般的に活用されています。しかしIPやCo-IPのケースとは異なり、プルダウンアッセイでは、研究対象の標的タンパク質に特異的な抗体を用いることはありません。プルダウンアッセイでは、タンパク質結合パートナー(餌食)の「プルダウン」用として、必ず精製と標識の施されたタンパク質(ベイト)を使用しなければなりません。ベイトタンパク質は、ビオチンタグの追加(次項の2つのトピックをご覧ください)など、融合タンパク質のクローニングや発現を介して、もしくは共有結合修飾として作製されます。 タグ特異的なアフィニティー支持体(例:ストレプトアビジン)へ、タグ付き(例:ビオチン化)ベイトタンパク質を固定化させることができます。そして、ベイトへ結合し得るタンパク質(餌食)を発現するタンパク質溶液で、固定化ベイトタンパク質をインキュベートします。すると、これらのベイトタンパク質と餌食タンパク質の複合体の同定が可能になります。また、活性化支持体を用いて、あらゆるベイト分子を直接固定化する方法もあります。
組換え発現されたタンパク質には、通常、追加アミノ酸、機能ドメインまたは全タンパク質を付加して、精製と操作を促進させます。融合タグとして知られる、 組換えタンパク質へのこれらの配列を、天然タンパク質シーケンスをコードするDNAへ添加します。主要な融合タグのひとつに挙げられる、6〜9個のヒスチジン残基(6xHisタグまたはポリHisタグとも表記)の短鎖は、ニッケルやコバルト等の金属イオンへ結合します。また、還元型グルタチオンへ強固に結合する、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)といった融合タグもあります。
その他の融合タグとしては、HA、Myc、FLAG™ (Sigma-Aldrich Co.)、MBP、SUMO、およびProtein Aなどがあります。これらの融合タグは、HisタグやGSTタグとは異なり、精製時に特異的抗体(例:固定化された抗HA抗体)を要するため、エピトープタグと呼ばれています。ニッケルやグルタチオンアガロースなどの簡素なリガンドメディアに比べて、抗体ベースのアフィニティー樹脂は比較的高価なため、大スケール精製でエピトープタグが用いられることは極めて稀です。むしろ、エピトープタグは通常、小スケールの免疫沈降法(IP)や共免疫沈降法に利用されています。
融合タグ有する特性のおかげで、タグ付きタンパク質の操作がラボでも簡単に行えるようになります。十分に特徴づけられたタグとリガンドの化学作用によって、対応する固定化リガンドを用いてタグ付き分子を単一の工程でアフィニティー精製することができます。融合タグに対する抗体は、下流の検出法やアッセイ法で様々に利用できるため、特定組換えタンパク質ついてプローブの取得や開発を行う必要はありません。
ビタミンHとしても知られるビオチンは、小分子(MW 244.3)として、全ての生細胞中に微量に存在しています。ビオチン分子の吉草酸側鎖を誘導体化させることにより、分子類へのビオチン結合用に用いる様々な反応性基を組み込むことができます。ビオチンが分子へ結合されたら、強固かつ特異的にビオチン基へ結合するアビジンまたはストレプトアビジンタンパク質に基づいた複合体や支持体を用いて、検出、固定化またはアフィニティー精製用として、その分子を捕獲できます。
修飾、標識および固定化などを施した様々な形態で、アビジンタンパク質およびストレプトアビジンタンパク質の天然の組換え誘導体を手軽にご利用いただけます。「アビジン・ビオチンシステム」(全ビオチンアフィニティー法の一般的呼称)は、検出や精製のあらゆるタイプの研究用途に適合されています。
アビジン・ビオチン間のアフィニティー相互作用は非常に強力なため、固定化アビジンまたはストレプトアビジン支持体に捕獲されたビオチン化標的を溶出させる用途には、通常、このアビジン・ビオチンシステムは実用的でありません。とはいえ、切断可能なビオチン、イミノビオチンおよびデスチオビオチンなどのビオチン標識試薬の改良版が開発されています。これらの試薬は、ストレプトアビジンとの可逆的相互作用を円滑に展開させ、ソフトリリース用に便利なツールとなっています。
アフィニティー支持体やリガンドを用いれば、高特異的な標的(例:特殊な抗原または操作タグ)を精製できます。しかしそれだけでなく、ある種のリガンドを用いれば、特定クラスの生体分子の濃縮や分離が可能になります。上記のプロテインAおよびプロテインGは、免疫グロブリンの一般的クラスへ結合するため、この種の親和性システムの一例とみなすことができます。通常、独自の化学的特性または一連の分子標的の全メンバーに共通する官能基は、適切なアフィニティーリガンドを同定できる場合、濃縮または分離スキームの基盤となり得ます。
翻訳後修飾(PTM)は、無関係の一連分子の定義法が異なる官能基などの良いモデルとなります。リン酸化、グリコシル化またはユビキチン化のいずれにおいても、PTMの化学的特性は、最も既知の化学リガンドによってかろうじて識別できるほど、他の化学基に類似しています。このような理由で、親和性システムにより、化合物の標的クラスのみを最適に濃縮することができます。
単一の標的分子を精製する目的ではなく、望ましくないサンプル成分の特定クラスを除去する目的で、アフィニティー精製を行う場合もあります。この意味で、汚染物質除去ではフロースルーサンプルを維持し、従来のアフィニティー精製法では結合分子を廃棄する点が唯一の相違点です。こうした状況では、サンプル回収に適した結合バッファを用いることが重要です。
タンパク質や高分子サンプルからの低分子量化合物の一般的な除去法では、通常、アフィニティークロマトグラフィーでなく、ゲルろ過(次項をご参照ください)が実行されます。しかし、サイズによって望ましくない汚染物質を区別できない上に、サンプル中のこうした汚染物質へアフィニティーリガンドが特異的結合する可能性が判明している場合は、アフィニティー精製が有効です。
アフィニティー精製による汚染物質の除去は、通常、最終処理段階で行われます。例えば、細胞溶解やタンパク質の可溶化に不可欠な界面活性剤は、下流の用途やアッセイに干渉することがあります。こうした状況下でサンプルを処理するには、界面活性剤結合性の樹脂を利用することができます。
また、特定成分の除去が望ましい場合、血清サンプルのプロテオミクス解析を行います。通常、アルブミンやIgGではなく、血清または血漿サンプル中の極少量のタンパク質を重点的に解析します。特異的な抗アルブミンおよび抗IgG抗体に基づいたアフィニティー樹脂、あるいはリガンドに基づいたアフィニティー樹脂(アルブミンに結合するシバクロン色素、およびIgGに結合するプロテインA/ G)が、こうしたケースでは特に有用となります。
ゲルろ過(別名:サイズ排除クロマトグラフィー、またはSEC)では、サイズに基づいて分子を分離する多孔性樹脂を使用します。小分子は樹脂の細孔へ侵入し、カラムを通過することにより迂回経路を取ります。反対に、大きな分子(巨大分子、高分子)は細孔から排除され、ビーズ内部空間をバイパスして、小分子よりも早くカラム中を通過します。
イオン交換クロマトグラフィー(IEXまたはIEC)では、樹脂上での負荷電基または正荷電基との全イオン相互作用の強度に応じて、タンパク質を分離します。バッファ条件(例:イオン強度やpH)を操作することにより、分子サイズの大小に関わらずイオン性分子を固相材料へ結合させたり、固相材料から解離させることができます。IEX支持体は、陰イオン結合では正荷電し、また陽イオン結合では負荷電するでしょう。また、陰イオンIEXおよび陽イオンIEXの支持体は、「強力性」あるいは「微弱性」いずれかの相互作用に特徴づけられます;これは、結合強度ではなく、イオン化のpH変動を示しています。強力な交換体と結合した場合はpH変動幅が最小限に抑えられる一方、微弱な交換体と結合した場合にはpH変動幅は大きくなります。
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)では、タンパク質外部の疎水性アミノ酸残基と、樹脂上の疎水性基との相互作用に基づいて、タンパク質を分離します。
マルチモーダルクロマトグラフィー(MMC)では、IEXクロマトグラフィーと同様に、タンパク質を分離します。MMCでは樹脂上の荷電基を用いますが、これらの荷電基を修飾している第二基によって、タンパク質精製による第ニ相互作用が発生します。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.